本日の晩酌 -夜明け前-

以前「第一印象の呪縛」という現象について語ったことがあります。ある酒を一度試してよい印象が残らなかった場合、食わず嫌いにつながりがちだということです。去年久方ぶりに買い求めた「夜明け前」はまさにその好例だったわけなのですが、そのとき以来一年ぶりに味わった結果、第一印象は当てにならないものだと改めて実感させられました。含んだ瞬間に立ち上る吟醸香は、「しずく採り」の面目躍如。しかもただの吟醸香ではなく、林檎のような香りの中に、生臭さと紙一重の、鼻をくすぐる複雑な上立ち香が混じるところは只者ではありません。
世間で「獺祭」が盛んにもてはやされる昨今ですが、思うに、この手の酒というのは探せばいくつもあるものです。中には「獺祭」を凌駕するものも少なくありません。そのような酒をいくつか挙げろといわれれば、この酒が「鳳凰美田」と並ぶ候補となるでしょう。

★夜明け前 純米吟醸生一本 しずく採り
小野酒造店(長野県辰野町)
精米歩合 55%
アルコール分 16度以上17度未満
長野県松本市 山崎精一商店にて購入