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小説・鉄槌のスナイパー・第一章NOー(45)&CG

2008-09-17 02:48:08 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章NOー(45)&CG

「紺野、奥さん、此れに目を通してくれないかな。夕べ書き上げたベンション再建計画の見積もりなんだけど。料理も仕入れ値も詳しく書き込んでおいたから。ゆっくり検討してくれると嬉しいんだけどな」。
「ゆっくり読ませて貰うよ」。
「じゃあ頼むよ。奥さん宜しくお願いします」。
美保は椅子から立つと頷いた。そして食事の礼を言うと書類を持ってレストハウスを出た。
ロッヂに戻ると散歩に出た。そして公衆電話から真田に電話を入れた。
「はい、真田です」。真田は緊張して上ずった声だった。
「俺だ、今すぐタクシーで軽井沢の駅前にある吉田屋貸し自転車に行け。持っていいのは携帯と財布、リュックだけだ。無線機や発振器の周波数を探知したらその場で取引は終わりだ」。
「そんな物は持っておりません、軽井沢駅前の吉田屋貸し自転車ですね。いまから行きます」。
「そうだ、また電話する」。
そして二人はロッヂに戻るとサイクルウエアーに着替えた。そして十分、二人はロッヂを出た。そして別の公衆電話の前で自転車を降りた。そして電話した。
「はい、真田です。いま吉田屋貸し自転車の前にいます」。
「自転車を借りて三笠ハウスの手前のサイクリングコースへ来い」。
「そんな、場所が分かりません」。
「馬鹿野郎、そこの主に聞け。また電話する」。そして電話を切ると「美保、駅前に行くぞ」。「うん」。
そして二人は軽井沢駅に向かった。すると、新道のバス停に行くと真田が半ズボンにTシャツ姿にフィラのリュックを背負って自転車で上がって来るのと遭遇した。京平と美保は直ぐに向きを替えて別の道から先回りした。
そしてサイクリンクコースのベンチに座って休んでいた。
「美保、計画を少し変える。真田が来たら僕が止める。それで、外人から頼まれてリュックを背負った真田と言う男が来たら、トランシーバーを渡してベンチで待つように言われた事にして、このトランシーバーを渡すから、話を合わせてくれ」。
「うん、いい考えだね。あの人は私達の顔は知らないからね。見て、真田が来たわよ。うまくやってね」。
そして見ていると真田は疲れたようにやって来た。
「あのう、真田さんですか」?
驚いたように自転車から降りると頷いた。「ええ、真田ですけど」
「さっき外人さんに頼まれたんですが。フィラのリュックを持った真田と言う人が来たら、これを渡して欲しいって。それで連絡するまでベンチで待っていて欲しいそうです。それから、頼まれたバイト代ですが。貴方から貰えって」。
「ああ、そうですか。それで幾らです」。
「おじさん。二人で五万円貰えって外人さんが、いいですか」?
「エッ、そ、そうかね、二人は学生さんかね。じゃあ五万ね。ちょっと聞いてもいいかね。その人は何処の国の人だったか分かるかね」。
「はい、アメリカ人です。私英文科の学生で英語で話したから」。
「それで外人さんは何人で来ました」?
「来たのは一人ですが、ワゴン車には何人か乗っていたよね」。
「うん、五~六人はいたかな。じゃあ僕達は此れで失礼します」。
「ああ、有り難う。じゃあ気を付けて」、
京平は貰った五万を美保に渡すと笑いを堪えながら自転車に乗った。そして戻って行った。
すると、真田を見張るように道路の左右に三人づつ、見るからにヤクザ風な六人の男たちがママチャリに跨ったまま見ていた。
二人はその間をゆうゆうと走り抜けてロッヂに戻った。
「京平さん、やっぱりあの男たちは真田の用心棒ね」。
「美保の言う通りだったな。でも笑っちゃうな。アルバイト代だってさ」。
「だって、貰える物は貰わないと。でもあれで真田は完璧に私達は学生だって信じたでしょう。それに京平さん若く見られるから。此れからどうするの」?
「うん、ともかく一度戻ろう。迷彩服に着替えよう。でも上着だけは車の中で着よう。誰にも見られたくないからね」。
ロッジに戻ると二人はサイクルエアーを脱ぎ捨てるとスッポンポンになった。そしてシャワーで汗を流し抱き合った。
少し日に焼けた美保の胸元にキスした。と、同時に後ろに回ると挿入した。
鳴呼ッ・・・美保は身体をくねらせながら声を圧し殺していた。
「いっちゃうッ・・鳴呼ッ・・・」二人は同時に達した。
「京平さんったらこんな所で。まだあれなのに。でも凄く感じちゃった」。
「愛しているよ」。
「うん、私も愛している」。
NO-45

小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(44)&CG

2008-09-17 02:45:41 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・NOー(44)&CG

京平はハンドルをゆっくり回すとアスファルトで舗装された細い林道に入った。そして間もなく空き地に着いた。
「ここは昔別荘があったんだ。私有地だから誰も入って来ない。暗くて良く分からないけど、道路のラバーコーンが見える筈だよ」。
すると美保は身を乗り出して道の方を見た。すると、車が来てヘッドライトで空き地が映し出された。
「ほんとう、良く見える。五十メートル位ね。この距離なら完璧よ。一発で仕留められるわね」。
京平は暗闇の中でゆっくり車を回すヘッドライトも点けずに細い道を下った。そして道路に出ると車が来ないのを確認するとヘッドライトを点けた。そしてロッヂに戻った。
戻ると古山が二人の帰りを待っていた。
「お帰り、夕食の支度が出来たからどうぞ。ちょうど雨になっちゃってあいにくだったね。明日は晴れるって言うから」。
二人はそんな小山の後につづいて母屋に入った。すると、レストランには女性客ばかりが大勢座って料理を食べていた。
「おい、男性が少ないな」。
「ああ、十七日まで女子大のテニス部の合宿で貸し切りだから。でもその後も予約は入っているよ。さあどうぞ」。
テーブルに着くと森の星自慢のフランス料理のフルコースがだされた。二人はワインで乾杯し、贅沢なホアグラや鴨料理に舌包みを打って楽しい夕食を済ませた。
「京平さん、このフルコースで一泊幾らなの。採算が合わないんじゃない?・・。それにワインも良い物だし」。
「うん、たぶんどっこいどっこいで儲けはかなり薄いだろう」。
「味付けや鴨もホアグラも新鮮で美味かったけど、でも学生料金では採算割れしていると思う」。
するとオーナーの小山久雄がテーブルに来た。
「小山、この料理では採算割れしているだろ」?
「良く分かったな、実はそうなんだ。一般のお客さんだと採算割れはないんだが、合宿の学生さんからはな」。
「ごめんなさい小山さん、生意気な事を言うようですが、それではお金は貸せません。採算割れしているペンションに融資はできません。最高の素材で料理を作る、それは間違いではないと思います。でも現状では無謀です。
仕入れ値を下げて何とかして楽しいお食事にするのが料理長でもあるオーナーの仕事ですもの。違いますか。
それに、学生は学割なら一般の留まり客と料理が違っていて当たり前だと言う事は分かってます。私もつい二年前までは学生でしたから良く分かるんです。小山さん、学生の頃の事を思い出して下さい。そうだったでしょう」。
すると小山久雄は痛い所を突かれたのか、グッと手を握った。
「・・・確かにそうです。奥さんの言う通りです。今までそう言ってくれた人はいませんでした。なんか目が覚めたような気がします」。
「小山、お前は料理人から足を洗え。経営者になってみろ。今のお前は料理人の方が強過ぎるんだ。だから安い料金で同じ料理を出したいって考えるんだ。
客の立場で言おうか、僕と女房は一泊一万五千円だよな。学生は一万円以下だろ、それが量も質も同じだったら一般客はどう思う。僕等はそうじゃないけど、もう二度と来るもんかって思うぞ」。
「私の言いたかったのはそこなんです。いかに常連客を作るかだと思います。毎年決まって涼を求めてこの森の星で避暑を過ごせればこんなに楽しい事はないです。でも、きっとお客さんは代わっていると思いますけど、違いますか」。
「ええ、自分の代になってからは昔の常連さんは来なくなりました。そうか、気が着かなかった。料金が安いお客さんと分けるべきだったのか。単純な事を俺は忘れていた。実言うと、俺はどうして来なくなったのか不思議で仕方なかったんだ。その反面学生さんは多くなった」。
「当たり前だろ、安い学割料金で一般客と同じ料理なんだから学生は来るさ。その度に赤字だ」。
「そうです、ペンションを修理して一から始めて下さい。私も主人もそれだったらお金はお貸ししても良いと思っています」。
「有り難う、再起する為に計画書を書き直して見て貰うよ。それで融資の事を判断してくれないか」。
「ああ、いいよ。なあ美保」。
「はい、きっと出来ますよ。生意気な事を言って済みません」。
「いいえ、逆にお礼を言わせて下さい。なんでそんな単純な事が分からなかったのか自分でも不思議ですよ。紺野、良い奥さん貰ったな、じゃあごゆっくり」。小山は丁寧に頭を下げると苦笑いを浮かべ、厨房へ戻って行った。
こうして二人も小山に一声かけてレストハウスからロッヂに戻った。そして十時を回ると二人のロッヂの明かりが消えた。
翌朝、驚くほど真っ青に晴れ上がった朝だった。美保は先に起きると眠っている京平に抱き着いた。そしてキスで起こした。
「京平さん、すっごい良い天気よ。着替えて食事前にサイクリングコース見に行くんでしょう」。
「ああ、お早よう。美保、愛しているよ」。
「私も。好き、大好き。幸せよ」。
そして早速サイクルウエアーに着替えて自転車をだした。
「お早よう、朝食前の一走りか」。
小山は片手を上げた。「ああ、行ってくる」と二人は手を挙げて挨拶すると乗り出した。
京平はトランシーバーの性能を確かめるからと美保を止め、どんどん離れて行った。そして交信した、かなり感度がよく性能が良い事分かった。
すると美保を聖パウロ教会まで来るように伝えた。
「分かった」と、返事をすると数分で到着した。
そして、三笠ハウスの方へ走った。すると恰好なサイクリングコースが見付かった。その後、二人はホテル鹿島の森の先にあるコースを見に戻った。
そしてホテル鹿島の森を過ぎると京平は自転車を降りた。
「やっぱり三笠ハウスのサイクリングコースに決めよう、見通しも良いし車両進入禁止だ。それに恰好なベンチもある」。
「うん、こっちより向こうのほうがステキな所だったね。カラ松の中をコースが作られていて、景色も良かったもの」。
こうして二人はロッヂに戻った。そしてシャワーを浴びてレストハウスへ向かった。すでに学生達は食事をしていて中は賑やかだった。
二人は簡単な朝食を頼んだ。トーストにサラダ、そしてアイスコーヒーで食事を済ませた。すると小山が書類をもって来た、
NO-44

小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(43)&CG

2008-09-16 00:59:17 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(43)&CG

「うん、ないよりはいいよ。でも小山さんが言う五千万って修理にはギリギリの額じゃないのかな。もう一千万出してあげたら」。
「フフフッ・・・そうするよ。僕は一度小山には命を助けて貰った事があるんだ。学生の頃に穂高を縦走登山した時にね、オーバーハングを上っていた時に強風に煽られて宙吊りになってさ、小山が命懸けで大柄の僕を引き上げてくれたんだ。だからなんとかしてやりたい」。
「そう、そんな事があったの。でも凄いね。小柄な小山さんが貴方を引き上げたなんて驚き。火事場の何とかって奴かしら」?
「そうかも知れない。あの時はもう駄目だと思った。小山の腕に大きな傷跡があったろ、あれは僕を引き上げた時にザイルで焼き切れた跡なんだ。僕が付けたのと同じなんだよ」。
「そう、それで螺旋の傷があったの。初めてね、そんな事話してくれたの。京平さんったら驚かすのが上手やわ」。
二人は抱き合いキスした。そして横になると、美保は京平の腕を枕に軽い寝息を立てて眠ってしまった。
京平はそっと腕を外すと抱き上げ、ベッドに運んだ。タオルケットを掛け、ドアを開けたまま部屋を出た。
そしてウエストポーチから銃を出し、ブリーフケースにしまった。夕方、日が傾き始めた頃、美保は目を覚まして起きてきた。
「ごめん、私眠っちゃった。づうっと起きていたの」?
「うん、もっと良い案がないか考えていた」。
「私も、でもいい案は浮かばないよ。もう来ているかしらね」。
「たぶん。電話しに行こうか」
二人は小雨の中出掛けた。そしてペンションの周りをグルッと走った。そして近くにあるホテル、鹿島の森の電話ボックスを見付けて車を止めた。
そし二人で入った。美保はバックから手帳を出して読み上げる番号を京平は押した。すると、すぐに出た。
「はい、真田ですが」。そう言う真田は妙に落ち着いていた。
「真田か、私はリーダーだ。色々とてこずらせてくれて有り難うよ。用意は出来たようだな」。
「は、はい。色々済みませんでした。一億五千万全額古い紙幣で用意しました。あの関西の人は」?
「貴様の事でてこづったんでな。私は一度の失敗も許さない。もう分かるな。私はあの男の様にはいかないぞ。良く聞け、一度しか言わないからな。
金はフィラのリュックに入れろ、そしてサイクリングの恰好で待っていろ。明日また電話する。もし、妙な素振りや妙な人間がいたらその場で取引は終了する。意味は分かっているな」。
「は、はい。リュックはフィラでサイクリングの支度をして待っています。何時頃でしょうか」?
「貴様まだ立場が分かってないな。質問が出来る立場か!」。
「は、はい。済みませんでした、電話をお待ちしています」。
そして電話を切った。京平は笑っていた。
「京平さん、どうして関西の男の存在を無くしたの」?
「うん、非道だと言う事を印象づける溜めだよ。初めは落ち着いていたけどびびってたよ。最初の落ち着きぶりだと仲間は相当いるな。でも今の威しで居ても近付けないと思う」。
「ウフッ・・・流石だな、精神的に追い込むなんて凄い。じゃあ計画はあのままでいいのね」。
「うん、今から狙撃現場を見に行こう。それから目印のラバーコーンを置いて来たいからね」。
京平はそう言うとシートベルトを着けるとエンジンを始動させた。
そして向きを変えると聖パウロ教会へ向かった。小雨もその頃になると止んで人の歩く姿もチラホラとあった。
そして三笠ハウス方面へ走った。そして白糸ハイランドウェイの有料道路に入った。真っ暗な闇夜にヘットライトの明かりで映し出される路面には、センターラインが妙に大きく太く見えていた。
そして白糸の滝のバス停を過ぎ、しばらく行くと京平の言うように空き地があった。車を止めると手袋をして荷台のラバーコーンをひとつ持つと空き地の端において戻って来た。そして少し走って止まった。
「美保、ここから車で少し行くと小高い丘になっていて、大きな岩があるんだ。車は雑木林で隠れて道路からも何処からも死角になって見えないから心配ない。今から行ってみるからね」。NO-43-115

小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(42)&CG

2008-09-16 00:56:54 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(42)&CG

「小山、その位の金なら僕等で何とかなるぞ」。
「本当か!でも二人の金は借りられないよ。気持ちだけでいいよ」。
「小山さん、私達のお金だからお貸しするんです。それに主人の親友が困っているのに黙っていられません。役立てて下さい。ねえ京平さん」。
「うん、美保もこう言っているから。返済は少しづつでいいよ。利子なんか取らないから。同じペンションの経営者としてさ」。
「有り難う紺野、奥さん。じゃあちゃんと借用書と担保を付けるよ。返済計画書も作って計画を話す。それで判断してくれ」。
「分かった。じゃあそうしよう。美保、それでいいね」。
「はい、私も経営の事を色々教えて頂きたいですから。それにステキなペンションですもの」。
「捨てる神ありゃ拾う神ありだ。有り難う、助かるよ。これで銀行の奴等の顔を明かしてやる事が出来る。有り難う奥さん」。
「へえ、かましまへん。あっ、はい、どういたしまして」。
「やあ、いいですね京都弁は。おっとりしていて暖かみがあって。奥さん、無理に標準語なんかに治さない方が良いですよ」。
「へえ、おおきに。あれ~っアッハハハハ・・・」。
こうして美保の明るい笑い声が森に響き渡っていた。そして食事を済ませた二人はトランシーバーを借りてロッヂに戻った。
そして早速サイクリングの支度を始めた。服を脱いで下着姿になった二人は黒のロングパンツを履いて短パンを上にはいた。
美保はブラジャーを外し、スポーツブラに付け替え、ノースリーブのTシャツを上に着た。そしてソックスを履くとサイクルシューズの紐を緩めて履いた。
そしてペアで大きめのウエストポーチをバックから出し、財布とトランシーバーの本体を入れた。京平はペアの服を着るとブリーフケースを取り出して開けた。そして消音器を装着させ十二発の弾丸をカートリッチにいれると銃に入れて装填した。そして安全装置を掛け、ウエストポーチに入れた。
そして美保の銃も同じようにして美保に渡した。ずっしりした冷たい銃を手にし、淡々とウエストポーチに入れるとチャックを閉めた。
「美保、小山にはああ言ったけどトランシーバー壊れてないんだ。持ってきた無線機はどの電波でも拾う事が出来るから真田に持たせる。
美保の方は受信だけで送信のスイッチは切っておくからね。急用の時はこのボタンを押すと送信出来るから」。
「うん、このボタンね、分かった。それでどうやって真田に?・・・」。
「うん、電話で指示してサイクリングコースにあるベンチに置いておくよ。休憩しているように見せ掛けて近くで見てればいいさ。
それから僕は大きめのディーバックをしょってく。真田のバックが入るようにね。じゃあ今から車で狙撃現場を下見に行くから。そこへ車を置いてチャリを降ろす。それから、車の後ろのシートの下にライフルに弾を装填していつでも使えるようにしてバスタオルで巻いて隠してあるからね。
夕べ話したように僕が戻るより真田が引き返して来るのが早かったら美保が標的を」。
「うん、任せて。一発で仕留めて見せるから」。
「ライフルのカートリッヂに鉄鋼弾、炸裂弾、鉄鋼弾、炸裂弾と言うように交互に入れてあるからね」。
「うん、分かった。鉄鋼弾が先ね。あっ、雨よ!いつ曇ったのかしら全然気が着かなかった」。
「仕方ない計画は明日に延期にしよう。せっかく着替えたのにな」。
「うん、でもいいよ。京平さんと居られるんだもん」。
「僕もだ、この分だと止みそうにないから着替えて下見だけしようか」。
「うん、それより自転車部屋の中へ入れようよ、まだ一度も乗ってないんだよ、濡れちゃう」。
京平は車に走るとロッヂの前まで乗って来た。
そして自転車を降ろして部屋の中へいれた。二人は雨に濡れた自転車を丁寧に拭いていた。そして美保は別のタオルを持つと濡れた京平の髪を拭いていた。
すると、蒸し暑かった部屋も温度が下がり、二人は着替えてソファーに横になった。見上げると大きな天窓には雨が音を立て、弾けていた。
すると美保は京平に抱き着いてキスした。
「ねえ、小山さんこの音をなんとかしたいんじゃないのかな。確かに天気の良い日はいいけど、雨の日は最悪だもん」。
「うん、僕もいまその事を考えていた。それに目立たないいけど傷んでいる所があるからね。あの一億福祉施設へは半分になっちゃったけど良いよな」。NO42

小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(41)&CG

2008-09-14 13:21:15 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(41)&CG

京平は丸子町を抜けるコースを取った。松本市内から254号線に入り、三才山トンネルに向かって走らせた。
その道は混む事もなく、鹿教湯温泉から大塩温泉、そして霊泉寺温泉と経て丸子町に入るのに、白馬から一時間半そこそこだった。
そして大屋町から旧北國街道である国道18号線に入った。
すると、東部町に差し掛かると帰省ラッシュにはまってしまった。
京平は右折し、茂野塾に入って旧道を走った。それはスムーズに走りつづけた。
そして国道に合流する手前で左折した。すると信号が青、ラッシュはまだ続いていた。すかさず流れの中に入った。
そして四十分、たった四キロの距離を四十分かかって小諸市に入った。
外は真夏の太陽の日差しが降り注ぎ。車のホンネットから陽炎が立ちのぼっていた。
美保は窓にタオルをかけ、日差しを遮っていた。クーラーを強くしても差ほど効き目がなかった。そんな中、やっと御代田町に入った。
外の空気も幾分涼しくなり、車のデジタル時計は十時二十分を表示しいた。
「京平さん、喉が乾いちゃった」。
「僕もだ。少し先にレストランがあるから休憩しよう」。
行くと、駐車場にはフェンスが置かれ潰れていた。京平は仕方なくスタンドへ入った。そして給油と車を冷やす為に後ろの自転車を降ろして洗車を頼んだ。
そして涼しいスタンドの事務所で缶ジュースを買って一服した。
「京平さん、ゴルフ用の手袋欲しい。買っても良いですか」?
「うん、いいよ。両手があるのを買おうか。僕も買うよ」。
そして京平は黒のダンロップを、美保はシャネルの薄いブルーのゴルフグローブを買った。京平は何に使いたいのか分かっていた。
「花火も買おう、今夜やろうよ」。
京平は黙って頷いた。すると美保はパックになった花火セットを五セットも買った。
そして給油が済んで洗車も終わり、店員がキャリアに自転車を取り付けていた。
京平は取り付けを見に外に出た。
すると、ムッとする外の厚さに驚きながら車に歩み寄った。そして取り付け部がしっかりしているか手で動かして点検した。
事務所を見ると支払いを済ませていた。京平が手を上げると美保は出て来た。
「同じ長野県で白馬とは偉い違いね。これじゃ軽井沢も暑いかしらね」。
「そうでもないよ、日中は暑いかも知れないな。内の別荘は特に涼しいから余計そう感じるんだよ」。
そんな話をしながら店員に礼を言うと車を出した。すると、店員は道路に出て帽子を取ると低く腰を追って車を止めてくれた。
「パッパッ」とクラクションを鳴らして路線に入った。そして車のスムーズな流れに軽井沢には三十分ほどで到着した。
京平は鹿島の森に近いペンション・森の星と書かれた標識の道に入った。そして広い庭先に車を止めた。
そこはログウス風の平屋のペンションだった。
そして森に目を向けるとロッヂ風に小さなログハウスがあり、母屋を取り囲むように点在していた。美保は手荷物を持って降りるとその景観と造りに見入っていた。
すると、母屋の玄関が開いて小柄な男性が手を振りながら小走りに駆け寄った。
二人は大事な荷物を持つと京平は美保の肩を抱い一歩二歩と歩いた。
「紺野、奥さん、結婚おめでとう。良く来てくれました。どうぞ、何年振りかな。驚いたよ、どうして知らせてくれなかったんだ」。
「うん、紹介するよ、大学の同期の古山久雄。今はこのペンション森の星のオーナーだ。妻の美保」。
「初めまして美保です、お忙しい中、突然お邪魔して済みません。宜しくお願いします」。
「いいんですよ奥さん、こいつはいつも突然ですから慣れていますよ。それよりこんな若くて美しい奥さん貰って。羨ましいよ。どう白馬の方は、大分儲かっているって噂だぞ。新築したんだって」。
「ああ、三年前にね。儲かっていても僕には関係ないから」。
そんな話しをしながら森の中のログハウスへ案内された。すると、天井は天窓になって陽が降り注いで真っ青な空が見えていた。
「わあ~っ凄い。貴方、これで森の星って名前の意味が分かった。夜は星が奇麗でしょうね」。
「うん、星が降って来るようにね。小山、悪いな無理効いて貰って」。
「毎度の事だよ。それより食事の支度すぐ出来るから荷物を運んだら来いよ」。
小山久雄は美保に頭を下げると出て行った。京平は美保を部屋に残して車に戻ると荷物を運んだ。
美保は窓を明け、窓際の椅子に掛けて森の中を眺めていた。そして耳を澄ますとセミの泣き声の中に鳥の泣き声、そしてコンコンコン、ときつつきのドラミングの音が聞こえていた。
そして最後の荷物を持って戻った。そして部屋に鍵を掛けて母屋に向かった。
母屋は主にレストハウスになっており、カウンターバーが備え着けられていた。
宿泊客は皆外出して客は二人だけだった。京平はオーナーの小山にヘッドトランシーバーを借してくれるように頼んでいた。
「いいけど、そんなもんどうする」?
「後でサイクリングに行くのに大声で話せないだろ。一応自分の持って来たんだけど壊れていた」。
「分かった、後で電池いれておく。それより奥さん、前の奥さんの事知ってるのか」?
「ああ、何も可も話してあるよ。僕が仕事ばかりしていて相手てしやれなかったせいで男作って逃げた事も全部ね」。
「そうか、それで仕事の方は。まだあの会社にいるの」?
「いや、今年の一月から静岡の支社長任されたんだけど六月に辞めたんだ。いまは実家に入って見習い中だよ」。
「そうか、親父さんもお袋さんも喜んだろ。オーナー仲間だな」。
「まあね、また色々教えてくれよ。美保も父や母に気に入られてさ、毎日楽しくやっているよ。会社辞めて良かったと思っている」。
「そうか、奥さん関西か。少し京都訛りがあるけど」。
「うん、京都の左京区だよ。京都弁中々いいよ、本人は治そうとしているけどね。処でお前は」?
「相変わらずさ、貧乏暇無しでさ、修理したくてもこの不景気で銀行も融資を考え倦んでな、五千万の金さえ出し渋っているって訳さ」。
小山は顔を曇らせて肩を落とした。そんな話を聞いていた美保は京平の手をそっと握った。そして見詰めた。
それは何を意味しているのか京平には通じていた。・・・NO-41-111

小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(40)&CG

2008-09-14 13:13:34 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(40)&CG

「京平さん、もし私が真田だったら半端な人数は雇わない。六人の名前を言って帰したのは本当でしょうけど、倍の人が来ていると思わないと。たぶん後の人達は軽い沢に直行していると思う。お金は用意するでしょうけど危険よ。受け渡しの場所はぎりぎりまで言わない方がいいわ」。
「うん、そうだね。美保の言う通りかも知れない。ここじゃなんだから帰って相談しよう」。
そして別荘に帰った。そして居間に軽井沢の地図を広げた。お茶を飲みながら計画を立てた。
「真田はヤクザ以上だ。迂闊に動いたらこっちが危ないな」。
「うん。京平さんこうしたらどう。お金は指定したリュックに入れさせるの。それで、ここにサクリング専用のコースがあるでしょう。車は入れないから、もし仲間がいればきっと自転車を借りると思う。それを確認するの、分からなければ途中で電話して同じコースをもう一度走るように指示するの。
そうすれば真田の後を用心棒が後に着くから分かるじゃない。私達は真田の顔を知っていても、真田は私達の顔は知らないもの。自転車買おうよ、サイクリング車でバックの着いた速いのを。軽井沢の貸し自転車ってママチャリでしょ。もし追われたら追い付かれちゃうもん」。
「あ~っそれいいね。よし、それで行くか。これから知り合いの自転車屋へ行こう。キャリアも買わなきゃならないし」。
「ウフッ・・・思い付いたら即実行だね。そんな京平さんも大好き」と京平と地下室に行くと隠しておいた現金を手にして出掛けた。
そして京平のペンションのレンタル自転車を購入した穂高町にある佐野サイクリングへ向かった。そして車から携帯電話を入れた。
そして三十分、七時半には着いた。すると主人が待っていた。
「久し振り、結婚お目でとう。奥さん、佐野です。京平とは高校の同級生です。それにしても急だな、何処かへ行くのか」?
「ああ、静岡の修善寺にな。あそこサイクリングコースあるだろ。借りるのも嫌だからさ。買っておけば家でも乗れるから」。
「そうか、いいのあるぞ。軽くて性能はいいし丈夫だぞ」。
「ああそれでいい、二台くれ」。
すると佐野は驚いて聞き直した。
「おい、二台って幾らするか知っているのか。四十五万だぞ」。
「ああ、いいよ。まけてくれなくていいからさ。その代わりキャリアはサービスしろよな」。
「ああ、良いよ。じゃあ商談成立だ。奥さん、こいついつもこうなんですよ。営業マンは此れだから」。
美保はそんな夫を見て笑っていた。そして佐野は京平に手伝ってもらいながら、車の後ろにキャリアを取り付けていた。
そしてヘルメットとサングラス。必要な備品を揃えた。
「お前本格的にロードするのか。全部で百万出るぞ」。
「いいよ。ちゃんと持って来たし、嫁さんの許可も貰ったから。なあ美保」。
「はい、いつもニコニコ現金払い。が、もっとうですからウフッ・・・」。」。
「こりゃ参った、アッハハハハ。奇麗な上にきっぷも良いんだ。じゃあ遠慮なく貰うよ。領収書書くから待ってイてくれ」。
「ああ頼む、なんでも形から入らないとな」。
「そう言えば夕方銀行の敦子が来てさ。変な客が来て千五百万もの現金を古い紙幣で欲しいって言われたらしくてな。あったら代えてくれって来たぞ。
お前の所へも行って二百万も代えて貰ったってさ。お前留守だって言っていたよ。あるんだなお前の所は。俺なんか二十万しかなくてさ」。
「そうか、いま例の別荘に行っているから。それで集まったのか」
「なんとか集まったらしいよ。それでさっき電話して聞いたら、なんだか支払いにピン札だと重なってしまって数えるのが手間だとか言っていたらしい」。
「そんな事ないよな、まあ変わった奴いるから。敦子も大変だ」。そして領収を受け取ると車の後ろに二台の自転車を取り付けた。
そして白馬に戻った。別荘に戻ると十時を回っていた。二人は早めに風呂に入るとベッドに入った。
「京平さん、海野さん達に悪い事しちゃったね」。
「それも仕事だよ。じゃあ受け取ってもこっちで入れられないな」。
「うん、でも十六日には銀行も営業始めるから。途中の銀行で振り込んでもいいじゃない」。
「そうだな、でも相手も必死だから裏の裏を画かないとな」。すると美保の返事はなかった。昼間の作業で疲れたのだろう。珍しく鼾をかいていた。
翌朝、起きると隣に美保は居なかった。すると外から声がしていた。
「マツ~っ、カエデ~っ、ご飯だよ。出ておいで」。
カーテンを開けると、美保はタヌキにご飯をやっていた。
京平はそっと見ていた。すると、林の中がゆらゆら雑木が動いていた。すると二頭のタヌキが出て来て洗面器に入ったご飯を食べ始めた。美保は満足そうに見ると戻って来た。
京平は着替えで居間に行くと美保は嬉しそうな顔をしていた。
「京平さんお早よう。ねえ聞いて、マツとカエデがね、呼んだら来たの。分かるのよ、私が呼んだら来たの」。
「良かったじゃないか。美保の優しさが通じたんだよ」。
「うん、ねうもう一つお願いがあるの」。
「マツとカエデの家だろ」。
「なんで分かったの。ねえ良いでしょう、私も手伝うから」。
「いいよ、じゃあ庭のテーブルや椅子を造る時に一緒に造るか。それか大型犬のハウスを買えばいい」。
「やった~っ有り難う京平さん」。と、まるで子供の様に飛び上がって抱き着いた。そしてキスして顔を見て抱きつて居た。
そして食事の支度を始めた。京平はブリーフケースを取り出すとライフルと銃を出して点検してケースにしまった。
その朝はトーストとスクランブルエッグ。カリカリベーコンと軽い朝食にした。
二人は食事を済ませると戸締まりをして迷彩服と靴、ソルジャールックを車に積み込んだ。そしてラバーコンに作業服。そしてブリーフケースは一番最後に積んだ。
美保は残った食べ物を全部タヌキの洗面器に入れてベランダの下に置いた。
そしてもう一度、戸締まりと火の点検をして二人は出掛けた。そして別荘の入り口で車を止めるとフェンスを閉めて鍵をかけた。
そして携帯を持つと家に電話した。
「父さん、軽井沢の友達から電話あって行って来るから」と伝えた。そして一路松本へ向かった。
その日は朝から盆休みを終え、帰省から帰る他県ナンバーの車が多かった。国道147号線から19号線を横切り、松本市内に入った。NO-40

小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(39)&CG

2008-09-14 13:11:03 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
☆・・・お久し振りです・・・
大勢の方々にご心配頂きメールを多数いただき有り難うございました。
お陰さまで怪我の方も回復し、今日から再開致します。
また宜しくお願いします。

小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(39)&CG

そして腹がいっぱいになったのか、残った餌をくわえて林の中へ姿を消した。
「あ~あ、帰っちゃった。写真でも撮っておけば良かったね。そうすれば今度来た時に識別出来たのに」。
「また外で食事をすれば匂いを嗅ぎ付けて出て来るよ」。
「そうか、今まで来ても中で食事していたからタヌキが来ていても分からなかったんだ。ねえ外にテーブル作ってよ」。
「いいよ、軽井沢から帰ったら造ってやるよ。バーベキューも出来るように屋根も造ってやる」。
「うん、きっとだよ。私も手伝うから、なんか夢が広がるね」。
美保は嬉しそうに笑顔を見せて喜んでいた。そして食事の片付けをして再び補修を始めた。そして三時過ぎには終わった。
木屑で汚れた庭を掃除していた。そんな二人に山間から涼しい風が吹いて包んでいた。そして四時には風呂に入って笑う美保の声が別荘から漏れていた。
そして風呂から出ると夕食を作り、残ったおかずとご飯を洗面器に入れるとタヌキが出て来た林の入り口に置いた。「マツ~、カエデ~ッ。ご飯だよ」。
そう言いながら戻って来た。そして真っ暗な山道を降りて出掛けた。そして電話ボックスを探して車を止めた。
「京平さん、どうして毎回電話ボックスを替えるの」?
「え、ああ。もし知り合いに見られたら困るからね。電話も携帯もあるの誰もが知っているから。用心に越した事はないから」。
美保は分からない事は何でも聞いた。京平も嫌な顔一つしないで美保が納得するまで話した。そして二人は電話ボックスに入った。
手帳を出すと真田へ電話した。すると、一回、二回、三回、四回。とコールしても出なかった。京平は電話を切った。そして掛け直した。すると直ぐに出た。
「は、はい。真田です、先程は済みません。外に出ていたんです」。
「さよか、それで守備はどうやったかいな」?
「それが、後五百万分だけ古い紙幣に替えられませんでした。明日の朝には古い紙幣を用意してくれるそうです」。
「あんたわしにカマ掛けたらあきまへんで。お宅がそう出るなら取引は止めや。ほなさいなら」。
「待って!待って下さい。済みません、本当に済みませんでした。私が悪かった。二度とこんな真似はしません。勘弁して下さい」。京平は強きで逆にカマ掛けたのだった。
「一旦切りまっせ、そのまま待ってんか」。と電話を切った。美保に茂が何かを企んでいる事を話した。
「真田が仲間を呼んだって事?・・・」。
「うん、たぶん。だから強きで取引は止めるって脅かしたら、真田の奴おどおどしていた。見破られたと思ったんだろう」。
「甘く見られたわね。だったら倍ね、私達の怖さを思い知らせてやろう。倍額にしようよ。ピン札でいいからって。匿名で福祉施設にでも寄付しちゃえばいいよ」。
「よし、倍とは言わないで桁を多くしてやる。千五百万とは別に」。
「え~っ凄いじゃん、一億円も寄付されたらさ福祉施設の人達喜んじゃうよ。それで行こう」。
「よし、今頃真田の奴おどおどして待っているぞ」。そして携帯に電話した。
「はい、真田です。本当に申し訳ありませんでした」。
「ほな言うで、前のと別にやなワンパック用意してんか。あんたが悪いんやで、ボスが怒ってしもうてな、金はもう要らん言うて警察に届けろって言うのをわしが止めたんや。どうや?
あんたがボデーガードに払う方がええんやったらわし等は構へんで。その代わりにや、あんたは良くて終身刑、まず死刑やろな」。
「わ・分かりました。でも明日一日では無理です」。
「まだ言うんか。わし等を怒らせるんやな。なめとんのかっ、わし等をなんやったら雇ったあんちゃんも片付けたってええんやで。ほな取引は止めやな」。
「待って、待って下さい。分かりました。怖い人達ですね。そんなに大勢いるなんて分からなかった。明日中には必ず用意します。
一億五千万ですね」。
「ええか、此れが最後やで。わし等はあんたを見てるんや。こざかしい真似は止さんかい、ええな」。
「はい、雇った三人は京都へ帰します」。
「またそんな嘘を言うんか」。
「済みません。五人です。五人は必ず帰します」。
「あかんな、あんたとは取引止めや。わしは仲間内でも優しい言われてまんねんで。息子も気の毒にな」。
「待って下さい、六人です。本当は六人です。絶対帰しますから」。
「わしもう呆れてもうた。わしの胸三寸やけど、こう嘗めらとってはどうしたらええもんやろか、おっちゃん」。
「お願いです。本当に六人です。今直ぐに京都へ帰します。どうか取引を続けて下さい」。
「ほな大きな声でいいなはれ。わしに聞こえるようにな」。
すると走って来る足音が携帯電話を通じて聞こえてきた。
そして断りを入れている真田の声が聞こえた。
「済みません、商談がまとまりました。皆さん今すぐ京都へ帰って下さい。約束の小切手です」。
「名前を一人づつ言いなはれ。きっちりフルネームでや」。
「はい、林辰也さん、新橋良雄さん、小島徹さん、望月芳章さん。森和雄さん、高橋啓次さん、宮本貞雄さん。皆んな帰って下さい」。
すると、口々に不平をいいながら車に乗り込んでドアを閉める音がバタンバタンと六回聞こえた。
そしてエンジンを始動させるスターターの音が電話を通じて三台いた、そして走り去ったようだった。
美保は不安そうな表情を浮かべて京平を見ていた。
「おっちゃん、此れが最後のチャンスやで。明日この六人が京都に戻らんかったらその時点で取引は止めや。一人多いな、誰や?・・・」。
「分かりました。一人は仲介者で関係ありません。あなた方怖い組織を敵にしてしまったようですね。もう嘘も隠しもありません。約束は必ず守ります」。
「明日は軽井沢やで、ほなおっちゃんお休みな」。
京平はそっと受話器を掛けた。そして大きく息を着いた。
「どうして、どうして仲間がいる事が分かったの。六人よ」。
「分からない、話していて感じたんだ。始めは三人って言った、そしたら五人。
突っ込んで張ったりを噛ましたら六人になった。山勘だよ。話していて真田の声がどうも気になって仕方がなかった。まだいるぞ、一人か二人。電話する時はあの場所に先に行ってないと危ないな」。NO-39

小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(38)&CG

2008-08-13 00:49:36 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(38)&CG

「さよか、ほな条件を言いまっさかい覚えておくんなはれや。現金のピン札は嫌いや、古い紙幣にしておくんなはれ。それから明日、中軽井沢のホテルニュー星野に真田夫婦の名前で予約してありまっさかい、移っておくんなはれ」。
「古い紙幣にですか、分かりました。頼んでみます。それで中軽井沢ですか、ホテルニュー星野に行けばいいんですね」
「そや、ええでえ軽い沢は。ほな頼まっせ」。そして電話を切ると美保は大笑いしていた。
「全くもう可笑しいんだから、何処から聞いても関西人ね。面白かったな。それで真田はなんだって」。
「うん、やっぱり電話して確かめたみたいだ。それに古い紙幣に代えてくれって言ったら驚いていたよ。頼んでみるってさ。明日一日のんびりして十五日の朝僕等も軽い沢に行こう」。
「うん、それで標的は何処で?・・・」。京平は軽井沢の地図を広げた
「峠の茶屋から白糸ハイランドウイの滝に通じる道の中間点に空き地があってね、そこに車を止めさせて道路とは反対側に立たせる。通行車両から見えないように背中越しに立たせるんだ。
周りは雑木林で小高い丘があってね、そこまで車で入れるから、その丘から狙う。誰にも見られる事はないよ」。
「うん、でもせっかくだからお金も貰おうよ。こう言うのはどう。私が先に雑木林の中にいてお金を投げ込ませて受け取る。新しいテープを真田に投げて渡すの。そうすれば真田だって少しは安心するでしょう」。
「いや、それじゃあ危険だ。じゃあこうしよう、お金を投げ込ませて一周して戻るように指示するよ。
美保が戻ってこれるように時間稼ぎするから、テープを空き地に見える位置に置けばいい」。
「分かった、じゃあそれで決まりだね。ねえ京平さん、道路公団の作業服とヘルメット、それにラバーコーン手に入らないかしら。あれなら人に見られても変に思われないでしょう」。

「ここにあるよ、白いヘルメットに作業服なら。それに作業靴もね。じゃあ僕がやる、美保はライフルを構えて待っていてくれ。もし真田が僕が戻るより早く戻って来てしまったら美保が掃除してくれ」。
「うん、分かった」。美保は一瞬唇を噛んで瞳を輝かせた。
そして紺野は地下室から作業着と靴、ヘルメットを持って来た。
そして黒いテープを引き出しから取り出すとカッターナイフで細く切った。そして白いヘルメットに二本の線を張り付けた。
そして外に出ると物置からラバーコーンを数個持って来た。
「え~っ、どうしてそんなのまであるの」?
「うん、ここを作る時に道の入り口に目印に置いたんだ。資材を運ぶトラックに分かるようにね。それに一般車両が入ってこないだろ。
今はフェンスがあるから車もハイカーも入って来ないけど、あれを造るまでは間違えて良く入って来たからね」。
「この山はお義父さんと京平さんが手入れしているの」?
「うん、お爺さんが病気で亡くなるまではやってくれていたけど、亡くなってからは僕と父さんでしてる。下草を刈ったり雑木を切ったりね。だから林業に使う道具は全部揃っているって分けだよ。
家は元々林業が主だったから。この辺りの山も昔は殆どの家の山だったらしい。それが安い輸入材が入って来るようになってさ、売れなくなって林業を止めたんだ。それでベンシヨンを始めたんだって。いまのペンションは五年前に新築したんだ」。
「ふ~ん、私の家はね。元々会社をしてた祖父から父が継いだの。母は祇園の芸者さんだったんだって」。
「そう、それでお義母さんいつまでも奇麗なんだな。ほんと言うとさ。お義母さんに会った時にそうじゃないかって思ったんだ。
さっぱりしていていいよな。美保もその血を継いでいるからサッパリしてるんだな」。
「そうどす。アッハハハハ。ねえキスして」。
そして美保は抱き着いた、濃厚なキスをして食事の支度を始めた。
そして翌日、朝一番でインテリアの店で注文した木材がトラックで届けられた。
二人は作業服に着替えると傷んだ別荘の廊下の張り替えを始めた。美保は床を剥がした板を運んだり釘を抜いたり押さえたり、初めての大工仕事に汗まみれになりながら楽しむように手伝っていた。
そして、首に巻いたタオルが妙に似合っていた。
「京平さん大工さんみたいだね、私見直しちゃった。背広にネクタイ姿しか見てなかったからさ。男の人が汗を流して仕事する姿っていいわね」。
「え~っ、美保だってけっこう似合っているぞ。疲れたら休んでいいからね。無理するなよ生理なんだから」。
「いや~もう、平気ですよ~だ。アッハハハハッ・・・」
そんな美保の笑い声が山間に響き渡っていた。そして昼にはお握りを作って二人で庭にシートを敷き、食べていた。
「あっ、あれなあに。クマじゃないしキツネじゃないし」。
美保の見る方を見るとタヌキがのそのそ歩いて来るのだった。
「美保、友達だよ。この辺りに住んでいるタヌキだ。やっと出て来た。前は良く来てたんだ。お握りそっと転がしてごらん」。
美保は小さなお握りを転がした。するとタヌキは立ち止まった。
そして真っすぐ向かって来るとお握りを両手で持つと食べ始めた。
「え~っなに此のタヌキ、変なタヌキね。慣れている、ハハハハ・・・」。そして美保は卵焼きや炒めた野菜をそっと投げていた。
「ねえ京平さん、あのタヌキに名前はあるの?・・・」。
「そんなのないさ、まだいる筈なんだけど出てこないな」。
「え~っまだ外にもいるの。あっオチンチンがある。牡だ。見て、あの木の後ろ。ほらっ、こっち見ている」。
すると別のタヌキが大きな杉の木の後ろでじっとこちらを伺っていた。京平はお握りを強く転がした。
「あっ、出て来た。私がいるから怖いんだ。私を見るの初めてだから、慣れるかしらね」。
「すぐに慣れるよ、僕が初めてタヌキを見たのは三年前だったかな。庭で薪を割っていたら出てきてさ。置いといた弁当を盗まれて、それが初めての出会いでね。それからちょくちょく出て来るようになって、じっと顔を見ているんだ。それで菓子をやったら寄って来て、慣れるのに早かったよ。だから直ぐに慣れるさ」。
すると、奥で警戒していたタヌキも徐々に寄って来た。そして美保の投げる餌を食べていた。
「ねえあの二人に名前付けようよ。牡が松に雌が楓。決めた。松と楓にする、おいで松、楓もおいで、怖くないよ」。
美保はそう声を掛けながら餌を少しづつ投げていた。京平は笑って見ていた。
NO-38-102


小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(37)&CG

2008-08-13 00:46:21 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(37)&CG

「ちょっとね、私タマゴサンドが食べたいな」。
「うん、良いね。美味しい手作りのパン屋があるから買いに行こう。それからスーパーに寄って別荘に行こう」。
その頃、銀行の窓口には紺野京平の同級生、海野敦子が真田茂の差し出した小切手の応対にあたっていた。
「ともかく此の五百万の小切手を現金に代えてくれ」。
「はい、少々お待ち下さい」。
海野敦子は血相を変えて飛び込んで来た。真田茂に不審を抱いて支店長のデスクに行くと、身元の確認を頼んでいた。
「急だね、高額の小切手はまず身元が分かるものを提示して貰って下さい。免許証があれば一番いいんだが」。
「支店長お願いします。なんかあのお客さん怖くて」。
「分かった、私が行こう」。
支店長は小切手を手にすると窓口に立っている真田茂に歩み寄った。
「お客様、たいへん申し訳ありませんが、身元を確認出来る物を何かお持ちでしょうか。一応確認の為ですので」。
「ああ、免許証と名刺がある。それでいいかな?・・・」。
真田茂は怪訝な顔をしながら、ヴィトンのバックのチャックを外すと免許証と名刺を取り出して支店長に差し出した。
そしていらいらしながら足をパタパタと鳴らしていた。
「はい、結構でございます。少々お待ち下さいませ」。
そして海野敦子を呼ぶと本人である事を確認したと、支店長は奥の金庫室に入った。そして皿に五百万の現金を乗せて出て来た。
「真田様、お待たせいたしました。どうぞご確認下さいませ」。支店長は免許証と名刺と一緒に窓口にそっと置いた。
真田は免許証と現金を鷲掴みするとバックに押し込んで封筒を二つに折って出て行った。
「支店長、なんか変な感じですね。あれでもお医者さんですかね」。
「海野さん、人間はいろんな人がいますから」。
海野敦子は真田茂の印象を深く脳裏に刻んだ。
そして京平と美保はパン屋に寄ってサンドイッチを買い求め、スパーで買い物をして別荘に向かっていた。
夏の日差しを浴びた樹々からは風に乗って葉や山野の匂いが空いた窓から吹き込んでいた。
美保は京都では嗅いだ事のない自然の空気を胸いっぱいに吸い込んで感動していた。
「自然の匂いっていいわね。京都でも静岡でもこんな匂いなかったもん。空気に味があるんだね」。
「ああ、特にこの辺りは館山や穂高連峰からいい風が来るからね。僕等が子供の頃はもっと空気が新鮮な感じがしてたような気がする、だから都会に住んでる人達がこの自然に憧れてペンションへ来るのも分かるような気がするよ」。
「うん、こんな自然の中で暮らせるのが何よりの贅沢ね、母にもこの自然を味合わせて上げたいな」。
「盆のピークが過ぎて落ち着いたらさ、電話して呼んであげたらいいじゃないか。遠慮しているんだよ」。
「呼んでもいいの?・・・」。
「当たり前だろう。僕のお義母さんでもあるんだからね」。
「うん、じゃあ盆が明けたら電話する。有り難う京平さん」。
こうして別荘についた二人は荷物を降ろした。そして紺野は携帯のナンバーディスプレーをオフにし、軽井沢のホテルに電話していた。
すると、空きがあるとの事だった、紺野はホテルのコテージを真田茂夫婦の名前で予約した。
「京平さん、別荘を借りるんじゃなかったの」?
「うん、別荘だと奥さんが気の毒だと思ってね。食事の支度をしなきゃならないだろ。それに人気の多い所なら真田も警戒しないと思って。
それに、あのホテルならコーテージも豪華だし鬼押し出しにもそんなに遠くないからね。今夜もう一度電話して金額を倍にする。その足で軽い沢に行かせて一日たっぷり恐怖を味合わせてから決行は十五日の昼だ」。
「え~っ真っ昼間にするの。危険よ、見られたらどうするの」
「心配ないよ、昼間でもめったに人の来ない所へ誘い出すから。金が目当てじゃないからさ、目的は怖さを味合わせて掃除する事が目的だからね。金が必要になったら貴明から貰うよ」。
「そんな話しが出来ていたん。まるでスナイパーやわ」。
美保は驚いたりすると京都弁で話す癖があった。それが何とも言えないほど愛らしくて可愛いかった。
そして夕方、二人で別荘を出た。そして電話ボックスに入った。
紺野はペンション・マリブに電話を入れた。そして真田茂を呼び出した。
「申し訳ありませんが、携帯の方へお願いできませんか」と言われ、真田は携帯の番号を教えた。美保は隣で携帯の番号を控えると掛け直した。
すると待っていたいたかの様にすぐに出た。
「済みませんでした。言われたように準備しました。いつ何処でお渡しすれば良いでしょうか」?
真田は至極丁寧な口調で話していた。
「真田はん、息子はんに電話して確かめたようでんな。出えへんやろ。わし等が預かってまっさかいにな。申し訳ないんやけど、明日また銀行へ行っておくんなはれ。わしは片手と言いましたんやで、わし等を甘もう見てはったらあきまへんで」。
「どうしてそれを、息子はいませんでした。徒じゃないようですね」。
「あほか我は、こんな事徒でしまっかいな。あんさんは言われた通り用意したらうええんや」
「はい、済みません。片手と言いますと五千万でしょうか。全部で五千万ですね。それで忘れて貰えますか。息子を返して頂けますか」?
「わしは欲張りじゃおまへん。言う通りしてくれはったらテープは処分して息子はんは帰れまっせ」。
「私に直接テープを渡してはくれないんでしょうか。テープを処分したと言う証明はどうやってしてくれるんです」?
「それはあんたがわし等を信じるしかおまへんな。信じられん言いはるやったら此の取引は解消や。金はどうでもええんやで、あんたは警察、息子も警察や。ほな無かった事にしまひょ」。
「待って、待って下さい。誰も信じないとは言っていません。分かりました。では明日用意して待っています」。
NO-37

小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(36)&CG

2008-08-12 10:29:20 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(36)&CG

「はい、真田です」。
「俺だ、悪いな朝っぱらから」。
「いいえ、言われた通りあれから直ぐ旅行の支度をして和歌山の那智勝浦にある休暇村にいます。貴方が言ったようにやっぱり刑事が尾行して来ています」。
「そうか、お前の両親を確認した。あの晩話した事をもう一度録音するから話してくれ」。
「はい、一年半前の二月十日に佐々木友世さんを京都の東山にある、宝池のベンチで凍死させたのは義父の茂です。
義父茂はもう友世さんから金は取れないと分かったんです。その頃、友世さんも借金の返済を行って来ました。返さなければ被害届を出すと言い出したました。それで殺すすかないと言い出したんです。
僕に借りた金を返すから、そう言って誘い出せと。
彼女は信じて来ました。それで、自分に押さえる様に言うと、医療用の麻酔薬チオペンタールを少量注射して眠らせたんです。
あの時期は寒さで凍死する事を知っていて置き去りにして死なせたんです。
そして今年の八月五日ですが、舞鶴の戸島の海岸に高橋幸子さんを誘い出して、茂るが用意した睡眠薬入の缶ジュースを飲ませました。
30分もすると幸子さんは眠ってしまいました。
そんあ彼女を海に投げ込んで溺死させたのも義父です。義父は彼女達から金を毟り取って来いと命令したんです」。
「よし、ゆっくり遊んでいろ。それから酒は絶対飲むな」。
「はい、飲みません。一つ質問をしても良いですか」。
「なんだ、答えられれば答えてやる。言ってみろ」。
「はい、僕を仲間に入れてくれませんか。僕はいままでして来た事は自分の意志ではありませんでした。養父に恩があるからしていただけなんです。ですから僕を」。
「それは駄目だ、我々は日本国籍ではないからな。もう分かるな」。
「エッ・・・そうですか、日本語が上手ですね。分かりました、此れからは義母と二人で頑張ります」。
「そうしろ、また電話する。派手に動くな」。

私は電話を切った。まさか仲間にして欲しいなんて言われるとは思わなかった。その事を美保に話した。
「え~っ、そう。それであんな変な話しをしていたの。我々は日本国籍じゃない、なんて。カッコイイじゃん」。
美保はそう言いながら電話ボックスの中で飛び上がって喜んでいた。そして静かになると真顔になった。
「じゃあ私呼び出すね」。と美保はみそら野のペンション・マリブの電話番号を押した。
そしてじっと私の目を見詰めながら人差し指、中指、薬指と立てて「ピンポン」と言うと話し始めた。
「もしもし、ペンション・マリブさんですか。済みませんが京都の真田茂をお願いします」。そう言うとOKサインを出し、受話器を渡した。
「いて良かったね、私出ている。暑くなっちゃったよ」。と電話ボックスから出ると車からうちわを取り出して煽っていた。
すると、ゴトゴトと音がして出た。
「はい、真田です」。私はテーブレコードのスイッチを入れた。
「あっ、貴明か!・・・なんの真似だ!・・・おいっ、貴明!」
真田茂は興奮して声が上ずっていた。そしてテープを止めた。
「聞かはりましたか、わし等は何もかんも知っているんや。息子を預かってまっせ。あんたも随分あくどいんやな」。
「だ・誰だなんだ。か、金か?・・幾ら欲しいんだ」。
「そうでんな、片手でも用意してもらいまひょか。夕方までに現金にしてそこにいてくれまっか。また後で電話するよって」。
「待って、おい・・・待ってくれ。盆休みで銀行は休みだ。用意できん」。
「あんた立場を考えなはれ、なんや、その口の効き方は。わしは警察に垂れ込んでもええんやで」。
「す、済みませんでした。私の口の効き方が乱暴でした。許して下さい。お願いします。時間を下さい」。
「そうや、それでいいんや。この夏休み中でも松本信用金庫の大町支店はやな、きっちり商いしとるわい。そやかて午前中で終しまいやで。わし等ちゃんと調べてあるんや。ほな夕方に、さいなら」。

受話器を置くと、美保が声を殺して笑っていた。
「ハッハハハ・・・なあに、今度は大阪弁なんか使って。もう笑いを堪えるのが大変だったんだから。でも上手だったよ」。
「そう、会社の同僚に大坂の出身がいてね。聞き覚えの大坂弁だけど、そんなに悪くないだろ」。
「うん、どうだった。驚いていたでしょう」。
「もうビクビクもんだったよ、今頃焦って家に電話しているぞ、携帯へも。出ないと分かれば銀行へ行くから見に行こうか」。
「うん、でも本当にみそら野の銀行は営業しているの?・・・」。
「ああ、この地区はペンションやホテルや別荘が特別多いからね。盆休みで営業しているんだよ」。
「ふ~ん、そうなんだ。真田の奴一人で行くのかな」?
「うん、女房は何も知らないなら一人で行くだろうな。奴が行くか見届けたら別荘で休もうか」。
「うん、途中でスーパーに寄ってね」。
そして車を出した、ペンション沿いの道にはテニスウエアーやハイキング姿の若者たちで満ち溢れていた。
そんな中を避けるように走って白馬駅に出た。そして信用金庫の手前のインテリアの店に車を止めて展示品を見ながら待っていた。
二人は道路に面したインテリアを見ていると、五分もしない内にシルバーのベンツが店の前を走り抜けた。二人は急いで表に出ると走り去るベンツに目をやった。京都ナンバーだった。
それを見た店員は何があったのかと、二人の後を追い掛けて表に出た。ベンツは信用金庫の駐車場へ入って止まった。
「紺野さん、何かあったんですか」と二人が見ている方向をみながら店員は二人を見た。
「いいえ、いまのベンツが知り合いの車に似ていたもんだから」。
紺野は笑ってごまかした。店員は何気なく頷くと店に戻った。二人も店に戻ると別荘の修理に使う板を注文して店を出た。
「貴明の言う事は本当だったんだね、奥さんは何も知らないみたい。もし知っていれば一緒に来るもの」。
「うん、貴明の話に嘘はなかったみたいだね。お腹空いたろ?・・・」
MO-36-96