エンターテイメント、誰でも一度は憧れる。

PCグラフィック、写真合成、小説の下書き。

刻塚-(NO-17)

2009-09-30 22:43:04 | 小説・一刻塚
刻塚-(NO-17)

「分かった。でも麻代さんが一緒なんだからな、気を付けろよ」。
そして筒井と南田の両刑事は社に向かった。猿渡は首から下げたカメラをセットすると麻代をモデルに社を背に写真を撮ると林の中へ入った。
そして、二人は野草を見付けるとカメラを構え、カシャーン、カシャーンとシャッター音を響かせた。そして道に沿って戻った。
「啓太さんあそこ見て。木の枝が折れいてるし足跡よ」。麻代はゆっくり近付いた。
「麻代、そこで止まれ。座って、写真撮るから」と、猿渡は足跡を撮りながら麻代も撮った。折れた枝が麻代の背に写っていた。
そして幾つかの足跡を見付け、社に戻った。すると白骨死体は運ばれて無かった。
鑑識の仕事も一段落して、時計を見ると昼になっていた。
すると、民宿の従業員が手に袋を下げて何人も現れた。山田刑事の以来で皆の弁当を届けに来たのだった。

「みんな昼にしよう、山田刑事の民宿から昼の差し入れが来たから」と、増井警部補は弁当を幾つも抱えて猿渡たちの所へやってきた。
「どうぞ」と配っていた。「あの白骨死体は塚の盗掘に来て死んだ様です。骨には傷もありませんでした。争った様子もありませんし、死因はなんですかね」。
「墓を暴こうなんて霊の祟りですよ、ねえ筒井先輩」
「エッ・・・私に振るなよ。でも良く言うじゃないですか、エジブトの墓を暴こうとした者は墓の呪いで死ぬって。
まあ、実際の所は封印され密閉された地下室で繁殖した未知のカビを吸い込んで亡くなったと言われていますがね。どうですかな今回は」と、筒井はちゃかした。

「成る程、ファラオの呪いではなくて未知のカビですか。そうそう、あの二人が着てた衣服に財布がありまして、免許証と名詞が、氏名が判明しました。
一人は東京都練馬区の雑誌社の記者で馬場伸雄30才です。もう一人は同じ雑誌社のフリーのカメラマンで契約していた仁科孝司27才と判明しました。
詳しい事は血液検査と歯型の。アッ、釈迦に説法でした。猿渡さんは何故警視正までなられて退官されたんです?・・・」

「エッ・・・止めた理由ですか」猿渡は照れ臭そうに麻代を見た。
「そうよね、私なんか昨日山田さんが訊くまで知らなかったんですよ。どうしてなの」麻代は弁当の箸を猿渡に向けるとつつく様な仕草を見せた。
「気まぐれかな、特別警察官になりたかった訳もなく筒井先輩に誘われて警察官上級試験を受けたんです。それで合格したから警察官になったって所です。それで、警察学校を出ると一階級上の巡査長。
昇級試験で刑事と来て警部補、警部、警視、警視正。こんな事を言うと叱られますけどね。キャリアは現場には出なくていい、そう言われて二年前に辞めました」。
「エッ・・・じゃあ私と知り合った頃はまだ警察官だったんだ」
「うん、だから仕事はって訊かれた時は国家公務員だって話したろ」。
「だってあの時はまだ28よ。それで警視正なの」。その言葉に増井警部補は唖然とした顔を浮かべると猿渡を見た。

「エッ!28才ですか・・・」。後は言葉が出なかった。
「こいつは頭がいいと言うか何て言うか。私を越して警視正だったんです」。
「でも筒井さんもまだ若い様ですが、私なんか43ですよ。ようやく警部補になれたのに羨ましい限りですな」。

こうして昼食を済ませ、午後一時から再び鑑識班は社の周りの捜査を始めた。
しかし、此れと言った物は何も発見に至らず。午後三時には捜査は打ち切られた。
そして再び社は静けさを取り戻した。
宿に戻った猿渡たちは筒井の部屋にいた。猿渡はデジタルカメラをパソコンに繋ぐと雑木林で見付けた新しい足跡と、折れた枝を筒井と南田刑事に見せた。

「そうか、やっぱりお前が言うように誰かが様子を伺っていたのか。
今夜にも大谷刑事の司法解剖の所見が届くそうだ。届いたら増井警部補が知らせてくれる事になっている。猿渡、訊くがな。お前は鼻っから祟りとか悪霊説は信じていなかったのか?・・・」麻代と南田は興味ありげに見詰め居ていた。

「そんな事はありませんよ、ただあまりにも突飛だとは思っていました。でも、あの場で大谷刑事の様に根から否定してしまうのはどうかと思っただけです。
こう思うんです、この一時塚の話を知ってる誰かが、祟りと悪霊の話をさも真実の様に見せ掛けた連続殺人だとしたらどうです。
問題なのは、殺害された四人の女性と馬場と仁科の六人は何故殺されなくてはならなかったかです。それが開明されなければ真相は見えてきませんね」。
「そうか、そう来たか。ではあの残忍な殺し方はどう説明するんだ、誰一人として容疑者らし人間を目撃していないんだぞ」。すると、猿渡はバックから書類を出して広げた。
NO-17-32

一刻塚-(NO-16)

2009-09-12 21:22:58 | 小説・一刻塚
一刻塚-(NO-16)

「タヌキかなんじゃないのか、ここらには結構いるそうだから」。猿渡はそう言うと麻代の腰に手を回して歩き始めた。
三十分程で社に着くと、そこには神社の宮氏の様な恰好をした山田刑事の父親と老人、そして多くの人間が迎えた。

「どうも、こんな事になってしまって。いま清めの儀が終わった所です。扉と鍵は取り替えましたけど良かったですか」。と、宿の主は着替え始めた。
「ええ、ここではその二人の白骨死体だけが発見された事になってますからね。こちらの方々は皆さん親戚の方ですか」筒井は七人ほどの男性たちを見渡した。
「はい、この七人は身内です。みな口の堅い者ばかりです」。

すると、一人一人挨拶をはじめた。すると、全員が山田姓だった。南田刑事は手帳に名前だけを書き取っていた。
すると、枯れ葉や枯れ枝を踏む足音が近付いて来た。山田刑事を先頭に鑑識班がやって来た。そして最後尾に増井警部補が現れた。

「これは凄いお社ですね、白骨死体はこの中ですか」、増井は両手を合わせると鑑識班たち全員も右に習った。そして一礼すると踏み入った。
「なんですか此れは、何かの塚ですか?・・・」増井は出て来て訊いた。

「はい、昔から伝わる一時塚と言う墓です。塚は崩れ易いですから上らないで下さい」その言葉に猿渡は主の横へ歩み寄った。
「山田さん、崩れ易いって言うと下は空洞なんですか?・・・」
「いえ、私達も良くは知らなかったんですが。この社を修復した時に学術調査と言う事で、地質探査機を使って調査した事があるんです。
その時のデーターの解析では、この塚の下は何層にもなる空洞だと言うんです」。

「そうですか、それで入り口の様な物は見付かったんですか」と、筒井は話を聞いて口を挟んだ。

「ええ、この正面に入り口らしい階段状に加工した石段が埋まってると言う事でしたそれと、この塚を中心に放射状に空洞が認められると話してました。
でも、とても掘り返す勇気がありませんでね。それで調査は終わりにしました」。
さっきの雑木林の物音、そしていまの話し、猿渡は何を思ったのか雑木林に向かって歩き始めた。

「猿渡、遺体を見ないのか」筒井はあの顔は何か考えてると察して駆け寄った。
「猿渡、また何か考えてるな。話してみろ」。

「ええ、ともかく先輩は社の中に何か見付けて下さい。自分は雑木林の中を探してみますから」と、漠然と言う猿渡だった。

「何かって何だ、それじゃ探し用がないじゃないか。お前大谷の死に疑問を持ったな」
「ええ、あの死に顔に覚えがあるんです。心臓麻痺を起こさせる薬物です。
五年前の冬に葛飾区の資産家の家長である四十に満たない母親が、寝室で死んでるのを娘さんが発見して通報してきたんです」。

「ああ、覚えてるよ。お前が研修で行った先の事件だったな」

「ええ、自分は研修で葛飾署にいました。自分が連絡を受けてへ急行したんです。
その時の死に顔に大谷刑事がそっくりなんです。変死扱いで司法解剖に回されて、結果は薬物中毒に因る心臓麻痺だと診断が出ました。
殺人事件だと騒いだんですが、死亡した女性は若いのに糖尿病の薬と高血圧の薬を服用してましてね。糖尿病の薬は週に一度、それも高血圧の薬と服用してはいけない事を知ってたにも拘わらず、亡くなった前の晩は酒に酔って一緒に飲んでしまった事が分かりました。
その飲み合わせで中毒死した事が判明して、事故死と言う事で形がついたんです。それと、山田さんの話です。塚を中心に放射状に空洞があると言ってましたよね」

「じゃあ何か、出入り口が何処かにあるってか?・・・それに、大谷は祟りとか悪霊に殺されたんじゃないのか」。

「それを探すんですよ。それと、麻代が言った蝉や鳥の泣き声です。なあ麻代」

「エッ・・・もうっ何よさっきらじらしてばっかりで。早く教えてよ」。

「蝉や小鳥の泣き声が断片的に鳴き止むなら俺達がたいからで説明が着くけど、雑木林全体で蝉や小鳥の鳴き声がしなくなったと言う事は・・・ハテ、何でしょう」。
「誰かが雑木林の中に潜んでいたってこと?・・・」

「ピンポン、当たり。でも山田さん一族じゃない事だけは確かだ、この社に着いても蝉や小鳥の泣き声はしなかった。いまはどうだ」。

「さっきから鳴いてる。じゃあ大谷さんも塚で見付かった白骨も誰かに殺されたってことなの。祟りや悪霊じゃないの?・・・」

「たぶん、先輩、社に何かあると思いますから見付けて下さい。自分と麻代は林の中を探します。皆には植物を写真に撮ってると話しておいて下さい」。
NO-16-30

一刻塚-(NO-15)

2009-09-05 21:57:18 | 小説・一刻塚
一刻塚-(NO-15)

ラウンジの客は驚いた様に一斉に視線を向けた。麻代は赤面すると周りに頭を下げていた。「本当に驚いたんだから。本当に亡くなったんですか?・・・」
「うん、放っておけなくて私も行って来た。確かに死亡していたよ、何か余程怖い目に遭ったのか、まあ、その先は聞かない方がいい」。麻代は不服相に口を尖らせ、ほっぺたを膨らませた。

「麻代、あんな顔は見ない方がいいし聞かない方がいい。夢に出るぞ」。
「いや~もうっ、それより今日はどうするの?・・・」
「うん、一応社へ行くよ。白骨は誰か知りたいし、鑑識さんが何を見付けるか見たいしね。いいですよね先輩」。
「うん、その為に来た様なもんだからな。しかし霊の聖域と言うものはおっかないもんだな。ここへ来るまでは幽霊だとか祟りなんて私も信じていなかった」
「それは自分も同じですよ、でもこの村の人達は永遠何百年もそれを受け入れて来たんですからね。外部に漏れなかったのは恥じと言うか何て言うか、頑なに口を封印して来たからでしょう」。
そして朝食はラウンジに運ばれて来た。トーストにサラダ、スクランブルエッグに紅茶と軽く取った。すると、南田刑事の車が庭先に入って来た。
車を降りると小走りにラウンジに来た。「警部補、五分程で来るそうです」

「分かった。猿渡元警視正殿、行くぞ、麻代さんも行くかね」。

「ちょっと待っていてね」と、麻代は頷くと二階へ駆け上がった。そしてミニスカートからジーンズに着替え、プラダのリュックを肩にピンクのチューリップハットを被って降りて来た。猿渡は思わず笑っていた。
「なんで笑うのよ、変?・・・」と、窓ガラスに写る自分を見る麻代だった。

「そんな帽子まで持って来たのかと思ってさ、よく似合うよ」。
そして南田の運転で駐車場まで下った。間もなくサイレンの音が上がって来た。
現場の駐車場には派出所の巡査が来て、遺体には青いビニールシートがかぶせられていた。麻代は恐る恐る車を降りると猿渡の後ろにいた。

「ここにいろ」と、猿渡と筒井と南田の三人は改めて遺体の確認に行った。シートの前で両手を合わせ、黙祷するとシートを上げた。

「これはひどいな、どうして目ぐらい閉じてやらないんです」。
「何度もやったけどすぐに目を明けてしまうんだ、こんな死体の顔は初めて見るよ。麻代さんには見せなくてよかったろ」。
大谷刑事の死体の頭髪は逆立ち、何かを叫ぶ様に大きく口を開いていた。目は恐ろしい物でも見た様に爛々と見開いていたのだった。

「キャッ」その声に振り向くと麻代が震えていた。猿渡はシートをかぶせると麻代をそっと抱いた。「馬鹿だな、だからあそこに居ろって言ったのに」。

「御免なさい、なんであんな顔してるの?・・・」
「何か死ぬほど怖い目に遭ったんだろうな。だから死んだんだ」。
「もうっ、ふざけてる場合じゃないよ。それじゃ説明になってないじゃん」。
「フフフ・・笑っちゃいかんな。麻代さんも見たろ、あの形相を見たらそう言うしかないんだよ。外に説明は着かない」。
そこへけたたましくサイレンを鳴らして警察車両が到着した。まるで尻切れトンボの様にピタッとサイレンが止まり、慌ただしく刑事だろう、私服の男たちが駆け寄った。
「失礼します、筒井警部補ですか。私は篠ノ井署の増井警部補です」。
「御苦労様です。筒井です、こっちは南田刑事。こちらは警視庁元警視正の猿渡さんご夫婦です。事件の捜査協力で来て頂いてます」。
御苦労様です、自分は。と、言い始めたところで猿渡は止めた。

「自分は今は警察の人間じゃありませんから、どうぞ、捜査の邪魔はしませんので」。猿渡はそう言うと麻代を連れて社へつづく雑木林へ向かった。
すると、間もなく筒井と南田が小走りに追って来た。

「後は増井警部補に任せた。後から山田刑事が鑑識を連れて来る。それから、社に父親とお爺さんと親戚が供養に入ってるとさ。
大勢の警察の人間が社に入るから霊を清めてるんだそうだ。しかし何だな、この事件は何から何まで驚かされ事ばかりだよ」。

「ええ、全くです。まさかこんな事になるとは思いもしませんでしたからね」。
すると、麻代はキョロキョロと辺りを見ていた。雑木林と周りの様子が変だと思いはじめていた。
「ねえ啓太さん変よ。蝉の泣き声がしてないんだけど、鳥の声も」
その言葉に足を止めた、そして周りを伺う様に四方を見渡した。

「うん、俺も妙に静だと思ってた。でも大勢の人間が来てるし社にも居るからじゃないのか」すると、ガサガサッと林の木々が音を立てて揺れた。
麻代は猿渡に抱き着いていた。麻代の大きな乳房が背中に感じた。
NO-15-28