坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

呼びとめられたものの光 

2011年10月24日 | 展覧会
名古屋ボストン美術館では、「恋する静物ー静物画の世界」が開催されていますが、同時開催されている同展は、静物画をキーワードに3作家の思いがけない出会いの作品展です。
画家櫃田伸也さんの監修ということで、現代アート系のそれぞれの作品の固有性が浮き彫りになる内容となっています。
小林孝亘さん(1963年~)は、ニュー具象系のリーダー的存在で、現在はバンコクと東京にアトリエをもち制作されています。掲載作品は、〈Dish〉1997年。代表的な作品ですが、何の変哲もない皿の上に箸がのっています。その一瞬の景を淡い光のなかにハーフトーンで描く世界は、静謐な時間の流れと安らぎのようなものを感じさせます。
長谷川繁さん(1963年~)は、色鮮やかなポットなどの作品。チューブから出した絵具をそのままのせて、筆を走らせるホットな筆さばきで静物らしからぬエネルギーを発散させています。
冨井大裕さん(1973年~)は、日常に見慣れたものをある一定の秩序で再構成し、もう一つの静物的な要素を加えています。今回ホッチキスや折り紙などを使って、既成の枠を離れた意外性の造形が新鮮です。

◆呼びとめられたものの光/開催中~12年2月19日/名古屋ボストン美術館

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