ヤマアカガエルの産卵に春を知る日

山里の日々の生活と自然、そして稼業の木工の話

下駄箱の制作その2 柿の木の製材

2013年05月31日 | 木工
晴れて日がさすと松林でハルゼミが鳴くようになりました。

草叢ではバッタがシャカシャカと鳴いています。







下駄箱の天板を組みました。





天板の上面は最後に鉋をかけて仕上げます。





扉、引き出しも付けて塗装して仕上がりです。
この家具は重い、、、









お客様の丸太を預かって物を作る仕事を請けました。

お客様のお宅の庭に生えていた柿の木だそうです。
事情があって切ることになったけれど、
思い入れがある木なので何か作れないだろうか、ということでした。






長さ120cm、直径20cmほどの柿の木です。






この冬に切ったとのことですが、ヒビが入り始めています。






この辺りに枝があった形跡があります。節が出そうです。
お聞きしたら落雷があって枝が落ちたそうです。(!)






何かの台を作りたいとのことで、このようなプランを立ててみました。


枝のあったあたりで切り、短い方で足を取り、残りは薄く挽いて甲板にします。
ただ、乾燥が終わってみないと本当に思ったような物ができるかわからないことは申し上げました。
乾燥中にヒビが出たりや虫に食われてしまうことも考えられます。
こればかりはやってみないとわかりません。
自分で買った丸太も最終的に使えるものになるかはわからないのです。
一種の博打です。







お客様の木なので失敗すると取り返しがつかないものの、やるしかありません。
男は度胸だ。えい!



まずはチェーンソーで玉切り。






それをバンドソーで半割にします。
こんな小さい丸太は製材機にはかからないのでじぶんちでやるしかありません。






切れた。
意外と重いし機械が小さいのでいろいろ大変でした。







半割にした丸太を、今度はフェンスを使って板に挽いていきます。






釘が出ました。
民家などの木にはよく釘が入っていると聞きます。
神社の木から呪いの藁人形の五寸釘とか。
狩猟の盛んな山の木から鉄砲の弾とか。
山奥の木から熊のミイラとか。
いろんな話があります。




余談ですが、
仕事を始めたころ、母校で建物を建てるために林を切っているのを見かけて、
私も「この木で何か作れないものか」と思ったことがありました。
学生時代に毎日見ていた木々でしたので、何とか使って生かせないものかと考え悩みました。
しかし、その土地は戦時中に飛行機工場だったので米軍の爆撃を受けていて、
爆弾の破片がたくさん木に入っている、という噂を聞いていました。
そんな木を製材所に持ち込んで製材して、本当に鉄片を鋸が挽いてしまうと
とんでもない修理費を払わなくてはならなくなります。
実際、製材所で石を挽いてしまって製材賃に修理費が上乗せされたことがあります。
それが怖くてその木に手を出すのは止めてしまいました。







今回の自家製材は無事に終了。
この後、一年くらいは乾かしてから制作に入ります。
気が長い話のようですが、仕方がありません。
製材してはじめて、木工の制作の時計は動きだします。


下駄箱の制作 その1

2013年05月28日 | 木工
昨日、完璧な五月晴れでした。




カメラのレンズに入ってしまったゴミが目立ってします。
仕事場で使っていて木の埃が入ってしまったから。

こんなすばらしい晴れの日はもうないかも。もうすぐ梅雨になってしまう。






10時ごろ、仕事の合間に外を見たら、まるで煙でも上がるように虫が飛び立っているのが見えました。





今年もシロアリの羽化です。

1か所で羽化が始まったと思ったら、みるみるあちこちの違うコロニーからも羽化が始まって、
工房の庭にはシロアリの羽虫がキラキラと飛び交っていました。
何かの条件があって、一斉に羽化するのでしょう。

トンボが来て飛び立った虫を食べている。
もうトンボがいるんだ!








通勤路から見える河原で雉が水を飲んでいました。
こんな派手な動物は日本では珍しいよね。






こんな鳥も来ていた。
カルガモかな?









下駄箱を作っています。







これは先日木取った天板になる板です。
長さ2.2m、幅は約50cm。
これをまず削って仕上げます。
天板の厚さが決まらないとほかの部材の寸法が決まらないからです。






機械に入らない大きな板なので手で削らなくてはなりません。
まずは板の狂いを見極めます。
たいがいの板は乾燥するときにねじれています。
このように両端に定規を置いて、透かして見て、板のねじれをよく確認してから削ります。







おおよそ仕上げた板です。
入り皮がありますが、きれいな板でした。
電気カンナで荒削りをして手鉋で仕上げます。
厚さが70mmあった板が50mmになりました。
箱物の天板になるので、ちゃんと平らになっていないとまずいんですが、うまくいきました。

このような作業にもだいぶ慣れました。







組み立て。
一度に組まず、いくつかの部材を組んでは糊が乾くのを待って続きを組んでいきます。







引き違いの扉の鏡板は厚い板を割いて作ることにしました。
その方が木目が揃うからです。
37cmほどの広い板を使うのですが、広すぎて機械を使って割くことができません。
仕方がないので手鋸を使って地道に切ることにしました。
このくらいで製材所に行くわけにもいかないです。

本当は縦挽きの刃渡りの長い鋸が必要なのですが、そんなものは手に入りません。
長めの横挽き鋸を買ってきて、それを使ってあとはひたすら根気仕事です。
1枚割くのに、2、3時間ほどかかりました。それを2枚(汗)。
組み立ての糊が乾く間にこつこつやりました。





出来た。
こりゃ大変だ。

TV台 天板の加工

2013年05月22日 | 木工
藤の花が終わって、ニセアカシアが咲き出しました。
やはり甘ったるい匂いが谷間に漂っています。



今年初めて雷鳴を聞きました。



積乱雲が工房の上に湧いています。
だんだんと湿度が上がってきて、近いうちの梅雨の到来を感じさせます。






家の裏の畑から雉の鳴く声がします。
探すと雄でなく、雌の雉が梅の木の下にいました。





通勤途中に咲くオドリコソウの群落。



工房の裏にあった鹿の死骸はすっかり白骨化してしまいました。
1週間か10日間くらいのことです。

(グロいから写真はなし)

烏だの獣だの虫だのが寄ってたかって食べてしまったのでしょう。

変人と思われるかもしれないが、自分の体もそのように自然に返るのもよいなと思っています。
今の日本ではかなえられない話ですけど。







新築のお宅に収める家具を3台ほどまとめて作っています。






これはテレビが載る台です。
長さが3.5mほどもあります。
そんなに長い板はないので、2枚の板を接いで作ります。
下には箱や扉が付きます。

私の作業台は2mありますが、それに載せてもだいぶはみ出てしまいます。






材は栗で、耳付きとのご希望。
栗のシラタは弱いので、上の写真の様に傷んでしまいます。
指でいじっても簡単にもげてしまうくらいです。
ですので少し削って「耳付き風」の板にします。





2枚の板が付くところです。
自然の耳なので、ぴたりと合うはずはありません。
削って、つながって見えるように加工します。





2枚の板をつなぐために「契り(チギリ)」を入れます。
蝶ネクタイのようなものが契りです。
本当は木口方向は契りはあまり効かないようですが、ないよりはまし。
意匠としてもきれいです。

作った契りを載せて墨をし、その墨を見て穴を掘ります。
左はトリマーで掘ったところ、右はそのあと鑿で掘ったところ。


契りはわずかに下すぼまりに作ります。
そうすると締まりながら穴に入っていくという道理です。
ワインのコルク栓が締まるような感じ、と言えばお分かりになるでしょうか?





契りは3個入れます。
厚さの半分くらい入るようにして、ここでの加工は終了。

あとは現場で家具を据えてみて、最終調整をして、最後に糊を付けて叩き込みます。



納期は月末。あと1台、下駄箱を作らないと。
がんばらなくっちゃ。

藤の花の当たり年?

2013年05月14日 | 日記
今年は藤の花がすごい。









もちろん藤は他の木を伝い登って繁茂している訳ですが、
「これ藤の木?」というくらいその木に紫の花が咲きみだれています。
そんな木が何本もあると山全体が紫色になるくらい、藤の花がみごと。
夜になると甘い匂いが立ち込めて、蜜の中でもがいているような気分になります。


山に暮らしていると、自然は毎年違った表情を見せます。
何かの植物や動物が大繁茂大繁殖したり調子が悪かったりします。
その時の気候など、何らかの条件で変動があるのでしょう。
でも極端なことにはならず、その振れは元に収束していきます。

藤が木に絡まったままの様子を見て、山が荒れてる、と山の人は言います。
人手があるときは木の生長を阻害する藤などはどんどん切ったのだと思います。
なるほど、眺めると、杉の植林にも随分藤が咲いています。
やはり過疎なんでしょう。





藤の花を撮っていたら、工房の裏山の裾に鹿が死んでいるのを見つけました。





雄の鹿。見た感じ100キロくらいありそうです。
烏が来て騒いでいる。つついている。

この辺りでは畑の被害を防ぐためにネットを張っています。
そのネットに鹿が引っ掛かって死んでしまう。
あるいは何日も逃げることもできずにいる。
そんな死を覚悟した鹿の目は、見たこともないような闇をたたえていました。





仕事話。

こんな家具を納品しました。本棚です。




階段の壁一面を覆う本棚です。
塗り壁や無垢の梁などを使った素敵な雰囲気のお宅なので、
その雰囲気を壊さないようにデザインしたつもりです。
ぴったりきっちりしたものはそぐわないし、施工も難しいので、
わざと段々に箱を作り、抑揚を付けました。

お客様が本を入れながら棚板の位置を決められるとのことでしたので、
棚板は入れずに写真を撮りました。

本が入ったらまた見にお伺いしてみたいです。



木取り作業

2013年05月07日 | 木工
五月晴れ、木取り日和。


今後二か月ほどの仕事の木取りをまとめてしています。
ベンチ・イスのセット、下駄箱、TV台、など。

工房の庭に積んである材木を降ろして検分するので、天気を気にしての作業です。
まとまった時間もいるので、半日用事があったりする日にはやりづらい。
日暮れまでの時間も気にします。
暗くなってからは屋内でできる作業に移行できるように段取りします。

今年の春はとても風が強く、雨も少ないので乾燥しています。
切った板を日光や風にに当てておくとすぐに小ひびが入ってきます。
野外で切ったものはすぐに室内に入れるようにします。






長さ3.7m、幅約60cm、厚さ7cmのクルミの板です。
会津から来た丸太でした。
これで長さ2mの下駄箱の天板をとります。

さすがにこのくらいの板になると一人では持ち上がりません。
片側を持ってずり動かす。
工房の建屋から30mの電気リールを伸ばして、
その場で丸ノコを使って切ってから工房内に持ち込みます。






2.1mに切りました。
写真ではそうでもないけれど、室内で見ると大きさが分かります。






こちらは長さ3.6m、幅約45cm、厚さ4.5cmの同じくクルミの板です。
このくらいなら何とか持てます。
重い板が持てなくなったら小物作りに転向しよう。
並べて表裏の傷、虫食いなども検分して必要な部材の大きさ+αに切り分けます。






ベンチ、椅子の木取り。
材は栗。
材木は真っ直ぐの方が使いやすく、値段も高いのですが、
曲がった物を作るのには曲がった材の方がよい場合もあります。
この椅子は幅が12cmほどの板が必要ですが、
への字に曲がっているので直材から作ると繊維が切れてしまいます。
写真の板のようにかなり曲がった板で曲がりなりに木取った方が丈夫なものになります。

逆に、真っ直ぐな板でないと、長い部材は取れません。
木の繊維をなるべく切らないよう取ることが強度を出すためには大事です。



木取りの時にはその板が家具になった時のことを想像して木を選びます。
まずは長い部材、広い部材、よく見えて目立つところに良い材を使うようにします。


一本の丸太から、みな同じような板が取れるわけではありません。
綺麗な木目は比較的皮に近いところに現れます。
しかし皮に近いところは狭い板しか取れません。
芯に近いいところは木目がやや平板で、しかも芯の割れや若木の時の枝の節があります。
一本の丸太から良い板は、ほんの数枚しか取れないのです。
結局、綺麗で広い板は太い丸太からしか得ることができないのです。
因業な話ですけど。

長い材を意味なく切って使ってしまったり、広い板を狭く使ってしまうことももったいないことです。
全く見えなくなってしまうところにいい材を使うことももったいないと思っています。
高くていい材しかない場合も困ってしまいます。
これは私の工房経営の経済的観点からも大事なことです。




そんなわけで丸二日ほど、何十枚という板を降ろし、運び、検分し、
さんざん眺めて悩み、決断し、切り、また運び、
使わない板はまた元のように積み上げてトタン屋根を載せる。
雨がぱらぱら来てあわててシートを掛けたり。
うんとこさ出た薪を片づけたり。

疲れた。
でもいい気分でもある。やり遂げた感。
酒飲みならビールでもキューっと飲むところだろう。







またこんな材の山が工房内にいくつかできた。







庭で作業中、なにか動物が歩いている。





真昼間から狸が歩いている。
病気の様だ。
まともな獣はこんな日中から人目も気にせずうろついたりしない。