日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

四谷赤坂麹町 - 月

2020-06-30 20:48:43 | 居酒屋
飲食店に対する無理無体な「要請」が緩和されたとき、週に二度ほど店で呑むという「新しい生活様式」を構想しながら、いきなり挫折するという経験をしました。あのときの借りをようやく返すことができます。今夜は「月」を再訪しました。
卑劣な政策により足止めされはしたものの、よかったことはいくつかあります。最たるものは、素通りを続けてきた近所の店との出会いです。とりわけ愛用することとなったのは「月肴」「藤々」「あい田」ですが、それらに勝るとも劣らないほど感銘を受けたのが当店でした。
出会いは四月に遡ります。飲食店を生殺しにする強硬策が発動され、街中が死んだように静まり返っていた時期です。傘を差しても濡れるほどの本降りの中、見舞いがてら「あて」へ行こうとしたところ、前日限りで無期休業に追い込まれており、その足でたどり着いたのがこの店でした。完璧に注がれた琥珀ヱビス、簡素ながらも気の利いた酒肴、良心的な値段から女将の老練な客あしらいに至るまで、何もかもがこちらの理想を体現していて、自宅の至近にありながら見落としていた不覚を恥じました。残念ながら、その日を最後に明かりを消してしまったものの、再開の暁にはいの一番に訪ねようと密かに思っていたのです。それがあえなく挫折して今に至るわけなのですが、これでようやく宿願が果たされたことになります。
奇しくも今夜はあの日を思い出させるような雨模様、先客のいない店内までが同じです。それでもかすかな希望とでもいうべきものを感じるのは、荒んだ世相が多少なりとも変わってきたからでしょうか。この明かりが灯され続けることを切に願います。


東京都千代田区六番町4-11
03-3263-1522
平日 1145AM-1330PM/1700PM-2300PM
土日祝日 予約営業

琥珀ヱビス
マチダ
田酒
ポテトサラダ
谷中生姜
かぼちゃ甘煮
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