坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

愛知県美術館コレクション展 ふらんす物語

2011年09月05日 | 展覧会
土曜日にご紹介した「ルドン展」は、岐阜県美術館の改修工事を機に当館が誇るルドンのコレクションを中心にして、浜松、京都、東京において展覧会が実現しました。美術館の活性化においても貴重だと思います。
岐阜県美術館がルドンであれば、愛知県美術館は〈エコール・ド・パリ〉を中心に充実したコレクション展が、島根県立美術館で開催されます。本展は、震災復興支援特別企画として企画され、副題に〈ピカソ、マティス、ロダン⋯そしてフランスを愛した日本人画家たち〉とあり、もっともパリで芸術が高揚期を迎えた時代にフランスと日本の美術家たちの展開を追う内容となっています。
印象派以後、20世紀初頭、マティスを中心とするフォーヴィスム、ピカソらが創始したキュビスムなど、次々と前衛的な動向が巻き起こるパリは、多くの美術家たちを引き寄せ魅了していきました。明治以降、日本の画家たちもフランスに憧れ、その豊かな実りを吸収していきました。
ラファエル・コランに師事した黒田清輝は、外光派アカデミズムを日本に持ち帰り、セザンヌの作品に衝撃を受けた安井曾太郎、エコール・ド・パリを代表する一人である藤田嗣治、日本のフォーヴィスムの草分けとなった里見勝蔵ら、日本油彩画の発展に大いに寄与しました。
・本展出品作の目玉とも言える1点、パブロ・ピカソ「青い肩かけの女」1902年 愛知県美術館蔵
 ©2011 Succession Pablo Picasso SPDA(JAPAN)
ピカソは、20世紀の幕開けに故郷バルセロナからパリに渡り、その後両方の地を往復しながら、若き時代の心理的な不安定な自我を演出する「青の時代」(1901~04)に入っていきます。この作品はこの時代を象徴する作品であり、色彩の陰影方法などセザンヌ、ゴーギャンの影響が感じられます。
本展は、愛知県美術館のコレクション70点により、1880年代から1960年代までの展開をたどりながら、フランスと日本の美術家たちが織りなす豊かな旋律へと誘います。

◆愛知県美術館コレクション展 ふらんす物語/9月17日~11月7日/島根県立美術館(松江市)

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