坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

松井冬子展

2011年10月29日 | 展覧会
空高く秋晴れが続いていますが、スイングするように刷毛ではいたような雲は、自然がつくりだす造形詩と言えるでしょう。
独自の絵画世界を内包する松井冬子さん(1974年~)の大規模な個展が横浜美術館で開催されます。
掲載作品は、初期の「世界中の子と友達になれる」(2002年)の部分です。藤の花の右側には、隠れるように乳母車が置かれています。はだしの女性の覗き込むようなポーズが謎めいて不穏な空気を伝えます。
幽霊の画家としても、特定のファンをもつ松井さんは、もっとも注目されている現代の画家の一人です。
私たちは常に、精神的肉体的「痛み」を伴いこの世界を生きています。画家は「痛み」を始点として、恐怖、狂気、ナルシシズム、性、生と死などをテーマに、挑発的ともいえる絵画性を掘り起こしています。
白い花に囲まれて横たわる白い裸像の美女。その内部の器官がむき出しになっています。
肉体とはかなさ、これまで絵画が見落としてきた情念のありかをさぐるような世界観でもあります。

◆松井冬子展/12月17日~12年3月18日/横浜美術館(みなとみらい)

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