坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

金沢健一展 出発点としての鉄 1982-2011

2011年07月25日 | 展覧会
鉄の彫刻家である金沢健一さん(1956~)の鉄板を溶断した〈音のかけら〉とワークショップ展は、2006年から川越市立美術館で夏の期間に開催されてきました。ワークショップでは小学生が参加し、鉄の角柱をいくつかの長さに溶断し、いろんな音色をだしてみるコーナーに、鉄の素材のあらたな音色の響きに子供たちは興味津津。
このワークショップの積み重ねは、金沢さんのライフワークとなって、1年ごとに課題を変え、子供たちの反応や方法を記録した研究ノートへと進められています。床に置かれた溶断された鉄板のかけらをマリンバのような棒で叩きながら自由に音をだしていく楽しさがあります。
鉄の彫刻というと、鉄でつくられた具体的な物のかたちを思い浮かべるかもしれませんが、作者は、鉄という素材の本質的な美しさを見出し、加工を最小限にとどめ、幾何学的な構成の作品を発表してきました。
掲載作品は、初期のコンポジションのシリーズの一つです。空間のモンドリアン的抽象のバランスで鉄の立体が構成されています。空間における疎と密、主体と客体の反転を思い起こさせるインスタレーション的構成も展開しています。
鉄の作品の豊かな表情を追求してきた約30年に及ぶ仕事を、代表的な立体作品で紹介していきます。

◆金沢健一展/7月30日~9月25日/川越市立美術館

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