ヤマアカガエルの産卵に春を知る日

山里の日々の生活と自然、そして稼業の木工の話

藤の実

2014年01月30日 | 日記
日中、冷たい北風が吹き荒れて、夕方には止みました。

風は止んだはずなのに、工房に迫る山の森からはポキポキと小枝が折れるような音が聞こえてきます。
庭に出て耳を澄ますと森全体からその音は響いてきます。
鹿が歩いていて枝を踏みしめる音なのかと思いましたが、音は木の梢から聞こえてきます。
そして時折、屋根にカラカラと何かが落ちてくる音も聞こえます。
屋根の上には木の枝はかかっていないので、小枝が折れて落ちてきているのではないはずです。

これは怪奇現象?天狗でもいるんじゃなかろうか?


しばらく原因が分からず、不思議でしたが、ある本を読んで疑問が氷解しました。


鴇が刻むかたち ~樹木から集落まで~  奥村昭雄




音の正体は藤の実でした。

以下は本の内容と私の経験からの話です。



藤の実は冬に乾燥が進むと鞘が割れ、捻じれる力を内包した鞘が数十メートルの距離まで実を飛ばすのだとか。

なるほど、乾いた北風が吹いて、その風がやんだ後も乾燥が進んだ鞘が次々と弾け、
かなり離れた私の工房の屋根に種を飛ばしていたのがあの音の正体だったのです。







こんな感じに藤の実がなっていますもの。





そういえば、昨年は見事な藤の花の当たり年でした。

2013年5月14日







藤つるの下に行くと、なるほど鞘がたくさん落ちています。







脚立に載って、いくつか鞘を収穫してみました。
とても硬いもので、仕事で使う小刀も刃が立ちません。

クルミを割るような要領でベンチで挟んでみると、
パカッと割れて、割れはじめるとすごい力で鞘が弾けてしまいます。
この力で種を飛ばすのですね。






割れました。種が並んでいます。






しばらく置いておいたら捻じれてきました。






本にあるように、炒って食べてみたらおいしかったです。
酒のツマミによさそう。お酒は飲まないけど。
たくさん食べると毒だそうです。



この本を手に取ったのは、奥村氏の下記の本が私の座右の書だからです。


樹から生まれる家具


奥村さんはおととし12月に亡くなりました。
安らかにお休みください。
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店舗の椅子の制作 3 

2014年01月28日 | 木工
椅子ができました。



塗装して静かに並べてオーバーナイト。


塗装は水性のウレタン。ガン吹きです。

ウレタン塗装というとトルエン・キシレンなどの有機溶剤、いわゆるシンナーの匂いを思う方もいるかと思いますが、
この水性のウレタンはほとんど匂いがありません。
匂いがないので、極端な話、今日塗ってあした納めても匂いとしては問題がありません。
有機溶媒系の物だとかなり長い間匂いが抜けなく、
納品を急ぐと飲食店ではクレームが出ることもあります。

この塗料ですと水性ですので機器も水洗いでOK。
本当に良いです。

もっとも普段作る家庭用の家具はほとんどオイルフィニシュです。






集合写真だとわかりにくいので。こんな椅子です。

納品まで倉庫に入れておきました。






椅子を作り終えての感想を少々。


私のような一人工房で40数脚の椅子を作るのは珍しいことで、
少量多品種を注文生産しているのとはいろいろ勝手が違いました。

まずは仕入。
今回のお仕事は店一軒分の家具ということで、
実はほかにもこのブログには載せていない物もあります。
これだけの家具を作るための材を集めるのはなかなか大変でした。
大変というのは、そもそも最近の業界の事情で材木が入手できないこと、そして経済的なこと。
資本力のない私にはそれだけの材を買って備えていることはなかなかつらいことです。

数が多いので当然工期は長くなります。
一つの工程にかかる時間も長くなります。場所も多く取られます。
いつものような仕事ならば、同じ厚みにするものなら一緒に機械を通すところを
分けて機械にかけないと取りまわせないようなことになります。
いつもとちがう工夫が必要で、工程の組み方から考えなおしました。

そして飽きてしまうこと、疲れること。

同じ作業が延々と続くのは正直苦痛です。
労働の奴隷にならないことは私の人生のテーマなのですが、今回は仕方ない。

ある工程が始まるとき、まずはその作業をどのように進めるのかをよく考えます。
こう置いて、この印を上にして加工、そのあとはこう並べて置く、などと。
そして加工作業にはいったらあえて物を考えずその作業に集中する。
考え事をすると間違えるから。
監督する人間と、それに従う作業員を私ひとりで演じ分けているような感じ。

一つの作業が続くことは肉体的にも苦痛です。
同じ動作で磨くことに2日とか、スプレイガンを半日使うとかすると
その動き自体は最初は大したことがないのにずっとそれをしていると体が悲鳴を上げてくる。
疲れが蓄積する。
数ものを作ることの大変さを知りました。
でもまたこんなお仕事が来たら、、、請けるでしょう。
















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店舗の椅子作り その2

2014年01月24日 | 木工
火曜日の朝、うっすら積雪。




これは自宅の上を通っている小道。
たぶん、まだ車などがなく、人や馬が歩いていたころの古い道だと思います。
田舎なのでそんな道がまだ残っています。

予報は雪でしたが幸いにほとんど積もりませんでした。
雪かきのために早起きしたけれどその必要がなかったので、早朝散歩。






さて、匠平工房さんとの協同制作の大テーブルが終わり、また椅子の制作に戻りました。






テーブルの作業が終わったあとの夜にも椅子の加工はこつこつと進めてきました。
もうあまりにも部材の数が多く、集合写真も撮ることができません。









部品はなるべく刃物で仕上げます。
平らな面は鉋を掛けます。曲面は鉋は無理なのでサンドペーパーで磨きます。






面取りもなるべく鉋を使います。
刃物を使った方が結局早くてきれいに仕事が終わります。






組み立てはまず左右の部品から。






今回はあらかじめ決めておいた左右のペアの組み合わせを崩さず順番に組んでいきました。
これは数が多いものを組み立ててゆく上での段取りを考えのことです。
最後の方が組み終わる頃には最初に組んだものの接着剤が良く乾き、すぐに次の組み立てに入れるようにです。






組み立ての二段階目、前後の座枠、座面、背もたれを一緒に組んでいきます。





持っているクランプを総動員しても一度に9脚までしか組めません。
9脚を組み立てて、糊が乾くのを待つ間に次の分の部材を仕上げてまた組む、という工程で進めていきました。





作業の邪魔になるので、組み立てた物は工房の隅に積み上げておきます。
この写真には27脚写っています。
作っている数は44脚なのでまだあと17脚。





接着剤はPIボンドという銘柄の物を使っています。
白い主剤と茶色い架橋剤を100対15で混合して使います。
今回は思うことがあって、秤で正確に量を計って使いました。





なにしろ寒いので、湯煎してから使ってみました。
化学反応には温度が必要です。




組み立ては終わりました。残るは塗装です。


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大テーブルの制作 2

2014年01月15日 | 木工
先週少々降った雪が踏み固められて、通勤路がアイスバーンになっています。




ここを自転車で通るのはかなりキケン!





川も徐々に凍り始めています。







さて、大テーブルの制作も佳境に入りました。





天板の加工がほぼ終わりました。
5枚の板を組み合わせてあります。
長さ5.1m、横が3.1m。






一番苦労したのがこの「枝」が付くところです。
枝側に外アール、幹側に内アールを付けて接合しました。
自然の耳をそのまま使った板を組み合わせていますので、その不規則な形どうしをどう合わせるかが悩むところです。






そのアールの接合面を加工するのにはまず、
1枚のベニヤに大きなコンパスで円周を描き、その線を切って完全に合う雄雌の型を作ります。
その型をそれぞれの部材に当てて、ベアリングの付いたルータービットで切削します。
そうすればぴたりと合う接合面ができます。(できるはず!論理上は)
写真は内アール側を加工したところです。





こちらは枝側、外アール。






接合面を作ったら結束する金具を入れる穴を掘ります。
部材が集中する「枝」付近の裏はこんなに賑やか。






頼んでおいた足になる丸太も届けてもらいました。
ケヤキなどの重い木ですと制作、搬入が困難になると考え、今回は桐の丸太にしました。
以前丸太を買いに行った際にそこの業者さんに相談して買ったものです。
その方のアドバイスで芯をチェーンソーで抜いてもらい、その後製材機で高さを揃えてもらいました。
丸太の芯を抜くと軽くなり、割れも抑えられ、乾燥も進むので一石三鳥です。
それでも十分重い。太いものは二人では持ち上がりません。
コンクリートの床の上でずり動かそうとしても、体重の軽い私では靴が空回りをしてしまいます。

この桐の丸太の表面を磨き、バーナーで焼き、また磨いて仕上げます。
きれいなようでも傷や割れなどがあります。
傷を削り取ったり、割れに糊を入れたりと、補修が必要です。
そのようにお店でゴミが出ないように処理しますが、自然の味がなくならないようにも気を使います。






丸太の足を、どれをどの向きで使えばかっこよくなるかも検討します。
建物の図面を見て、お店に来たお客様がまず見える姿を第一に考えます。

板の下に足を差し込み、板を台から降ろしてみました。
この作業は現場での作業のリハーサルでもあります。

テーブルの板に塗料が載ればもっとしっとりとした色になり木目もはっきりして、きれいなものになるはずです。



ちょうど施主さんも東京から見にいらして下さり、とても気に入っていただけたようです。
お店の内装もとても素敵そうで、出来上がりを想像するとワクワクします。
しかしちゃんと収まるまではドキドキです。














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大テーブルの制作 その1

2014年01月08日 | 木工
夕方降り出した雨が夜10時ごろみぞれになってきました。
明日は雪はきなのだろうか、、、












椅子の制作はまだまだ途中なのですが、年明けから予定していた大テーブルの制作が始まりました。

この大テーブルは、村内の木工仲間の匠平工房の宮島さんの工房で共同制作します。
匠平工房さんの仕事場は私の工房よりも広く、
宮島さんは私よりも腕がよく経験豊富なので、このような大仕事を受けたときにはいつも頼りにしています。
そもそもこのテーブルは長さが5m以上もある大きくて重いものなので、
一人で制作・搬入ができるようなものではありません。
私の工房では狭くて制作不可能です。








暮れに材が運ばれてきました。材はトチです。
長いものは4m以上あります。







まずこれを並べて検分します。
どの板をどう組み合わせれば最もかっこよくなるか?
ここでの判断が大事です。








ふたりで半日ためつすがめつし、板の使い方を決めて、切るものは切って、並べて置いてみます。
今回調達できた板ではテーブルの幅には足りないので、ご覧のように組み合わせて作り上げます。
こうして置いてみると全体の姿がわかります。
長さは5.2mほどで、トの字ように2mほど枝が出でいるようなテーブルです。
縁を少し膨らませて抑揚をだしたり、必要な寸法になるように微調整をしたりして、切る墨を掛けます。








おおよその大きさに板を切ってから、板を削っていきます。
板の狂いを見ながら平らに厚みをそろえていきます。
この作業は電気カンナや手鉋を使っての地道な工程です。

1日半かけて5枚の板を削りあげました。







作業3日目、削った板を組み合わせる作業が始まりました。
まず2枚の板の木口を合わせて長い甲板を作ります。

この写真の板は現状5.6mほどあり、最後に長さを切ります。







板を組み合わせる部分はご覧の様です。これは裏側。
これはもちろんバラバラで運送し、現場での組み立てができるように作られます。







これはカウンタージョイントという金物です。
穴を穿ち、この金物を挿入してネジを締めて結束するしくみです。







連結して、隣の板が付くように直線に切ります。
まずは丸鋸で少し切り代を残して切り、
その後は定規を当ててルーターで仕上げます。




体があちこち筋肉痛。




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