いままでにひとりで酒を呑むことなどなかった。しかも、BARと呼ばれる店で。
しかし、最近はこの店に出入りするようになった。
もう残りの日数を数える歳になったということなのだろう。
いつも誰かがそばにいて、話をしなくてはならない状態だったのだ。時には疎ましく思い、嬉しくも思い、ただ時だけが流れただけのことなのだが、まあまあの人生だった。
特に、何かを残したかったわけではない。
ただ何が何でも生き続けなければ申し訳が立たない。
そう、想い続けてきた事だけは確かだ。
決して、忘れたりはしないと信じていたのに、思い出す間隔が遠のいた日々。
そのたびに、申し訳ない・・・・。と、声に出した。
若い頃はそれでも良かった。
そんな気持ちが明日に向かわせた。
しかし、今は強烈な痛みを伴ってとして心に突き刺さり始めている。
この季節になると想いが募る。会いたいと・・・。
そして、心から謝りたい。
まだタイムマシンは発明されていない。
あの頃には絶対に戻れはしない。
ならば、前に進むしかない。
「あんたはまだ若いから知らないだろうけれど、
哀しみにも終わりがあるんだよ・・・」
そんなセリフが耳の奥で響いてきた。
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