坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

セザンヌーパリとプロヴァンス 色彩の発見

2011年10月14日 | 展覧会
ポール・セザンヌ(1839-1906年)の作品は、オルセー美術館展や印象派関連の展覧会では必ず出展される近代美術史上において要になる画家です。その本格的な全体像を通観できる展覧会が、来春、国立新美術館開館5周年記念として実現します。
ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌらはポスト印象派として、印象派が生み出した筆触分割の明るい色彩法を取り入れながらも、三人三様、独自の絵画世界へと発展させました。
中でも、セザンヌは画面上での堅固な構築的な構成を求めて、静物画においても実験的な姿勢を貫きました。
・掲載作品は、有名な「りんごとオレンジ」1899年頃(オルセー美術館蔵)。円熟期の作品です。リンゴとオレンジを三角形の構図で盛り込み、白いクロスは逆三角形をかたちづくります。背後の緑の濃淡のクロスは山のような起伏をみせています。果物は輪郭線を取り入れていますが、古典的な明暗法ではなく、色彩のリズムによって奥行き感がでるように彩色されています。
視点が一方向でないこともこの作品を求心的ではなく、画面の外へと拡散していくような効果を生みだしています。
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この展覧会のプレスリリースを作成しているグラフィックデザイナーのYさんとお話をする機会があり、そこで、パリとプロヴァンスを拠点にして創作活動を行ったセザンヌの軌跡をリリースで今準備中ということでした。
南フランスのエクス・アン・プロヴァンスというと、今人気の旅行先になっていて、セザンヌ誕生の地として彼の生家など、セザンヌに関連した場所30か所以上を訪ねることができるとか。
そして、デザイナーが今回メインの色彩として選んだのが、オレンジとブルー。パリのイメージをオレンジに託したとか。
色彩の大きな色面的タッチと濃淡を重ねて、セザンヌは誰にでもないセザンヌの緑、赤、オレンジを獲得していきました。その鮮やかなみずみずしい発色は、のちにマティスらに引き継がれていくのです。

◆セザンヌーパリとプロヴァンス/12年3月28日~6月11日/国立新美術館(六本木)



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