坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

シャガールの人物はどうして宙に浮いているの

2010年04月29日 | 展覧会
シャガールの本格的な展覧会がこの夏から初秋にかけて開催される。エコール・ド・パリの画家として常に人気が高く、1年を通してどこかの展覧会では見られる。東京藝術大学大学美術館で3ヵ月間開催される「シャガール展」は、パリのポンピドー・センターが所蔵する代表作の数々が来日。日本初公開の作品も含まれているとか。今年は、オルセー美術館展もそうですが、パリが東京にやってきた!美術展花盛りですね。
ところで、シャガールの作品は、恋人や牛、民家や教会などもすべて宙に浮いているでしょ。それがシャガールの作品でしょと言えばそうだけど、でもちょっとあらためて見ると不思議でしょ。〈地に足のついた考え方しなきゃいけないよ〉なんてよく言われませんでした? 今の小学生の子供たちだったら、ネットでバーチャルな世界に浸っているから、シャガールの絵を見て、これはね、なんてひとつの物語をそこから作り出してしまうかも。それこそアートの力なんですけど。シャガールは1910年にロシアからパリに夢を求めてやってきた。同じ境遇の仲間がいて一つの時代を作ったのですけど。いつも心に故郷の小村、ヴィテブスクへの思いがあったんです。パリのエッフェル塔とロシアの家並みと彼の原点であるエルサレムの教会が一つの画面で共鳴しあう。それぞれが宙に舞うことで時間と空間を超えて次々と現出しては消えていくような幻想的世界をつくりだした。虹のような色彩に夢を語ったのです。一つの作品から物語と言えば、「物語の絵画展」が新潟県立万代島美術館でこの秋開催されます。コローの詩情豊かな作品などが展覧予定。まだ先ですが秋にふさわしいですね。

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