坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

どうぶつへの眼差しー2展

2011年07月16日 | 展覧会
日本人は古くから、生きとし生けるものすべてに精霊が宿るというアニミズム的信仰や仏教観において、動物や鳥、虫など中国から渡ってきた花鳥画、仏教絵画では神々しい象や獅子が描かれてきました。
動物画というジャンルをこえて日本人の描くどうぶつたちへの眼差しは、西洋の歴史的な絵画の動物たちの存在とは少し異なるように思います。
俳壇の重鎮である深見けん二さんの『蝶に会ふ』のなかの〈蝶に会ひ人に会ひ又蝶に会ふ〉という句があります。蝶と人とはもはや同次元にあります。むしろ蝶に会うことを喜びとする達観の境地と言えるでしょう。そういう眼差しが日本人の自然観、小さな生命あるものへの思いがあるように思います。このような精神風土は日本画から現代美術まで生き生きとした表現を生み出してきました。
動物をテーマとした企画展として、近代日本画のコレクションで知られる山種美術館と海景を取り込んだ設計で魅力の横須賀美術館で開催されます。
・掲載作品は、よく知られた竹内栖鳳の「班猫」1924年(重要文化財)〈8月21日まで展示〉。毛づくろいをする猫がこちらに緑の印象的な目を向けている一瞬をとらえた作品。精妙な写実観と余白をたっぷりと空間に取り入れ、作者の対象への慈しみと存在感を放っています。同じ猫でも小林小径の「猫」(8月23日から展示)は、少し色っぽい女性像を思わせる作風。
山口華揚のひっそりとたたずむみみずくを描いた「木精」、速水御舟「炎舞」(8月21日まで展示)など、見どころの多い展示内容となっています。
一方、横須賀美術館では、幕末・明治から現代まで洋画、日本画、浮世絵、彫刻など約70点により動物をテーマとした幅広い作風が楽しめます。現代の神話のファンタジーを感じさせる土屋仁応「麒麟」、三沢厚彦「Animal」シリーズなど、明治期の作品などとの同時展示で、テーマを絞った企画ならではの内容となっています。両展とも家族で楽しめる企画であり、お気に入りの1点を見つけてみてはいかがでしょうか。

◆日本画どうぶつえん/7月30日~9月11日/山種美術館(広尾)
◆集まれ!おもしろどうぶつ園/開催中~8月28日/横須賀美術館(横須賀市)

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