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小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(21)CG

2008-07-23 19:01:03 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(21)CG

「そうですか、黒っぽい車ですか。その車が二人の車だったんです。それで近藤さん達はそのままアパートへ戻られたんですね」。
「ええ、そうです。刑事さん、ニュースで聞きましたが、あの二人は覚醒剤の取引で殺されたと聞いていますけど」
「ええ、一応警察ではそう見ています。しかし他人の事には無関心ですな。あの晩も大勢のカップルが現場に行っていたそうですが、二人が殺されていた事には誰一人として気付いた者がいなかったんです。
通報は毎朝散歩する老人が見付けて知らせてくれたんです。死亡時間が午後八時から九時。十時間も誰も気付かなかったんです。目撃者もいませんし、近藤さんが頼りで来たんですがね」。
「済みません、私も美保もただ逃げる事で必死でしたからね」。
「いいえ、分かります。それにあの車はスモークガラスで外からは車内が見なくなっていましたからね。ともかく、貴方々に何もなくて良かったですよ。
もし何か思い出されましたら御面倒でも南警察署の三河か小森までお知らせ下さい。では失礼します」。
私は三河警部補と書かれた名刺を受け取った。そして二人の刑事はだらっと手を下げ、肩を落として重い足取りで玄関を出た。
私と美保は表に出て、車で帰る刑事を見送った。
「京平、殺人事件って此の間のニュースでやっていた二人組の事か、なんと言う暴力団が海岸で殺されていた事なの?・・・」
「うん、俺達がホテルのレストランからアパートに帰るときに暴走族風な車に追い掛けられて逃げたんだけど、その車がホテルの支配人を蹴り殺した二人組だったんだって。その二人が殺されて聞きに来たんだ、自分達には関係ないよ母さん」。
「そんな事は分かっているわよ。それより暫くのんびりして、引っ越しの疲れを取ってから仕事を徐々に覚えてくれればいいから」。母はそう言うと事務所に入って行った。私達は部屋に戻った。

「京平さん、あれだけの事を聞きに業々静岡から白馬まで来るなんて警察も大変なんですね」。
「うん、でも此れで僕等の事は疑っていたい事が分かって良かったじゃないか。隠さず話して良かったろ」。
「そうね。でも私あの人達を殺しても全然罪悪感がないの」。
「うん、僕も同じだ。不思議なほど罪悪感が無い。憎しみを持つ心って怖いよな。理屈や道理では分かっていても、二人を殺したと言う実感がない。頭の中で正当化しているんだろな」。
「うん、そうかも。でも悪はあの二人よ」。
そして、その晩から三日のあいだ雨が降り続き、本格的な梅雨の到来かと思える程雨の降りは凄く、台風かと思える程だった。。
ペンションの泊まり客は外出もせず、思い思いに時を過ごしていた。私達は母や父の手伝いをして仕事を教えて貰っていた。
そして六月も終わろうとしていた三十日、その日の夕食時に客と一緒に食堂でテレビを見ていた。
すると静岡の殺人事件の続報が流れていた。私は美保を呼ぶとニュースに見入っていた。
すると、私達が使った銃弾の事でとんでもない事が分かった。美保は私の顔をじっと目詰めていた。そして部屋に呼ばれた。
「京平さん、殺し屋が使った銃弾と同じって、あれってどう言う事なの。あれは本当なの」?
私は唖然としながら「実はさ・・・」、と銃の入手経路を正直に話した。
「じゃああの銃やライフルはその事故車の周りに落ちていたのね」。
「うん、あの亀石峠を走っていたら霧の中で事故っていたんだ。それで助けに行ったら、二人はフロントウィンドを突き破ってボンネットの上にいた。脈を診たらもう亡くなっていたんだ。
それで顔や恰好から判断したら奴等は普通じゃないと思ったからね、それで転がっていたジェラルミンケースを持って帰ったら、あの銃やライフルが三丁づつ入っていたんだよ。
まさか福岡や大坂で要人が暗殺された銃だとは思わなかったよ」。
「そうだったの、じゃああの三人は本物の殺し屋だったんだ。やったじゃん。これで誰を殺してもその殺し屋のせいに出来るわよ。話していたじゃない。三人の他にも仲間がいた様だって。
極悪な少年に殺された被害者の遺族が大勢泣かされているわ、名前も顔も裁判の内容すら知らされない遺族が。私達がその悔しさと無念を処刑して補ってやろうよ。
でも更生して真面目にやっている子は省いてさ。少年院を出てまた悪の仲間に逆戻りして世間に迷惑を掛けている悪をさ」。

私はその言葉を聞いて身体が震えるほど驚いた。しかし決心するには時間が掛からなかった。私は美保を抱き締めると美保はそっと目を綴じた。
そして少しばかりの荷物を持つと、母に山小屋に二~三日泊まって来る事を話した。母は驚く事もなく何も言わず頷いていた。
そして途中のスパーで食糧を多めに買い込むと山小屋に向かった。雨は山小屋に着く頃には止んでいた。
美保は除湿機のスイッチを入れると風呂を洗って湯を張っていた。私は寝室のエアコンを入れて空気を入れ換え、お茶を入れて美保が来るのを待っていた。
間もなく来だ。「ちょっと来てごらん」。
「うん、何かあるの?・・・」不思議そうに見ると腰を上げた。
美保を連れて地下室のドアの鍵を開けた。そして奥の棚を開け、ジェラルミンのケースを取り出した。
「それって仕事の・・・持ってきたの?・・・」。黙って開けた。
「あっ・・凄~いっ本当だったんだ。ねえ私に一丁づつ頂戴」。油紙で包んでビニール袋にいれたライフルと銃を取り出して美保に見せた。
「うん、でも素手で触るなよ。必ずメディカルグロープをして持つように。それから今後は割烹着を着て射撃の練習しよう。硝煙が残るからね、それから花火を買って来ようか、銃を使った時は硝煙が残るから、花火をすればその硝煙の匂いをごまかせるか」。
「うん、分かった。でも凄い弾だね、此れ全部そうなの」。
美保は何千発もある弾を見て目を見開いていた。そして部屋に持って行き、分解して見せた。分解の手順と手入れの方法を教えた。
じっと食い入る様に見ていた美保は、まるでオモチャをいじるような眼差しで私の教える通り直ぐに覚えた。
「ねえ此のピストル何処にも刻印やマークが入ってないんだね」。
「うん、特別に何処かで製造されたんだろう。でも凄い銃だよ。きっとあの殺し屋も腕が良かったんだろうな。
美保、銃を使ったら必ず薬莢は持ち帰ってくれよ、また使うから」。
NO-21


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