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小説・半日の花嫁-(NO-2-)

2010-10-16 12:04:06 | 小説・半日の花嫁
半日の花嫁-(NO-2-)

「明、しっかりしなさいよ。芳美、貴方一緒に行ってやってちょうだい」。母はレジに走るとレジの下の棚から財布を出して芳美に持たせた。NO-2
そして母親たちの見詰める中、明と芳美は刑事の車に乗り込み、駐車場を出て行った。
頼む、間違いであってくれ。神様、お兄さんを悲しませなで、間違いであって下さい。
明と芳美は声にはださなかったが一心に祈っていた。
そして警察に着くと遺体安置所に通された。そしてドアが開かれた。
そこは線香が手向けられいた、ベッドには真っ白な布が掛けられた遺体が横たわっていた。顔にも布が掛けられ、明は立ち止まると体が震えていた。
すると、反対に廻った刑事が両手を合わせ、布に手を掛けて捲った。
「嘘だ!・・・要子!・・・要子!おい!目を明けてくれ、おい!・・・」。
明は要子の遺体に抱き着いて揺り起こした。刑事はそんな明の肩に手を添えると要子の遺体から引き離した。
芳美は両手て顔を覆うと嗚咽し、霊安室を飛び出して行った。刑事は何も聞くこともなく、黙って明を霊安室から出した。
そして廊下の長椅子に座る芳美の隣に座らされると、明は大きく溜め息を着いた。そして二度三度と。そして両手で顔を覆うと肩を震わせて泣いた。
するとバタバタと足音ががして旅行に出ていた両親が到着した。
そして、廊下で泣いてる明の姿を見た。要子の母親は叫びながら明に駆け寄った。
「義母さん、義父さん。要子が、要子が・・・・」。
義父は声も出せないまま蒼白し、霊安室に飛び込んだ。そして母親も追って飛び込んだ。顔を見る事もなく,母親はベッドの前で倒れてしまった。
刑事たちは急いで霊安室を出ると救急車の手配に走った。そして要子の父親の啜り泣くが廊下の明や芳美の耳に届いた。
間もなく救急隊員が担架を持って走って来た。そして看護にあたった。すると救急隊員の顔色が変わった。人工呼吸を始めたのだった。
「心停止、すぐに搬送します」。すると父親は振り返って妻に寄り添った。
「明君、要子を頼みます。この上女房まで死なせたら要子に申し訳がない」。
気丈な父親は涙を堪え、救急隊員に着いて病院に向かった。
残された明は唖然と立ち尽くしていた。「こんなバカな。刑事さん、それで要子は誰に、死因はなんなんです?・・・」。
明は涙を流しながら刑事を睨みつけて聞いた。すると黙っていた。
「新田さん、椎野さんの首が折れています。詳しい事は司法解剖が終わらないと分かりません。警察は全力で犯人を探しています。協力をお願いします」。
「刑事さん、取り乱して済みませんでした。要子と来月一日に結婚する事になっていたんです。こう言う時は自分はどうしたら良いんでしょう」。
「お兄ちゃん・・・」。芳美はそう言ったきり嗚咽し、兄の胸で泣いていた。
「新田さん、御遺体は浜松の大学病院に搬送して司法解剖を行います。ともかく今は椎野さんのお母さんの所へ行ってあげて下さい。厚生病院です」。
明と芳美は警察を出ると、通りでタクシーを止めて病院に向かった。そして、車内から心配している母親に携帯を入れて事情を説明した。
「そう。義母さんが霊安室で。明、くじけちゃ駄目よ。いいわね」。
「ああ、大丈夫だよ母さん。また電話する」。と携帯を切った。
そして、間もなく病院に到着した明は集中治療室に小走りに歩いた。そしてICUの前に行くと、要子の父親は肩を落として泣いていた。
明と芳美にはその状況で直ぐに分かった。走っていた足も止まり、どう言葉を掛けて良いのか困惑しながら歩いた。
すると、要子の父は二人に気付いて顔を上げた。そして横に首を振った。
明はそっと目を閉じて頭を下げた。
「いや~っ、叔母様まで死んじゃうなんて。叔父様、どうして!・・・」。
芳美はその場で泣き崩れた。明はそっと抱き起こすと義父の隣に座らせた。
そこへ矢部刑事が駆け付けて来た。三人の様子を見て母親は助からなかった事を察した。そっと三人の所へ歩み寄った。
「椎野さん、新田さん。何と言って良いか分かりません。お気の毒です」。
義父と二人はそっと立ち上がると両手を揃え、丁寧に頭を下げた。
「明君、要子から四時ころ電話を貰ったよ。いま明さんと婚姻届を出して来たと、嬉しそうにね。それがこんな事になるなんて。女房もそれを聞いて喜んでいた。
明君、何て言って良いか私には・・・」。と両手で顔を覆って泣いていた。
要子が婚姻届けは誕生日に出したいと言う希望で今日の午後三時に出したばかりだった。
「そうでしたか、それで式は九月一日になっていたんですか」。NO-2-4

小説・半日の花嫁-(NO-1-)

2010-10-10 12:29:08 | 小説・半日の花嫁
小説・半日の花嫁-(NO-1-)

半日の花嫁
八月二十日木曜日、その晩、新田明はライター。静岡市内で起こった主婦殺しの事件をまとめたレーポートを書き終わってベッドに入った。
新田明二十八才、彼は青山学院法学部を出て弁護士であった。が、三年前に止め、フリーのルポライターとして社会に飛び出していた。
実家は信州の安墨村にあったが、父親が事故で他界すると母輝子の実家である静岡市に妹の良美と一家三人で越して十年、市内に安曇野と言う料理屋を開いて母輝子は女将として二人の子供を大学に出した。
娘の良美と板前の川井吉雄、店員の望月芳乃の四人で店を営っていた。
仕事を終えてベッドに入ったばかりの明の所へ電話が入った。妹の良美が部屋に来た。
「兄さん、兄さんったら電話よ。警察から、早く出てよね」。
明は眠い目をこすりながら受話器を取った。「新田です?・・・」
「新田明さんですね、中央署の矢沢と言います。或事件のことでお聞きしたい事があるんですが。できれば署まで起こしいただけないでしょうか」。
勘弁してくれよ、俺はいまやっと眠ったところで。それに南署の矢部なんて刑事は聞いた事なんかないぞ。そう思いながら聞いていた。
「それでどんな事を訊きたいんですか?・・・」。
「はい、夜分恐縮ですが、お話ししたようにお越し頂けないでしょうか?・・・」。
「明日にしてくれませんか。仕事でここ二日ばかり寝てないんです」。
すると、矢部は受話器の口を押さえたのか何も聞こえなくなった。
「分かりました。では伺って良いでしょうか?・・・」
それじゃ同じだろ、そう思いながら「はい、どうぞ」。
全くもう、机の時計を見ると午後十時を少し回ったところだった。明はその電話で目が冴えてしまい、顔を洗って店に降りた。
そして、勝手に冷蔵庫からビールを出して空いている座敷に入ると栓を抜いて飲み始めた。
「お兄ちゃん、しっかり貰うわよ。はい、おつまみ」。
「うん、有り難う。後から刑事が来るって言うから通してやって」。
「分かった、それでご飯は要らないの?・・・」。
「食べる、芳美は何を食べたんだ。同じので良いからくれよ」。
「うん。じゃあ待っていてね」。芳美は頷くと調理場へ入って行った。
そして十分もすると、「お兄ちゃん来たわよ」芳美は刑事を二人案内しながら食事を持ってきた。
「夜分申し訳ありませんな。早速ですが宜しいですかな」。
瞬間、感じた。嫌なタイプだ、いったい俺に何を聞きたいと言うんだ。明は愛想笑顔を浮かべながら面倒臭くて仕方がなかった。
「ええ。食事しながらで良いですよね」。
「どうぞ。実は、一時間ほど前に高草山の焼津市側にある遊歩道の空き地に若い女性の変死体が発見されましてね、持ち物は何もなかったんですが。少し離れた茶畑の中から女性のバックが見付かったんです。
その中には運転免許証がありまして、城東町の椎野要子さん二十一歳である事が判明したんです」。
明はその名前を聞いた瞬間、持っていた箸を落とした。そして目に涙を浮かべながら刑事の目を睨みつけた。
「嘘だ!、要子が死ぬ分けないだろ、冗談は止めてくれ!・・・」明の怒鳴る声に母と妹は何事かと座敷に走って来た。
「お兄ちゃん、なに!・・・何があったの?・・・」
「明、どうしたの。そんなに大きな声を出して。刑事さん」。すると、来ていた常連の客たちが心配そうに部屋を覗きに来ていた。
「お袋、要子が死んだって言うんだ。俺は夕方病院で会って来たんだぞ。それがどうして高草山で死ななきゃならないんだ」。
すると、母輝子と芳美の顔から血の気が引いて青ざめていた。そして客達も明と椎野要子との関係は誰もが知っていた。
「それでですね、御両親が旅行と言う事で先程連絡が取れまして、こちらへ向かわれています。出来ましたら婚約者でる貴方に確認に来て頂きたいんです。外にも色々とお聞きしたい事もありますので」。
「お兄ちゃんと要子さんは来月結婚するんだよ。刑事さん、本当に要子さんなんですか。何かの間違いじゃないんですか?・・・」
刑事は黙ったままだった。明はそっと立ち上がると靴を履いた。
「刑事さん、乗せてって下さい。僕はビールを飲んでしまいましたから」。
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