眺めのいい部屋

人、映画、本・・・記憶の小箱の中身を文字に直す作業をしています。

そんなに早くは気づけない。でも ・・・・・ 『カラフル』

2011-03-01 18:02:09 | 映画・本

(以下の記事では、映画の結末に触れています。未見の方はご注意下さい。)

このアニメーションについて、最初私が覚えていたのは、「実際は、そんなに早くはワカラナイんだよね・・・」という漠然とした感慨だけだった。(メモには記述がない。)何が「そんなに早くはワカラナイ」のかを思い出したくなって、ストーリーも定かじゃなくなっている記憶を、チラシを見ながらなんとか掘り起こしてみた。

天上界と下界の狭間で宙ぶらりんになっていた、死んだはずの「ぼく」の魂・・・そこへ天使が現れて、もう一度生きるチャンスが与えられたと告げる。但し限られた期限内に、「自分の犯した罪」を思い出さなければならないと。「ぼく」は、自殺したばかりの中学3年生の身体に強制的に戻され、その男の子「小林真」の人生の続きを生きることになるのだが・・・といったストーリー。

結末を言ってしまうと、「ぼく」はほんの数ヶ月(多分それくらい)の中に「自分が犯した罪」に気づく。それは、自分とは縁もゆかりもない(と思っていた)男の子の姿で、その子とは違う自分の個性に従って暮らしていく間に、「真}と周囲の家族や級友との関係が変わってきて、彼なりの人生が開けることで見えてきた事柄だった。

学校では内気で、友達もなく、成績も最低。家庭では父や母を軽蔑?し、兄からは逆に馬鹿にされて?いる・・・。そんな生前の「小林真」から、「初めて親友が出来た」「見渡してみたら、それなりの関わりのある級友もいた」「家族一人一人と、それなりにコミュニケーションも築ける」中学3年生の男の子が生まれてくる・・・。映画はそれをさまざまなエピソードで、とても丁寧に描いている。

人の「カラー」が何色なのかは、その人自身にもそう簡単にはわからない。「自分」というのは、本人が思っているよりもずっと可塑性?の高い、「何色にするかは自分次第」という余地のある生きものなのだということを伝えたくて、森絵都さんの原作小説(未読)は書かれたんだろうか・・・などと、映画を観た後考えたのも、今回思い出した。

ただ・・・このアニメーションを観た直後、私が痛切に感じたのは「現実はこうじゃあないなあ・・・。」という、溜め息をつきたくなるような思いだった。「現実では、子どもはこんなに早くは気がつけない・・・というか、気づいていても納得は出来ないから・・・。この清々しさって、フィクションの良さなんだろな~。」

自分の置かれている状況に子ども(というか若い人たち)が「絶望」する時には、どんなに幼く外からは見えても、本人はある程度周囲の人々の事情が解っているものだと、私は元々思っているらしい。「アタマではわかっている」からこそ、「どうにもならない」と思い、「絶望」にまで至ってしまうんだと、私は多分思っているのだ。

「そこまで望んではいけない。」「(相手は)出来るだけの努力をしてくれているんだから。」といったことを感じない子どもは、私はいないと思っている。ただ、「アタマ」は理解が早いけれど、自分でも把握しきれない「自分自身」が納得してくれないのだ。「自殺を図ったりしたら家族は悲しむだろう。」「生きていたくても生きられない人が沢山いるのに、これくらいのことで死のうとするのは傲慢だ。」などなど、子どもなりに「わかっている」し、だからこそ苦しいのだと。

この『カラフル』という作品に登場するのは、そういう意味では亡くなった「真」も生き返った「ぼく」も、「嫌なものは嫌だ!」とすっきり思い切れるくらい「健康」な人たちということなのかなあ・・・でも、本当にムズカシイのは「もうちょっと健康じゃない」若い人たちなんじゃないかなあ・・・などと、例によって物語とは直接関係ないような部分で、私はフクザツな気分を味わったのだと思う。

(この映画を作った原恵一監督のアニメーションは、アニメーションでしかできないような作品なのに、なぜか「映画」そのものを感じさせ、私はいつも感心してしまう。ただ・・・感心するのと好き嫌いは別かもしれないとも思う(笑)。)

 

 

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4 コメント

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Unknown (更年期)
2011-03-02 12:54:25
またまた、映画の内容とは別のコメントですみません。
ムーマさんの映画感想文は、本当に私の興味を沸かせます。文章の書き方がうまい!!で、乗せられて(笑)先日「パレード」借りて来ちゃいました。
まだ、観てないんで、その内感想をメールしますね~^_^;
アニメは滅多に見ない私ですが、「カラフル」も観てみたくなりました
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アニメもいいですよ~♪ (ムーマ)
2011-03-02 18:19:47
>更年期さ~ん、ようこそ~。

「乗って」下さる方がいるなんて、もう幸せ一杯のムーマです~。
(でも『パレード』、ホントに「だまされた~」だったらゴメンナサイね(笑)。)

大体、私の記事は「感想」にもなってないことが多くって・・・。
でも、褒めてもらえると嬉しくて、図に乗って(笑)また書こうっていう勇気が湧きます。
本当にありがとうございます(感謝)。

ところで・・・『カラフル』と同じ監督さんが作ったアニメで『河童のクゥと夏休み』も良かったですよ~。
『嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』と同じヒトと知ったときの驚愕と納得~(なあんて、またまた宣伝しちゃった~(笑)。テキトーに聞き流して下さい。)
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Unknown (chon)
2011-03-04 10:53:51
いつも見当違いの事を書いているchonさんです。申し訳ないです。
クローズアップ現代でこの監督さんを取り上げてなかったですか?
別の番組かもしれません。
それで、もうこのアニメは見る必要ないな、と思ってしまいました。
設定自体に拒否反応です(;´Д`A ```
やっぱ、今敏さんの方が私は好きだとか、そんな感想しか持たなかった・・・関係ないのにね。
ストーリーについての感想はムーマさんと似てるかもしれない。現実の若者たちと接していると、こんなに簡単なものではないと、(番組の中で説明があった範囲でですが)思ってしまいました。たぶん、映画を見たら、もっと怒りが増すような気がします。
見なくて良かった。(←こればっかりだね~(;´Д`A ```)
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原作(未読)はもっと違うかも・・・? (ムーマ)
2011-03-05 10:39:35
>chonさ~ん、ようこそ~

テレビで取り上げられてたんですか。見たかったなあ(番組表あまり見ないので、もうこんなんばっか(笑)。)

でも、私もこの監督さんの映画「好き」かどうかはびみょーです。というか、日本のアニメーション(私は殆ど映画館でしか知らないんですが)を観るたび、曰く言い難い違和感?のようなモノを感じることが多いので、敢えてそれには触れない習慣が出来つつあるというか。(今敏さんの作品も。)

ただね、『カラフル』はchonさんに向かない気が私もします(って、私も毎回同じコト言ってますね~(笑)。)
「見なくて良かった~」の確認をわざわざさせてるみたいでホント申訳ないんですが、それでもここまで見に来て下さってるのがとてもとても嬉しいです。いつも本当にありがとう。

いつか「ねえ、chonさんも見て見て~」っていうような映画のことも書けたらいいなあ。
でも・・・『キッチン・ストーリー』みたいな映画は、私はもう観るだけで満足してしまって、ひとりで脳内再生して喜んでるうちに時が過ぎちゃうの(笑)。(そう言えば『ROCK YOU!』もそんな楽しい映画でしたね。)
うん、そうだ。chonさんこそ、いい映画あったらまた教えて下さいね。私、chonさんに教えてもらった映画はどれも面白かったですよ~(本当)。
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