坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

三栖右嗣記念館

2013年04月19日 | 展覧会
蔵造りの街として小江戸の雰囲気をたたえる川越に、新たなアートスポットが誕生して、開館1年を迎えました。
小さな人工の水辺に浮かぶコンクリートの打ちっぱなしのスタイリッシュの感じもあるし、メルヘンな雰囲気の美術館は、世界的に活躍されている伊東豊雄さんの設計です。館内も自然光がほどよく入り、三栖作品のリアリズムの力をじっくり引き寄せて鑑賞できる感じです。
ギャラリー2室のこじんまりとした美術館ですが、三栖作品180点が収蔵されていて、春、秋の二回の展示替えで、常時30点ほどが展示されています。
三栖さんは、母親の日常の姿をとらえた「老いる」で保井賞を受賞。その素描力は圧倒的な迫力があります。一方で、自然の花々をとらえた豊かな色彩感覚も持ち合わせています。
取材で、一点を選ぶのですが、なかなか難しく、これから夏を迎えるので、鮮やかな青の海をバックにして、前景に花の静物とのコントラストがポイントの作品にしました。
展示替えをしたらもう一度、行ってみたいと思わせる内容でした。

◆ヤオコー川越美術館 三栖右嗣記念館/埼玉県川越市