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小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(26)&CG

2008-07-30 03:08:06 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(26)&CG

美保は京平の陰に隠れるように言うのだった。見ると街路灯に照らされて見えた男は茶髪で女好きする顔をしていた。
「あの顔に騙されるのか、いったい何処へ行くんだ」。
「決まってますへ、祇園へ出掛けるんへ。私達も行かはるでしょう」。美保は自分でも気がつかない内に京都人に戻っていた。
そして急いで公園を出ると茶山駅に向かった。切符を買うと調度良く電車が入って来た。乗り込むとクーラーが効いていて汗ばんだ身体には心地よかった。
「美保、胸のボタンが外れているよ」。
「困っちゃう」。谷間には汗が光っていた。慌てて手で押さえてとめていた。
そして三条駅で下りるとムッとした風が身体を包んだ。
駅を出て祇園の繁華街を歩いた。そして何軒もの駐車場を見て廻ったが、真田のベンツは見付からなかった。
「とても無理ね、何か良い案ないかしら」?
「呼び出すしかないな、きっと奴は二人を殺している筈だ。警察が自殺と断定したんだ、そう簡単なトリックじゃないだろう。
こうしよう、僕が電話して威してみる。俺は知っているぞ、トリックを警察に知られたくなかったら金を用意しろって」。
「カマ掛けはるの、でも乗って来るかしら。したたかよ真田は」。
「警察には知らないと言い張ればいいけど、顔も声も知らない男から言われたら誰でも微々るさ。それも出来たら友代さんが幾ら位献いで捨てられたのか分かれば余計いい。美保は知っているの」?
「うん、確か三百五十万だったと思う」。
「よし、その倍の金額を要求しよう。それで亡くなったのはいつ」。
「もう一年半になるわね、二月十日だった。前の晩から冷えて寒い日だった、東山の宝山公園で半分雪に埋もれて亡くなっていたの」。
「分かった、その事を話そう。それで殺したトリックが分かった事にしよう。白を切るだろうけど、きっと聞くだろうね、どうやって殺したかって。
携帯じゃまずいから公衆電話からにしよう。家に電話して携帯の番号を聞いてくれないか。男より女の電話のほうが親も安心して教えてくれるだろうから」。
「え~っ、私が聞くの。でも何て言うの」?
「適当で良いよ、京都弁が良い。名前もでたらめで良いから」。
美保は口を真一文字にして渋い顔をしたが電話ボックスを探して二人で入った。
そして電話帳から真田医院を探して電話を掛けた。すると宿直の医師が実家の電話番号と貴明の携帯の番号を教えてくれた。
「なんだ、簡単だったね。今度は京平さんね。番号を押すわよ」。
美保は受話器を私に渡すと、聞いた携帯の番号を押した。一回二回三回とコールしていた。「はい真田です。誰っ」
私は美保にOKサインを出して頷いた。
「真田か、俺見たんだけどな。あの晩舞鶴で高橋幸子と一緒にいる所を。お前を二年も追っ掛けていたんだ。ああやって二年前佐々木友代も殺したのか」。
「な、何を、し知らない。俺は何も知らない。言い掛かりは止めろ」。
「そう、じゃあ警察に行くよ。じゃあな」
「まっ待て!・・・、待ってくれ。誰だ君は?・・・」。
「お前のトリックを見破った男さ、佐々木友代から献いでもらった額の倍、七百万で手を打とう。取り合えず半分、明日の晩までに用意しておけ。誰かに話したり知らせたりしたら警察に行く。
それから、さっきも刑事が三人来ていたな。お前を昼夜見張っているからな。明日の晩家に電話するから出掛けるなよ」。
「は、はい。でも誰なんだ、友代も幸子も自殺したんだぞ」。
「そうだな、警察ではそう言う事になっている、だったら取引は止めだ。警察に全部話して来るよ」。
「待って下さい、分かりました。明日金を用意して待っています」。
「ああ、その方がお互いの利益になる。明日電話する」。
真田の声はワナワナと震えていた。私は二人の女性を自殺に見せ掛けて殺したと事を確信した。
「ねえ、どうだったの。真田の奴認めたの」?
「声が震えていたし、まず間違いないよ。明日の晩電話する事にした。金を用意して待っているってさ」。
「やっぱり友代も殺されたの。それでどうするの」。
「此々じゃなんだからホテルに帰ろう。途中で地図を買って帰ろう。詳しい打ち合わせはそれからにしよう」。
タクシーを拾うと書店に寄った。そして東山地区が詳しく載っている地図を買うとホテルに戻った。
すると、公園のベンチの位置から遊歩道まで詳しく書かれていた。
「美保、お母さんから車を借りられるか?・・」
「うん、それは良いけど。でもレンタカーを借りたら」。
「いや、レンタカーはナンバーでバレルし他県の人間が借りると目立つから駄目だ。九日の夕方借りてくれないか」?
「え、明日じゃないの」?
「うん、少し焦らすんだ。それで全額揃えさせる。少し恐ろしさを味あほせてから始末する」。
「えっ、でもそんな早く始末していいの」?
「うん、警察は高橋さんの死は自殺でけりを着けた。もう真田の所へは調べに来ないと思うけど、一日様子をみよう。
明日、十日の朝一番の新幹線の切符を手配しておこう。それからテープレコーダーが欲しいな、アリバイ工作に使いたい。
それで、当日だけど、昼間は軽く出掛けて真田の家の様子を見て来よう。帰ったらホテルから出ないようにするんだ。
ホテルの人間に僕達は出掛けないと思わせる為にね。それで、美保はホテルに残って僕のアリバイ工作をしてくれないか。
十時になったらルームサービスを頼んでワインとカナッペを二人分取ってくれ。
その時にテープレコーダーに吹き込んである僕の声をシャワー室から流してね。そのタイミングはドアロックを外す直前にテープのスイッチを入れて欲しい。勿論シャワーも流してね。
僕は誰にも見付からないようにホテルの非常階段から出る、それで東山に行って十時に真田を始末して帰るから。
帰ったら二人でホテルを出て車を返しに行こう。
東山まで三十分、往復に一時間。もうホテルの非常階段は見て調べてあるから。誰にも見られない事も分かったから」。
「もう~京平さんったら。凄い計画だね。でも真田は誰にも話さないかな。中間を呼ぶかも知れないよ」。
「そんな事はバカでない限りしないさ、もし仲間を連れて来るにしても何て説明するんだ。そんな事をすれば逆に自分の弱みを握られる事になるからね、絶対にしないさ。こう言う事は人数が少なければ少ないほど自分の身は安全だからね。奴は一人で来るさ」。
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小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(25)CG

2008-07-30 03:03:00 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(25)絵画

父親は苦汁に満ちた表情で両手を膝に乗せると握り拳を握った。
そしてポツ、ボツッと涙が落ちて畳みに染み込んでいた。
私も美保も男の名前は言わなかった。そして、五日前にペンションにキャンセルの電話が入った事だけを伝えた。
「そうでしたか、その時に男の名前は言いませんでしたか」?
私はただ首を横に振った。そして幸子さんの部屋を見せてもらった。幸子の机の上には写真が飾られていた。美保は手にすると抱き締めた。
それは、六月に、ペンションで撮った私と美保と三人の写真だった。
その写真を見て、あの日の事が頭の中をグルグルと駆け回っていた。あんなに明るかった女性を死においやった真田と言う男の事が次第に許せなくなってきた。そして一階に降りると、弔問に訪れた人達でいっぱいだった。
私達は両親に別れを告げて家を出た。するとムッとする暑さに首筋から汗が涌いた。ネクタイを緩めて上着を脱いだ。
そこへ空のタクシーが来て止めた。ホテルから乗ってきたタクシーだった。
「お客さん、あの家のお嬢さん亡くなったんだってね。あんなに明るくていい女性だったのにね」。と、随分親しく話をする運転手だった。
「おじさん、幸子の事知っているの」?
「ええ、高橋さんには良く乗って貰いましたからね。私言ったんです、あの真田と言う男だけは止めなさいってね。あの男は女性を食い物にして生きているダニのような男でしてね、でもそんな事はとても言えませんからね」。
「そう、そんな男がいたの。幸子が可哀相」。
「一度高橋さんが泣きながら車に乗り込んできたことがありましてね。どうしたかって聞いたんです。そしたら、彼が外の女性とホテルから出できた所を見てしまったとか。あの男は祇園辺りで観光客や地元の女性を引っ掛けては遊び歩いているどうしようしようもない男ですよ」。
「そうなの、じゃあお葬式にも来ないわね」。
「来ないでしょうな。以前も似た事がありましてね。真田と付き合っていた女子大生が自殺したんです」。
美保は何かを言いたい様子だった。が口を綴じた。
そしてホテルに着いて時計を見ると、もう四時を回っていた。
部屋へ行くとテレビを点けた。夕方のニュースが流れていた。
そして高橋幸子さんの事が流れた。美保は着替えを途中で止めてソファーに掛けて見入っていた。そしてニュースが切り替わると溜め息を漏らしていた。
「幸子やっぱり自殺だったんだね。京平さん、此れからどうする」。
「そうだな、少し休んで暗くなったら祇園へ行ってみようか。それで、美保はその真田の家を知っているの?・・・」。
「うん、前に自殺した親友が佐々木友世って言うんだけど、友世が一緒に来て欲しいって言われて、一度だけ行った事があるの。
それがね、私の実家の隣町の茶山町なの。友世の話しだと、真田の家は個人病院で息子の貴雄は受験に失敗したらしいって」。
「そう、開業医のドラ息子か。良くあるパターンだな。美保、じゃあ友世さんも幸子さんも自殺だと決め込むのは危険だな。男が医者の息子なら睡眠薬だって簡単に手に入るからね」。うっ、と美保は言葉を飲み込んで見詰めた。
「そんなあ、じゃあ友世も幸子も殺されたって言うの?・・でも友世の時も警察は自殺だって。それに幸子も!」。
「でも変だと思わないか。友世さんが自殺した時も睡眠薬だったんだろ、それに真田と付き合っていた事は警察は調べた筈だよな」。
「ううん、失恋して自殺したって事で片付けられてしまったの。だからあの男の事は事実関係だけしか調べなかった。
友世の御両親がお金が絡んでいる事を話したんだけど。それを証明する事実関係がないからって言われて無視されたわ」。
「じゃあ今度も同じだな、借用書もなければ幸子さんが金を渡している所を見た人もないだろうからね。でもさ、付き合った女性が二人も自殺してるんだから、警察も今度は調べるんじゃないかな」。
そんな話をしながら着替えていた。そしてホテルで食事を済ませ、タクシーで阪京電鉄七条駅に向かった。
五条、四条、三条。丸太町と過ぎて出町柳と通り過ぎ、元田中駅に着いた。
美保の実家のある駅だった。美保は身体を乗り出して懐かしそうに見ていた。
そして茶山駅に着き、電車を降りた。閑静な駅前は大学も近い事もあり、超ミニにポックリのような靴を履いた女子大生や女子高生風な女性が大勢いた。
「京平さん、あんな恰好が好きなの?・・・」
「そうじゃないよ、長野もそうだけどさ、東京も京都にもあんなのが多いんだなって思ってさ。美保だって似たような恰好していただろ」。
「それはそうだけど、でも私は京平さんが初めてだよ。本当だよ、でも私はあんな派手じゃなかったもん」。
「うん、だから好きになったんだよ。美保は誰よりもステキだよ」。
「もう京平さんったら、あっ、パトカーが止まっている。あの家よ、真田貴明の実家、病院は下鴨で通っているらしいよ」。
私達は手前の駄菓子屋に入った。昔懐かしい菓子が珍しくもあった。
そんな駄菓子を手にしながら真田の家の様子を伺っていた。
「おばちゃん、そのお宅で何かあったん、パトカーなんか止まってはりますけど」。と美保の流暢な京都弁がより可愛く感じた。
「へえ、なんや知りまへんけどな。息子はんが調べられているみたいへ。さっきも刑事はんがきはって聞いて帰りましたんへ」。
私は美保とおばさんの会話を聞いていた。おっとりとした京都弁を聞きながら、美保は京都の人間だったんだと、心が洗われたような気分になっていた。
「大きな声では言えまへんけど、なんや貴明はんがお付き合いしはっていたおなごはんが自殺しはったとか。
ほんに何を考えていますやら、一年も前やろか、同じような事があったんへ。あらっ、いらん事を。ここだけの話しにしておくれやす」。
「へえ、ほな此れをいただきます」。
美保は適当に駄菓子を篭に入れると差し出した。そして袋に入れて貰うと早速駄菓子をほうばりながら店を出た。
そして真田貴明の家の前にある公園に入るとベンチに腰を降ろし、玄関を見ていた。
すると、間もなく警官と刑事らしい男の三人が出て来た。
「まったくあの男は何を考えているかわからんな。親も親なら息子も息子だ。まあ今回も自殺って事かな」。
年配の一人の刑事が車の前で立ち止まると、額の汗を拭いながら呆れたように吐き捨てるように話しているのが聞こえた。
そしてバタン、バタン、と乗り込むと走り去った。すると、真田の家のガレージが空いてベンツが出て来た。
「京平さん見て、あの男が貴明よ」。NO-25