ヤマアカガエルの産卵に春を知る日

山里の日々の生活と自然、そして稼業の木工の話

エレキベース 3号 4号 5号

2022年07月30日 | 楽器
エレキベース1号、2号の詳細を書くつもりが、その前に3号、4号、5号がほぼ出来てしまいました。

1号2号の詳細はまた後程。




3号です。

テーマは「普通」


いきなり5弦ベースをセットネックで作ったりしてやや勇み足でしたので、よくあるような物をやってみようということです。

主なスペックは、

国産鬼胡桃1Pボディー、国産真樺1Pネック、EMGジャズベースピックアップ。

普通のトラスロッド、チタンブリッジ、純チタンナット、チタンノブ、鬼目ナットと六角レンチボルトのボルトオンネック。

カーボン製ネックの補強材。


普通を目指すものの、少しは独自性を目指してます。
















4号です。


国産栗の1Pボディー、ウォールナットの1Pネック、突板貼りマッチングヘッド。

ピックアップ、マシンヘッド、ブリッジはguykerというメーカーの物で、中国ネットサイトで買ったものを試してます。

片効きのトラスロッド、カーボンのネック補強材入り。

















そして5号。これは力作。

国産の鬼胡桃2Pボディー、国産の槐(エンジュ)ネック。

30インチショートスケール、5弦で24フレット、チタンのネック補強材入り。

EADGCのHI-C仕様にしていますが、LowB仕様に変更も可能です。

シングルカッタウェイ、セットネック。




ネック材を指板よりも20mm程巾広にしてボディーとの接着面を増やす手の込んだ工作をしています。
前からの写真をよく見てもらうと、ネック材とボディー材の色の違いからそれがわかります。



Delanoというちょっと高価なピックアップ、シリーズ/スプリット/パラレル切り替えスイッチ。








30インチのベースはよくある34インチより10cm弦長が短く低音の出音が懸念されましたが、ネックが半分ボディーに着いているシングルカッタウェイの効果なのか、なかなかしっかり低音も出て、高音もまたきれいに出ました。

生音も良いので、高級ピックアップのおかげだけではないと思います。


槐は国産材では最高のトーンウッドではないかと思っています。叩いたときの響きが素晴らしい。

ああでも他の製作者には知られたくない…


実はこれらの楽器はやっと弦を張ったところで、このましばらく置いてネックが安定してから最終調整をした後に、ちゃんとした楽器になります。



コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ベースギター1号2号の製作 その②

2022年04月12日 | 楽器
木口が上下を向いた中層板を作ったところからの続きです。
 





補足的に木材についての蘊蓄を少々話します。


木材とは導管篩管などの繊維の束ねられたらものです。模式的にはストローが束になった様なものとお考え下さい。この構造により木材の素材としての特徴が現れます。

ストローが長くて束ねられたものなら曲げ方向の強度があるのはわかります。これが棒。

ストローを横一列に並べてくっついたものなら、横方向にはふにゃふにゃしますが縦方向に
はわりと曲がりにくい。これが薄い板。

木がストローだと思えば東海楽器がいう音の伝達が繊維方向に早いというのも頷けます。



では今回作ったこの「中層板」は何でしょうか?

モデルとしては短く切ったストローを広く束ねたものです。

短く切ったストローをまとめてくっつける作業がいかに大変かはご想像頂けるとかと思います。

またそれが形状不安定なものなのもわかります。



更に、木材の木口は板目より硬いので削り上げるのがたいへんです。

木の繊維を断ちながら削らなくてはなりません。

束ねたストローの口側を手で撫でることを想像してみて下さい。




私の今まで仕事で使って来た、板を削って厚みを仕上げる『自動送り一面鉋盤』、通称「自動」「プレーナー」ではこの「中層板」の厚みを仕上げることは出来ません。木口はうまく削れないからです。


そこで今回この中層板を作るために、新規に機械を購入しました。





サンドペーパーで厚さを決めたり面を仕上げるドラムサンダーという機械です。粒度の粗いサンドペーパーなら広い木口面を平に仕上げることが出来ます

これを使い厚みと平面を出しました。厚さは3センチ。








2台作るベースの内、1台は「チャンバーボディー」というものにしてみます。

ボディーの中に空洞を設けるとアコースティックな鳴りになると謳った楽器があります。本当でしょうか?

高くて買えないので、自分で作って検証してみます。

メーカー物では「計算された箇所にチャンバーを設けて云々」などとありますが、私のは山勘。(適当)

ボディーもだいぶ普通のものより大きめにしてみます。

鉛筆で描いた部分を切りぬきます。

中心部分はピックアップやプリッジの金具が付くので残します。






ドリルで板に穴を開け、その穴に帯鋸の刃を通してから溶接し、帯鋸盤にセットして切りぬきます。

刃の溶接は慣れていますのでこの作業はすぐすみます。





左が1号のトップとバック材の国産の楓。右は2号のバック材鬼胡桃。厚さは1センチ。
厚材から良い木目になるように木取り、ブックマッチに接ぎ合わせます。


これを位置合わせをして中層板を挟んで張り合わせます。


糊が乾いてからボディーの形に切り仕上げましたが、写真は撮り忘れました。






次はネック製作です。


試作なので、ネックも2種類作ってみます。



弦はナットとブリッジの間に張られるわけですが、弦をしっかり張るために、弦楽器はナットからヘッドに向けて弦に角度がつくようにヘッドを作ります。

指板面を水平に置いた時、糸巻きはその水平面より下にあればいいわけです。


その方法はエレキ楽器ではほぼ2種類、角度付きネックか段付きネックです。その両方を作ってみます。





これは角度付きネックによくあるスカーフジョイントを切るための治具です。





スカーフジョイントとは部材を斜めに切って貼り直し、角度が着いた部材にする工法です。


角度付きネックも様々な作り方があるようです。

今回作るのは、中心はスカーフジョイントで、その両側にへの字の材を接着し、更にヘッドの耳を接着するというもの。スカーフジョイントをどこに設けるかも様々あるようですが、今回のものは接着面がヘッドの中あるタイプです。






スカーフジョイントの接着です。逆断層みたいに見えるのがスカーフジョイント。

これ、ただ圧着すると部材が斜面を滑って力が逃げてしまいうまく着かないので工夫が必要です。






更にへの字の材を用意して、




スカーフジョイントした中心材に貼ります。





更にヘッドの耳を貼りました。スカーフジョイントの剥ぎ目がヘッドの中にあるのが見えます。





段付きネックはウォールナットを挟んだ5ピースです。角度付きネックよりはシンプルな作りです。



ネックの基礎が出来たら、トラスロッドとカーボンの補強を入れます。

トラスロッドとは、弦の張力に負けてネックが反らないようにするための鉄の棒です。
ネジを回して反りの具合も調整する機能があります。

カーボンはやはりネックの反り止めのためです。





赤いのがトラスロッド、黒いのがカーボン。






トラスロッドを調整するための溝も広げておきます。
こんなんでいいのかしら。






アメリカの楽器資材サイトから買ったトラスロッドと溝を掘るための専門の刃物ですが、なぜか少し遊びができてしまうので、マスキングテープを貼って少し太くして遊びが無いように溝に嵌めました。






説明書の通りの深さにしましたが、写真の所が出っ張ります。






仕方がないので指板を彫ってピッタリ着くようにします。

独学なので、臨機応変にやります。





これは丸鋸盤(テーブルソー)という機械です。指板にフレットの溝を切るために購入しました。

フレットを切るための丸鋸がやはりアメリカのものしか見つからず、この刃物をはめる穴が特殊な寸法で、自分の使っている似たような機械には合わないので規格の合う機械を探してわざわざ買うはめになりました。




この金属製の定規に指板を張り付けてフレットの溝を切ります。






加工はあっという間です。






型を使ってヘッドと糸巻き(ペグ)の付き具合を確認します。




端材で作ったモックと実物のペグも使って確認。




角度付きネックの方はヘッドにボディーと同じ楓の化粧板をはります。





ついでに裏にも貼っちゃいます。





裏はボリュートという突起を設けたので、板を曲げて貼ります。薄い板なので熱で曲がります。






化粧板を貼ったヘッドを整形して、





ペグの穴を開けます。






指板の接着。


指板もネックもまだ角材や平板の状態です。

その方がよく接着できるだろうという判断です。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ベースギター1号2号の製作 その①

2022年04月07日 | 楽器
ベースギターを2台作りました。






あるきっかけがあって、2年ほど前から楽器(主にベース)を作りたいと思い立ち、本を買ったりネットで調べたりしていましたが、いよいよ製作を始め、こつこつと3ヶ月ほどかけて完成しました。



いろいろ調べていると、世の中には様々な楽器があり、こんなものを作ってみたい、とアイデアも浮かびます。こんな木を使ってこう組んだらどんな音がなるのだろうか、などと想像は膨らみます。

それはいずれまた作ることができたらお知らせします。

世にあまりない自分なりの楽器が作れたらいいなあと思っています。




「資料」と称していろいろ楽器を買ってみましたが、ある時老舗のメーカー東海楽器が出している『SEB構造』という物に目が留まりました。

下のリンクをご覧ください。


東海楽器SEB




ギターのボディーの表と裏には薄い板を張り、芯は表裏に木口が向く様な向きで木を使っています。

木の繊維方向は音の伝達が4倍早いので、表裏の板に音が反射し、音が良くなるという発明です。特許取得済み。




これは木工屋としても今まで聞いたことのない木の使い方ですので興味が湧き、取り寄せて弾いてみたところ、謳い文句の通りの音の粒立ち、サスティーン、和音の響き、ハンマリングやハーモニクスの美しさなど、明らかに他にはない音がします。これは素晴らしい!



しかしです、この現代において、この楽器の情報がほとんどみつかりません。特にべースはネット検索しても買ったという人弾いてみたという人がほとんど出てきません。まず楽器そのものもほとんど見かけません。


そのあまりに変わった構造のせいか、中には「東海楽器は端材でギターを作りだした」と悪口を書く人もいます。

いえいえ、木工の仕事をする私からすれば、この構造を製作するのはとても面倒くさく手間のかかることです。



しかし、SEB構造のベースギターはなんと最新の東海楽器のカタログ(2020年 vol.31)から落ちています。ただし注文では作るらしいです。

メールや手紙でラブレターも書きましたが、東海楽器さんはもうあまりこの楽器を積極的に作る気がないような感触です。



ましてや私はできるなら5弦の24フレット仕様のベースが欲しいのですが、もともとそんな型はメーカーにも無いので注文に応じてくれそうにありません。



これは作るしかないか…


そしてベース1号2号は自分の弾きたいこの仕様で決まりました。


* この構造のギターは東海楽器が特許を持つものだということは承知しています。これを個人的に真似して作ることが特許に触れることなのかは、私には判断がつきません。いずれ東海楽器にはちゃんと話したいと思っています。いたずらに特許権を侵害するつもりはなく、むしろこの構造の楽器が世に知られて東海楽器の利益にもなることを願っています。余計なお世話でしょうけど。また、作り方工程は私の考えたもので、東海楽器でどのようにしているかはもちろん知りません。*








何よりもまず設計です。原寸大の図を描いてベニヤで型を作ります。

24フレットで、ハイポジションもストレスなく指が届き抱え易い型にします。スタンドがなくても置けるようにボディーの下側は平にします。

ヘッドは線対称型に、トレードマークを付けるために大きめに、など。



工作を始めます。


まず、手持ちの材木で、よく乾いた厚めの板を選びます。

東海楽器のSEB構造の説明イラストにある「木口を上下にした中層板」はざっくり言えば丸太を薄く輪切りにすれば得られます。

しかし実際にはそんな訳にはいきません。

丸太をただ輪切りにすれば、割れるわ狂うわでその後必要な工作に耐えるものにはなりません。そもそもそんな大きな木は手に入りません。


ではどうするべきかというと、まずは普通に板に製材して乾燥させるしかありません。

しかし、あまり厚く製材するとやはり割れる確率が上がりますし薄くしたものは寄せて広い板状にするのに手間がかります。

私の考えでは60mm厚くらいがバランスの良いところです。






ストックの中からキハダという材を選びました。

これがいい音がするはず、みたいなことではなく適切なサイズの板だったからです。


これをボディーの寸法になるように長さと巾を計算して、まず横方向に剥ぎます。

細かく説明しますと、巾はそのままボディーの巾で、長さはというと、切ってまた剥いでボディーの長さになる寸法となります。

分かりにくい説明ですが、後に出てくる写真を見れば一目瞭然です。



接ぎ合わせた厚い板を削って平に仕上げ、今度はボディーの「中層板」の厚さより少し厚めにスライスします。







それを90度倒した向きでまた貼り合わせてボディーの寸法にします。




貼る前に型を置いて確認。







ここまで来て写真で見て頂ければ、ここまでの工作の意図がわかって頂けると思います。

輪切り状のものを並べて接着しているのでこんな木目になります。

ここに見えているのは木口、生えてる木を切り倒した切り株に見られる木目です。



細かい材を貼り足してこれを作ることも可能ですが、それはとても手間食いで経済的ではありません。

また、効率を考えればある程度厚い材を用意しなければなりません。

切って貼って切って貼っての作業の繰り返しなので、時間もかかり加工の精度も必要です。






実は木工作業では、短く切った端材はどうしても出てしまい、これらは本来もう使い物にならないものとして捨てられています。

端材工作ではない、と上で書きましたが、大きな工場などで効率的にこの「端材」を利用する仕組みを構築すれば低コストでこの構造のボディーを作ることは可能かもしれません。





②に続く。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする