ヤマアカガエルの産卵に春を知る日

山里の日々の生活と自然、そして稼業の木工の話

桜花つまみの和箪笥の制作 その2

2016年05月24日 | 木工
時間のかかった漆塗りの工程が終わりました。

やっと続きが書けます。



まずはサクラの花の形のつまみ作りから。




八角形にした部材を轆轤にかけ、






丸く削って、雌しべ部分をヘソ状に作ります。







花びらの裏も削ります。

もっと細くした方が花らしいのですが、強度を持たせたいのでここはがまん。






これを花びらの絵を描き、木工ミシンで切ります。






ここまでは機械加工。






小刀ややすりを使って花びらを丸くしたり切り込みを入れ、バーニングペンで雄しべを描きます。

バーニングペンで書くとそこは凹みますので、彫刻したような効果になります。








漆を塗ればこんな感じ。










本体の方は引き出しを仕込みます。

ちょっとだけ引き出しを大きく作り、鉋で削りながら調整して入れます。













漆塗りに約二十日間。

毎日塗るわけではなく、時間をかけてゆっくり塗ります。

その方が仕上がりがよいです。






女の子のところにいく可愛いつまみの箪笥。

お贈りになる祖父母の思いをたたえてその子の人生に寄り添い、

一緒に時間をすごし、生活を豊かにする家具となれば幸いです。

長く使ってください。




主材はクリ、引き出しは桐、つまみはサクラです。

オーディオラックの制作

2016年05月23日 | 木工
工房の横の道がノルディックウォークイベントのコースになりましたので、




家具と名刺を置いて勝手に宣伝してみました。









川が近いのでカワトンボが工房に入ってきます。

網で捕まえて外に逃がします。










漆が乾くのを待つ間、もう一本家具を作りました。

オーディオラックです。





部材は三枚の板と四本の足のみです。
材はサクラ。






部材が四角いうちに仕口を作ります。

切り込みを入れて互い違いにかみ合うような接合方法です。




この仕口はすっと入るようなかみ合わせで良ければ簡単に作れます。

しかしそのような緩い嵌合度では木が痩せてきたときに隙間が出来てしまいガタガタになってしまいます。


そうならないようにするためには、少しきつめに仕口を作り、かみ合う部分を「木殺し」ます。



「木を殺す」とは金槌などで叩いて潰し、凹ませるということです。

物騒な表現ですいません。



木を殺して凹ませればきついホゾも組み立てることができ、

糊を吸うと凹んだ木が復元し、それでもぎっちりと押さえ合うので木が痩せてきても隙間ができにくくなるのです。








先に、木殺しをするとどのくらい木が凹むかを調べます。

0.5mほど小さくなるということがわかりました。









機械加工で1.5mmほど厚く仕上げ、プラス0.5mmの厚さになるようにノギスで測りながら鉋をかけます。

厚みを決めながら表面を仕上げるのです。







かみ合う部分だけ玄能で叩いて木殺しします。







すべての仕口を調子をみながら組んでみます。

入りにくければさらに叩いて木殺しします。







すべての接合部を調整したら形の成型、面取り、研磨などをして部材を仕上げます。






組み立てです。

この組み立て作業は実はなかなかの難易度です。



糊を付けて圧入した時に少しきつくなるように調整した仕口が12か所あり、

その寸法の遊びは全くないので、それをきっちり合わせて短時間で組み上げなければなりません。

足も大きく丸く面取りをしてあるのでプレスする力が逃げてしまうのも難易度を高めます。







さすが硬いサクラ材、組み立ての時にバンバン叩いたりぎっちり締め付けても傷が付きませんでした。








今回は塗料も指定がありました。


このオイルは米糠が原料で安全性が高いらしい。

粘度が高く、従来のオイルより塗りにくいです。

匂いはほとんど無いです。







オイルを塗って仕上がり。

綺麗な木目のサクラ材でした。リボン杢とでもいうのでしょうか。






こんなディテールです。


ミズナラのセンターテーブルの制作

2016年05月19日 | 木工
出来あがった木地に漆を塗りながら、次の物を作っています。

漆塗りは午前中には終わりますので午後は工作をします。







製品で持っていたベンチをお求めになってくださったお客様からセンターテーブルもご注文いただきました。

国産ミズナラ材のベンチに合わせるテーブルですので、当然同じ材で作らねばなりません。



国産のミズナラは枯渇してしまったのか、市場では本当にとんと見かけなくなりました。

昔仕入れた、割と大きな板の在庫が何枚もあるのですが、ミズナラの引き合いは何故かしばらくありませんでした。






この板は幅が80cmあります。

しかし真ん中にヒビがあります。



ミズナラは出来たものはきれいですが、扱うにはなかなか難しい木です。

板目に製材するとほとんどの物が乾燥中にヒビが入ります。

柾目に製材すればヒビはずいぶん入りにくくなります。

そんなことも知らず、欲をかいて広い板目に挽いてしまった頃の仕入れですから、10年以上は持っている板です。

ずいぶん授業料を払いました。














今回使うことにしたのはこの板。

幅は最大75cmくらい。

真ん中に一筋だけヒビがあります。

板目のミズナラにしてはヒビがない方です。



お客様の要望は幅が50cmくらいでしたが、ご相談したらこの広い幅でもよいとご承認いただきました。








厚さは6cmほどですがだいぶ暴れています。







裏を平らにしてから表側に厚さを決める墨をかけてみました。

波打ってますね~。







だいたい仕上げました。

4cm厚の仕上がりです。

面白い杢が出たよい板だと思います。

虫食いやシミもありますが、それを気にさせない味があります。

年輪を数えたら、この板にあるだけで150年です。

この板はまだ外側の方ですので、樹齢は300年くらいの木だったのかもしれません。

おー、すごい!今時。








こんな木目です。





ヒビには割れ止めの蝶々を入れます。

裏にも入れてあります。






足に使った板には虎斑(とらふ)杢が出ています。

虎斑が出るのは柾目に挽いたからです。






こんな足が付きます。

華奢な気もしますが、使っていて邪魔にならないように配慮したつもりです。



レンジ用のキャビネットの制作 その1

2016年05月17日 | 木工
よい季節です。


川ではカジカガエルが鳴き、晴れると杉林でハルゼミが鳴きます。

雨の湿り気の残る空気にアカシアの花の甘い香りがします。





おが屑をうまく燃やす方法を編み出しました。


木はどんなものでもどんどん燃えると思う方のいるかもしれませんが、
形状によってはなかなか燃えないものです。

特に細かくなったおが屑は燃えにくいものです。




それを、



ストーブに太めのパイプを入れてその上におが屑を詰めます。
ぎゅうぎゅうと押し詰めます。





パイプをそおっと抜きます。



その穴の入り口にマッチで火を着けて扉を閉めます。





煙突効果でふいごで吹いた様にぼうぼうと燃えて、あとはノータッチできれいに燃えてしまいます。

燃えるときに空気の流れがいかに必要かがわかる事象です。







電子レンジを載せるための戸棚を作っています。
材はケンポナシ。

電子レンジ台にしてはちょっと凝ったものです。





こんな図面です。
猫足で、奥行きが60cmほどあります。




今回は特にお客様から仕口の作り方のご要望がありました。





板の横に猫足を付ける、いつもよくやるデザインですが、このようなほぞで接合します。

猫足と板はご覧の様に平らではないので、付けてしまうとホゾを加工するのが困難になります。

猫足の部材、板の部材を別々にホゾの加工をして、導付き面を合わせて接着しました。






天板にも穴をうがちます。

合わせてみればこんな感じ。






ホゾと穴を鑿などを使って調整して仮に合わせてみます。

これを圧着すれば組み立てできるはず。






今回は漆を塗ります。
しかも、途中まで部品塗りします。



部品塗りにする理由は三つ。

奥行きがあるので棚の中が塗りにくい。
裏板が無垢。
綺麗に仕上がる。


裏板を嵌めてから塗ると、板が痩せてきたときに塗れてない白いところが出てきてしまいます。


部品塗りの方が組んでから塗るよりきれいに仕上がります。
入隅の拭き残しなどがないからです。


組んでから鉋をかけて平らにするようなデザインではできない方法です。

塗ってから組み立てるので傷を付けないように気を使うので大変ですけど。









部材が付くところをマスキングします。





扉も部品塗りにして後で組みます。

普通はすべてを作って扉を仕込んでからで塗るんですけど。

組み立てた後に扉を付けるときに少しは削らなければならなくなるとは思います、たぶん。

削ったらしょうがない、また塗ります。







漆を塗り始めました。


このまま4回ほど塗ってから組み立てます。



樹木の観察

2016年05月14日 | 木工
一件納品に行きました。



扉を取り換える仕事でした。



高さが2.3mもある大きな扉です。

これを作るための良材を入手するのが大変でした。
クルミ材です。


横手の框、鏡板などは上の方は細く小さく、
下に行くにしたがってだんだん大きくしてあります。

上を小さく下を大きく作るのは見た目の安定館を意図したものです。






こんな取手です。

材はブラックウォールナット。














工房に行く途中、雉の雄がいました。





すぐ近くに雌もいました。

求愛中でしょうか?

邪魔をしても悪いのでさっさと通り抜けます。










今年は藤の花が沢山咲いています。

あたり年ですね。






通勤路に大きな花びらが落ちていました。






見上げると確かに朴の木が生えています。






同じく道路にカエデの実が落ちています。
イタヤカエデでしょうか。

こんな風に実がついています。





このカエデは空き家に生えているのですが、秋にはよい色に紅葉します。

実もこのように赤いのですね。






やはり通勤路の脇に変な実の付いた木がありました。

図鑑で調べたら、なんとシオジでした。



シオジは上野村特産の樹木で、材としてもよい木です。





幹はこんな木。

知ってみると、周りに何本も生えているのを見つけました。

材に使うにはまだ細いですけど。



木工屋は板を見れば樹種がわかるのに、樹木を見るとわからず、

山で伐採をしている人は立木では樹種がわかるのに板になるとわからない、というのは

当業界では有名なジョークネタです。