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PCグラフィック、写真合成、小説の下書き。

刻塚-(NO-25)

2009-11-29 00:07:13 | 小説・一刻塚
刻塚-(NO-25)

「そんなのまだ分からないさ、それより馬場達はどれぐらい稼いでいたんだ」
すると手島加奈はバックから書類を出して広げた。そして渡した。
「それに書いてあるけど、貴方に言われた様に都内や大坂のコインショップや骨董業者、ネットのオークションを調べたら出て来る出て来る。
何だか知らないけど大判とか言う小判や二朱銀とか言う古銭を売って、総額で一億二千万円以上稼いでいた様ね。その小判やなんかは彼女が話していた一時塚とか言う所から盗み出したの?・・・」

「うん、らいしよ。所で山田さん、どうです」。
「ええ、怖いもんですね。どうぞ、発掘して下さい」。
「猿渡さん、犯人はどうして馬場と仁科の二人の死体を埋めなかったんです。二人は盗掘していたんだから塚には穴が掘られていた筈ですよね」。
南田刑事は麻代にも分かる様な質問し、冷ややかな目で見られていた。
「お前はいままで何を聞いていたんだ、祟りとか悪霊に取り憑かれたと言う絶好な隠れ蓑があるだろう。だから塚を埋め戻して死体は放置しておいたんだよ。
悪霊が人を殺して埋葬するか」。筒井は呆れた様に苦笑いを浮かべた。
「皆さん、ここでの話は一切他言しないで下さい。先輩、今から塚の発掘をさせてくれませんか。祟りなんか絶対にありませんから。でも埋葬されてる死者に敬意を表して発掘して貰いたいですけどね」。

「分かった。長野県警に頼んで来る」。筒井はそう言い残して南田刑事と出て行った。すると、入れ代わる様に山田刑事と後藤公子が戻って来た。
「親父、俺も警部補と署へ戻るから姉さん頼むよ」と、公子を残して出て行った。
「後藤さん、この家の人間になったら。山田さんもそれを望んでいますよ」。
その猿渡の言葉に宿の主は公子を見詰めて頷いていた。公子は嬉しそうに目に涙を溜めて頷いていた。
「公子、その前に大事な話がある。それを訊いてから返事して欲しい」。
「お父さん、兄の事でしょう。それと母の?・・・」
「公子・・・お前?・・・」と、主は呆然と親戚たちを見渡した。
「私知っていました、あれは小学校六年生の冬に里子で来た時でした。太一おじさんとおばさんが話しているのを聞いてしまったの」。すると、左上座に座る山田太一は声を出せないほど驚いていた。そして両手を着いた。
「その時に思ったの、お母さんを谷に落としてしまって、その責任を感じて私を可愛がってくれてるんだって。私に双子の兄がいたなんてそれまで知りませんでした。

私はお父さんが来てくれるのが嬉しかった。
実の父でさえ一度も会いに来てくれないのに、山田のお父さんは毎年学期毎に決まってお土産をもって会いに来てくれました。
お盆休みやお正月には里子で実の子供の様に扱ってくれた。ここへ帰れる事が嬉しくてたまらなかったんです。
里子は十日って決まっているのに、私だけ外の園児より余計に泊めてくれました。
最初その話を聞いたときはショックでした。母は私と父を捨てて出て行ったと思い込んでいましたから。でも、正直言うと母の顔は覚えていないんです」。
すると、麻代は泣き出してしまった。両手で顔を覆うと猿渡の背中で泣いていた。

「公子さん、わしが、わしがあんたのお母さんを・・・」と、床にひれ伏した。「おじさん、もういいの。おじさんの家のお仏壇に無名の位牌がある事を知っています。毎日お祈りしてくれいていたのも知ってます。もういいんです、それでいいんです」。
猿渡も手島加奈も涙を滲ませていた。山田太一はただ済まないと詫び続けていた。
「確かに平野民子さんを殺害した事は許せる事じゃない、それを庇っていた事も許せる事ではありません。
その為に平野さんの家族を崩壊させて、何人もの人生を狂わせてしまった。それも事実です。殺した者も苦しみ悩みそれなりの20年だったと思います。
こんな事は言いたくないが、法的には時効が成立しています。後藤さんも許してくれると言っています。手島、君は何も訊かなかったな。聞かなかったよな」。
「はい、可哀そうな民話は聞きましたけど」と、涙を拭う手島加奈だった。

「公子、じゃあ私達を許してくれるのか?・・・」
「はい、もうとっくに許していました。太一おじさん、泣かないで。お父さんも」「啓太さん、私来て良かった。こんな感動する事ってないもの」。
「うん、まさかこんな事が過去にあったなんて思いもしなかったよ」。
「猿渡さん、貴方が来てくれなかったら私達はずっと悔いを残したままでした。それに公子とも出会う事もなかったでしょう。
太一さん、これで心の重荷も少しは軽くなった。良かった、本当に良かった」。
NO25-47

刻塚-(NO-24)

2009-11-25 12:34:21 | 小説・一刻塚
刻塚-(NO-24)

「はい、何かあった事は確かです。翌日は馬場さんのマイクロバスで別所まで送って貰ったんですけど、シートの下に泥だらけのシャベルがシートに包まれて隠す様に置いてありました。それから、一週間の予定を終えて五月五日には東京へ戻りました。そして家に帰ったら宮本さんから電話があったと母が言うんです。それで着替えて電話しようとしたら、宮本さんから電話が入ったんです。
宮本さんが言うには、馬場と仁科は只の泥棒だって言うんです。あの晩、塚から小判が何枚も見付かったんだそうです」。

「エ~ッ・・・それは本当かね」老人はムッとした様に睨みつけた。公子は驚いた様に肩を竦めると頷いた。
「お爺さん、公子は言い伝えを守って行ってないんだ。そんな目で見るなよ。怖がっているじゃないか」。
「お父さんいいんです、黙っていた私が悪いんですから」。
「それから、公子さん貴方は馬場達から威されていたんじゃないのか」猿渡は溜め息交じりに見詰めた。すると、公子はポロッと涙を流した。

「はい、その数日後に勤め先に馬場さんが訪ねて来ました。宮本さんから聞いた事は黙っていろと、もし警察に届けたら私も仲間だったと言うからって。
それに、会社にも話すと言われました。それで私は何も言えずに黙っていました。
それであの事故です、八月に両親が交通事故で他界しました。
そしたら、父に二千万の借金がある事が分かったんです。小さな町工場をしていた両親は、この不景気でローン会社から借りていたんです。
それで土地を売って返済しようとしたら、土地も銀行の担保に入っていて、生命保険までがローン会社の担保になっていたんです。
私の貯金なんか知れています、両親のお葬式を出すのがやっとで、債権者から裸同然で家を追い出されてしまいました。
そんな時に馬場さんが現れたんです、黙ってこれを使えと分厚い封筒を私に。でもお断りしました。そしたら、今夜から泊まる所もないんだろうって、正直、私のお財布には数千円しかありませんでした。私は封筒を受け取ってしまいました。
二百万円も入っていました。今後何があっても口をつぐんでいろ、いいな。そう言って帰りました。それから私の前には現れませんでした。
それから私は、そのお金でアパートを借りて今の会社に入りました」。
山田英伸は肩を震わせて泣いていた。

「公子、どうして私の所へ来なかった。ここはお前の家だと言ったじゃないか」。
「お父さん、御免なさい。御免なさい」。そう言って公子は手を合わせていた。
「それは仕方ないよ公子さん、自分がその立場にいたらその金を受け取るさ。じゃあそれっきり馬場と仁科から連絡はないんだね」。猿渡は優しく問い掛けた。
「はい、一度もありません。でもいつ来るかって毎日脅えていました」。
「馬場と仁科はもういません、去年の九月に殺されていました」
「エッ・・・殺されたってどう言うことです。宮本さん達を殺したのは馬場さん達じゃなかったんですか」。公子は愕然と猿渡を見た。
「ええ、実は昨日一時塚から白骨死体が二体発見されましてね。二人が身に付けていた服に免許証が入っていまして。馬場伸雄と仁科孝司の免許証でした。
それから、コンビニの袋がありましてね。中に残されていたレシートから去年の九月二十日に買った物と判明しました」。

「そんな、では宮本さんや浜崎さん達四人を殺したのは誰なんです・・・まさか、私達の誰かですか」公子の驚き様は半端じゃなかった。
すると、そこへ山田刑事が戻って来た。そして公子を見て驚いていた。
「公子さん・・・やっぱり公子さんだろ。親父、どうして?・・・猿渡さん」。
「お姉さんの公子さんですよ」猿渡はそう言うと簡単に説明した。
「そう、去年の五月に来た人達と一緒だったの。でもどうして連絡しなかったの、
親父公子公子って心配していたんだぞ。俺はまだ九才だったけどさ、実の姉さんだと思っていたのに」。と政男は目に一杯に涙を溜めていた。

「ごめんね政男ちゃん、政男ちゃん刑事さんなんだってね。知っていたら相談していた」と、公子は立ち上がると山田刑事に抱き着いて泣き出した。
「政男、部屋へ連れてって休ませてやりなさい。猿渡さんいいですね」。
「ええ、もう用は済みましたから」と、猿渡は頷いた。
「はい、姉さんちょっと待っていて。警部補、これは大谷刑事と二人の白骨死体の解剖所見です」と、山田刑事は書類を渡すと一礼し、公子を連れて出て行った。
「猿渡君、どう言う事なの。馬場信雄と仁科孝司は誰に殺されたの、貴方の事だからもう分かっているんでしょう。教えなさいよ」。まるで恋人の様に話す手島加奈に、麻代は少々焼きもちを抱いた。そして業と猿渡に寄り添ってお茶を入れていた。