エンターテイメント、誰でも一度は憧れる。

PCグラフィック、写真合成、小説の下書き。

20XX年・クエスチャン (-15-)

2010-09-24 01:31:47 | 20XX年・クエスチョン
20XX年・クエスチャン (-15-)

11時半、12時から昼食を取りながら会議が控えていた。
そこにはJESプロジェクト一万八千人の各部署のリーダー、補佐官。陸海空の若き優秀な将校や副官達が勢揃いしていた。
総勢500人、JESチーフ佐伯晃の初顔合わせであった。NO-14
横須賀市内Kホテル。
ロビーには佐伯家、早瀬家、飛翔の間。架空の結婚式会場が設けられている。極秘事項である事は明白であった。                  会議の趣旨はホテル関係者でもトップクラスの人間しか知らされていない。飛翔の間がある5Fフロアーは貸し切り、ホテル関係者はおらず、ウェイター、コンパニオンは全てJES隊員が行っている。隊員たちは写真で佐伯と副官である真由美の顔は知らされていた。
佐伯と真由美、5人がフロアーに顔を出す。ズラリと立ち並び、佐伯たちを迎える隊員。静岡で移動観測車の大型トレーラー内で見たグレーのツナギの制服である。
胸にはIDカード、帽子を取り、隊員たちは一斉に直立する。
「佐伯司令殿、副指令殿に敬礼ッ!」。シュッと制服が擦れる音。一斉に敬礼する。
副大統領、大友良三から敬意に対しては敬意で返してくれと言われていた。照れくさそうに敬礼し、ぎこちなく隊員たちを見回す佐伯であった。
真由美も釣られる様に敬礼する。林、田島、新田もつづく。そんな列から屈強そうな男性隊員3人、緊張して頬を強張らせた女性隊員の2人、5人が前に出る。
隊員たちの両手には佐伯たちの制服が抱えられている。
「ありがとう、宜しくお願いします」。受けとろうと腕を延ばす。
「お持ちします、控え室はこちらです。ご案内します」。
まるで軍隊そのままの言葉であり、声がフロアー中に響き渡る。IDカードには空母大和艦長、狩野誠、35才、と書かれて居た。この若さで世界最大の巨大空母の艦長・・・
海軍武官か、佐伯は呆気に取られた。「お願いします」。と、後につづく。
隊員たちが立ち並ぶ長い廊下を一番奥まで進む。正面には佐伯指令、副指令控え室。
そう書かれたドアの前で狩野は止まった。
狩野はドアを開け、先にはいった。周りを見渡し、スッと端に避ける。
「異常ありません、奥様もどうぞ」。
真由美は唖然と狩野を見上げる。入籍した事は林、田島、新田の3人しか知らない筈なのに。不思議そうに中へ入る。追って女性隊員もつづく。
「・・・どうして入籍したことを?・・・」。
「はい、警備の者から知らせが入りました。朝一番で入籍されたと、御結婚おめでとうございます。では、お着替え頂きましたらお呼び下さい」。
抱えた制服を机の上に置き、振り替える。 カツンッと靴を鳴らし、直立不動の姿勢を取り、敬礼して出ていった。
「驚いちゃったね、私たちに護衛が着いていたなんて。知っていたの」。
「うん、でも真由美に言うと気を遣うと思ったから。みんな若いな」。
「そうね、チーフ殿が一番年上みたい。今回の異変に政府も本腰を入れて取り組んでいるってことよね。何たって陸海空で1万8千人も参加しているんですもの。そのチーフだなんて凄いわね」。そう素直に喜んではいられなかった。それだけの人間の命を預かったのだ、もし、観測地点に異常現象が出現したら。そう思うだけで鳥肌が立つ思いであった。
目の前で後ろ向きに下着姿になる真由美。いつも研究室に閉じ籠っているせいか、眩しいほど色白の肌、スラリとした脚、括れた腰、その腰を包む真っ白なランジェリー。恋人から妻となった今、より魅了され美しく思える佐伯だった。真由美は先に着替え、机に座って書類を見る佐伯の隣りに座った。
「もう~ッ、そんな事してる時間ないのよ。早く着替えて下さい」。そう言いながら、佐伯の手から書類を取リ。不意に抱き付いた。
「大丈夫よね・・・私たち大丈夫よね」。真由美の体は震えていた。 
明るく振る舞っていた真由美ではあったが、心の中では不安が渦を巻いていたのだ。そっと唇を重ね、震えが止まるほど強く抱き締めた。
「俺が着いてる。俺は臆病だから、レーダーが僅かな異変をキャッチしても俺は引き上げるよ。このプロジェクトのキャッチフレーズは臆病になれだ」。
真由美「嘘ばっかり・・・人一倍好奇心が強い癖に・・・うん、でも貴方と一緒なら何も怖くない。でも、絶対に無理は嫌よ。私がいるんだから」。
コンッコンッ、「礼子です。チーフ、準備が整いました」。
「ハーイッ、いま行きます」。
「ウフッ、ほらッ、早く着替えないから。ハイ、バンザイして」。
照れながら両手を上げる佐伯、ベルトを緩め、シャツをたくしあげるように、脱がせた。用意された制服は、制帽、着替え用と共に3着が入っていた。NO-15-30

20XX年・クエスチャン (-14-)

2010-09-06 01:18:26 | 20XX年・クエスチョン
20XX年・クエスチャン (-14-)

「真由美の言う通りです。旅客機は一瞬にしてエンジンは停止し、乗員乗客は即死だったでしょう。でも疑問は残ります」。
新田の表情は見る間に蒼白し、眼鏡の下の目は、カッと見開いていた。
佐伯は次のページを捲った。
「解らないのは何故あんな大きなタンカーや航空機が消えたかです。何処へ消えたかです。それも同時刻に世界中で不規則な範囲で異変が起きてるんです」。
真由美は夫にも言えず、ある仮説を描いて居た。口にして良いのか戸惑いながら夫の横顔を、チラ、チラと見ている。
「真由美、何か良いたそうだけど・・・」。 
「う・・うん、科学者として根拠が無いんだけど。あの真空層は異次元空間じゃないかって、でも真空層の周辺から磁波が観測されてないから・・・」。まるで少女の様に、尻蕾に言葉がか細くなっていた。佐伯は二度三度と頷く。
「俺もその事は頭になかった訳じゃないんだ。こうは考えられないか。宇宙にブラックホールやワームホールが存在するなら、何らかの理由でこの地球上に類似した何かが出現したとしたら」。
「何だ、その聞き慣れないワームホールと言うのは。ブラックホールと言うのは何でもかんでも引き寄せて飲み込んでしまうって奴だろ。
高密度の天体で重力が強烈に強い為に物質も光も放出できないっていう」。
「知っているじゃないですか。ええ、ワームホールと言うのは簡単に言うと新しい宇宙に通じる入り口だと言われています。その先にはホワイトホールと言う新しい宇宙が存在していると言う学説です」。
「ああ、聞いた事あります。ホーキンス博士ですね」。
「ええ、物理学者なら誰でも知っている名です。当時は不治の病だった筋ジストロフィー症と闘いながら、アインシュタインの一般相対性理論を解明した車椅子の偉大な物理学者です。今ではDNA治療で完治しますが」。
「でもどうしてそんな物が・・・」。 
その問いに答えられる適格な言葉は用意してなかった。
「逃げろ~ッ崩れるぞ~ッ」
倉庫中に響き渡る作業員の声。振り返った。佐伯たちは我が目を疑った。灰色の埃に包まれていた。目を閉じ、袖で口と鼻お覆った。
「皆~ッ!じっとして動くな~ッ!・・・」。新田の声が響き渡る。次第に粉塵が収まり、徐々に視界が開けて行く。そこで目にした物は・・・旅客機の残骸を支えていた足場を残して機体が粉々に崩れていた。  
五人は走る事を忘れた様に小幅に足を運ぶ。関係者も唖然と立ち竦んでいる。
「嘘だろう、なんなんだこれは。何が起こったんだ。これが飛行機の機体か、まるで砂の様にサラサラじゃないか」。
佐伯は屈んだ、砂状になった機体に振れ様と腕を延ばす。
「駄目ッ!触っちゃ駄目ッ!・・・調べてからじゃないと危険よ」。
「大丈夫だよ、もし毒性があればここに居る人間はとっくに死んでいるさ。崩れた時に舞い上がった埃を吸い込んでいるからね。         
さっきまで乗って調べていたのにどうして突然崩れたんだ。御覧、さっきより粒子が細かくなってる。小麦粉だ」。
まるで生き物の様に粒子が更に分解している。ポケットからビニール袋を出して広げ、真由美に持たせ、両手でゴッソリと掬ってサンプルを取った。
「誰かッ、崩れた所をビデオに収めた人はいますかッ」。
周囲を見回す佐伯。 
「司令、全て収めました。監視カメラでも撮っています」。それは事務所から流れるスピ-カ-からだった。
「佐伯司令さん、撮っているそうですよ・・・ウフッ・・・」。
「からかうなよ・・・真由美、皆さん、これはきっと真空帯に関係あるぞ。
新田先輩、至急オーストラリアで墜落したセスナの脱落した垂直尾翼とデーターを取り寄せて下さい。きっと向こうでも同じ事が起きている筈です」。
新田は頷き、事務所を見ながら大きく手を上げた。そしてトランシーバーを持つと、佐伯に言われた儘を指示する。
佐伯は思った。消息を絶ったタンカーや航空機が真空帯が原因なら・・・生存者は絶望だろうと。何万人もの人達が犠牲になった。
自分等学者の怠慢が悲劇をもたらした。そう思うと、用宗港で見た肉片となった女性の顔が脳裏を過ぎる。沈黙し、粉状になった機体を見詰める佐伯だった。
そんな夫が何を思うか真由美は察していた。そっと左腕を夫の視線に差し出した。
「うん、分かっている。そろそろ行こうか」。
NO-14-28