日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

寝待ちの月

2020-06-10 23:48:03 | 旅日記
週明けの二日間は特段の必然性なく職場に通い、一抹の空しさを感じました。その点今日は多少なりともましだろうと思っていました。自宅でやるべき作業があり、後半は在宅で執務する形となったからです。ところがそうは問屋が卸しませんでした。突発的な事態によって、本来は終業後となる時間帯に対応せざるを得なくなり、終業が深夜に及んでしまったのです。
職場に復帰して思うのは、いわゆる「生活の質」が数段落ちたということです。職場と自宅、どちらの方が捗るかは人それぞれでしょう。しかし自身に関していえば、少なくとも在宅で生産性が落ちるという自覚はありませんでした。逆に、心理的な負荷については職場の方が圧倒的に大きいと感じます。何一つ気兼ねのなかった自室から大部屋に戻る以上、覚悟していた結果とはいえ、それ以上の落差を感じるのが現状です。大袈裟にいうと、平飼いの地鶏とブロイラーのような違いとでもいえばよいでしょうか。
平飼いとは、二月続いた在宅勤務の環境を指します。対する職場の環境を、語弊を承知でブロイラーのそれに例えるのは、飼う側の効率性では勝る代わりに、飼われる側の負荷がきわめて大きいと感じるからに他なりません。「自粛」に続いて「新しい生活様式」なるものが叫ばれ、公共の場における様々な足枷ができたことにより、集団生活への耐性が元々低い自分にとっては、覚悟していた以上に厳しく感じられるのが実情です。
こうなると、日常は従来同様、いやそれ以上に淡々とやり過ごすだけの時間と化します。しかるに今や、気兼ねなく一人旅に出られるようなご時世ではありません。あまつさえ、今季は高校野球すらもありません。心の底から打ち込めるこれらの楽しみが、煩わしい日常をやり過ごす目標となっていたにもかかわらず、それらがいずれも失われてしまったということです。自粛自粛と叫ばれても、今しかできないことを考え、それなりに楽しんできたつもりでしたが、皮肉なことに「緊急事態」が去ってから最大の危機が訪れました。
少なくとも来週末までこの生活が続く予定です。三日経った時点でこれでは先が思いやられます。せめてもの救いは、終業が延びたことにより、東の空に寝待ちの月が昇ってきたことでしょうか。図らずも、昨夜に続く月夜の下での晩酌です。
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