ヤマアカガエルの産卵に春を知る日

山里の日々の生活と自然、そして稼業の木工の話

座敷用テーブルセットの制作

2015年06月27日 | 木工
今日はあちこちで夕焼けがきれいだったようですね。








今年も蛍が飛び始めました。
毎年律儀に同じような時期に出ます。ホタルブクロも咲いています。


写真はないです。うまく撮れない。




ヒグラシの声も今日、今年初めて聞きました。
だんだん夏に向かっていきます。




オオムラサキも飛び始めました。

木に止まったところをうまく網で捕まえることができました。





ビニール袋に入れて撮ったので、白く濁った写真になっています。
さすが国蝶!
ゴージャスですな。






これもある意味夏の風物詩、工房に入ってきたオオスズメバチ。
重低音の羽音はど迫力です。
網で捕えて外に出します。
腰が引けておっかなびっくりで、写真もやっと撮ってます。






これはヤマトシリアゲムシ。
口が長く、お尻にハサミがある変な虫です。

虫の図鑑を見ていて、こんな変虫がいるんだなーと思っていたら、気を付けてみると結構草むらにいるのを見かけます。
今までもいたのであろうに、私が気が付かなかっただけらしい。




もう一点だけ虫ネタ。


ヨウシュヤマゴボウにカメムシが群れていました。



(虫の嫌いな人ごめんなさい!)


何日もこうして集団で交尾をしています。






図鑑によると、ツマキヘリカメムシかオオツマキヘリカメムシらしい、、、
判別できません。






さてやっと本題。


7月15日から20日まで群馬県庁で催事があります。

群馬県ウッドクラフト作家協会の主催ですが、今年は発足20周年の記念の催事となるので例年の倍の規模での開催になりました。

そのために出展する物を作っています。


私の課題は「クリ材の和室で使うテーブルセット」。



畳の上で使う椅子の特徴は「畳摺り」があることです。
「畳摺り」とは畳を傷つけないためのソリです。



新たに椅子の形を起こすのにあたり、自分なりの課題をもうすこし持ちました。

一つはなるべく軽いこと、もう一つは歩留まりの良いデザイン。


いつも作る椅子は、物にもよりますが、幅12cmほどの材を切り出して曲線のある部材を作っています。
これだと材料としても厳しいし値段も当然高くなります。

なるべく細くて薄い材を使い、すわり心地を犠牲にしない椅子を作る、というのが課題です。







図面を何枚も描いてさんざん検討し、採用に至ったのがこの下の方の物です。






材を揃えました。


3cm角が足、幅15cmの板が一番大きな材で、それは背もたれになります。






この椅子のデザイン上の一番の特徴はこの背もたれです。

この部材は直立する後ろ脚に付くので、背中が当たる部分を角度を付けて斜めにカットして、背当たりをよくしてあります。

3cmの厚みの板を斜めに削ぐので、ご覧の通り上辺が弓なりに切れてしまいます。
それをあえてデザインにしています。そのつもり。






部材の加工が終わりました。
この椅子の仕口はすべてDOMINOという機械を使ったダボで組み立てます。






組み立て。






クランプを外しました。

肘掛け付が二脚、肘掛け無しが二脚のセットです。


これを塗装し、座面を紐で編めば完成です。




やや地味だったかな、、、



この後テーブルも作ります。


茶道具入れの作り直し~お蕎麦屋さんの納品

2015年06月19日 | 木工
今から15年~20年ほど前にお作りしたお客様からご連絡がありました。

お作りした茶道具入れの作り直しのご依頼です。
お部屋の改装に伴い、使い勝手に変更ができての改作です。


昔のお客様からまた声をかけていただけることは大変嬉しいことです。

お伺いして、お互いの暮らしぶりやご家族の様子などの話しに花が咲きます。
「痩せたました?」といわれてしまった、体重は変わらないんですけど、、、





これが昔お作りした家具。中に茶碗や茶筅などの道具が入ります。


茶道具は木工界でも大事な一分野ですが、私は茶道は全くの不案内です。
寸法とか材とかに決まりがあるそうで、その作法が恐ろしくて逃げています。
この時はいろいろお伺いしてお作りしました。

材は杉で浮造り(うずくり)をかけ、荏油を塗ってあります。
つまみは黒柿です。



私の普段の仕事では杉はほとんど使いません。
いろいろ手を尽くして杉の良材を苦労して入手したことを思い出します。
その時の杉が全く使うことなく在庫で残っていて、時を経てまた同じお客様のもとに行くことになりました。






これがうずくりです。クロツグという棕櫚の仲間の繊維を束ねたものらしい。
面白がって刃物屋で買ってあったものが役に立ちました。

これで木目に沿ってごしごし擦ると木目が風化したような風合いになります。





照明を工夫してどんな加工効果があるかがわかるように写真を撮ってみました。






四枚の扉はこのように開きます。




二枚の方はふつうの観音開きです。

どちらも金物の蝶番ではなく木ダボを支点に使っています。





それを、どちらも右側だけ、扉が外れるようにダボを切り、マグネットで付くように作り替えました。







小さいものを一点だけ、新しく作りました。
上に載っている横長のもの。

時間を経て色が変わっているとはいえ、同じ丸太の材を使ったので、まあまあ同じような色、木目に仕上がりました。






約一月半かかったお蕎麦屋さんの家具も無事納品が終わりました。


トラックを借りて朝から積み込み、デパートの食堂街なので営業の終わる夜10時過ぎからの納品でした。

納品作業が終わったのは夜中の1時、思ったよりは早かった。
家に着いたのは4時。もう鳥が鳴き始めていました。



改装に関わった業者として開店前のレセプションに呼んでいただいたので、一日置いてまた上京しました。







西新宿を見下ろす絶好の立地。
白い塗り壁、鉄線細工の洋風の扉を開くと大谷石の腰板。

お蕎麦屋としては冒険的な内装です。



お食事を頂きながら社長さんや店長さんにいろいろとお話をうかがいました。


歴史ある店でありながら、その伝統に胡坐をかくことなく新しい味に挑戦していく強い情熱を強く感じます。
クラシカルなお蕎麦屋の内装ではその気持ちを表現することはできないということです。
このような改装にすることは内外からも懸念する声もあったそうです。


このような事業にささやかながらも携わる機会を持てて、本当に幸福だと思いました。


私の作った椅子やテーブルで多くの人々が幸せな食事をし、語らい、関係を育む。
それを思うと家具を作る仕事を選んでよかったという思いがこみ上げます。

さまざまな出会いを経てこの場にいることの不思議さを感じます。






日が落ちて、高層ビルににも灯が入りました。




お世話になったからいうのでなく、美味しいお店だと心から思います。

近くに行くことがありましたら食べに行ってくださいませ。



総本家 小松庵 新宿高島屋店

↑ウエブサイトの写真は改装前です。(2015年6月19日現在)


お蕎麦屋さんの椅子の制作 終わり

2015年06月07日 | 木工
組み立ての続き。





背もたれの部材を並べて木目合わせをします。







横方向の組み立てをします。最後の工程になります。


一脚組むのにクランプが四本必要になるので一度に組めるのは七脚くらい。
組み立てて糊が乾くのを待ちながら次の部材を加工し、という風に作業をしていきます。

そのセットを一日に二回できるかできないかくらいです。






最後の組み立てを終え、クランプを外しながらラックに戻して組み立てが終わりました。






さて、塗装です。


前回、このような仕事をしたのは去年の冬でした。

冬は何しろ寒くて、塗料の乾きが遅いので困ります。
その点、今回は工期が5~6月で気温が高く、まことにやりやすい。
確か去年は一脚一脚外に持ち出して塗り、塗ったらまた部屋に戻すというような塗り方をしました。
それでは物を動かしている時間ばかりかかって、効率が悪いので、
今回は外に並べておいて一気に塗りあげることにしました。
気候が良い時だからできる方法です。





テーブルを塗った時と同じような台を準備します。





そこにずらっと椅子を並べ、端からどんどん塗料をスプレーで吹いていきます。


晴れた日の直射日光の下、風もあり、もうまるで乾燥機の中にいるように塗料はあっという間に乾きます。
そんな乱暴なことをしていいんでしょうか。まねしないでください。




端から塗っていくと、最後の物を塗ったころには最初の物はもう乾いています。

そしたらコロコロと向きを変えてまた端から塗っていきます。





ウレタンのガン吹きで最も問題なのは液だれです。
垂直面に塗料を吹き付けた時、表面張力を超えると塗料が垂れて玉になります。
それを防ぐには一度に過度に塗料を吹かないこと、
または水平面にだけ塗ること。
水平面ならばかなり塗料を置いても垂れることなく塗膜が形成されます。

今回はまめに椅子の向きを変えて水平面を主に塗ることで、
液だれを防ぎながら厚い塗膜を作るように工夫してみました。


お店でしばらく使ったものを目にすると、家庭用の物とは違う制作上の留意点が見えています。
業務用は飲食店ですので、お客様は靴を履いています。
そのため、どうしても椅子やテーブル足は靴で蹴飛ばされますので黒く汚れます。
今回は椅子もテーブルも特に足をよく塗って塗膜を厚くするようにしてみました。





下塗りに一日、磨きに一日、そして上塗りに一日。

予報は晴れでも雨は心配です。
塗りを始めると食事もそこそこに作業を進めました。
晴れているのと雨降りなのでは全く作業効率が違います。
疲れるがしょうがない。


なんとか梅雨入り前に滑り込みで仕上げることができました。





ウレタン塗料も硬度が出るのに何日かかかるらしいので、重ねたりせずに安置しておきます。


納品の日も決まりました。

当初、ぎりぎりの工期かと思いましたが塗装のための天気に恵まれたのと、
五日ほど納期が遅くなったので一週間ほど余裕をもって仕事は終わりました。



やれやれ。