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小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(26)&CG

2008-07-30 03:08:06 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(26)&CG

美保は京平の陰に隠れるように言うのだった。見ると街路灯に照らされて見えた男は茶髪で女好きする顔をしていた。
「あの顔に騙されるのか、いったい何処へ行くんだ」。
「決まってますへ、祇園へ出掛けるんへ。私達も行かはるでしょう」。美保は自分でも気がつかない内に京都人に戻っていた。
そして急いで公園を出ると茶山駅に向かった。切符を買うと調度良く電車が入って来た。乗り込むとクーラーが効いていて汗ばんだ身体には心地よかった。
「美保、胸のボタンが外れているよ」。
「困っちゃう」。谷間には汗が光っていた。慌てて手で押さえてとめていた。
そして三条駅で下りるとムッとした風が身体を包んだ。
駅を出て祇園の繁華街を歩いた。そして何軒もの駐車場を見て廻ったが、真田のベンツは見付からなかった。
「とても無理ね、何か良い案ないかしら」?
「呼び出すしかないな、きっと奴は二人を殺している筈だ。警察が自殺と断定したんだ、そう簡単なトリックじゃないだろう。
こうしよう、僕が電話して威してみる。俺は知っているぞ、トリックを警察に知られたくなかったら金を用意しろって」。
「カマ掛けはるの、でも乗って来るかしら。したたかよ真田は」。
「警察には知らないと言い張ればいいけど、顔も声も知らない男から言われたら誰でも微々るさ。それも出来たら友代さんが幾ら位献いで捨てられたのか分かれば余計いい。美保は知っているの」?
「うん、確か三百五十万だったと思う」。
「よし、その倍の金額を要求しよう。それで亡くなったのはいつ」。
「もう一年半になるわね、二月十日だった。前の晩から冷えて寒い日だった、東山の宝山公園で半分雪に埋もれて亡くなっていたの」。
「分かった、その事を話そう。それで殺したトリックが分かった事にしよう。白を切るだろうけど、きっと聞くだろうね、どうやって殺したかって。
携帯じゃまずいから公衆電話からにしよう。家に電話して携帯の番号を聞いてくれないか。男より女の電話のほうが親も安心して教えてくれるだろうから」。
「え~っ、私が聞くの。でも何て言うの」?
「適当で良いよ、京都弁が良い。名前もでたらめで良いから」。
美保は口を真一文字にして渋い顔をしたが電話ボックスを探して二人で入った。
そして電話帳から真田医院を探して電話を掛けた。すると宿直の医師が実家の電話番号と貴明の携帯の番号を教えてくれた。
「なんだ、簡単だったね。今度は京平さんね。番号を押すわよ」。
美保は受話器を私に渡すと、聞いた携帯の番号を押した。一回二回三回とコールしていた。「はい真田です。誰っ」
私は美保にOKサインを出して頷いた。
「真田か、俺見たんだけどな。あの晩舞鶴で高橋幸子と一緒にいる所を。お前を二年も追っ掛けていたんだ。ああやって二年前佐々木友代も殺したのか」。
「な、何を、し知らない。俺は何も知らない。言い掛かりは止めろ」。
「そう、じゃあ警察に行くよ。じゃあな」
「まっ待て!・・・、待ってくれ。誰だ君は?・・・」。
「お前のトリックを見破った男さ、佐々木友代から献いでもらった額の倍、七百万で手を打とう。取り合えず半分、明日の晩までに用意しておけ。誰かに話したり知らせたりしたら警察に行く。
それから、さっきも刑事が三人来ていたな。お前を昼夜見張っているからな。明日の晩家に電話するから出掛けるなよ」。
「は、はい。でも誰なんだ、友代も幸子も自殺したんだぞ」。
「そうだな、警察ではそう言う事になっている、だったら取引は止めだ。警察に全部話して来るよ」。
「待って下さい、分かりました。明日金を用意して待っています」。
「ああ、その方がお互いの利益になる。明日電話する」。
真田の声はワナワナと震えていた。私は二人の女性を自殺に見せ掛けて殺したと事を確信した。
「ねえ、どうだったの。真田の奴認めたの」?
「声が震えていたし、まず間違いないよ。明日の晩電話する事にした。金を用意して待っているってさ」。
「やっぱり友代も殺されたの。それでどうするの」。
「此々じゃなんだからホテルに帰ろう。途中で地図を買って帰ろう。詳しい打ち合わせはそれからにしよう」。
タクシーを拾うと書店に寄った。そして東山地区が詳しく載っている地図を買うとホテルに戻った。
すると、公園のベンチの位置から遊歩道まで詳しく書かれていた。
「美保、お母さんから車を借りられるか?・・」
「うん、それは良いけど。でもレンタカーを借りたら」。
「いや、レンタカーはナンバーでバレルし他県の人間が借りると目立つから駄目だ。九日の夕方借りてくれないか」?
「え、明日じゃないの」?
「うん、少し焦らすんだ。それで全額揃えさせる。少し恐ろしさを味あほせてから始末する」。
「えっ、でもそんな早く始末していいの」?
「うん、警察は高橋さんの死は自殺でけりを着けた。もう真田の所へは調べに来ないと思うけど、一日様子をみよう。
明日、十日の朝一番の新幹線の切符を手配しておこう。それからテープレコーダーが欲しいな、アリバイ工作に使いたい。
それで、当日だけど、昼間は軽く出掛けて真田の家の様子を見て来よう。帰ったらホテルから出ないようにするんだ。
ホテルの人間に僕達は出掛けないと思わせる為にね。それで、美保はホテルに残って僕のアリバイ工作をしてくれないか。
十時になったらルームサービスを頼んでワインとカナッペを二人分取ってくれ。
その時にテープレコーダーに吹き込んである僕の声をシャワー室から流してね。そのタイミングはドアロックを外す直前にテープのスイッチを入れて欲しい。勿論シャワーも流してね。
僕は誰にも見付からないようにホテルの非常階段から出る、それで東山に行って十時に真田を始末して帰るから。
帰ったら二人でホテルを出て車を返しに行こう。
東山まで三十分、往復に一時間。もうホテルの非常階段は見て調べてあるから。誰にも見られない事も分かったから」。
「もう~京平さんったら。凄い計画だね。でも真田は誰にも話さないかな。中間を呼ぶかも知れないよ」。
「そんな事はバカでない限りしないさ、もし仲間を連れて来るにしても何て説明するんだ。そんな事をすれば逆に自分の弱みを握られる事になるからね、絶対にしないさ。こう言う事は人数が少なければ少ないほど自分の身は安全だからね。奴は一人で来るさ」。
NO-26-66

小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(25)CG

2008-07-30 03:03:00 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(25)絵画

父親は苦汁に満ちた表情で両手を膝に乗せると握り拳を握った。
そしてポツ、ボツッと涙が落ちて畳みに染み込んでいた。
私も美保も男の名前は言わなかった。そして、五日前にペンションにキャンセルの電話が入った事だけを伝えた。
「そうでしたか、その時に男の名前は言いませんでしたか」?
私はただ首を横に振った。そして幸子さんの部屋を見せてもらった。幸子の机の上には写真が飾られていた。美保は手にすると抱き締めた。
それは、六月に、ペンションで撮った私と美保と三人の写真だった。
その写真を見て、あの日の事が頭の中をグルグルと駆け回っていた。あんなに明るかった女性を死においやった真田と言う男の事が次第に許せなくなってきた。そして一階に降りると、弔問に訪れた人達でいっぱいだった。
私達は両親に別れを告げて家を出た。するとムッとする暑さに首筋から汗が涌いた。ネクタイを緩めて上着を脱いだ。
そこへ空のタクシーが来て止めた。ホテルから乗ってきたタクシーだった。
「お客さん、あの家のお嬢さん亡くなったんだってね。あんなに明るくていい女性だったのにね」。と、随分親しく話をする運転手だった。
「おじさん、幸子の事知っているの」?
「ええ、高橋さんには良く乗って貰いましたからね。私言ったんです、あの真田と言う男だけは止めなさいってね。あの男は女性を食い物にして生きているダニのような男でしてね、でもそんな事はとても言えませんからね」。
「そう、そんな男がいたの。幸子が可哀相」。
「一度高橋さんが泣きながら車に乗り込んできたことがありましてね。どうしたかって聞いたんです。そしたら、彼が外の女性とホテルから出できた所を見てしまったとか。あの男は祇園辺りで観光客や地元の女性を引っ掛けては遊び歩いているどうしようしようもない男ですよ」。
「そうなの、じゃあお葬式にも来ないわね」。
「来ないでしょうな。以前も似た事がありましてね。真田と付き合っていた女子大生が自殺したんです」。
美保は何かを言いたい様子だった。が口を綴じた。
そしてホテルに着いて時計を見ると、もう四時を回っていた。
部屋へ行くとテレビを点けた。夕方のニュースが流れていた。
そして高橋幸子さんの事が流れた。美保は着替えを途中で止めてソファーに掛けて見入っていた。そしてニュースが切り替わると溜め息を漏らしていた。
「幸子やっぱり自殺だったんだね。京平さん、此れからどうする」。
「そうだな、少し休んで暗くなったら祇園へ行ってみようか。それで、美保はその真田の家を知っているの?・・・」。
「うん、前に自殺した親友が佐々木友世って言うんだけど、友世が一緒に来て欲しいって言われて、一度だけ行った事があるの。
それがね、私の実家の隣町の茶山町なの。友世の話しだと、真田の家は個人病院で息子の貴雄は受験に失敗したらしいって」。
「そう、開業医のドラ息子か。良くあるパターンだな。美保、じゃあ友世さんも幸子さんも自殺だと決め込むのは危険だな。男が医者の息子なら睡眠薬だって簡単に手に入るからね」。うっ、と美保は言葉を飲み込んで見詰めた。
「そんなあ、じゃあ友世も幸子も殺されたって言うの?・・でも友世の時も警察は自殺だって。それに幸子も!」。
「でも変だと思わないか。友世さんが自殺した時も睡眠薬だったんだろ、それに真田と付き合っていた事は警察は調べた筈だよな」。
「ううん、失恋して自殺したって事で片付けられてしまったの。だからあの男の事は事実関係だけしか調べなかった。
友世の御両親がお金が絡んでいる事を話したんだけど。それを証明する事実関係がないからって言われて無視されたわ」。
「じゃあ今度も同じだな、借用書もなければ幸子さんが金を渡している所を見た人もないだろうからね。でもさ、付き合った女性が二人も自殺してるんだから、警察も今度は調べるんじゃないかな」。
そんな話をしながら着替えていた。そしてホテルで食事を済ませ、タクシーで阪京電鉄七条駅に向かった。
五条、四条、三条。丸太町と過ぎて出町柳と通り過ぎ、元田中駅に着いた。
美保の実家のある駅だった。美保は身体を乗り出して懐かしそうに見ていた。
そして茶山駅に着き、電車を降りた。閑静な駅前は大学も近い事もあり、超ミニにポックリのような靴を履いた女子大生や女子高生風な女性が大勢いた。
「京平さん、あんな恰好が好きなの?・・・」
「そうじゃないよ、長野もそうだけどさ、東京も京都にもあんなのが多いんだなって思ってさ。美保だって似たような恰好していただろ」。
「それはそうだけど、でも私は京平さんが初めてだよ。本当だよ、でも私はあんな派手じゃなかったもん」。
「うん、だから好きになったんだよ。美保は誰よりもステキだよ」。
「もう京平さんったら、あっ、パトカーが止まっている。あの家よ、真田貴明の実家、病院は下鴨で通っているらしいよ」。
私達は手前の駄菓子屋に入った。昔懐かしい菓子が珍しくもあった。
そんな駄菓子を手にしながら真田の家の様子を伺っていた。
「おばちゃん、そのお宅で何かあったん、パトカーなんか止まってはりますけど」。と美保の流暢な京都弁がより可愛く感じた。
「へえ、なんや知りまへんけどな。息子はんが調べられているみたいへ。さっきも刑事はんがきはって聞いて帰りましたんへ」。
私は美保とおばさんの会話を聞いていた。おっとりとした京都弁を聞きながら、美保は京都の人間だったんだと、心が洗われたような気分になっていた。
「大きな声では言えまへんけど、なんや貴明はんがお付き合いしはっていたおなごはんが自殺しはったとか。
ほんに何を考えていますやら、一年も前やろか、同じような事があったんへ。あらっ、いらん事を。ここだけの話しにしておくれやす」。
「へえ、ほな此れをいただきます」。
美保は適当に駄菓子を篭に入れると差し出した。そして袋に入れて貰うと早速駄菓子をほうばりながら店を出た。
そして真田貴明の家の前にある公園に入るとベンチに腰を降ろし、玄関を見ていた。
すると、間もなく警官と刑事らしい男の三人が出て来た。
「まったくあの男は何を考えているかわからんな。親も親なら息子も息子だ。まあ今回も自殺って事かな」。
年配の一人の刑事が車の前で立ち止まると、額の汗を拭いながら呆れたように吐き捨てるように話しているのが聞こえた。
そしてバタン、バタン、と乗り込むと走り去った。すると、真田の家のガレージが空いてベンツが出て来た。
「京平さん見て、あの男が貴明よ」。NO-25

小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(24)CG

2008-07-25 15:35:28 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(24)CG

「美保、そんなに気を落とすな。僕もあの電話が入ってから美保が気に掛けていた事は分かっていた」。
「うん、ごめんなさい心配させて。真田を許せない」。
「でも今お前が手に掛けたら警察は高橋さんの関係者に目を着けるぞ。今は駄目だ、時期を待つんだ。分かったね美保」。
美保は頷きながらも不満そうな目をして私を見詰めていた。その瞳に私はどうにもならない空しさを感じた。
あんなケースを持ち歩く訳には行かない、どうして持って行こうか。考えが浮かんだ。書棚から学生の頃に使った分厚い辞書を取った。
そじて、ベッドのしたのケースを取った。
「京平さん、どうするの」。
「いいから、こうして銃と消音器とカートリッジを書いて、刳り抜いて」。
「分かった、ケースを作るの?・・・」。
「うん、こんなアタッシュケースを持ち歩いていたら眼に着くからね」。とナイフで少しずつ切り抜き、ボンドで接着してケースを作った。
そして銃を入れた。「凄~いっ・・・でも百科事典こんなにしていいの」。
「もう使わないからね、片付けようと思っていたんだ。我乍ら好いできだ」。
そして翌日、旅行バックの底に辞典を忍ばせた。そして十時過ぎの長野新幹線に間に合うように佐久平駅へタクシーで向かった。
そして長野新幹線に乗り込むと、東京へは昼前に着いた。そして下りの東海道新幹線こだま417号、十二時十分発、新大阪行きに乗り込んだ。
美保は友人の死を受け入れたのか、表情が少し緩んだようだった。美保はバックから携帯を出した。「京平さん、京都の母に電話して来ます」。
そう言うと笑顔で席を立つと乗降口に向かった。そして私を見ながら電話をしていた。そこへ移動販売か来た。弁当とお茶を買うと戻って来た。
そして幕の内弁当で昼食を済ませ、美保は夕べ眠れなかったのか、私に寄り掛かると直ぐに眠った。
そして二時間、美保は起こすまで眠っていた。
「美保、着いたよ」そっと起こし、ゆるやかになった社車窓を指差した。
「寝ちゃった、もう着いたんだ」。身体を起こし、荷物を持つととホームへ降りた。改札を出ると、美保の母が出迎えに来ていた。
「お母さん、幸子が死んじゃった。それで、聞いてくれた?・・・」。
「京平さん、大変でしたね。ええ、聞いたわよ。幸子さんの遺体はもう家に帰って来ているって。でも詳しい事はまだ警察から知らされていないみたいですよ。それよりホテルを取ってありますから休んでから行きなさい」。
駅を出ると駅前のグランドホテルに向かった。
チェックインして部屋に行くと、ルームサービスでお茶とサンドイッチを頼んで一服しながら美保の母親から話を聞いた。
しかし、何も知らされていなかった。
「美保、京平さんごめんなさいね、お父さんの事だけどやっぱり駄目だった。幾ら話してもわしは結婚なんて認めないって。でも強がっているだけだから辛抱してちょうだい。
だから結婚した事はまだ話してないの。頑固もあそこまで行くと体したものよね。それでどうするの、弔問して明日は帰るの」?
「いえ、父と母が二~三日ゆっくりして来いと言ってくれましたから」。
「そうですか。どうする美保、一応お父さんに会って貰おうか。京平さんを目の前にしたら頑固者も少しは口を閉じるわよ」。
「ううん、京平さんに嫌な思いをさせたくないから。それにあの人は私を売った男よ、会いたくなんかない。私はお母さんさえ分かって貰えたらいいもん。そう言っておいて」。
「そうね、分かった。じゃあ京平さん美保の事お願いしますね」。母は笑いながらも何処か寂しい顔を覗かせて帰って行った。
「美保、いまの言葉はお義母さんに悪いぞ」。
「えっ・・・ごめんなさい。つい口から出てしまったの。後で電話して謝っておく」。
「そうしなさい、ところで高橋さんの家は此々から遠いのか」?
「南区だから車で十分くらい。直ぐよ。どうする、喪服の方がいい?・・」
「うん、僕は父と母の名代だから喪服を着て行く。本葬も出るんだろ」。
「ううん、今日行って御両親から幸子に何があったのか話が聞ければ本葬は出たくないな。辛いもん」。
こうして私達は喪服に着替えるとホテルを出た。そしてタクシーを拾うと南区の高橋幸子の実家へと向かった。
そこは昔ながらの古い家屋が残る西九条の一角だった。腕に報道関係者と分かる腕章をした人達が何人か来ていた。
そして警察車両も玄関の手前に止まっていた。

私達は少し手前でタクシーを降りると歩いた。そして、幾つかの花輪が並べられていた。その前を通り過ぎて玄関に入った。
「おばさんっ!・・・」高橋幸子の母親を見ると泣きながら呼んだ。
「美保さん、来てくれたのね。有り難う、ペンションの息子さんね、美保さんの旦那様ね、幸子から訊いていました。さあどうぞ」。
私は何も言う事も出来ず座敷に上がった。すると既に祭壇は整えられて柩が横たわっていた。
美保はそっと柩の蓋を開けて高橋幸子と体面した。
「幸子、どうして、どうしてこんな姿になっちゃったの。バカ、あんたバカよ、どうしてよ」。ボロボロ涙を流して肩を震わせて泣いていた。私はそんな美保を隣の部屋に連れて行った。
「美保さん、紺野さん、業々来ていただいて有り難うございます。幸子もきっと喜んでくれていると思います」。
「おばさん、どうして?・・幸子に何があったの?・・」
「あの娘ね、誰かとお付き合いしていたらしいの。でも誰なのか私も知らないの。それで何回かお金を持ち出してその彼氏に貸していたのか、献いでいたのか分からないけど、それが、家を出る前の晩に電話が掛かってきてね、出かけてそれきり」。と母親は両手で顔を覆うと嗚咽し、言葉にならなかった。
「美保さん、紺野さん。有り難うございます。幸子の奴、悪い男に引っ掛かっていたようです。幸子の結婚式の為にってあれだけあった預金を少しづつ引き出して空になっていました。その事を警察に話すと、お金の貸し借りは民事であって警察は手は出せないって言うんです」。
「おじさん、幸子の死因はなんだったの」?
「はい、解剖の結果自殺だったそうです。血液検査で大量のアルコールと睡眠薬が検出されたそうです」。
「そうですか。おじさん、それで男の人は誰だか分かったの」。
「いいえ、日記も書いてないし持っていた携帯も無くしたようでありませんでしたから。警察で娘の携帯電話の通話記録を捜査しているそうです。でも自殺じゃどうにもなりません」。NO=24-60

小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(23)CG

2008-07-25 15:32:20 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(23)CG

「うん、いつか切ろうと思っていたんだ。半分枯れていたからね」。
「私もそろそろ切らないと腐って折れると思っていたんだよ。美保さん御苦労だったね」。
「いいえ、でも林業の人達の苦労が分かりました」。
「アッハハハハそりゃ良かった。アッハハハハ」。
父は何も疑う事もなく豪快に笑っていた。そして両親が持って来てくれた料理で昼食を取った。
「午前中は何処かへ行って来たのか?・・・電話を入れたんだぞ」。
「うん、松本へ出て買い物して来た。エアガンのオモチャを買って来たよ。その壁に飾ってあるやつだよ」。
「ほう~っまるで本物そっくりだね。美保さんのもあるね」。父はそう言いながら立ち上がるとライフルを手にした。
「京平、弾はビービー弾か」。
「はい」と美保は引き出しからビービー弾の入った箱を出した。父は嬉しそうに弾を込めると安全装置を解除して木に着けてあった的を狙った。
「タンッ」とエアーとバネの音を響かせて的に当たった。そして父は子供の様に続けて遊んでいた。
「美保さんもやってごらん。中々面白いよ」。弾を込めると美保に渡した。
美保は受け取ると構えた。そして引き金を引いた。美保は業と外した。
「やっぱり私はまだ駄目です。はい、お義父さんやって下さい」。父は自慢気に受け取ると続けて遊んでいた。
そんな父の無邪気な様子を横から母は笑いながら見ていた。
そしてお喋りをしながらお茶を楽しんで、午後三時頃には客を迎えるからと帰って行った。
そして七月四日、三日の休日を終えて私達は実家に戻った。そしてペンションの仕事を手伝い始めた。
自分は両親の何を見て育ったのか、仕事を手伝って初めて知らされた。ペンションで生まれ育ったとは言え、毎日が覚える事ばかりだった。
そして、うっとうしい毎日だった梅雨も開け、夏休みに向けてペンションの予約も日を追う事に増え始めた。
予約の電話を受けていて忙しくなるのは目に見えていた。そして八月を迎えて本格的な夏が訪れた。
そしての予約が満杯になった頃、常連客でもある美保の大学の同期の高橋幸子から電話が入った。
母に言われ、部屋で休んでいる美保を呼びに行った。
すると、部屋で受話器を持った美保の表情が次第に険しくなっていった。
「そんなの良いからおいでよ、彼に話して何とかしてもらうから」。そして数分話をして受話器を置いた。
「どうした?・・美保」。
「うん、幸子ったら例の男と付き合っていた見たいなの」。
「例の男?・・・誰!例の男って?・・・」。私は覚えていなかった。
「あの男よ、私の親友を食いつぶしてボロ切れのように捨てて自殺に追いやった男。真田貴明って言って今年で二十七才かな。
見栄えだけは良いの、それで女の子は次々と騙されてね、お金を貢がせて無くなればポイ。幸子その男と付き合っていたみたいなの。
それでね、今年はお金がなくて行けそうもないからって、キャンセルして欲しいって言って来たの」。
「そうか、高橋さんその男に引っ掛かっていたのか。まさか自殺なんかしないだろうな」。
「うん、大丈夫だと思う。彼女ああ見えてけっこう我慢強いから」。美保はそう言いながらも動揺は隠せないでいた。そして私にも妙な胸騒ぎがしていた。
「美保、それで高橋さん仕事は何をしているの」?
「確か証券会社だったと思ったけど。宿泊名簿に幸子の勤務先も書いてあるわよ。見に行こうか」。
そして一階の事務所に降りて宿泊者名簿を開いた。やはり美保の言ったように京都日々証券と書かれていた。
「ほらね、幸子そのまま勤めているのね」。
そして二日三日と過ぎて四日が過ぎた。美保は高橋幸子の電話を受けてから頭から離れない様子だった。そして夕方のニュース、
「本日午後三時ろこ、舞鶴湾にある戸島の海岸で若い女性が浮かんでいるのを釣り客が見付けて警察に届けました。
舞鶴署では早速救出に向かいましたが。女性は既に亡くなっており、死後一日が経過していると言う事です。
そして死亡した女性の身元は、腰に着けていたバックから運転免許証が見付かり、京都府南区在住の高橋幸子さん二十四才である事が分かりました。高橋さんは一昨日、友人と会うと言って家を出たまま帰らなかったと家族は話していました」。
「京平さん、幸子が、幸子が自殺しちゃった。お義母さん」!美保はそう言うと事務所の机の陰に身を屈ませて泣だした。
「どうしてなの美保さん、美保さん何か知っているの」?母は蒼白し、美保の肩を抱いて涙を拭いていた。私はニュースの続きを聞いていた。
場所は舞鶴湾に浮かぶ戸島の海岸だった。そして死後一日、外傷はなく自殺と事故死、他殺の三方から調べていると言う事だった。
私の胸騒ぎは当たってしまった。そして美保を見ると少しは落ち着いた様子だった。涙を拭くと椅子に掛けた。
「京平さん、お義母さん済みませんでした」。
「良いのよ。京平、美保さんを連れて京都へ行ってらっしゃい。高橋さんには御両親にも御利用頂いているの。私たちの代わりに弔問に行って来てちょうだい。お父さん良いわよね」。
「うん、きっと明日の午後には遺体も警察から返して貰えるだろうから。明日午前中に発って行って来てくれ。くれぐれも御両親にはな。
美保さんの同級生も弔問に来るだろうから二~三日ゆっくりして、京都のお母さんにも会って来なさい」。
「はい、お義父さん有り難うございます。でもペンションの方が忙しくなりますから弔問を済ませたら帰って来ます」。
「そんな事は気にしなくていいよ。今日はもう良いから食事を済ましたら休みなさい。京平、いいね」。
母は耳元で囁くように、精神的に参っているから慰めてやりなさい。と。
そして食欲のない美保に夕食を食べるように勧めた。美保は気落ちしたように肩を落としながらも箸を持った。
そしてやっと一杯のご飯を食べると片付け、皆んなより先に仕事を切り上げた。
そして部屋に戻ると何度も溜め息を着いていた。NO-23



小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(22)CG

2008-07-23 19:04:05 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(22)CG

美保はその意味が分からなかったようだった、そして黙って頷いた。
「ねえ、私にも銃ケース作って欲しいな」。
「うん、明日ブリーフケースを買いに行こう」。
「それにしてもこの別荘は射撃の練習をするにはうってつけね。私有地で誰も来ないし、山間には樹々のざわめきで音は消されて」。
翌日、私達は松本へ向かった。そして数軒の店で必要な備品を買い揃えた。そして馴染みの銃砲店に顔を出した。
「紺野さん奥さん貰ったんですって。お目でとうございます」。主人は美保を見るなりペコッと頭を下げた。美保は照れながら頭を下げると銃を見ていた。
「おじさん、女房にも免許を取らせようと思うんだけど必要な書類と参考書を貰えないかな」。
「はい、それは良いですね。夫婦で同じ趣味とは」。
店主は数冊の参考書と講習会の日程と必要な書類を出した。美保はキョトンとした顔をして出された参考書を開いていた。
そして新しいベストと服、そして弾薬ベルトをペアで買い揃えた。
「紺野さんも気が早いですね、でも狩猟はそれ位気を使って貰わないとね。後は警察で書類を貰って下さい」。
こうして抱えるほど荷物を持って店を出た。そして松本市内にあるモデルガンの専門店に行った。
すると、新しくエアガンのコーナーが新設されていた。数人のマニアが遊んでいた。
「京平さん、私やってみたい」。美保は袖を引っ張った。みると目を輝かせて射撃をじっと見ていた。そして店主に申し込んだ。
「ええ、良いですよ。でもその前に取り扱いと安全に遊べるようにする必要な説明を聞いてからです」。
私は銃砲許可証を見せた。すると店主は取り扱いの説明を始めた。そして射撃場に入り、何種類ものエアガンを出して来た。
美保はマグナム404モデルのエアガンを手にした。
「奥さん、それは重くて女性には無理でしょう」。
「いいえ、私は此れが良いです。一度撃たせて下さい」。
店主は苦笑いを浮かべながらガンにエアホースを接続させた。
美保はゴークルをして10メートル先の的に標準を合わせて撃った。そして次々と撃ち始めた。
周りにいたマニアは美保の命中率に驚いて射撃を止めて見ていた。そして的が手前に来ると全弾芯に命中しているのだった。
「此れは驚いた、私達は恥ずかしい。奥さん初めてですか」?
店主は的と美保を見比べるように首を左右に振っていた。
「はい、説明の仕方がいいですから。私はおじさんに言われる通りやっただけです。面白かったです」。
そして私が代わって撃ってみた。私は一発的の外周に反れていた。「こりゃ驚いた、お客さん警察官か自衛隊じゃないんですか」。
主人はそう良いながら疑うような目をして私達を見ていた。
「いいえ、主人はペンションの息子です」。
「どうです、エアガンの愛好会に入りませんか。月に一度大会をやるんです。優勝者の景品はエアガンや付属品やソルジャーの服や装備です」。
「ええ、じゃあ夫婦で入会させて頂きます。それとモデルガンも幾つか買わせてもらいます」。
店主はニッコリすると店内を案内してくれた。そして迷彩服や軍用靴、そしてゴーグルやナイフ、それこそ米軍の特殊部隊の装備をペアで買い揃えた。
そしてライフルケースに銃のホルダーを買った。その金額は二人で百五十万近くになってしまった。
「京平さん、私そこの銀行へ行って降ろして来ます」。
「奥さん、分割でも出来ますけど」。
「ううん、私も主人も月賦は嫌いなんです。ねえ貴方」。
「うん。待っていて下さい、いま銀行へ行って来て貰いますから」。美保は銀行へ向かった。
すると、店主がペーパーの的を数袋、ビービー弾やモデルガンを手入れする備品をサービスだと出して来た。そして十五分もすると美保が戻って来た。
「高いオモチャ、でもとうぶん楽しめるわね。おじさん有り難う」。美保は去り気なく言うと支払いを済ませた。
店主と馴染客は買った荷物を車に積むのを手伝ってくれた。そしてまた来る事を約束してガンショップを出た。
「京平さん、あのホルダーだけど本物と一緒なの」?
「うん、本物と全く同じホルダーだよ。本当はホルダーだけで良かったんだけど妙に怪しまれるのも嫌だから」。
「うん、此れで全部揃ったね。もう買う物はないの。でも此々がアメリカならあの金額で本物の銃を揃えられるのにね」。
「それは仕方ないさ。でも良いじゃないか、銃もライフルも三丁づつあるし、一丁づつ持っても予備があるからさ」。
私自身そんな事を平気で言える自分が不思議に思えていた。そして別荘に帰るとリビングの床いっぱいに広げて値札を外し、迷彩服を着て一端のソルジャー気分に浸っていた。
そして的を二十メートル、五十メートル、百メートル、三百メートルはあろうか、先の木に付けてきた。
そして消音器とスコープをライフルに着けると弾を装填し、窓を開けて室内から的に標準を合わせた。
美保は教えたようにライフルの尻を肩に着けると引き金を引いた。パシュッ、と微かな音を残して鈍い音が山間に響いた。
双眼鏡で百メートル先の的を見ると、真ん中やや右にずれたものの、見事に命中しいてた。
そして代わる代わるライフルを撃つと、六発程で三〇㌢ほどの太い木が的からバキバキっと音を立てて倒れてしまった。
銃を片付けてケースに入れると地下室へ隠した。
そして斧とチェーンソーを持って切りに行った。直系40センチの松の木が焦げた脂の匂いを漂わせ、山道を塞ぐように倒れていた。
残った幹をチェーンソーの音を響かせて根本から倒した。そして枝を斧で切り落として松の木を薪の大きさに切り分けた。美保は別荘から一輪車を持って来ると切り二つ三つと積んで別荘に運んだ。
一時間ほどいで片付けると美保の額からは汗が滴り落ちていた。「射撃の練習もいいけど、後の片付けが大変、これから杭を立てて練習しようよ」。
「そうだな、練習の度にこれじゃたまらないからな。考えるよ」。
そして道具を片付けて風呂で汗を流して出ると、突然父と母が遊びに来た。
「京平、あの松を切ったのか?・・・」
NO-22-54


小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(21)CG

2008-07-23 19:01:03 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(21)CG

「そうですか、黒っぽい車ですか。その車が二人の車だったんです。それで近藤さん達はそのままアパートへ戻られたんですね」。
「ええ、そうです。刑事さん、ニュースで聞きましたが、あの二人は覚醒剤の取引で殺されたと聞いていますけど」
「ええ、一応警察ではそう見ています。しかし他人の事には無関心ですな。あの晩も大勢のカップルが現場に行っていたそうですが、二人が殺されていた事には誰一人として気付いた者がいなかったんです。
通報は毎朝散歩する老人が見付けて知らせてくれたんです。死亡時間が午後八時から九時。十時間も誰も気付かなかったんです。目撃者もいませんし、近藤さんが頼りで来たんですがね」。
「済みません、私も美保もただ逃げる事で必死でしたからね」。
「いいえ、分かります。それにあの車はスモークガラスで外からは車内が見なくなっていましたからね。ともかく、貴方々に何もなくて良かったですよ。
もし何か思い出されましたら御面倒でも南警察署の三河か小森までお知らせ下さい。では失礼します」。
私は三河警部補と書かれた名刺を受け取った。そして二人の刑事はだらっと手を下げ、肩を落として重い足取りで玄関を出た。
私と美保は表に出て、車で帰る刑事を見送った。
「京平、殺人事件って此の間のニュースでやっていた二人組の事か、なんと言う暴力団が海岸で殺されていた事なの?・・・」
「うん、俺達がホテルのレストランからアパートに帰るときに暴走族風な車に追い掛けられて逃げたんだけど、その車がホテルの支配人を蹴り殺した二人組だったんだって。その二人が殺されて聞きに来たんだ、自分達には関係ないよ母さん」。
「そんな事は分かっているわよ。それより暫くのんびりして、引っ越しの疲れを取ってから仕事を徐々に覚えてくれればいいから」。母はそう言うと事務所に入って行った。私達は部屋に戻った。

「京平さん、あれだけの事を聞きに業々静岡から白馬まで来るなんて警察も大変なんですね」。
「うん、でも此れで僕等の事は疑っていたい事が分かって良かったじゃないか。隠さず話して良かったろ」。
「そうね。でも私あの人達を殺しても全然罪悪感がないの」。
「うん、僕も同じだ。不思議なほど罪悪感が無い。憎しみを持つ心って怖いよな。理屈や道理では分かっていても、二人を殺したと言う実感がない。頭の中で正当化しているんだろな」。
「うん、そうかも。でも悪はあの二人よ」。
そして、その晩から三日のあいだ雨が降り続き、本格的な梅雨の到来かと思える程雨の降りは凄く、台風かと思える程だった。。
ペンションの泊まり客は外出もせず、思い思いに時を過ごしていた。私達は母や父の手伝いをして仕事を教えて貰っていた。
そして六月も終わろうとしていた三十日、その日の夕食時に客と一緒に食堂でテレビを見ていた。
すると静岡の殺人事件の続報が流れていた。私は美保を呼ぶとニュースに見入っていた。
すると、私達が使った銃弾の事でとんでもない事が分かった。美保は私の顔をじっと目詰めていた。そして部屋に呼ばれた。
「京平さん、殺し屋が使った銃弾と同じって、あれってどう言う事なの。あれは本当なの」?
私は唖然としながら「実はさ・・・」、と銃の入手経路を正直に話した。
「じゃああの銃やライフルはその事故車の周りに落ちていたのね」。
「うん、あの亀石峠を走っていたら霧の中で事故っていたんだ。それで助けに行ったら、二人はフロントウィンドを突き破ってボンネットの上にいた。脈を診たらもう亡くなっていたんだ。
それで顔や恰好から判断したら奴等は普通じゃないと思ったからね、それで転がっていたジェラルミンケースを持って帰ったら、あの銃やライフルが三丁づつ入っていたんだよ。
まさか福岡や大坂で要人が暗殺された銃だとは思わなかったよ」。
「そうだったの、じゃああの三人は本物の殺し屋だったんだ。やったじゃん。これで誰を殺してもその殺し屋のせいに出来るわよ。話していたじゃない。三人の他にも仲間がいた様だって。
極悪な少年に殺された被害者の遺族が大勢泣かされているわ、名前も顔も裁判の内容すら知らされない遺族が。私達がその悔しさと無念を処刑して補ってやろうよ。
でも更生して真面目にやっている子は省いてさ。少年院を出てまた悪の仲間に逆戻りして世間に迷惑を掛けている悪をさ」。

私はその言葉を聞いて身体が震えるほど驚いた。しかし決心するには時間が掛からなかった。私は美保を抱き締めると美保はそっと目を綴じた。
そして少しばかりの荷物を持つと、母に山小屋に二~三日泊まって来る事を話した。母は驚く事もなく何も言わず頷いていた。
そして途中のスパーで食糧を多めに買い込むと山小屋に向かった。雨は山小屋に着く頃には止んでいた。
美保は除湿機のスイッチを入れると風呂を洗って湯を張っていた。私は寝室のエアコンを入れて空気を入れ換え、お茶を入れて美保が来るのを待っていた。
間もなく来だ。「ちょっと来てごらん」。
「うん、何かあるの?・・・」不思議そうに見ると腰を上げた。
美保を連れて地下室のドアの鍵を開けた。そして奥の棚を開け、ジェラルミンのケースを取り出した。
「それって仕事の・・・持ってきたの?・・・」。黙って開けた。
「あっ・・凄~いっ本当だったんだ。ねえ私に一丁づつ頂戴」。油紙で包んでビニール袋にいれたライフルと銃を取り出して美保に見せた。
「うん、でも素手で触るなよ。必ずメディカルグロープをして持つように。それから今後は割烹着を着て射撃の練習しよう。硝煙が残るからね、それから花火を買って来ようか、銃を使った時は硝煙が残るから、花火をすればその硝煙の匂いをごまかせるか」。
「うん、分かった。でも凄い弾だね、此れ全部そうなの」。
美保は何千発もある弾を見て目を見開いていた。そして部屋に持って行き、分解して見せた。分解の手順と手入れの方法を教えた。
じっと食い入る様に見ていた美保は、まるでオモチャをいじるような眼差しで私の教える通り直ぐに覚えた。
「ねえ此のピストル何処にも刻印やマークが入ってないんだね」。
「うん、特別に何処かで製造されたんだろう。でも凄い銃だよ。きっとあの殺し屋も腕が良かったんだろうな。
美保、銃を使ったら必ず薬莢は持ち帰ってくれよ、また使うから」。
NO-21

小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(20)CG

2008-07-21 19:29:02 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(20)CG

「美保さん、良かったわね。お母さんもう用意してくれていたのね。京平、部屋に運んであげなさい」。
「お義父さんお義母さん、有り難うございます。私凄く幸せです」。
父と母は黙って頷くと、ス~ッと頬に涙が流れて床に落ちた。
私も胸が熱くなる思いで大きな箱を抱えて二人で部屋に戻った。
「京平さん有り難う、私どうしよう、嬉しくて、嬉しくて」。胸に飛び込んで身体を預けると泣いた。
「良かったな。きっとお父さんだって分かってくれるさ」。美保は二度三度と私の胸に額をぶつけて頷いていた。
そして二日後、二十四日。起きると結婚を祝ってくれるように晴れていた。
朝から業者が来てリビングは結婚式場に様変わりしていた。
私たちが行くと、まだだ。と父は中へは入れてくれなかった。美保は美容室に出掛けて私は一人部屋にいた。
何もする事もなく、ただ自分の部屋でテレビを観ていた。

そして十一時半、母が買ってくれた真っ白な礼服に着替えた。
すると、ノックして母が入って来た。その後に純白のウェディングドレスを纏った美保が入って来た。眩しいほど美しかった。
「へへッ、なんか恥ずかしいな。京平さんカッコイイ」。
「美保、奇麗だ。母さん有り難う」。
「美保さん、本当に奇麗よ。今日は天気も良いし、良い日になって良かったわね。さあ行くわよ」。
私と美保はリビングに降りた。すると、見違えてしまう程リビングは飾られ、親戚や友人たちが駆け付けてくれていた。
大きな拍手と結婚行進曲が流された。そして、その先には神父さんまで呼んでくれていた。そして宿泊客までが参列してくれていた。
私は前の結婚の事が頭に過ぎった。今の幸せは問題にならない程嬉しかった。
そして、カメラのフラッシュが炊かれ、シャッターの音が鳴り響いた。
そして神父の前に立ち、誓いの言葉を宣言し、指輪の交換をした。そして皆んなの前で誓いの口付けを交わした。みんなの冷やかす声と口笛が美保は嬉しかった。
席に掛けると、大きなウェディングケーキが運ばれて来た。
美保の頬をボロボロと大粒の涙が流れた。
それを京平の大きな手で拭うハンケチ。京平の母も貰い泣きしていた。
こうして素晴らしい結婚式を挙げてもらった。

そして午後、披露宴が始まり、皆んなが出口に並んだ、すると、ゲートを作ってくれた。その先には白のリムジンがドアを開けて待っていた。
父がチャーターしてくれていたのだ。
私達は人の手で作られたゲートをくぐり、リムジンに乗り込んだ。そして婚姻届を出しに白馬村役場に向かった。
すると、知らせが入っていたのか、役場の玄関には職員たちが拍手と花束で迎えてくれた。美保の驚きと喜び様とは涙が物語っていた。花束を抱えながら拍手に囲まれて婚姻届を提出した。
受付の向こう側ではではその姿をカメラに収めてくれていた。
私は父と母と、そして従業員達の手作りの結婚式に感謝し、一生忘れられない結婚式となった。

そして帰りのリムジンの中で京平は美保を幸せにする事を改めて誓った。
こうして結婚式も無事に済み、招待客も親戚も帰った。後は業者が来て片付けて夕方にはいつものペンションに戻っていた。
そして私達は部屋で繕いでいると母が呼びに来た。そして心配そうな顔をしていた「何かあったの、静岡から刑事さんが二人で訪ねて来たわよ」と言うのだった。
「やっぱり聞きにきたわね」。と美保は至極冷静な顔をしていた。私も美保もきっと来ると覚悟していた事であった。
顔色一つ変えず、刑事が訪ねて来た話しの内容を母に説明した。
すると母はホッとした顔を見せていた。そしてリビングに降りるとアパートに来た刑事が来ていた。

「近藤さん奥さん、済みません。こんな所まで押し掛けてきまして。それと、御結婚おめでとうございます」。
その刑事は既に今日の事は調べが付いている様だった。
「それで今日伺ったのは、ホテルで暴行をした二人組の事で少しお聞きしたいと思いましてね。すでにご存じだと思いますが、その二人組が何者かに殺害されましてね。その事で伺ったんです。
あの晩の事なんですが、貴方の車を二人の乗った車が敷地の交差点から追い掛けていたと言う目撃者がありましてね」。
「確かにあの晩アパートへ帰ろうとして敷地の交差点に来た時、暴走族みたいな車に追われて逃げました。でも顔までは分かりませんでした。あの暴力団だったんですか」?私は平然と答えて刑事の顔を見た。
「ええ、何人もの人が目撃していましたから間違いありません。それで、その後どうゆうように逃げたんです」。
「はい、あの交差点に来て、私が急発進して前に出たらピタッと後ろに付いてクラクションを鳴らしたものですから、これは暴走族のかなんかの車を怒らせてしまったと思って、京平さんがアパートに帰ると家を突き止められて徒されるとから真っすぐ走れって。それで久能街道の方へ走って右折したんです。
それで、大浜公園の交差点に来たら赤信号で止められてしまったんです。でも車が来てなかったもので、信号無視で大浜公園の方へ曲がりました。
そしたら後ろの車も追って来て、私は公園のT字路を左に曲がって逃げました。そして堤防へでました。それで少し走ったんですが追って来なくなったんです。
それで少し止まって来ないのを確認してUターンして来た道を戻ってアパートに帰りました。そしたら刑事さん達が前に走っていたんです」。
「御主人、それに間違いないですか?・・・」
刑事は驚いたような顔をしてそう言うと私の顔を覗くように見た。
「はい、間違いないですよ。でも追い掛けていた車があの二人だったなんて捕まらなくて助かりました。もし捕まっていたら何をされていたか分かりませんからね」。
「そうですか。所で、あの二人が殺害されていたと言うのがその堤防の所なんです。何故あとを追って来なかったんでしょう。それから、何か不審な車を見ませんでしたか」?
「どうして追って来なかったかとか、不審な車っていいますがね。刑事さんも変な事を聞きますね。私達はその不審な車に追われて逃げ回っていたんですよ。それに、どうして追うのを止めたかなんて分かる筈ありません」。
「そうでした。では質問を変えます。あの堤防から戻る時に車と擦れ違う事はなかったですか」?
「ええ、一台だと思いますが止まっていました。でもアベックの車でしょう。あの場所は夜になるとアベックが大勢来ますから、なあ」。
「うん、黒っぽい車だったかな」。
NO-20-48

小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(19)CG

2008-07-21 19:19:51 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(19)CG

「うん、あんなダニは生きていたってまた人に迷惑掛けて苦しむ人達が出るだけよ、いない方がいいわよね」。
「美保、もし警察があの二人の事でまた聞きに来たら知らない車に追っ掛けられて大浜まで逃げて行った事をそのまま話そう、それで左に曲がったら追って来なかった事にしようか」。
「そうね、警察だって馬鹿じゃないものね。敷地の信号から追われていた車の事は調べるでしょうから。変に嘘を言うより大浜公園まで逃げて左折したら追って来なかった事にしよう。それが真実だから、まさか私達があの二人をお掃除したなんて思わないでしょうからね」。
「お掃除は良かったな、懐に飛び込んだ方が警察は疑わないからな。それからレストランを出でからどうしてたって絶対聞かれるから、美保が車の運転の練習して街を走り回っていた事にして正直に話そう」。
「うん、分かった。それでバッチリだね」。
そして静岡から山梨と経て、白馬に入ったのは午前二時を回っていた。そして実家に着くと父が起きて待っていてくれた。
「全くお前と言う奴は、美保さんお帰り。疲れただろう」。
「いいえ、お義父さんこそ遅くまで済みません。母が宜しく伝えて欲しいと言っていました」。
「そうですか、荷物は明日にして今夜はもう休みなさい」。
私たちは大事な荷物だけ車から降ろすと部屋に入った。そして風呂に入るとベッドに入った。お休みのキスすると、話もそこそこに眠っていた。
そして翌朝、目を覚ますと美保は腕の中で眠っていた。そし枕元にあるリモコンでテレビを点けた。
すると八時のニュースが始まっていた。すると、静岡の海辺で起こった殺人事件のニュースが流れていた。
美保を揺すって起こすと、もう起きて聞いていた。
「始めに、静岡で発生しました殺人事件のニュースからお伝えします。本日未明、静岡県静岡市郊外の大谷海岸で射殺された二人の男性の死体が発見されました。静岡県南警察署の調べでは、此の二人は昨日の夕方、市内ホテルのレストランの支配人である、新田進一さん40才が、暴力団お断りと書かれた表示を無視し、来店した二人に入店を拒否した所、暴力を奮われ逃走した後、一時間後に死亡し、障害致死で探していた二人である事が分かりました。
二人は孰も至近距離から一発で首を打ち抜かれており、即死しだったと言う事です。
尚、殺害状況から二人を殺害したのはプロの仕業だと見ております。また、二人の車のトランクからは覚醒剤2キロが発見されており
二人は何物かと覚醒剤の取引の最中に話がこじれ、殺害されたものと警察では見ております。
殺害された二人の身元は所持していた免許証から、大坂市在住の暴力団、辻村連合の的場組み組員若頭、堀田俊也32才と、弟分の関野実30才である事が判明しました。また、殺害された二人は先週大坂府警から覚醒剤密売の容疑で全国に手配されていた事も判明しました。また詳しい事は目下調査中と言う事です。・・・」。
テレビを消した。美保はホッとした表情を浮かべていた。
「京平さん、これなら私達の事は疑われないね。まさかトランクに覚醒剤が入っていたなんて夢にも思わなかったね」。
「でも安心はできないぞ、例えそうであっても少しでも関連性があれば警察は調べに来るからね。打ち合わせ通り話すんだよ」。
カーテンを開けると、梅雨の合間の晴れ間が覗いて真っ青な空が広がっていた。
美保はブラを着け、Gーンズのショートパンツにフィラのロゴの入った真っ白なTシャツに着替えた。私もまたペアのTシャツにG~ンズをはいて食堂に行った。
すると、宿泊客は既に食事を済ませ、両親と従業員たちはお茶してた。
母は私達を見ると厨房に行った、美保はその後を追うように厨房に入ると、笑い声が聞こえ、覗くと二人で食事の支度をしてくれていた。
「もっと寝てれば良いのに。美保さん、良く眠れたかね」?
「はいお義父さん、皆さん今日からお世話になります。何も分かりませんので宜しくお願いします」。
「若奥さん、いまも社長とその話をしていたんです。私達こそ宜しくお願いします」。
チーフの飯島貞雄は椅子から立ち上がり、従業員を代表して美保に頭を下げた。すると七人全員が立って頭を下げた。
美保は暖かい眼差しに感激したのか、目に一杯に涙を浮かべて頭を下げていた。
「皆んな、夕べも話したように二十四日の木曜日は二人の結婚式をペンション挙げてしますから。宜しく頼むよ」。
父は私を事務所に呼んだ。私は美保と事務所に行った。
「京平、美保さん。仮祝いでなくて結婚式にしたからね。食事を済ませたら二人松本へ行って指輪を買って来なさい。
私の知り合いの貴金属店は知っているね、もう話してあるから」。
そう言うと父は分厚い封筒を差し出した。それが金だと言う事は直ぐに分かった。
「父さん有り難う、でも自分の貯金で買うから良いよ。そのつもりでちゃと貯金もしてあるから」。
「そうか、じゃあそうしなさい。美保さん大きいのを買って貰いなさい。それから婚姻届の用紙と書類は役場から貰って来てあるから。美保さん、夕べ京都のお母さんから電話を貰いましたよ。娘の事を宜しくって、それから一日も早くお父さんを説得して会いに行きますからって」。
「はい、済みません。父は頑固なものですから」。
こうして私と美保は食事を済ませ、松本に出掛けた。そして父の知り合いの宝石店に行くと結婚指輪とダイヤの指輪を注文した。
リングの裏には1998・6・24と、お互いのイニシャルの刻印した。
私はダイヤの指輪を美保の左手に嵌めた。美保は泣いていた。
そしてカードで一括払いで払い、白馬に帰った。
母と父は早速美保の指輪に気付いて冷やかしていた。美保は照れながら本当に嬉しそうだった。私はその笑顔が一番嬉しかった。
すると母が大きな箱を運んで来た。
「美保さん、此れ先程届いたの。お母さんから美保さんにって」。美保は驚きながらも梱包を解いた。そして開けた。
その中には純白のウェディングドレスとブーケ、そして冠が入っていた。美保は両手で顔を覆うとドッと泣いた。
「お母さん有り難う、私親不孝しているのに」。母はそんな美保の肩を抱いてそっと涙を拭いていた。NO-19

小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(18)CG

2008-07-20 18:12:26 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(18)CG

その時、私はなんの罪悪感も感じなかった。息も乱れなかったし、手も膝も震える事はなかった。
「京平さん完璧。車もないし誰にも見られなかったよ。あんな事するからよ。天罰よね」。美保は平然と何も無かったように言うのだった。
「うん、ついにやっちまったな」。
「あんなの人じゃないもん、獣以下よ。でもその弾凄いね。見えたよ、フロントガラスまで突き抜けてったよ」。
「うん、いま入っている弾は鉄鋼弾だよ。四~五ミリの鉄板なら突き抜けてしまう強烈な弾だからね」。
「じゃあ今度やる時は車から出ない方がいいね」。
「え、まだやるのか」。
「もう一個やるのも二個やるのも一緒でしょう。今度は私がやる。お願い」。
「京都の男か?・・・親友を死に追いやったって言う」。
「うん、どうしても許せない。あの子が死んでも線香一本供えに来ないんだから。のうのうと生きていると思っただけで腹が立つもん」。
「僕がやるよ、関係者は必ず疑われるから。それだけは譲れないよ美保」。
「そうだよね。じゃあ帰ったら計画立てよう」。美保は驚くほど冷静だった。
「美保、そこのコンビニへ寄ってくれないか」。
車が入ると飛び出し、あるものを探した。美保が追って入ってきた。
「どうしたんですか」。私が花火の前で止まると。「そうか、頭いいね」とお徳用の花火のセットを持った。
そして、支払い済ませて出ると袋を開けた。そして家に向かった。
すると、パトカーが赤色灯を回転させながら前に出た。
「何してるんだろう?・・・まさか」。
「もしかしたらレストランの件で訊きに来たんだろ」
美保は不思議な顔をして頷きながら京平の見ていた。

すると、前を走っていたパトカーがアパートの前で止まった。美保は構わず駐車場へ車を入れてエンジンを切った。するとスーツ姿の中年の男が下りてきた。
「今晩は、済みません。紺野京平さんですか」。
「はい、そうですが」。
「一時間半ほど前の六時ころですが、駅ビルのレストランで支配人の新田さんという方が暴力団風の二人組に殴られていたのはご存じですね」。
「ええ、ちょうど食事を済ませて帰ろうとしていた時でした」。
「その二人の顔は覚えていますか」。
「勿論覚えていますよ、確か関西の辻村連合とか言っていました。それで支配人さんは大丈夫でしたか」?
「いいえ、先程連絡がありまして内蔵破裂で亡くなられたそうです。それで此の写真を見て下さい」。
そう言うと数枚の写真を出した。そして一枚づつ捲りながら私達に見せた。写真で面通しを始めた。

「あっ、刑事さんその人が支配人さんを殴った人です」。
「そうですか、失礼ですが貴方はどう言うご関係てしょう」?
「私のフィアンセです。と言うかもう一緒に暮らしています。時期に籍を入れるんですけど。妻です」。
「そうですか、それはお目出とうございます。ではこの男が支配人の新田さんを殴ってから蹴ったんですね」。
「はい、それからもう一人は、その人です」。
「そうですか、レストランに居合わせた方全員にお聞きしているものですから。ご協力有り難うございました。あのレストランには良く行かれるんですか」。
「ええ、仕事でも良く使わせて貰っているものですから」。
「そうでしたか、それでウエートレスの方たちも紺野さんの事を良く覚えていたんですね。なんでも引っ越しされるとか」。
「ええ。急に家の稼業を手伝う事なったものですから。それと実家に戻って結婚するんです」。
「そうですか、いや御めでたい事の前に失礼な事を色々お聞きしまして済みませんでした。では失礼します」。

私は意識して冷静を装っていた。しかし美保は全く動じなかった。それには私も兜を脱いだ。
そしてブリーフケースを持ってアパートに入った。すると先に部屋に入った美保は椅子に座っていたが膝が震えていた。
「私もう膝がガクガクだった、でもバレなかったよね」。
「フフフッ・・・ああ、あの刑事何も気付いてないよ。それにまだ二人の死体は見付かってないようだからね。
それからあの堤防は舗装されていたから、タイヤの跡も残る事もないし、荒い仕事だったけど完璧だ」。
「うん、それで此れからどうするの」?
「ああ、いまから必要なものだけ持って実家に帰る。後は長野から引っ越ししてもらった引っ越しセンターに頼んで同じように引っ越しして貰うよ。今は便利だよ、衣類から食器まで総て引っ越しセンターでやってくれるから。住所変更から光熱費の支払い、アパートを引き払う手続きまでやってくれるから」。
「そうなの、そんなに便利になったんだ。じゃあ必要な荷物だけまとめるね。少し待っててね。下着だけはみんな持ってってもいいでしょう。触られたくにから」。
「うん、そうだな。じゃあ僕は引越しセンターと不動産屋へ電話するから」。
美保は旅行用のトランクを出すと必要な衣類を入れていた。
私は不動産屋に電話したり、長野の引っ越しセンターに電話し、明日来て引っ越しをして貰えるか確認を取っていた。
そして必要なのはパソコンとソフト、オーディオ。CD、後は処分してくれるように頼んだ。
美保と暮らし始めて新しく買い揃えた物は何も無かった。総て結婚したら揃える事にして我慢していたのだった。

「京平さん、用意出来ましたよ。京平さんはいいですか」?
「うん、鍵は配電盤の中に入れておいてくれって。何も可も頼んだから、あとは不動産屋の木村さんが立ち会ってくれるってさ」。
「じゃあ帰ろう、私が運転するね。このアパートから私達始まったんだね。お世話になりました101号室さん」。
美保は目頭をそっと押さえると両手に荷物を持った。そして車に運んだ。そして戻って来ると紙袋を運んでいた。
私もまた残りのダンボール箱を二つ車に積み、ドアに鍵をかけた。そして配電盤を開けると鍵を入れて綴じた。
そして、助手席の下へブリーフケースを入れると美保は車を出した。そして一路白馬に向かった。
「京平さん、私達って凄い行動派ね。少し荒っぽいけど」。
「本当だ、なんでも思い立ったら吉日さ。あの二人も僕等にあわなきゃ死なずに済んだんだよな。運命って言う奴かな」。
NO-18-41

小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(17)CG

2008-07-20 18:03:54 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(17)CG

「立ち入った事をお聞きしますが気を悪くしないで下さい。お義父さんの会社の方はどうなんでしょうか。話だと資金繰りがどうのとか。もし資金が必要なら少しくらいなら援助出来ますが」。
「ええ、有り難うございます。お陰様で今は持ち直しました。京平さんにまでそんな心配させて恥ずかしいです。機会をみて私から結婚した事を主人に話します。娘の事を宜しくお願いします。美保、あまり我がまま言って困らせるんじゃありませんよ」。
「うん、お母さん有り難う。私頑張って良いお嫁さんになるから」。
「じゃあ私は此れで失礼するわね。主人に黙って出て来ましたから。美保、元気でね。京平さん、娘をお願いします」。
そう言うと母親はホテルを出て行った。私達も見送ろうと追うと、「美保、見送りは要らないから。誰かに見られても困るから」。
「うん、分かった。また電話するから。お母さんもね」。母は頷いて駅に向かった。
美保は涙を浮かべながら、じっと母を目で追っていた。そして振り向く母親に美穂はいつまでも手を振っていた。そして母親は駅の構内に姿を消した。
美保は母から受け取った封筒を胸に抱くと椅子に掛けた。
「美保、優しいお義母さんじゃないか。会えて良かったよ」。
「うん、父も母みたいだと良いんだけどな、お腹空いた」。
「そうだね、ここのレストラン美味いから食事にするか」。そして、ホテルのレストランで食事をしていた。
そこへヤクザ風な男が二人入って来た。すると、レストランの支配人が見て、男達に入店を断っていた。

「なんだと~っ、客を追い払うってか。わしらを誰だと思っとんねん。関西の辻村連合を知らんってか」。
「お客様、このレストランはサングラス、セッタ。ノーネクタイ。暴力団関係者の方は総てお断りさせて頂いております。入り口に書いてありますのでお引き取り下さいませ」。
すると、一人が支配人の襟元をつかんだ。すると同時に腹部の膝蹴りを入れた。うう~っと腹を押さえながら倒れた支配人の顔を二人で殴りつけた。
私は立とうとすると、美保は私の手を持って首を振って止めた。
そこへ警官が五~六人走って来るのがガラス越しに見えた。
「おいっ、サツだ。ヤバイ、逃げるぞ」。一人がそう言うと、支配人を思い切り蹴りを入れて走って逃げて行った。
支配人はのたうちまわると動きを止めた。

「キャ~ッ」ウェイトレスが悲鳴を挙げた。私は美保を残して見に行くと、口から血を吐いて目を向いていた。グッタリとして既に息はなかった。
私は支払いを済ませて美保を連れて帰った。
「京平さん、支配人さんどうしたの」?美保は心配そうに聞いた。
「最後に蹴られた時に内蔵が破裂したかもな。息が無かったから助かるかどうか分からないぞ?・・」。
「ひどい、あの人達はヤクザじゃないよ。あんなの、ただのチンピラじゃない。本当のヤクザって私達みたいな素人には手を出さないって言うじゃない」。
「うん。あいつらは看板だけで生きているダニだな」。
「ねえ京平さん、あの時に出てってどうするつもりだったの」。
「どうって、止めようと思っただけだよ」。
「無茶よそんなの、貴方まで殺されたら私はどうしたら良いの。もうそんな事考えないで。お願いだから」。
「あんな連中が居るんだ。ひどいな、もし食事をしても何か因縁を吹き掛けて帰るつもりだったろう」。
私は暴力団の横暴な手口を初めて目の当たりにして腹が煮え繰り返っていた。そして例の銃が頭に浮かんだ。

二人は無口になったまま駐車場に歩いていた。そして車に乗り込むと美保は私を見た。と同時に私も美保を見た。
そして見詰めたままじっとしていた。すると、美保は黙ったまま二度三度と頷いた。私には何を意味しているのか分かっていた。
そして席を代わると私はシートの下からブリーフケースを出した。「美保」。
「うん、あんなのただのゴミだから」。と当たり前のように言うのだった。
私は手袋をすると銃を取り出して消音器を着けた。そして鉄鋼弾をカートリッヂに詰め込むと装填した。
そしてヤクザが逃げて行った方面へ車を出した。そして駐車場を探した。
しかし中々見付からなかった。そして諦めて銃に安全装置を掛け、ケースに入れた。そしてアパートに向かっていた。
「京平さん見て。あのチンピラの車よ」。
美保の指さす方を見ると、大坂ナンバーで運転していたのは、支配人を最後に蹴って逃げた男だった。
「少し挑発して海岸にでも逃げようか」?
「うん、運転は大丈夫か」?
「任して、運転には少し自信があるの。じゃあ行くわね」。
すると、美保は業と車に接近して縦走した。すると、助手席の男は睨みつけるように私達を見据えていた。

「バ~カ。早よう大坂にお返りやす」。美保は窓を開けると笑いながら挑発した。「やんやて!」と男は怒鳴ると睨み付けた。
美保はアクセルを踏み込んだ。そして男に車の前に出ると真っすぐ南に走り、大浜公園に向かった。
すると挑発に乗った黒い車が追い掛けて来た。
「乗った!行くね」と大浜公園の手前を左に折れ、堤防沿いを走り、人気の無い松林に車を止めた。
すると、少し遅れて追ってくると追い越し、ズズズ~ッと砂埃を上げながら滑るように前に止めた。
「京平さん、此々なら誰もいない。お願いね」。
「任せろ」私はルームライトを消して車を降りた。相手のドアが開いて男が一人下りてきた。その男に銃口を向けて引き金を引いた。
「パシュッ」と波の音に消され、男は地面に転がり落ちた。
遅れて降りて来た男は何が起きたのか分からず見ていた。月明かりに照らされた男に顔が一変した。
「わ、分かった。助けてくれ。頼むから」。と運転席へ飛び乗った。
男は震えた声で言いながら車に乗り込んだ。私は後ろから背もたれを狙って引き金を引いた。
リアウィンドーに小さな穴を開け、運転席の背もたれを突き抜けて男の首を貫通した。その弾はフロントガラスを突き抜けた。
私は辺りを見回して車に乗り込んだ。美保はバックして向きを変えると大浜公園方面に戻った。NO-17