エンターテイメント、誰でも一度は憧れる。

PCグラフィック、写真合成、小説の下書き。

刻塚-(NO-34)

2010-01-23 22:40:17 | 小説・一刻塚
刻塚-(NO-34)

「勿論よ。そしたらね、去年の2月10日の法要に馬場と辻本が来たんですって。
それで、教授の遺品で奥さんや子供さんには何が何だか分からないからって、馬場と辻本の二人に遺品の整理を手伝って貰ったって言うの。
その時に、長い表みたいな書類と分けの分からない写真が出て来たんですって。
馬場がそれを見て懐かしいとか言って、形見に欲しいって言うから渡したんですって。それが一時塚の地下探査のデーターだったらしいのよね」。
「間違いないだろうな、教授は大変な物が埋もれている事を知って家に持ち帰ったんだろう。それを明かさないまま死んでしまったと言う訳か。
それを偶然馬場たちが見付けて悪い虫が騒いだってことか。馬場たちは女子大生を目隠しに使ったと言う筋書きか。
それで、その女子大生達は馬場から分け前を貰っていたのか?・・・」
「ええ、皆な200万円貰ったって供述したわ。それがあったから口が堅かったのね。でも厳重注意と言う事で不問にしたけどね」
「そうか、それは良かった。山田さんも被害届けは出さないと言ってくれたからね。これで馬場と一時塚の拘わりが分かったけだ、後はあの白骨が誰か分かれば二人を追い詰められる。本庁も動き出したんだろ」。

「勿論よ、あの白骨死体の大きい方の一人はA型で馬場信男と見られていたけど。馬場のマンションから検出された馬場の髪の毛のDNAとは一致しなかったわ。
仁科は0型だけど、仁科の実家の部屋から採取された仁科の髪の毛のDNAと一致しなかった。二人は全くの別人と言う事がハッキリしたわよ。
それで、馬場と仁科の二人がかかった歯医者だけど、都内と大坂の看護婦と医者が二人の顔を覚えていてね、写真を見せたら別人だと証言したわ。
いま大坂府警と本庁でモンタージュ作っているから。でも、猿渡君の言う様に浮浪者やホームレスだったら見付けるのが難儀よね」。

「いや、ホームレスだったら見付けるのは簡単だぞ。彼等は縄張りがあってな、公園や駅事にグループを作っているからな。モンタージュが出来たら上野公園にいるホームレスのボスの通称ジキル博士に聞け。俺の名前を出せば教えてくれるから」
「エ~ッ!なんでそんなホームレスのボスなんか知っているの、ジキル博士ってジキル£ハイドのジキルなの」と、手島加奈は驚いたが、麻代はもっと驚いていた。
「うん、俺が本庁にいた頃に暴走族に絡まれている所を助けた事があってさ。それから中良くなってさ、時々情報を貰っていたんだ」。

「エ~ッ!・・猿渡君情報屋なんかいたの」と、目を白黒させる手島だった。
「そんなの敏腕刑事なら誰でも使っているだろ、都内のホームレスの事ならノートパソコンに入れて、何処に誰がいてって、区役所みたいに分かるぞ。
ジキル博士は医者だったらしくてな、暴力団も診て貰っている人だ。善い人だよ」
「そう、じゃあお世話になろうかな。上野のジキル博士か、でもなんでホームレスなんになったの?・・・」
「うん、内緒にしてくれと言われているから加奈でも話せない。約束だかなら、信頼を壊したくないから、悪いな」。
「ううん、それって大事なことだから。もう訊かない、それとあの女性の事が分かったわよ。名前は向坂幸江30才、原宿にある特種メイクの専門学校の先生だった。先月の15日に学校から原宿署に捜索願いが出てた」。
「そうか、特種メイクの教師か。それで、殺しの現場にいつもいた老夫婦の事は」

「その事だけど、それが変なのよね。四県の所轄は事件があったその日に事情聴取して、後は携帯電話に電話して直接有って聞いてないの。
貴方に言われて、あれから帰って直ぐに手配したんだけど、警察に話した住所にはそんな老夫婦は住んでないの。
それに、所轄の調書に控えてある電話は携帯電話でね。調べたらプリペード用の携帯電話で登録者は不明。四県ともね」。
手島加奈はそう話すと何気なく部屋の隅に目をやった。洗濯物が干してあり、麻代の下着と猿渡のトランクスが下がっていた。そして目を閉じて視線を変えた。
「じゃあ私は帰るね、帰ればモンタージュできていると思うから。この事を直接報告したかったの。麻代さん、また寄らせて頂いていいかしら」。

手島加奈はどうしたのか急に落ち着かないそぶりを見せた。
啓太と麻代は同棲しているのかと、手島加奈は動揺している様だった。
「手島さんならいつでも歓迎です」。麻代もまた心にもない言葉を口にしていた。「加奈、そんなに急いで帰らなくてもいいだろ。まだ八時じゃないか。それに、モンタージュだって出来れば電話が入るだろ」。
NO-34-65

刻塚-(NO-33)

2010-01-17 13:02:47 | 小説・一刻塚
刻塚-(NO-33)

「そうなの・・・じゃあ帰る?・・・」
「うん、レポートも書きたいしさ。だからって家に帰れなんて言わないよ」。
「うんッ!だったら帰る」。麻代は嬉しそうにキスすると部屋を片付けていた。
「麻代、おれは支払いを済ませて来るから」。猿渡はそう言うと手荷物を持って部屋を出た。そして事務所をノックした。そして帰る事を告げた。
「エッ・・・お帰りですか。分かりました。では此れをお持ち下さい」主は金庫を開けると和紙だろうか、包んだ薄平たい包みを差し出した。
何だろうと受け取るとズシッと重かった、大判だ、直ぐに分かった、包みを開けた。大判と小判、二朱銀が数枚包んであった。猿渡は呆然と主を見た。

「これは貰えませんよ、この村の宝ですから」
「いいえ、まだ沢山あります。此れも猿渡さんの助言がなければ分からなかった事です、記念と言っては変ですが。どうぞ受け取って下さい。それから、宿泊費は警察の方へ回してくれと聞いていますので」。
そこへ麻代が降りて来た。そして部屋の鍵を差し出した。そして小判を見た。
「凄いね、私も欲しくなっちゃった。なんか犯人の気持ち分かるな」。
「麻代、これ頂いたよ」
「エッ!・・・ほんとに頂いたの。おじさん、ほんと!」と、キョトンと主を見た。

「はい、ちゃんと奥さんのもありますよ」と、金庫から同じ包みを出して渡した。
「奥さんのご両親にどうぞ」。麻代は驚きながら両手で受け取った。
「有り難うございます、でも本当に頂いていいのかな」。
「せっかくだから頂こう。それから宿の支払いは警察が払ってくれるそうだ」「エッ・・・なんかこんな凄いお土産まで頂いた上に。困っちゃう」。
そこへ後藤公子が手提げ袋を二つ下げてやって来た。

「お父さん此れでいいですか」。と手提げ袋を二つ抱え来た。
「うん、猿渡さん、此れは信州の土産です。奥さんのご実家にもどうぞ」二人は戸惑いながら受け取った。
「猿渡さん、いろいろ有り難うございました。お陰様で山田の家の娘になれました。落ち着いたら静岡へ遊びに行っても良いですか」後藤公子は嬉しそうに二人を見た。「ええ。ぜひ来て下さい。その時は山田刑事と一緒にね」

公子は真っ赤になって頷いた。そしてタクシーを呼ぶと上田市に向かった。
赤田村から一時間三十分、上田駅18時18分発長野新幹線あさまに乗り、東京へは僅か1時間足らずで着いた。
そして待ち時間も差ほど無く、20時17分発名古屋行きひかり291号に乗り込んだ。車内は混み合う事もなく、空々だった。窓際に向かい合って座った。
二人は早速きよすくで買った幕の内弁当で夕食を済ませた。麻代は満腹になったのか疲れたのか、幾分シートを倒すと眠ってしまった。
そんな麻代の膝が開き、ミニの隙間から真っ白な下着が露になった。こん盛りとした股間が覗いていた。猿渡はジャケットを脱ぐとそっと掛けた。
そして、静岡へ着く直前に計った様に麻代は目を覚ました。
21時27分、遅れる事もなく定刻通りに静岡に着いた。静岡は長野と違って蒸せ返る程暑く感じた。

「ワア~ッ静岡は暑いわね。こうしてみると長野は涼しいんだね」。
「うん、日中はそうでもないけど朝夕は涼しいよな」
猿渡は麻代の荷物を持ち、改札を出た。ムッとする暑さに額と体にジワッと汗が吹き出た。そしてタクシーに飛び乗ると安東のアパートへ帰った。
部屋はたった三日留守にしただけなのに、ムッとするカビ臭い空気が二人を迎えた。

「暑いわね」、麻代は窓を全開にエアコンのスイッチを入れた。
「ねえ啓太さん、家のお土産どうしようか?・・・」
「今から届けに行こう、歩いても10分だろ」。
「うん、じゃあ歩いて行こう」二人は窓を閉めてエアコンを付けたまま部屋を出た。そして土産と麻代が貰った小判を持つと歩いて実家に向かった。
パッパッ、とクラクショクが鳴って真横に車が停まった。「もうっ危ないわ・・・」麻代は驚いた様に言葉を飲み込んだ。窓がス~ッと下りた。
「麻代。啓太君、長野じゃなかったのか」。それは麻代の父親の車だった。
「お父さん、ビッリするじゃない。用事が出来ていま帰ったばかりなの。ちょうど良かった。これお土産、届けようと思っていたの」。

「そうか、じゃあ乗りなさい」と、父はドアロックを解除した。
「いいよ、行くと長くなるからさ。洗濯しなくちゃならないから、この中に大変なお宝が入っているから楽しみに見てね。じゃあお母さんに宜しく」
「おいおい、仕方ないな。じゃあ頂いて行くよ、あまり銀行休むんじゃないぞ」。
と、父親はクラクションを鳴らして走り去った。
NO-33-63