小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(26)&CG
美保は京平の陰に隠れるように言うのだった。見ると街路灯に照らされて見えた男は茶髪で女好きする顔をしていた。
「あの顔に騙されるのか、いったい何処へ行くんだ」。
「決まってますへ、祇園へ出掛けるんへ。私達も行かはるでしょう」。美保は自分でも気がつかない内に京都人に戻っていた。
そして急いで公園を出ると茶山駅に向かった。切符を買うと調度良く電車が入って来た。乗り込むとクーラーが効いていて汗ばんだ身体には心地よかった。
「美保、胸のボタンが外れているよ」。
「困っちゃう」。谷間には汗が光っていた。慌てて手で押さえてとめていた。
そして三条駅で下りるとムッとした風が身体を包んだ。
駅を出て祇園の繁華街を歩いた。そして何軒もの駐車場を見て廻ったが、真田のベンツは見付からなかった。
「とても無理ね、何か良い案ないかしら」?
「呼び出すしかないな、きっと奴は二人を殺している筈だ。警察が自殺と断定したんだ、そう簡単なトリックじゃないだろう。
こうしよう、僕が電話して威してみる。俺は知っているぞ、トリックを警察に知られたくなかったら金を用意しろって」。
「カマ掛けはるの、でも乗って来るかしら。したたかよ真田は」。
「警察には知らないと言い張ればいいけど、顔も声も知らない男から言われたら誰でも微々るさ。それも出来たら友代さんが幾ら位献いで捨てられたのか分かれば余計いい。美保は知っているの」?
「うん、確か三百五十万だったと思う」。
「よし、その倍の金額を要求しよう。それで亡くなったのはいつ」。
「もう一年半になるわね、二月十日だった。前の晩から冷えて寒い日だった、東山の宝山公園で半分雪に埋もれて亡くなっていたの」。
「分かった、その事を話そう。それで殺したトリックが分かった事にしよう。白を切るだろうけど、きっと聞くだろうね、どうやって殺したかって。
携帯じゃまずいから公衆電話からにしよう。家に電話して携帯の番号を聞いてくれないか。男より女の電話のほうが親も安心して教えてくれるだろうから」。
「え~っ、私が聞くの。でも何て言うの」?
「適当で良いよ、京都弁が良い。名前もでたらめで良いから」。
美保は口を真一文字にして渋い顔をしたが電話ボックスを探して二人で入った。
そして電話帳から真田医院を探して電話を掛けた。すると宿直の医師が実家の電話番号と貴明の携帯の番号を教えてくれた。
「なんだ、簡単だったね。今度は京平さんね。番号を押すわよ」。
美保は受話器を私に渡すと、聞いた携帯の番号を押した。一回二回三回とコールしていた。「はい真田です。誰っ」
私は美保にOKサインを出して頷いた。
「真田か、俺見たんだけどな。あの晩舞鶴で高橋幸子と一緒にいる所を。お前を二年も追っ掛けていたんだ。ああやって二年前佐々木友代も殺したのか」。
「な、何を、し知らない。俺は何も知らない。言い掛かりは止めろ」。
「そう、じゃあ警察に行くよ。じゃあな」
「まっ待て!・・・、待ってくれ。誰だ君は?・・・」。
「お前のトリックを見破った男さ、佐々木友代から献いでもらった額の倍、七百万で手を打とう。取り合えず半分、明日の晩までに用意しておけ。誰かに話したり知らせたりしたら警察に行く。
それから、さっきも刑事が三人来ていたな。お前を昼夜見張っているからな。明日の晩家に電話するから出掛けるなよ」。
「は、はい。でも誰なんだ、友代も幸子も自殺したんだぞ」。
「そうだな、警察ではそう言う事になっている、だったら取引は止めだ。警察に全部話して来るよ」。
「待って下さい、分かりました。明日金を用意して待っています」。
「ああ、その方がお互いの利益になる。明日電話する」。
真田の声はワナワナと震えていた。私は二人の女性を自殺に見せ掛けて殺したと事を確信した。
「ねえ、どうだったの。真田の奴認めたの」?
「声が震えていたし、まず間違いないよ。明日の晩電話する事にした。金を用意して待っているってさ」。
「やっぱり友代も殺されたの。それでどうするの」。
「此々じゃなんだからホテルに帰ろう。途中で地図を買って帰ろう。詳しい打ち合わせはそれからにしよう」。
タクシーを拾うと書店に寄った。そして東山地区が詳しく載っている地図を買うとホテルに戻った。
すると、公園のベンチの位置から遊歩道まで詳しく書かれていた。
「美保、お母さんから車を借りられるか?・・」
「うん、それは良いけど。でもレンタカーを借りたら」。
「いや、レンタカーはナンバーでバレルし他県の人間が借りると目立つから駄目だ。九日の夕方借りてくれないか」?
「え、明日じゃないの」?
「うん、少し焦らすんだ。それで全額揃えさせる。少し恐ろしさを味あほせてから始末する」。
「えっ、でもそんな早く始末していいの」?
「うん、警察は高橋さんの死は自殺でけりを着けた。もう真田の所へは調べに来ないと思うけど、一日様子をみよう。
明日、十日の朝一番の新幹線の切符を手配しておこう。それからテープレコーダーが欲しいな、アリバイ工作に使いたい。
それで、当日だけど、昼間は軽く出掛けて真田の家の様子を見て来よう。帰ったらホテルから出ないようにするんだ。
ホテルの人間に僕達は出掛けないと思わせる為にね。それで、美保はホテルに残って僕のアリバイ工作をしてくれないか。
十時になったらルームサービスを頼んでワインとカナッペを二人分取ってくれ。
その時にテープレコーダーに吹き込んである僕の声をシャワー室から流してね。そのタイミングはドアロックを外す直前にテープのスイッチを入れて欲しい。勿論シャワーも流してね。
僕は誰にも見付からないようにホテルの非常階段から出る、それで東山に行って十時に真田を始末して帰るから。
帰ったら二人でホテルを出て車を返しに行こう。
東山まで三十分、往復に一時間。もうホテルの非常階段は見て調べてあるから。誰にも見られない事も分かったから」。
「もう~京平さんったら。凄い計画だね。でも真田は誰にも話さないかな。中間を呼ぶかも知れないよ」。
「そんな事はバカでない限りしないさ、もし仲間を連れて来るにしても何て説明するんだ。そんな事をすれば逆に自分の弱みを握られる事になるからね、絶対にしないさ。こう言う事は人数が少なければ少ないほど自分の身は安全だからね。奴は一人で来るさ」。
NO-26-66
美保は京平の陰に隠れるように言うのだった。見ると街路灯に照らされて見えた男は茶髪で女好きする顔をしていた。
「あの顔に騙されるのか、いったい何処へ行くんだ」。
「決まってますへ、祇園へ出掛けるんへ。私達も行かはるでしょう」。美保は自分でも気がつかない内に京都人に戻っていた。
そして急いで公園を出ると茶山駅に向かった。切符を買うと調度良く電車が入って来た。乗り込むとクーラーが効いていて汗ばんだ身体には心地よかった。
「美保、胸のボタンが外れているよ」。
「困っちゃう」。谷間には汗が光っていた。慌てて手で押さえてとめていた。
そして三条駅で下りるとムッとした風が身体を包んだ。
駅を出て祇園の繁華街を歩いた。そして何軒もの駐車場を見て廻ったが、真田のベンツは見付からなかった。
「とても無理ね、何か良い案ないかしら」?
「呼び出すしかないな、きっと奴は二人を殺している筈だ。警察が自殺と断定したんだ、そう簡単なトリックじゃないだろう。
こうしよう、僕が電話して威してみる。俺は知っているぞ、トリックを警察に知られたくなかったら金を用意しろって」。
「カマ掛けはるの、でも乗って来るかしら。したたかよ真田は」。
「警察には知らないと言い張ればいいけど、顔も声も知らない男から言われたら誰でも微々るさ。それも出来たら友代さんが幾ら位献いで捨てられたのか分かれば余計いい。美保は知っているの」?
「うん、確か三百五十万だったと思う」。
「よし、その倍の金額を要求しよう。それで亡くなったのはいつ」。
「もう一年半になるわね、二月十日だった。前の晩から冷えて寒い日だった、東山の宝山公園で半分雪に埋もれて亡くなっていたの」。
「分かった、その事を話そう。それで殺したトリックが分かった事にしよう。白を切るだろうけど、きっと聞くだろうね、どうやって殺したかって。
携帯じゃまずいから公衆電話からにしよう。家に電話して携帯の番号を聞いてくれないか。男より女の電話のほうが親も安心して教えてくれるだろうから」。
「え~っ、私が聞くの。でも何て言うの」?
「適当で良いよ、京都弁が良い。名前もでたらめで良いから」。
美保は口を真一文字にして渋い顔をしたが電話ボックスを探して二人で入った。
そして電話帳から真田医院を探して電話を掛けた。すると宿直の医師が実家の電話番号と貴明の携帯の番号を教えてくれた。
「なんだ、簡単だったね。今度は京平さんね。番号を押すわよ」。
美保は受話器を私に渡すと、聞いた携帯の番号を押した。一回二回三回とコールしていた。「はい真田です。誰っ」
私は美保にOKサインを出して頷いた。
「真田か、俺見たんだけどな。あの晩舞鶴で高橋幸子と一緒にいる所を。お前を二年も追っ掛けていたんだ。ああやって二年前佐々木友代も殺したのか」。
「な、何を、し知らない。俺は何も知らない。言い掛かりは止めろ」。
「そう、じゃあ警察に行くよ。じゃあな」
「まっ待て!・・・、待ってくれ。誰だ君は?・・・」。
「お前のトリックを見破った男さ、佐々木友代から献いでもらった額の倍、七百万で手を打とう。取り合えず半分、明日の晩までに用意しておけ。誰かに話したり知らせたりしたら警察に行く。
それから、さっきも刑事が三人来ていたな。お前を昼夜見張っているからな。明日の晩家に電話するから出掛けるなよ」。
「は、はい。でも誰なんだ、友代も幸子も自殺したんだぞ」。
「そうだな、警察ではそう言う事になっている、だったら取引は止めだ。警察に全部話して来るよ」。
「待って下さい、分かりました。明日金を用意して待っています」。
「ああ、その方がお互いの利益になる。明日電話する」。
真田の声はワナワナと震えていた。私は二人の女性を自殺に見せ掛けて殺したと事を確信した。
「ねえ、どうだったの。真田の奴認めたの」?
「声が震えていたし、まず間違いないよ。明日の晩電話する事にした。金を用意して待っているってさ」。
「やっぱり友代も殺されたの。それでどうするの」。
「此々じゃなんだからホテルに帰ろう。途中で地図を買って帰ろう。詳しい打ち合わせはそれからにしよう」。
タクシーを拾うと書店に寄った。そして東山地区が詳しく載っている地図を買うとホテルに戻った。
すると、公園のベンチの位置から遊歩道まで詳しく書かれていた。
「美保、お母さんから車を借りられるか?・・」
「うん、それは良いけど。でもレンタカーを借りたら」。
「いや、レンタカーはナンバーでバレルし他県の人間が借りると目立つから駄目だ。九日の夕方借りてくれないか」?
「え、明日じゃないの」?
「うん、少し焦らすんだ。それで全額揃えさせる。少し恐ろしさを味あほせてから始末する」。
「えっ、でもそんな早く始末していいの」?
「うん、警察は高橋さんの死は自殺でけりを着けた。もう真田の所へは調べに来ないと思うけど、一日様子をみよう。
明日、十日の朝一番の新幹線の切符を手配しておこう。それからテープレコーダーが欲しいな、アリバイ工作に使いたい。
それで、当日だけど、昼間は軽く出掛けて真田の家の様子を見て来よう。帰ったらホテルから出ないようにするんだ。
ホテルの人間に僕達は出掛けないと思わせる為にね。それで、美保はホテルに残って僕のアリバイ工作をしてくれないか。
十時になったらルームサービスを頼んでワインとカナッペを二人分取ってくれ。
その時にテープレコーダーに吹き込んである僕の声をシャワー室から流してね。そのタイミングはドアロックを外す直前にテープのスイッチを入れて欲しい。勿論シャワーも流してね。
僕は誰にも見付からないようにホテルの非常階段から出る、それで東山に行って十時に真田を始末して帰るから。
帰ったら二人でホテルを出て車を返しに行こう。
東山まで三十分、往復に一時間。もうホテルの非常階段は見て調べてあるから。誰にも見られない事も分かったから」。
「もう~京平さんったら。凄い計画だね。でも真田は誰にも話さないかな。中間を呼ぶかも知れないよ」。
「そんな事はバカでない限りしないさ、もし仲間を連れて来るにしても何て説明するんだ。そんな事をすれば逆に自分の弱みを握られる事になるからね、絶対にしないさ。こう言う事は人数が少なければ少ないほど自分の身は安全だからね。奴は一人で来るさ」。
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