--------------------
第一線で活躍する女性作家5人が“女性”をテーマに書き下ろした作品を、気鋭の監督たちが5本の映画に仕上げた。2002年の『Jam Films』からスタートして『Jam Films2』『Jam Films S』と発展したコンピレーション・ムービー、『Jam Films』シリーズ。映画の新しい形を果敢に模索して喝采を浴びてきた同シリーズが、さらなる新機軸を開拓したのが、5作の女性映画からなる『フィーメイル』だ。
--------------------
上記は、
公式ホームページの紹介文からの引用です。『Jam Films』シリーズの作品群を全く観たことがないのですが、5作の中の一つに塚本晋也が監督している作品がありましたので、DVDを買って観ることにしました。
つきなみな感想で申し訳ないのですが、5つの作品はどれも色が違っており、飽きずに観ることができました。DVDの特典映像を観ていると、出演者、監督、原作者たちの口からは「エロス」という言葉がやたらと飛び出しています。テーマは女性のエロス。原作者や監督がイメージするものや表現方法が、様々でした。よって「どれが一番面白かった」とかいう順位付けはバカらしいので、やりません。
5作には突き抜けて悪い作品はなく、わりと無難な出来上がりであったと思います。「一つの短編」を撮るのではなく、「5作の短編集」を作るのは、原作者や監督にとって、ちょっぴりプレッシャーになるのではないか、と思いました。「5作の短編集」では、嫌でも他の4作品と比較されてしまうからです。
「原作者は女性作家」「テーマは女性のエロス」「今時で、ちょっとオシャレな短編集プロジェクトのJam Films作品」「時間は15分か20分ぐらい」「ターゲットとなる客層は(おそらく)女性」という、“型枠ありき”の作品となってしまうのは仕方がないと思います。個人的には、監督の独自性を、もっともっと強く打ち出されて欲しかった、と思います。何を期待していたんだ、俺は。
期待の(笑)作品群は次の通りです。
『桃』
監督:篠原哲雄、原作:姫野カオルコ、出演、長谷川京子、池内博之、野村恵里、日本、2005
『太陽のみえる場所まで』
監督:廣木隆一、原作:室井佑月、出演、大塚ちひろ、石井苗子、片桐はいり、日本、2005
『夜の舌先』
監督:松尾スズキ、原作:唯川恵、出演、高岡早紀、近藤公園、日本、2005
『女神のかかと』
監督:西川美和、原作:乃南アサ、出演、大塚寧々、森田直幸、日本、2005
『玉虫』
監督:塚本晋也、原作:小池真理子、出演、石田えり、加瀬亮、小林薫、日本、2005
一つ一つの作品について感想を書くのは、少し面倒なのですが・・・
『桃』は、静と動の対比が面白かったです。一作目としてふさわしい作品であったと思います。
『太陽のみえる場所まで』はエロというよりも女性に主眼が置かれた作品でした。大塚ちひろのハイテンションな演技が見所です。この人、確かゴジラ映画で小美人を演じていた女優さんだったと思います。タクシーが空を飛んでしまう5秒ぐらいの映像は、シュールで見ごたえがあります。
『夜の舌先』は、野球でいえば「ストレートな剛速球」のように感じました。始まりの5分ぐらいを観ると最後のオチまで分かってしまうのですが、こういう分かりやすいのがあるとほっとします。高岡早紀がきれいでした。
『女神のかかと』のような作品は、男の子の子役の演技が全てであると思います。そいう意味では、森田直幸は良かったです。森田直幸に、あまりセリフをしゃべらせなかったのも功を奏していたのかもしれません。
一番楽しみでした『玉虫』は、“塚本作品”でした(笑)。映像の密度は圧倒的で、塚本ブルーも健在。BGMにも塚本風味が効かされていました。石田えりがフリフリの服を着て、渚のシンドバッドを踊るシーンは圧巻。人目では分かりにくいのですが、この『玉虫』も、感情の静と動が感じられる作品でした。