日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

冬晴れの駿河を行く

2013-01-19 22:14:13 | 居酒屋
静岡に河岸を変えての二軒目は、これもなじみの店として定着した感のある「昇菊」を再訪します。「新生丸」のよさがよりどりみどりの魚介と漁師のぶっきらぼうな客あしらいにあるとすれば、この店のよさとはまず古い呑み屋小路の情緒であり、さらには修行を重ねた料理人の仕事ぶりということになるでしょう。
碁盤状に街路が走り、派手なネオンがきらめいて、清水と違い風情も何もなさそうな静岡の街ですが、表通りをそれると所々に古い小路が残っており、「青葉小路」もその一つです。人がどうにかすれ違える幅の小路を進むと、長屋の中ほどで暖簾を掲げているのがこの店で、古い小料理屋の佇まいがよい風情を醸し出しています。店内も見た目に違わずこぢんまりとしており、1回には7席分のカウンターと厨房、二階にはこれもささやかな座敷が置かれ、両方合わせて20人も入ればすし詰めになるでしょうか。しかし磨き抜かれた白木のカウンターは立派なもので、食器棚の扉に貼られた半紙の品書きからも、素性のよさは自ずとうかがい知れます。
その素性のよさは、まずお通しに表れます。本日差し出されたのはなめろうで、それ自体は比較的容易に発想できるとしても、ポン酢ともみじおろしで和えるところが只者ではありません。今がはしりの菜の花は、辛子和えではなく昆布〆にするというこれまた意表を突く一品でした。だからといっていたずらに奇をてらっているわけではなく、天ぷらなどは注文を受けると小さな俎板にネタを乗せ、銅の天ぷら鍋で揚げるという正統派です。そんな職人芸を間近に眺めつつ、白木のカウンターで酒を酌むという小粋さがよいのです。

昇菊
静岡市葵区両替町2-3
054-272-0701
1730PM-030AM(日祝日定休)

志太泉×2・臥龍梅・花の舞
お通し(なめろう)
菜の花昆布〆
太刀魚天
湯とうふ
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冬晴れの駿河を行く

2013-01-19 21:26:35 | 東海
例によって静鉄の電車で静岡に向かいます。三つ並んだ正方形の一枚下降窓、赤いビロード地のシートモケット、直流電動機の唸る音など、現代の安普請の電車が失ってしまった味わいとでもいうべきものがこの電車には残っています。清水に泊まりながらわざわざ静岡まで足を延ばすのは、腹ごなしを兼ねてこの電車に乗るのが楽しみだからでもあるのです。
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冬晴れの駿河を行く

2013-01-19 20:34:56 | 居酒屋
一軒目は毎度おなじみ「新生丸」を訪ねます。駿河湾の幸を良心価格でいただける、清水はもとより県下でも屈指の名酒場というべきこの店ですが、何度か通って気付くのは、店構えと店内の造りはごく平凡だということです。外観はどこの町にもありそうなごく普通の居酒屋で、教祖の事前情報がなければこの店に入ることなど考えもしなかったでしょう。店内にしても、一枚板の立派なカウンターを除けば、やはりごく普通の居酒屋で、大衆酒場の居心地を楽しむ向きには静岡の「多可能」などの方が勝っています。
それにもかかわらず今回も足を運んだのは、もちろんよりどりみどりの魚介を目当てにしてのことです。今日もホワイトボードは小さな文字でびっしりと書き込まれ、当然ながら一つに絞ることなどできません。その結果、躊躇なく刺し盛りを注文するという流れがこのところ定着してきました。本日の刺し盛りは七点で、鮪、鮑なども盛り込まれた豪勢なものです。当然ながらそれなりに値も張ると予想はされるものの、良心価格なので心配は要りません。わざわざ足を運んだ以上は、下手に出し惜しみをする方がむしろもったいないといえるでしょう。
それとともに、漁師でもある店主親子の、いかにも海の男というべきぶっきらぼうな、しかしなぜか心温まる客あしらいがよいのです。たとえば今日は、刺し盛りの皿を差し出しながら手前の品を指さして、「ヤリイカ、エンガワ、石鯛」とだけつぶやきます。要は、他の品は見れば分かるだろうということで、実際のところ鰹、鮑、鮪に〆鯖と、素人でも一目で分かる品ばかりでした。そんな阿吽の呼吸もまた、この店の楽しみの一つなのです。

新生丸
静岡市清水区巴町10-29
054-352-3851
1600PM-2200PM(日祝日定休)

正雪(純米・うすにごり)
お通し二品(赤なまこ・空豆)
刺し盛り七品
シーフード餃子
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冬晴れの駿河を行く

2013-01-19 20:02:08 | 東海
1号線を順調に走り、出発から200kmを走破したところで清水に着きました。少し時間も押してきたため早々に夜の街へ繰り出します。前回訪ねてから二月経っていないとはいえ、正月休みの時にも申したように、本当によい店は二日三日続けて通っても飽きないものです。ましてや二ヶ月も間を開ければ、酒も食材も入れ替わって全く違う楽しみがあります。今日は朝兼昼の刺身以外飲み食いしておらず腹具合も万全です。清水と静岡の名酒場をはしご酒で味わい尽くしたいと思います。
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冬晴れの駿河を行く

2013-01-19 17:50:37 | 関東
芦ノ湖の畔に明かりがつくのを見届けて昼の部は終了です。この後は例によって清水に泊まります。まっすぐ走れば七時台には着き、一軒目の酒場に入るのが八時前後になるでしょうか。余力があれば静岡の酒場とはしごして、最終電車で清水へ戻るといった流れになりそうです。
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冬晴れの駿河を行く

2013-01-19 16:45:04 | 関東
ターンパイクを上って大観山の展望台に着きました。上着要らずの陽気は一転して氷点下に変わり、沿道にはかなりの雪が積もっています。正面には斜光線を浴びた富士山が鎮座して、その稜線が左手の芦ノ湖へ向かって緩やかに下り、左右非対称の絵柄が見事です。加えて右手には駒ヶ岳、その彼方には丹沢と大山が。ただ箱根を超えるだけなら箱根新道で十分だったところ、わざわざ高い通行料を払った甲斐はありました。日没までさほどの時間はないため、この場所で富士山が茜色から紫色へ変わるのを見届けたいと思います。
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冬晴れの駿河を行く

2013-01-19 15:20:13 | 関東
もたつくうちに、相模灘を一望する早川-根府川間のお立ち台が順光になってきたため、こちらでカメラを構えます。雲一つない冬晴れの空の下では、海の青さも段違いです。それはよいのですが、貨物列車を除けば本当につまらない車両しか通過しません。天下の東海道本線も落ちぶれたものですorz
列車撮影を組み込んだことにより、熱海での観梅は事実上なくなったため、この後は小田原から箱根を超えて三島に向かいます。終始行き当たりばったりの行動とはいえ、夕日に染まる富士山が見られれれば何の不足もありません。どこで夕日を見届けましょうか…
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冬晴れの駿河を行く

2013-01-19 12:41:26 | 関東
午前一杯消費して小田原にすら着かないというスローペースで進行している今回の活動ですが、ようやく移動を再開します。気温は10度まで上がりました。それとともに気付くのは、雪が一切なくなっていることです。湘南の暖かさを改めて実感する光景です。
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冬晴れの駿河を行く

2013-01-19 11:47:36 | B級グルメ
移動を再開するなどといいながら、ここで遅い朝食兼昼食をとります。訪ねるのは地元で圧倒的な人気を誇る名店「えぼし」です。
自分がこの店を知ったのは、今から七、八年前のことでした。最初に勤めた職場の取引先がこの店のすぐ近くにあり、昼間からたいそう繁盛しているのを通りががる都度目にしていたのです。しかし、今となっては信じがたいことなのですが、当時の自分は来る日も来る日尾牛丼とほか弁とMacをローテーションするような、飲み食いには全くといっていいほど関心のない人間だったため、この店に入ることなど考えもしませんでした。それが今回頃よく開店時間に通りがかったということもあり、お手並み拝見とばかりに立ち寄った次第です。
店舗はゆうに百人以上は収容できるであろうかなりの大店で、駐車場からのぞく厨房では、何十人という数のおばちゃん達がてきぱきと仕事をこなしています。そして何より驚くのが品数で、魚介を中心にした日替わりの品書きは、刺身、寿司、煮物、揚物、焼物、一品、食事などに分けられ、何枚あるのか勘定するのも面倒になります。びっしり書かれたものが一枚当たりざっと二十種、それが少なくとも五、六枚あるということは、当然百をはるかに超える品があるということで、「魚三酒場」をも間違いなく超えるでしょう。目移りするほどの魚介に加えて、ビールは琥珀ヱビスの樽生、酒も地酒を中心に気のきいたものが揃い、それらの全てが昼からいただけるのですから、運転さえしなければここで昼酒をするにもやぶさかではないところでした。
これだけの品が揃うと、当然ながら一見ではどれがよいのか選びようもなく、結局一番無難な刺盛定食を注文。アオリイカ、イサキ、鰹、クロムツ、ミル貝、平目に鰤と、七点盛られた豪勢な刺盛定食は、魚三には及ばないとしてもかなりの良心価格です。カウンターはやや間に合わせの感があり、このカウンターで一人しみじみ酒を汲む姿は想像しがたいものの、何人か集めてテーブルか座敷に陣取り、目移りする品書きを片っ端から注文していくなら、これ以上の店はないかもしれません。繁華街でもなければ幹線道路沿いでもない、何の変哲もない茅ヶ崎の住宅街の一角にあって、かくも繁盛を続ける理由がようやく得心できました。
ちなみに、当時の取引先に立ち寄ったところ、当時専務だった現社長が運よくご在席で、短い時間とはいえ面会が叶いました。あくまで円満退職の形をとったとはいえ、取引先には挨拶もできないままの淋しい去り際だっただけに、これでようやく長年の胸のつかえが下りたような気がしています。それを含めて、経路を大きく変えたのは正解だったといえそうです。

えぼし
茅ヶ崎市南湖5-17-56
0467-86-6217
平日 1130AM-1400PM(LO)/1700PM-2100PM(LO)
土日祝日1130AM-1400PM(LO)/1630PM-2100PM(LO)
月曜定休
地魚刺盛定食1580円
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冬晴れの駿河を行く

2013-01-19 10:29:24 | 関東
眺めがよすぎてすっかり長居してしまいました。ようやく移動を再開します。現在の気温は2.5度、つまり寒風に凍えた正月と気温の上では変わりません。しかし体感温度は全く違い、上着を脱いでも軽く汗ばんできます。いかにも湘南らしい陽気です。
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冬晴れの駿河を行く

2013-01-19 09:31:41 | 関東
この展開を予想できた方はいらっしゃるでしょうか。結局東名には乗らず、第三京浜、横浜新道を経由して茅ヶ崎までやってきました。
一言でいうなら「風に吹かれて」ということです。より具体的には、昨秋以来東名経由の活動が続いてやや食傷気味だったこともあり、湘南の海を見ながら走りたくなったとでも申しましょうか。この先さらに西湘バイパスを通って南下すれば、熱海で早咲きの梅が見られるということもあり、気付けば環八との交差点で左にハンドルを切っていました。目の前には期待通りの青空と湘南の海岸線が広がり、西へ走れば中腹まで雪をかぶった富士の高嶺が。趣向を変えたのは正解だったようです。
とりあえず、小田原、真鶴、湯河原、熱海の順で適度に寄り道しながら移動し、そこから先は峠を越えて函南へ下るもよし、下田まで伊豆半島を南下するもよしといったところです。夜はもちろん清水か静岡で一献傾けます。熱海からどちらへ進むかは、やはりそのときの風向き次第ということになるでしょう。
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冬晴れの駿河を行く

2013-01-19 06:25:43 | 関東
寝坊してしまいましたが今から出ます。目的地が遠かったり、乗るべき列車が決まっていたりすれば、どんなに早かろうとも起きられるものを、そのどちらでもなかったのが無用な安心感を生んでしまいましたorz
焼津まで直行する案はこれで事実上なくなったため、沼津から東海道を下るおなじみの経路をとります。都内の気温は1度、東の空がようやく明るくなってきました。随分遅いと思って調べてみると、今季一番日の出が遅かったのは元日から13日までの6時51分で、今日はそれと比べても2分しか違いません。一方、日の入りに関しては去年の11月28日から12月12日までが一番早くて16時28分、それが今日は27分も延びます。一見すると不思議な話ではありますが、なぜそうなるのか調べ出すと東名の渋滞が始まってしまうため、前置きはこのあたりにして出発したいと思います…
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