四谷赤坂麹町

活動帰りの翌日は、まっすぐ帰って泥のように眠るのが通例のところ、本日は久方ぶりに赤坂の街へ繰り出すことになりました。昨日からの積雪で出控えたか、街を行き交う人も車もあからさまに少なく、この機に乗じ一杯引っかけて帰ることにした次第です。訪ねるのは毎度おなじみ「宮わ」です。
白木の器に二点盛られたお通しに続き、例のごとく大皿から選ぶのは牛すじ大根と玉子焼きです。さらに、元々多くはない品書きが、雪のせいか特に限られていたため、本日はポテトサラダも追加で注文。牛すじ煮込み、卵焼きにポテトサラダと、文字にすればどこの居酒屋にでもありそうな品だというのに、それを手間暇かけて完成された酒肴へと高めているところに、この店の実力が感じられます。特に、ベーコンと黒胡椒を使って濃いめに味付けされたポテトサラダは秀逸です。油揚げなら「蔵」が一番だと絶賛したのは正月のことでしたが、ポテトサラダに関してはこの店が一番かもしれません。
しかし、今回何より特筆すべきなのは、〆のカレーが復活したことです。形がなくなるまで煮込まれて裏ごしされた野菜と果物の風味、そしてスプーンだけでほぐれる牛ほほ肉の味わいは、まさしくこの店の草創期に出されていたカレーそのものです。ルーとカレー粉に市販のものを使っているとはいいながら、家庭のカレーとは似ても似つかない味わいに仕上がっているのは、それだけ多くの手間をかけているからなのでしょう。純然たる和食と並んでカレーを出すことについては、親方自身依然として信条に悖るところがあるようで、〆の一品として再び定着するのかどうかは分かりません。しかし、運良く品書きに並んだならば、是非とも食しておきたい名品です。
酒の充実ぶりは相変わらずで、ひやおろし中心だった前回の品書きはことごとく新酒に一新されており、何を頼んでもかすかに発泡した舌触りと若々しさを感じるのがこの季節ならではです。人気銘柄に偏ることなく、まだ無名の蔵をいち早く取り扱うところに造詣の深さが感じられます。酒の品揃えが飛躍的に充実したのは、この一年間における最も顕著な変化ではないでしょうか。「酒の呑める料理屋」というべき位置づけだったこの店も、赤坂で酒を呑むならここが一番と自信を持って奨められる店に変貌した感があります。

★馳草 宮わ
東京都港区赤坂5-1-38 赤坂東商ビル3F
03-3568-7380
平日 1800PM-2200PM(LO)
土曜 予約営業
日祝日定休

澤の花・而今・蒼空
お通し二品(小エビと白キクラゲの和え物・枝豆豆腐)
牛すじ大根
青ネギとしらすの玉子焼き
カリカリベーコンとゆでたまごのポテトサラダ
深谷ねぎ天ぷら
宮わの〆カレー