日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

四谷赤坂麹町 - 燗コーヒー藤々

2020-05-25 23:10:07 | 居酒屋
昨晩「魚真」を訪ねたときの状況から察知されたのは、お触れの撤回を機に一段と人出が戻る可能性です。飲食店にとっての苦境は依然として続くものの、差し迫った危機は乗り越えたともいえます。局面の変化を象徴するのが、本格的な再開へ向け、休みをとって態勢を整える店が少なからず出てきたことです。来るべきときに備えて、こちらもしばし休養をとることにしました。その代わり、かねてより告知があった「藤々」の昼営業を試してきたため、その顛末を綴ります。

先週持ち帰りの営業を終える告知があったとき、同時に知らされたのが今週の予告です。「早朝食堂」として定食を出すというのがその内容でした。この時期にしかできないことを、最後にやってみたかったというのが店主の弁です。来週から通常営業に戻すとはいうものの、客足がどれだけ戻るかについては未知数な部分もあります。昼営業で補う可能性も視野に入れ、今のうちに試しておこうということでしょうか。ただし、いずれは本来の姿に戻るのが最善ともいえます。こちらにとっても今しかできない経験という前提で、一度訪ねてみようと決めていた次第です。
初めて訪ねたとき以来、一貫して持ち帰りのみの営業だったため、カウンターにつくのは初めてです。九時過ぎに訪ねたところ先客は皆無。どこでもお好み次第という状況の中、特等席と思われるコの字カウンターの中央に着席しました。コの字型とはいっても、完全な正方形ではありません。暖簾をくぐると正面に五席、そこから折れ曲がって奥の方へ四席分が延び、再び折れ曲がった先に三席分があって、途切れた先に厨房への出入口があるという配置です。
初回から一貫して述べてきたのは、居酒屋よりも一枚格上の店構えでした。ほぼ正方形の客席は、白木の天井、抹茶の砂壁、三和土の床で仕上げられます。長身では頭が支えそうなほど玄関は低く、それを含めてどことなく茶室に通ずる空間です。その空間を借り切って優雅に朝食をいただくひとときは、まさに今しかできない貴重な経験となりました。

何分日中のことだけに、本来の雰囲気とは異なる点も多々あろうとは思います。その代わり、明るいうちに訪ねたからこその発見もありました。石畳の坂道に日射しが注ぎ、半分開け放った格子戸の向こうで、白い木綿の暖簾が揺れていたのです。しかもその暖簾の裾から石畳が見えました。そうなることまで計算して長さを決めたのだとすれば、何とも心憎い演出です。
朝は何かと慌ただしいため、昼時に訪ねることも考えました。それでもあえて朝にしたのは、時間が変われば見えるものも変わるだろうと思ったからです。その狙いは的中したことになります。残る四日のいずれかで、昼の様子も体験できれば理想的でしょう。

燗コーヒー藤々
東京都新宿区荒木町10-14 伍番館ビルB階
03-6883-9898
1700PM-2200PM(LO)
日祝日他不定休
黒毛和牛の牛丼定食1000円
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本日の晩酌 - 魚真

2020-05-25 00:12:38 | 居酒屋
見事なまでの肩透かしを食ったものの、敗北感はありません。前夜に続き「魚真」の肴で晩酌します。

飲食店の生殺しが始まったことにより、平日に店で呑むという選択肢は事実上奪われ、仮に行くなら土日のいずれかが現実的となって今に至ります。しかし、途中まではその方針を堅持していたものの、先週末も今週末も土日の晩の外食はしませんでした。最後に店で呑んだのは二週間も前であり、中旬以降は今のところただの一度もありません。
このようなことになった理由の一つとして、実質七時で終わりという条件が自分にとって厳しすぎるという事情があります。その時間までに腹具合が戻らず、万全な状態で臨めないことが少なからずあったのです。ただし、今夜についてはいささか事情が異なります。結果として昼抜きとなったことにより、むしろ腹具合は万全でした。日中にかいた汗を銭湯で流してから、生ビールを一気に干したい気分で満々だったのです。しかるに、そのようなときに限って肩透かしを食らうのが何とも皮肉ではあります。

まず訪ねたのは荒木町でした。しかし、いの一番に向かった「おく谷」は、「月肴」ともども休んでいました。その結果、昨日の今日になるのを承知で向かったのが「魚真」でした。再開してから既に三回訪ねたとはいえ、店で呑む機会は久々です。初見の店へ飛び込むよりは、慣れたところにしたいという考えがあっての選択でした。しかしその判断が結果としては裏目に出ます。まさかの満席で振られたからですorz
正確にいうと、カウンターの先客は一人しかおらず、テーブルにもいくつか空きがありました。しかし、間隔を開けているためこれで満席状態だというのが店長による説明です。やむなく持ち帰りを選択するも、小一時間かかるとの返答につき、一旦帰宅してから出直す羽目に。とはいえ空腹感も限界に近付いていました。ひとまず小腹を満たしてから出向き、頼んだ品を引き取って戻るも、朝から走り回った疲れが噴き出して眠りに落ち、日付も変わろうとする頃になってようやく目覚めるという経過です。

実は、持ち帰る品を選んでいる間に、先客が二組続けて席を立ちました。あの状況で願い出れば、空いた席に収まることはできたかもしれません。あえてそうしなかったのは、久々の外食らしき先客が多いと見受けられたからです。
閉じこもることが「我慢」であるかのような風潮には、かねがね違和感を抱いてきました。少なくとも自分自身にそのような感覚はなく、むしろ今しかできないことを楽しんできたつもりです。自身の行動について「自粛」という言葉を一切使わないのもそのために他なりません。しかし、「自粛」によって「我慢」をしてきた大勢の人々が、久方ぶりに外食しようと集まってきたのであれば、お譲りした方がよさそうに思えたとでも申しましょうか。その間散々飲み食いしてきた自分にとっては、目先の一回を失ってもどうということはありません。店が本来の姿を取り戻しつつあるという点では、歓迎すべきことともいえます。ものの見事に外したにもかかわらず敗北感はなく、むしろほっとさせられたというのが本音です。

あっさりと引いたのは、何度か訪ねたことにより、当初抱いた印象が変わってきたからでもあります。再開直後に訪ねたとき、持ち帰りとしての使い勝手は必ずしもよろしくない、やはり店で呑むのが一番だろうと申しましたが、その見方が逆転しつつあるのです。
カウンターの先客は一人だったと申しましたが、その状況は常に同じでした。おそらく、板場との距離が近くなりすぎることから、背の高いガラスケースが壁代わりになる一角を除き、カウンターにはお客を通していないのでしょう。そうだとすれば、一番乗りをしない限りテーブルで呑むしかなく、独酌にはやや不向きということになります。
その一方で気付いてきたのは、持ち帰りに好適な品がそこそこあるということです。本日の品書きでいえば、小鯛の酢〆になめろうなど、刺身に一手間加えた品が挙げられます。飲食店の持ち帰りの献立が、肴よりもおかずに近いものとなりつつある傾向は先日指摘の通りです。そのような中にあっては、当店の献立が数少ない例外の一つともいえ、「藤々」なき後の有力な選択肢となりうる可能性を持っています。それだけに、今しかできないことを楽しむという観点からしても、持ち帰りを活用した方がよさそうに思えてきた次第です。今後はさらに頻度が上がるかもしれません。

魚真 四谷店
東京都新宿区四谷1-18-5 綿半野原ビル別館B1F
03-3351-2622
平日 1700PM-2300PM(LO)
日祝日 1600PM-2300PM(LO)

小鯛酢じめ
魚屋のなめろう
あんこう唐揚
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