エンターテイメント、誰でも一度は憧れる。

PCグラフィック、写真合成、小説の下書き。

20XX年・クエスチャン (-16-)

2010-10-03 13:31:06 | 20XX年・クエスチョン
20XX年・クエスチャン (-16-)
女性には絹のランジェリーの上下、パンティーストッキング、真っ白なTシャツ。男性にはトランクスとTシャツタイプのシャツ、靴下から安全靴まで揃えられていた。
早々に制服に着替え、IDカードを胸に部屋を出た。大学の先輩でもある新田則夫、ポリスの林進一、田島礼子、三人が待っていた。
貴方、林さんを忘れていたわ。林さんが一番年上ね。耳元で囁く様に言う真由美だった。
頷く佐伯。廊下の両脇には敬礼し、ズラリと並ぶ隊員たち。
佐伯は敬礼したまま進む、それは壮大だった。 
心なし緊張もし、中央に開けられた扉の前に立った。「これは凄い」。思わず口にしてしまう程の人数と拍手に迎えられたのだった。 
佐伯と真由美は、空母大和の艦長、狩野誠一のエスコートで壇上に向かった。と、同時に副大統領、大友良三が壇上に現れ、拍手で二人を待っている。
壇上に着くと拍手はピタッと止んだ。
「諸君、紹介します。このJESプロジェクトを指揮する指令の佐伯晃博士です。お隣が副官でもあり、人生のパートナーでもある奥様の真由美さんです」。副大統領大友からJESプロジェクトが佐伯に引継がれた。今後、佐伯司令の言葉は絶対であり、それを伝える副官の真由美の言葉も同様である。
これから我々はかつて体験した事の無い恐怖に立ち向かって行かなければならない。国家、全世界、人類の存亡が託された。
国民にはこの地球で何が起きているのか今だ知らされていない。本日午後19時、横須賀沖に停泊している巨大空母大和、イージス艦ふくろう1、2、と 共に出港する。   成田空港からは気象観測機スカイレパド003・005の超ハイテク機2機が離陸する。同時に、大統領、西条純一郎自ら全世界向けてに発表する事になっている。
壇上から大友は降り、佐伯の挨拶へと移る。
「佐伯です。もう自分が言う事は何もありません。唯一つ、このプロジェクトを成功させ、全員が無事帰還するのが自分に貸せられた任務と思っています。それには、臆病になって頂きます」。
「佐伯司令に申し上げたい、我々軍人は国の為、国民を守る為に命を捧げる覚悟である、それを臆病になれとは我々軍人魂を軽視してる他無い。撤回されたい」。
佐伯は小型PCを開き、ペンシル形スキャナーを隊員のIDカードに向けた。
すると、その訴えに賛同した隊員が集まりだした。
間もなく身分が照会された。そう熱り立ったのは、陸軍大佐、紺野隆35才だった。
「紺野大佐、それではプロジェクトを抜けて頂く。大佐に賛同して集まった諸君も。このチームが結成された意味がお分かり頂いてない様です。
我々は戦争に行くのではありません。自分たちが相手にするのは人でも獣でも怪獣でもない。大自然から起こる超異常現象なんです。大自然の悪魔です。
確かに世界を誇る空母やイージス艦には最新鋭のミサイル、戦闘機が搭載されています。そこで、大佐にお尋ねします。その武器で4月3日に起きた異常現象を無くせますか。今後二度と起こらない様に出来るなら先程の言葉は撤回します。
返答はいかにッ!・・・」。佐伯は少し熱くなって怒鳴った。
そして黙ったまま返事を待った。紺野大佐の周りに集まった隊員は、一人二人と席に戻る大佐、自分は全員無事に帰還させたい。万が一、異変の兆候が現れた時、もう少しで発生原因が分かるから観測したい。そう言う者がいたら退却が遅れる。
その身勝手な一人の行動で我々一万八千人は死ななければならない。
大佐はそうしろと、私はその者を射殺しても撤退します」。
「私も夫に賛成です。もし、もう少し観測したいと言う隊員が夫であっても。私は副官として夫を置いてでも撤退します」。
「司令、自分が間違っておりました。臆病になりますッ!」。その言葉に、静まり返った大ホールは突如笑いの渦が巻き起こった。         
紺野大佐は笑いごと所ではなかった。佐伯に抜けて頂く、そう言われて真地に受けていた。困った様に壇上の下に駆け寄った。
「司令、自分を連れてって下さい。必ず臆病になりますッ!」。
それには佐伯も笑いを堪えきれず、真由美と大笑いだった。
「ええ、勿論です。こちらからもお願いします。アッハハハハハ・・・」。
こんな経緯から始まり、隊員たちとはスッカリ打ち解けた。
昼食は立食パーティー形式で行われ、寿司コーナーがあり、中華があり、ラーメンの屋台まで用意されていた。  佐伯夫婦の周りには大勢の隊員が集い、笑いが溢れていた。そんな佐伯の元へ、一人の隊員が小走りに駆け寄り敬礼した。
「失礼します、第一電探の遠藤です。旗艦大和から入電です」。
一通の書類を差し出す。隣にいた大和艦長狩野の表情が強張る。そして、佐伯の周りから笑い声が消え、伝染する様にホール中から笑い声が消えた。NO-16-32

20XX年・クエスチャン (-15-)

2010-09-24 01:31:47 | 20XX年・クエスチョン
20XX年・クエスチャン (-15-)

11時半、12時から昼食を取りながら会議が控えていた。
そこにはJESプロジェクト一万八千人の各部署のリーダー、補佐官。陸海空の若き優秀な将校や副官達が勢揃いしていた。
総勢500人、JESチーフ佐伯晃の初顔合わせであった。NO-14
横須賀市内Kホテル。
ロビーには佐伯家、早瀬家、飛翔の間。架空の結婚式会場が設けられている。極秘事項である事は明白であった。                  会議の趣旨はホテル関係者でもトップクラスの人間しか知らされていない。飛翔の間がある5Fフロアーは貸し切り、ホテル関係者はおらず、ウェイター、コンパニオンは全てJES隊員が行っている。隊員たちは写真で佐伯と副官である真由美の顔は知らされていた。
佐伯と真由美、5人がフロアーに顔を出す。ズラリと立ち並び、佐伯たちを迎える隊員。静岡で移動観測車の大型トレーラー内で見たグレーのツナギの制服である。
胸にはIDカード、帽子を取り、隊員たちは一斉に直立する。
「佐伯司令殿、副指令殿に敬礼ッ!」。シュッと制服が擦れる音。一斉に敬礼する。
副大統領、大友良三から敬意に対しては敬意で返してくれと言われていた。照れくさそうに敬礼し、ぎこちなく隊員たちを見回す佐伯であった。
真由美も釣られる様に敬礼する。林、田島、新田もつづく。そんな列から屈強そうな男性隊員3人、緊張して頬を強張らせた女性隊員の2人、5人が前に出る。
隊員たちの両手には佐伯たちの制服が抱えられている。
「ありがとう、宜しくお願いします」。受けとろうと腕を延ばす。
「お持ちします、控え室はこちらです。ご案内します」。
まるで軍隊そのままの言葉であり、声がフロアー中に響き渡る。IDカードには空母大和艦長、狩野誠、35才、と書かれて居た。この若さで世界最大の巨大空母の艦長・・・
海軍武官か、佐伯は呆気に取られた。「お願いします」。と、後につづく。
隊員たちが立ち並ぶ長い廊下を一番奥まで進む。正面には佐伯指令、副指令控え室。
そう書かれたドアの前で狩野は止まった。
狩野はドアを開け、先にはいった。周りを見渡し、スッと端に避ける。
「異常ありません、奥様もどうぞ」。
真由美は唖然と狩野を見上げる。入籍した事は林、田島、新田の3人しか知らない筈なのに。不思議そうに中へ入る。追って女性隊員もつづく。
「・・・どうして入籍したことを?・・・」。
「はい、警備の者から知らせが入りました。朝一番で入籍されたと、御結婚おめでとうございます。では、お着替え頂きましたらお呼び下さい」。
抱えた制服を机の上に置き、振り替える。 カツンッと靴を鳴らし、直立不動の姿勢を取り、敬礼して出ていった。
「驚いちゃったね、私たちに護衛が着いていたなんて。知っていたの」。
「うん、でも真由美に言うと気を遣うと思ったから。みんな若いな」。
「そうね、チーフ殿が一番年上みたい。今回の異変に政府も本腰を入れて取り組んでいるってことよね。何たって陸海空で1万8千人も参加しているんですもの。そのチーフだなんて凄いわね」。そう素直に喜んではいられなかった。それだけの人間の命を預かったのだ、もし、観測地点に異常現象が出現したら。そう思うだけで鳥肌が立つ思いであった。
目の前で後ろ向きに下着姿になる真由美。いつも研究室に閉じ籠っているせいか、眩しいほど色白の肌、スラリとした脚、括れた腰、その腰を包む真っ白なランジェリー。恋人から妻となった今、より魅了され美しく思える佐伯だった。真由美は先に着替え、机に座って書類を見る佐伯の隣りに座った。
「もう~ッ、そんな事してる時間ないのよ。早く着替えて下さい」。そう言いながら、佐伯の手から書類を取リ。不意に抱き付いた。
「大丈夫よね・・・私たち大丈夫よね」。真由美の体は震えていた。 
明るく振る舞っていた真由美ではあったが、心の中では不安が渦を巻いていたのだ。そっと唇を重ね、震えが止まるほど強く抱き締めた。
「俺が着いてる。俺は臆病だから、レーダーが僅かな異変をキャッチしても俺は引き上げるよ。このプロジェクトのキャッチフレーズは臆病になれだ」。
真由美「嘘ばっかり・・・人一倍好奇心が強い癖に・・・うん、でも貴方と一緒なら何も怖くない。でも、絶対に無理は嫌よ。私がいるんだから」。
コンッコンッ、「礼子です。チーフ、準備が整いました」。
「ハーイッ、いま行きます」。
「ウフッ、ほらッ、早く着替えないから。ハイ、バンザイして」。
照れながら両手を上げる佐伯、ベルトを緩め、シャツをたくしあげるように、脱がせた。用意された制服は、制帽、着替え用と共に3着が入っていた。NO-15-30

20XX年・クエスチャン (-14-)

2010-09-06 01:18:26 | 20XX年・クエスチョン
20XX年・クエスチャン (-14-)

「真由美の言う通りです。旅客機は一瞬にしてエンジンは停止し、乗員乗客は即死だったでしょう。でも疑問は残ります」。
新田の表情は見る間に蒼白し、眼鏡の下の目は、カッと見開いていた。
佐伯は次のページを捲った。
「解らないのは何故あんな大きなタンカーや航空機が消えたかです。何処へ消えたかです。それも同時刻に世界中で不規則な範囲で異変が起きてるんです」。
真由美は夫にも言えず、ある仮説を描いて居た。口にして良いのか戸惑いながら夫の横顔を、チラ、チラと見ている。
「真由美、何か良いたそうだけど・・・」。 
「う・・うん、科学者として根拠が無いんだけど。あの真空層は異次元空間じゃないかって、でも真空層の周辺から磁波が観測されてないから・・・」。まるで少女の様に、尻蕾に言葉がか細くなっていた。佐伯は二度三度と頷く。
「俺もその事は頭になかった訳じゃないんだ。こうは考えられないか。宇宙にブラックホールやワームホールが存在するなら、何らかの理由でこの地球上に類似した何かが出現したとしたら」。
「何だ、その聞き慣れないワームホールと言うのは。ブラックホールと言うのは何でもかんでも引き寄せて飲み込んでしまうって奴だろ。
高密度の天体で重力が強烈に強い為に物質も光も放出できないっていう」。
「知っているじゃないですか。ええ、ワームホールと言うのは簡単に言うと新しい宇宙に通じる入り口だと言われています。その先にはホワイトホールと言う新しい宇宙が存在していると言う学説です」。
「ああ、聞いた事あります。ホーキンス博士ですね」。
「ええ、物理学者なら誰でも知っている名です。当時は不治の病だった筋ジストロフィー症と闘いながら、アインシュタインの一般相対性理論を解明した車椅子の偉大な物理学者です。今ではDNA治療で完治しますが」。
「でもどうしてそんな物が・・・」。 
その問いに答えられる適格な言葉は用意してなかった。
「逃げろ~ッ崩れるぞ~ッ」
倉庫中に響き渡る作業員の声。振り返った。佐伯たちは我が目を疑った。灰色の埃に包まれていた。目を閉じ、袖で口と鼻お覆った。
「皆~ッ!じっとして動くな~ッ!・・・」。新田の声が響き渡る。次第に粉塵が収まり、徐々に視界が開けて行く。そこで目にした物は・・・旅客機の残骸を支えていた足場を残して機体が粉々に崩れていた。  
五人は走る事を忘れた様に小幅に足を運ぶ。関係者も唖然と立ち竦んでいる。
「嘘だろう、なんなんだこれは。何が起こったんだ。これが飛行機の機体か、まるで砂の様にサラサラじゃないか」。
佐伯は屈んだ、砂状になった機体に振れ様と腕を延ばす。
「駄目ッ!触っちゃ駄目ッ!・・・調べてからじゃないと危険よ」。
「大丈夫だよ、もし毒性があればここに居る人間はとっくに死んでいるさ。崩れた時に舞い上がった埃を吸い込んでいるからね。         
さっきまで乗って調べていたのにどうして突然崩れたんだ。御覧、さっきより粒子が細かくなってる。小麦粉だ」。
まるで生き物の様に粒子が更に分解している。ポケットからビニール袋を出して広げ、真由美に持たせ、両手でゴッソリと掬ってサンプルを取った。
「誰かッ、崩れた所をビデオに収めた人はいますかッ」。
周囲を見回す佐伯。 
「司令、全て収めました。監視カメラでも撮っています」。それは事務所から流れるスピ-カ-からだった。
「佐伯司令さん、撮っているそうですよ・・・ウフッ・・・」。
「からかうなよ・・・真由美、皆さん、これはきっと真空帯に関係あるぞ。
新田先輩、至急オーストラリアで墜落したセスナの脱落した垂直尾翼とデーターを取り寄せて下さい。きっと向こうでも同じ事が起きている筈です」。
新田は頷き、事務所を見ながら大きく手を上げた。そしてトランシーバーを持つと、佐伯に言われた儘を指示する。
佐伯は思った。消息を絶ったタンカーや航空機が真空帯が原因なら・・・生存者は絶望だろうと。何万人もの人達が犠牲になった。
自分等学者の怠慢が悲劇をもたらした。そう思うと、用宗港で見た肉片となった女性の顔が脳裏を過ぎる。沈黙し、粉状になった機体を見詰める佐伯だった。
そんな夫が何を思うか真由美は察していた。そっと左腕を夫の視線に差し出した。
「うん、分かっている。そろそろ行こうか」。
NO-14-28

20XX年・クエスチャン (-13-)

2010-07-26 17:54:42 | 20XX年・クエスチョン
20XX年・クエスチャン (-13-)

アメリカのケネディー空港では、離陸中に、それも家族が見送る目前で消えている。
この静岡では旅客機の墜落と言う悲惨になった。
他の国で消息を絶った航空機はSOSを発信する事も無く、突然レーダーから消えている。神宮寺博士のチームが観測したデーターでは、4年前の地軸のずれから更に西に5度も傾き、18度も傾いている事が分かった。
しかし、地軸がずれた原因に関しての解明はされていなかった。
続々と入って来る行方不明機の情報。
すると、その中に墜落した航空機が数機あった事が書かれて居た。
そのファイルを持つ佐伯の手が震えた。
4月3日木曜日、日本時間PM15時25分、オーストラリア、ニューサウスウェールス、で発生した個人所有小型セスナ機墜落状況。離陸後5分、突然救難信号を発信。15時30分、墜落炎上。同時刻、シドニー空港を離陸したジャンボ機一機の機影がレーダーから消える。もっか捜索中。小型機の残骸を調べた中間報告書。乗員2名、観光客10名。全員死亡。
事故原因、垂直尾翼脱落に因り操縦不能となり、墜落に至ったと思われる。
注目するは垂直尾翼脱落部、まるで何か鋭利な刃物で切られた様に断面が綺麗である。
突然起こったこの訳の分からない現象。それは、かまいたち現象とでも言っておこう。
これは科学では立証されない推理ではあるが。大変な事が起こり始めているもは確かだ。この地球は今に破滅する。                

第二章 JESチーム発動。

三週間後。佐伯は何日も徹夜し、手掛けていた小説をようやく書き上げた。
そんな佐伯の隣には、体を気遣う真由美の姿があった。
数日後、静岡を引き払い、真由美を連れ立って東京へ出向いていた。出版社に直接出向き、事情を話し、全ての仕事をキャンセルして神奈川へ向かった。
五月、日本列島は長いウィークデーに入った。湿め湿めした蒸し暑い日々は一際増した。静岡の用宗港に墜落した旅客機の残骸は全て回収され、航空安全局による現場検証も終り、破壊された港の復旧に入っていた。
航空機の残骸は海軍横須賀基地の広大な倉庫に運ばれ、更に墜落原因を調べて居た。
墜落原因の情報を持つ唯一のボイスレコーダーを調べた。が、何一つ墜落の原因に結び付くデーターは得られなかった。
ただ、死亡した乗員乗客の司法解剖の結果、全員の遺体から生活飯能が得られず、墜落時には全員が死亡していたという驚きの鑑定がなされていた。
死因、搭乗員乗客280名の全ての死因は不明だと言うのだった。
しかし、客席に酸素マスクが下りた形跡は無く、真っ先に着ける筈の機長、コックピットでも使った形跡は無かった。調査を続ける航空安全局は困惑していた。
そこへ、佐伯と真由美の二人が顔を出した。倉庫一面に旅客機の残骸が置かれ、大方の形に復元されて置かれて居た。
二人を待っていたかの様に公安として調査を手伝っていた林と田島が駆け寄った。
「どうも、待ってました。静岡の方は・・・」。
「ええ、引き払って来ました・・・俺たち結婚しました」。
「ワ~ッ!ヤッターッ。早瀬先輩、先生、おめでとうございます」。
「うん、ありがとう・・・なんか照れてちゃうな」。
そう、二人は今し方届けを出して来たばかりだった。
佐「ところでこの観測データーを見て下さい」。
佐伯は手にした書類ケースから数枚の書類を出す。すると、事務所のドアが開き、航空安全局の新田が駆けよった。
「待ってたぞ。どうだ、答えは出たか。墜落の原因は解ったのか」。
「ええ、漸く答えがでました。これは4月3日午後3時頃、事故当日の日本列島を気象衛星が観測していたデーターの一部です。酸素、窒素、一酸化炭素、ほか大気中の様々な汚染物質を濃度別に現した表です。当時、あの海域6000メートル上空まで、数分間ですがノンエアーゾーンが存在していた事が分かりました」。
「待ってくれ、俺たちにももっと解りやすく話してくれないか」。
「話しは最後まで聞かないと。簡単に言うと、大型タンカーが航行していた海域と旅客機が飛行していた高度6000メートルには酸素か無かったって事です。それどころか真空状態だった事がデーターが物語っているんです」。
「なんだってッ!・・・」。周囲は騒然とした。驚きは無理はなかった。林も礼子も唖然と二人を見つめて居る。
NO-12-26

20XX年・クエスチャン (-12-)

2010-07-01 12:08:07 | 20XX年・クエスチョン
「正に戦争に行って頂きます。この他に大型輸送機も参加します。これを見て下さい、先ほど届いた全世界で起こった航空機と船舶の行方不明の数です。    
今日一日でです。それから、この港の沖を航行していた大型コンテナ船と通信が途絶えてると知らせが入っています」。
佐伯 「やっぱり、その事を調べてくれる様に礼子ちゃんに頼んでいた所でした」。

渡された書類に視線を向けた。民間航空機、軍用機までが世界中で消えていた。そして、二万四千人もの人が行方不明になってた。
船舶は・・・思わず顔を上げた。言葉に出せない程の数であった。    
世界中至る所で航空機や船舶が消えて居た。今日だけでこんなにか。いまいましいが直ぐに調査には出られない。
まずは気象データーを揃えるしかない。薄く唇をを噛み、じいっと書類を見詰めている。しかし何故だ、自分はともかく林さんや礼子ちゃんまでがスタッフに選ばれた訳は。
もし、この墜落事故が清水か焼津で起こっていたら。それでも選ばれたと言うのか。
そんな疑問が俄に湧き、視線を大友に向けた。

「君、あれを」。大友が隣の新田に声を掛ける。
航空安全局の新田則夫は手にしていたカバンを机に置き、書類を出して差し出した。
「佐伯博士、これはこの一カ月に観測しました気象データーです。こちらは地震予知連が観測した地盤の歪みとその時に発生した電波のデーターです。
それから、こちらは神宮寺博士の研究室が観測したこの4年間の観測データーです」その言葉に愕然とした。佐伯の論文をああも否定し、調査結果を何年も揉み消して来た教授が。あれからずっと観測させていたと言うのだ。
神宮寺「佐伯君、君が十年前から警鐘しつづけて四年前に発表した事は正しかった。
今では一連の異変の原因は佐伯説が有力だと言うのが学者達の見解になってます。政府の見解もそうです。
あの日の事で意欲を無くさせ、学会を去らせたのはこの私です。その為にもいつ戻っても良いように観測を続けさせていました。留守中の四年間のデーターですだから許してくれとは言いません。
もし私がやらなくても、早瀬君が君の意志を継いでいたでしょう」。
神宮寺はそう言うと机に両手を着く、腰を上げ、深々と頭を下げるのだった。

「いいえ、止して下さい先生。自分もつい短気なもので反省していたんです。大人気ありませんでした。これからはもう少し大人になります。このデーターは大いに助かります。ありがとうございます」。
「ほらね、私が言った通りでしょう。彼はもう先生の事は怒ってないって、それより研究を途中で放ったらかしにした事の方を悔いてるって」。

確かに真由美の言う通りだった。佐伯は照れくさいやらこそばゆいやら、真由美を放ったらかしにした事も悔い、まだ自分を思って居てくれていた事に感謝していた。
林は何か言いたげに大友を見ていたが、視線が合うと目を反らせた。
それは田島礼子も同様だった。そうか、やっぱり。佐伯は察した。
「訊きたい事があればこの際訊いておいた方がいいよ」。

「では、副大臣にお尋ねします。自分と田島刑事を選ばれた訳ですが・・」。
「ええ、それは当然の疑問だと思います。この組織を結成するにあたり、観測地は 場所に寄っては紛争地域にも行かなくてはなりません。そこで、陸海空、警官の中から人選していた所、有る筋からお二人の名前が上がった訳です。お二方は警察官の中でも選りすぐりの腕の持ち主だと推薦があったからです。     
「すなわち、射撃の腕はオリンピック強化チームの随一あり、正義感も一際だと刑事局長から是非と二人の推薦があったからです。この大惨事がお二人の所轄で起こったのも田島さんが昇進して静岡へ研修に来ていた事も全くの偶然です。政府の意図はありません。ところで、佐伯博士はどうお考えでしょう。突然消えた船舶や航空機の事は」。
昔からそう言う事はあった。在る文献にも書かれている、魔のバミューダー海域で消えた船舶、航空機の事は余りにも有名である。
今日の気象観測、深海底調査テクノロジーに寄って消えた原因はほぼ解明されている。
消息を絶ったバミューダー海域の深海底と遥か離れた大西洋深海から、体積した砂に埋もれた機影や船舶が発見されたのである。
今まで発見されなかったのはこの海底では流砂、砂漠で起こる流砂と同じ現象が起きていた事を摘めないまま調査していた事に尽きる。
墜落、沈没の原因は突然発生する気象変化によって発生したスーパーセル、巨大積乱雲から起こるダウンバースト、強力な下降気流。
また、白い嵐、ホワイトスコールと呼ばれる大雨を伴った大津波。また、海底に眠る資源メタンハイドレートの大量放出が墜落、沈没の原因の一つだと究明された。しかし、今回は違う。
NO-12-24

20XX年・クエスチャン (-11-)

2010-06-18 12:49:26 | 20XX年・クエスチョン
20XX年・クエスチャン (-11-)

「今日は政府としてでは無く、大友個人として非公式で来てます。佐伯さん、皆さん、ともかく中へどうぞ」。
警部の林と婦警の田島警部補がどうして?・・・二人は互いに顔を見合わせ、そう言っている様にも見えた。
中は計器がズラリと並び、まるで戦闘機のコックピットの様でもあり、イージス鑑の管制室にも思えた。グレーのメッシュのツナギを着た職員が十人程がいた。
皆その儘続けて下さい、大友は立ち上がろうとする職員達を制した。
何処かで何か飛んでもない事が起きている、だからこんな車を。佐伯は直感する。通路の奥には重厚な扉が開いていた。                   
中に誰か居るような、人影が動いた。林警部が小走りにドアの前に立つ。
「署長ッ、どうして署長がここに」。
「林警部、田島警部補、突然だが新しい任務に就いてくれたまえ」。と静岡県警本部長、本間和夫は机の茶封筒を取る。中には辞令が入っていた。
林警部と田島警部補は突然も突然の辞令に唯呆然と突っ立って居る。
佐伯や真由美達は二人を囲むように席に着いた。
「本日四月三日付けで林信一警部は警視正に昇進、並びに田島礼子警部補は警視に昇格。以後、公安警察特捜室へ移籍、国家保安環境対策室勤務を任づる。
では諸君、頑張ってくれたまえ」。と、二人に辞令を渡すのだった。
「ありがとうございます。期待に添える様頑張ります」。
「未熟者ですが、職務遂行に邁進して頑張ります」。
「うん、そう気を張らずに頑張ってくれたまえ。では私はこれで」。本間署長は一同に敬礼し、去った。「意気なり連れて来てこれはどう言う事です。二人も戸惑っているじゃないですか。国家保安環境対策室とは何です?・・・」。
すると、副大統領の大友が机に置かれた分厚い封筒を紐解いた。         
「佐伯博士、林警視正、田島警視、驚かれるには無理もありません。この組織は、例の異常気象が大陸から南下を始めた頃に大統領直轄の元に設けられた特殊な組織です。目的は佐伯博士、博士か研究された論文です。
そんな時に神宮寺博士が大統領官邸を訪れたんです。この論文を出されて、何も可も私に責任がある。そう言われて佐伯博士を探してくれと懇願されました。
論文は全て読ませて頂きました。勿論大統領も目を通されました。
言っておられました。こんな論文があるにどうして今の今迄発表されなかったのか。 知っていたらもっと早く組織を作っていた。あの異変であれだけの犠牲者を出さずに済んでいたと。
佐伯博士、探しました。しかし、手掛かりが全く掴めないでいたら作家の霧島明とい名前が浮かんできました。
捜査チームを静岡へいかせました。やはり博士でした。後はこちらの準備が出来るのを待つだけとなり、準備を急がせました。
そして、三日前に全ての準備が整い、さあと言う時にこの惨事が起きてしまった。そこえ早瀬博士から電話で彼が静岡の墜落現場にいると一報が入ったんです」。
真由美「酷~い、じゅあ大友さんはとっくに彼の居所を知っていたんですか。私に知らせてくれないで。もう知らない」。
唇を尖らせ、プ~ッとホッペを膨らませた。そして、佐伯の腕を抱き締めると、まるで少女の様に拗ねて見せた。
「これは参りましたな、失礼しました」。
「じゃあ神宮寺博士も共犯?・・・知ってたんですか」。       
「いいえ、神宮寺博士にも知らせてありませんでした。黙っていた事は謝ります。只、この組織の存在はまだ世間には知られたくなかったものですから。では本題に入ります。この組織の責任者は佐伯博士にお任せします」佐伯は腰を上げた。
「待って下さい、意気なりそんな事を言われても」。
「いいえ、話しは最期まで聞いてからにして下さい。このチームは観測クルーと各分野の専門化達、勿論早瀬博士も代表の一人です。神宮寺博士は年だから皆の足手纏いになるから事態させて頂くと、その代わり自分より優秀な佐伯博士をと進言されましてね、丁重に断られました」。と、皮切りに説明を始めた。
チーム編成と装備、二台の観測移動車は国内はおろか、全世界を走り回れるよう、国連を通して許可を取ってあると言う。そして、調査は地球上の全てだと言うのだ。
観測用船舶、観測機が書かれた表を見た佐伯は驚愕する。これでは準備に時間が掛かった訳だ。それにしてもどれも聞いた事がない飛行機ばかりだった。
「これは凄い、まるで戦争に行くようですね」。
NO-11-22

20XX年・クエスチャン (-10-)

2010-06-14 11:18:03 | 20XX年・クエスチョン
20XX年・クエスチャン (-10-)

佐伯は確信があるかのように、熱く語った。
警部達は目を円くし、他の皆も驚いた様に呆然と見ているだけだった。    
「これは驚きましたな。先生は作家さんだとお聞きしましたが、霧島明さんと言う名は本名ですか、それともペンネームですかな」。
すると、田島婦警が小首を倒し、佐伯の顔を覗き込む様に見詰めて居る。

「ヤッパリそうだ。似ているなって思っていたんです。佐伯博士ですよね、海洋気象学と地球物理学者の佐伯博士ですよね」。
「海洋気象学と地球物理学の博士ッ・・・田島君、本当かね」。
佐伯は素性が知れた事より。何故婦警が自分を知って居たのか不思議だった。

「はい、もう四年になりますね。私、先生の飛んでもない理論が好きで、あのHホテルでの、地球規模における環境異変と人類の破滅、と題した論文を拝聴させて頂いていました。あの日から先生居なくなっちゃったんだもの」。
「そうでしか。確かに田島さんが言う様に自分は佐伯です」。
「こりゃたまげた、先生は作家さんじゃなかったんか。その海洋何とかと地球物何とかって言う偉い先生だったんかね」。                
「俺はそんな偉くなんかないですよ。今は唯の作家です。それより気象庁か地震予知連で調べて下さい。今日の午後15時30分前後にこの用宗港沖で強い磁場が観測されていないか。警部さん、いいですよね」。
「その必要はありません」。と、背後から何処かで聞き覚えのある声が.そんな馬鹿なと耳を疑いながら振り向いた。
そには、紺のスーツに身を包み、ニッコリと微笑む早瀬真由美が立っていた。

「・・・真由美・・君なのか」。
「もう~っこんな近くにいたのっ!、おバカッ!大バカよ。あれっきり連絡もくれないで。探したんだよ、探したんだから」。泣きながら抱き付く真由美だった。
佐伯は人目も気にする事なく自然に受入れ、ギュウッと胸に抱き締めた。
「佐伯君・・・」。真由美をそっと胸から離し、顔を上げた。
真由美は恥かしそうに佐伯の腕を取り、一歩、二歩と歩み寄る。
学会の ドン 首領、神宮寺勝彦であった。

「今更こんな事を言えた義理ではないが、是非とも君に戻って来て欲しいんです。早瀬君から電話を貰ってね。彼の居所が分かったと。
直ぐTVを見ろといわれて。この惨事をTVで観て驚いたよ、惨事にも驚いたが、君が映っているじゃないか。それも墜落を知らせに走ったとか。・・・
どうだね怪我の方は」。
パチパチパチパチッと、田島婦警は事情が分かっているだけに拍手を贈り、一人涙を流し、佐伯の復帰を願う一人だった。
                      
「アノオ~ッ早瀬先輩、私も居るんですけど」。
「エッ・・・礼子ちゃんッ、エ~ッどうして静岡にいるの。貴方警視庁でしょう」偶然にも早瀬真由美と田島礼子は東京のA大の先輩後輩の仲であった。
田島は今年の警部補の昇進試験に合格しこの三月に研修で静岡県警に配属されたばかりであった。                        
「そうか、それでさっき見たとき何処かで会ってると思った筈だ。礼子ちゃんか、綺麗になって。それにしても警部補さんとは出世が早いね」。 
綺麗さは早瀬先輩には負けますけど、先輩、婚約者に逢えて良かったですね。佐伯先生、今度黙って姿を消したら逮捕しちゃうから。ウフッ」。
「もうッ礼子ちゃんったら。晃さん、怪我は大丈夫?・・・」
「俺は大丈夫だよ」。
「あ~熱い熱い、あの頃の儘ですね」。
「礼子ちゃんったら。それはそうとさっきの話しだけど。警察の方にも聞いて頂きたい事があります。ここでは何ですから、どうぞ」。
真由美は佐伯の腕の怪我を気遣いながら港を出た。              
緊急自動車から離れた人気の少ない一角に国旗が描かれ、JESと入った見慣れない大型トレーラーが二台止められていた。
一台の屋根には大小様々なパロボラアンテナが着いて居た。佐伯には観測用の移動基地である事は直ぐに分かった。
しかし、これ程の設備を備えた観測車は見た事がなかった。すると、ドアが開いた。
現れたのは誰あろう、副大統領、大友良三。そして、佐伯の大学の先輩出もあり国家航空安全局、新田則夫だった。そして、もう一人は公安警察次長、角田平だった。
これは只ごとではない、そう思いながら三人の前で足を止めた。
「探したぞ。お前が作家の霧島明だったとはな、そより怪我は大丈夫なのか」。
「はい、ご無沙汰して済みません。副大統領と航空安全局のお二人と公安の先輩が何故ここに」。NO-10

20XX年・クエスチャン (-9-)

2010-06-05 02:34:23 | 20XX年・クエスチョン
20XX年・クエスチャン (-9-)

照れくさい様なこそばゆいような、ともかく体の節々がヒリヒリと痛み出した。
林警部「ともかく先に治療をしてもらって後で話しを聞かせて下さい」。林警部は佐伯の足元から全身を見ると、救急車に乗り込んだ。ストレッチャーの上にある毛布を取ると、ずぶ濡れの肩に掛けた。
「どうも、・・・」,言葉を返すと、僅か数分前の出来事を話した。
二人の刑事は頷きながら手帳に記している。周りには治療を終えた漁師達がいつの間にか集まって来ていた。佐伯にはまだ気になる事があった。それは突然消えた貨物船の事であった。
「刑事さん、実は・・・・」そう切り出すと話した。刑事も漁師達も半信半疑のまなざしで聞いていた。
「一応海上保安庁に連絡を取ってみます。三時半頃この用宗沖を航行したタンカーがあったかどうか。石野、海上保安庁へ連絡取ってくれ」。
「はい、3時半頃ですね」。

まだ新米刑事だろう、このクソ暑いのに汗だくになりながらスーツを着て居る、石野は軽く敬礼すると駆け出していった。治療を終え、一応の事情聴取を済ませた佐伯は消火活動と同時に行われて居る救助作業を見て居た。
港の土真ん中に墜落した航空機は跡形もなく大破し、海面らから上部が僅かに出て居る。千切れた翼は四階建ての魚協の建物を半分破壊し、粉砕して散らばっている。
海面に立ち上ぼって居た炎は化学消防隊に因って消火され、真っ白な泡が港一面を覆って居た。続々と到着する警察車両、救急車、自衛隊の車両。
墜落現場を少し離れた上空には、マスコミだろう、何機ものヘリが旋回している。
そこへ制服制帽の消防署の人間らしい、小柄な中年男が敬礼をしながら現れた。
消防隊員の誰もが直立し、敬礼している。

「ご苦労様です、南の神崎です。一報が入った時は会議で焼津だったもので。これ  は酷いですな。それで生存者は」。
「今の所60体の遺体が収容されましたが男女の区別が着かない程痛んでます。不謹慎ですが、現状から観て絶望でしょうな」。
そこへ、制服の綺麗な婦警が駆け寄る。何処かで会った様な気がした。胸には田島と書かれている。神崎に一礼し、林警部には敬礼した。
そして、佐伯の顔を見ると、何故か深々と頭を下げるのだった。        
「警部、分かりました。墜落機は日本製のKOMADORI555型で、札幌発静岡行き627便です。乗員10名と乗客は270人。満席だったそうです。関係者がこちらへ向かったそうです。それが変なんです」。と、付け加えた。 
「・・・変・・何がどう変なんだ」。
婦警は神崎と佐伯を見上げ、ここで話して良いのか迷っていた。

「この人は墜落を皆に知らせてくれた人だ。いずれ分かる事だから話せ」。
「はい。それが、問い合わせしたら内の機は一機も行方不明になった機は無いって言うんです。全てレーダーで捕らえてると言うんです。
そしたら、無線が入ったらして。静岡から627便が到着時間が過ぎても機影が現れないって連絡があって、それで知ったと言うんです」。        
「そんな事あるのか、じゃあ静岡でも墜落した事は分からなかったのか」。
「はい、双方の管制塔のレーダーにはちゃんと機影は映っていたって話しています。ネエ、変でしょう」。佐伯はその話しの内容に目を輝かせていた。
「まさか・・・相対性立体残存作用」。と、ポツリと口にした。
「エッ、相対性立体残存作用?・・何ですかそれは?・・」。 
   
相対性とは、その昔ドイツ系ユダヤ人の物理学者、アイン・シュタインが創唱した特種相対性理論、一般相対性理論の総称である
アイン・シュタインはその後、電磁気学と一般相対性理論を統一しようとしたが解明には至らず、この世を去った。
後にアメリカの物理学者、ホーキンス博士によって一般相対性理論は解明された。
佐伯はその理論の中から、時間と空間とは密接に結び付けられていると言う4次元の空間リーマン空間を研究していて偶然発見した佐伯の理論であった。
簡単に言うと。今回の旅客機の機影が札幌と静岡の両管制塔のレーダーに映し出されていた現象は4次元の空間、リーマン空間が存在する事を実証した物でもあった。
航空機は静岡空港に接近し、自動着陸システムを作動させた。その時、磁場の関係で空路に4次元空間リーマン空間が出現したと思われる。

航空機は一種の電波の固まりと同じであり、航空機全体から発する電波と自動着陸用誘導システムの電波と空港の誘導電波とがリーマン空間を通り、機影ごとレーダーがキャッチしていた。リーマン空間に残って居る飛行機の残存機影を双方のレーダーが捕らえていた。だから墜落したのにレーダーに機影がいつまでも映っていた。
NO-9-18

20XX年・クエスチャン (-8-)

2010-06-02 23:46:16 | 20XX年・クエスチョン
20XX年・クエスチャン (-8-)

陽に焼けた堤防にタオルを敷いて腰を下ろし、足元の海面をじいっと見詰めていた。
名も知れぬ稚魚が群れを成し、海面から口を出してパクパクしていた。
そのまま視線を水平線へ向けた。大きなコンテナを山と積んだ貨物船が東へ航行している何処まで行くんだろう、この暑さでは海上も暑いだろうに、そんな思いで眺めていた。
ゴロっと堤防に横になった。雲一つ無い真っ青な空。
岸壁に打ち寄せる波の音、そんな音に混じって遠くの潮騒が届いて居た。
フッと沖の貨物船に視線を向けた。・・・・何処だ、こんなに早く横切る筈は・・・
腰を上げ、西から東を見回した。しかし、何処にも貨物船の姿は無かった。
そんな馬鹿な、目を離したのはほんの20~30秒足らずだぞ。・・・北へ進路を変えたのかも知れないな。
そう思い直し、腰を下ろした。間も無く漁に出て居た2~3tクラスの漁船が一斉に帰港してきた。知り合いの船長もいた。思わず立ち上がって手を振っていた。 
    
「オ~イッ先生、今日は駄目だったよ。魚一匹掛りゃしねえ、駄目だ駄目だ」。 そう言いながら波立たせながら港の奥へ入って行く。 
竿を出さなくて良かった。そんな思いに空を見上げた。
「ンッ?・・・何だあれは・・・」。
真っ青な東の空高く、ギラギラ反射しながら向かって来る物があった。
「鳥か・・・まさか、鳥なら可なりでかい・・・ち・違う、あれは飛行機だ」。  
 佐伯は車に飛び乗り、一目散に港へ突っ走った。
パパパパパパッ~思い切りクラクションを鳴らしながら市川丸の前に着けた。
「皆ッ~逃げろッ~!ジェット機が墜ちて来るぞッ~!」佐伯の蒼白した顔に市川丸の船長は陸へ上がった。

空を見た、振り替える市川丸「皆の衆ッ~逃げろッ~!港から逃げろ~ッ」。その叫びは港内に響き渡る。
漁師達は悲壮な叫びに訳も分からない儘丘へ上がるが、既に目前に大きな機体が迫っていた。漁師達は市場がある西へ走る。
「違うッ~!東だッ~!東ッ~!東へ逃げろッ~!」。 
佐伯は市川丸の船長の腕を掴み、網小屋がある東へ一目散に駆け出す。
ドドドドド~ン,ズズズズズ~ッバリバリバリッ~どう表現していいのか。地響きと共に大きな波に飲まれて居た。どれぐらい流されたのか、気が付くと体中に痛みが走った。両手足からは血が滲み、擦り傷だらけだった。
一瞬何が起きたのか分からなかった。辺りは水浸し、道路に何匹もの魚が跳ねている。
「・・・そうだ、ジェト機」。
漸く我に返った。びしょ濡れの体を起こし、周りを見ると船長はかなり離れた道路まで流されていた。ムクッと体を起こし、佐伯を見付けると手を振っていた。
どちらともなく歩み寄った。船長の額や頬が擦り剥けて血が滲んでいる。
先生のお陰で助かったよ・・・こりゃ酷でえ。まさかジェット機が墜ちて来るとはな。これじゃ乗客は全滅ずら。船も墜落の高波で丘へ打ち上げられて燃えてら。 それにしてもどうして分かったんかね」。

佐伯は逃げ込もうとした網小屋を見た、背筋が凍る思いであった。東側に係留されていた漁船の全てが打ち上げられ、大破して燃えていた。
小走りに港へ歩きながら、見た事を話して聞かせた。
港内はジェット燃料の鼻を突く匂い、濛々と燃え上がる黒煙。目を開けて居られなかった。間もなくサイレンの音が遠くに聞こえ、港は野次馬と消防車で埋め尽くされた。
あまりの目の痛さに体を低く屈み込んだ。
・・・・」思わず後退りした。屈んだ足元にはジェット機の乗客らしい女性の顔だけが血だらけの肉片となって転がっていた。

「先生って貴方ですか」。背後からいきなり呼ばれ、尻餅を着いた。
「・・・は、はい、それよりこれ・・・・」、地面を指差した。
「うわッこれは酷い、自分が処理しますから。向こうで警察が探していましたよ。墜落するのを知らせに来た訳を聞きたいそうです」。
佐伯は両手を合わせ、その場から逃げる様にパトカーに向かって走った。そこには救急車が、パトカーが、消防車が乱雑に止まっていた。
警察も相当慌てて居た様子が手に取る様に分かった。
「先生ッここだに、怪我してるに治療してもらいな。刑事さん、あの作家の先生が教えてくれただに。知らせたくれなかったらワシ等は皆巻き込まれて今頃バラバラだったずらな。なあ皆」。「本当だ、全員生きてるでな。これぐれいの怪我で済んだの先生のお陰づら、後一分でも遅れてりゃ自分の命だってや 危ばいのによ。ありがとうよ先生」。
NO-8-16

20XX年・クエスチャン (-7-)

2010-05-28 03:27:44 | 20XX年・クエスチョン
20XX年・クエスチャン (-7-)

階段をそっと降りた。調査員が目にした物は・・・それはこの家の親族縁者だろう。
灼熱から逃れようと地下室に避難したのか。総勢35体ものミイラ化した骸であった。その中に母親だろう、いたいけな幼い子供を胸に抱いたままだった。
母子を見た二人は顔を見合わせ、涙しながら地下室を飛び出した。
隊員は本部に無線を入れ、状況を報告した。

その遺体はそのまま火葬にすべし。二人は車両からガソリンを抜き、家に火を放った。両手を合わせて、燃え尽きるまで見守っていた。
そして、調査結果が集約された。被害地は全滅において草木一本ネズミ一匹たりとも生存の可能背は無い。こう発表された。
一月後の三月。異常な気候は消滅したものの、妙な気候を残して去った。
日本列島の気候は豹変し、亜熱帯特有のじめじめした温暖な気候に包まれたのである。
列島を白一色に包み、あれ程積もっていた雪を、五メ-トルもの氷雪を僅か一週間で跡形も無く解かした。

桜の花は蕾も持たないまま春を通り越して葉桜となり、気候は真夏と化した。
幸いにも急な雪解けでの水害の被害も無かった。海水は温み、三月だと言うのに真夏の様な天候を迎えたのだ。

この異様な現象は日本だけではなかった。世界規模で気候が崩壊していた。 
秋を迎える筈の国々は秋を通り越し、一挙に極寒の寒さに襲われていた。
収穫を迎えた果物は木に実ったまま凍り、田畑の農作物は土壌ごと凍り始めた。
冬を迎えた国は例年より一際寒さが厳しく、今まで渡来した事の無い程の大寒波が襲った。貧困の家庭では暖の用意も儘ならず、体を寄せ合って凍えている。
春を迎えた国では夏の様に熱帯夜を迎え、地球が狂い出していた。

著作名霧島明こと佐伯晃は、三月半ばの締切りの原稿を七日あまり残して書き上げようとしていた。こんな日がいつまでも続く筈がないと、未だコタツを片付ける事はなかった。室内はエアコンがフル稼働し、サイドボードのシンピジウムが萎れ掛けている。
フ~ッ、やっと書き上げった・・・しかし暑い。
書き終えた「ザ・グレイス・オブ・ゴット」の原稿は450ページ。学者として、またSFを加えた「神の加護」と題した小説であった。    
その小説の中には四年前の学会で発表した論文に更なる研究の成果を加え、より真実身を帯びた小説が書き上がっていた。
早速出版社へ連絡を取った。すると、取りに行くという。その返事を断り、梱包して宅配便を呼んで送った。

そして数日間はペンの代わりに釣り竿を手に、用宗港で好きな海釣りを楽しんで居た。キャアキャア笑う甲高い声、何気なく岸壁を見た。
若い夫婦が幼稚園くらいだろうか、可愛い女の子を連れて子アジ釣りを楽しんでいる。
自然と頬が緩む。
不図、もしあの日が無かったら自分にもあんな子が生まれて居たんじゃなだろうか。
もう何年も忘れて居た一人の女性の顔が脳裏を過ぎる。              
と、言うより忘れようとしていた。彼女は賢明に引き止めたにも関わらず、自分勝手に研究室を飛び出した。そして逃避したのだ。現実から逃げ出したのだ。 
今更どの顔して連絡出来ると言うのだ。思いを抱いて道具を片付けると帰宅した。

4月、亜熱帯特有の湿々と湿気を含んだ蒸し暑い日々が連日続いて居る。
TVニュースでは、正月に始まった異常気象の話題は徐々に少なくなり、今はこの暑さが連日話題になっている。
今日は熱射病で何人倒れた、赤痢やOー157の伝染病で何人の人が亡くなった。そんなニュースばかりであった。
違うだろ、人は喉元過ぎれば暑さ忘れるって言うが、そんな事より今この地球がどうなってるのか教えなきゃならないだろ。
神宮寺勝彦は二月のTVでああ言ったが、少しは動いているのかッ。佐伯はTVのスイッチを切るとリモコンを投げた。ガヂャッ、ゴロゴロゴロ~ッ・・・ 蓋が外れて電池が床に転がって居る。相当苛ついていた。

学会を離れた佐伯には何も出来ない、その悔しさがより苛立たせていた。   
止めた止めたッ、ポイッとペンを置くと腰を上げた。納戸から釣り道具を出して部屋を出た。ムッとする暑さに空を仰いだ、咄嗟に目を細める。ギラギラと太陽の陽射しが容赦なく照らしていた。部屋に戻り、鍔の広い帽子を被ると出掛けた。

太陽は真上、道路には陽炎が立ち上ぼり、歩道を歩く婦人は日傘を持ち、ハンケチで汗を拭いながら歩いている。何処を見ても歩く者は疎らだった。
時計の針は午後3時を5分程過ぎていた。海まで20分、3時半には港に着いた。
釣り人など居よう筈が無かった。NO-7-14