ヤミノツカミDIARY

メイドと一緒にお茶を飲んだり罵倒したり罵倒されたりする小説サイトの場末の日記サイト! ……かも。

希望を寄せ付けない絶望とは

2008年12月29日 | 時事
 今更ですが、映画『私は貝になりたい』を観てきました!
 公開から結構時間が経っているのに、なぜこの映画? 話題作なら『地球が静止
する日』『K-20怪人二十面相伝』『ウォーリー』とあるのに……。
 自分でもよく判りません。仕方ないだろ、付き合いで行ったんだから!(っдT)
 えー、そんなわけで、感想を述べてみる。公開から時間が経っている、という観
点から、ネタバレ含んで話していくのでヨロシクお願いします。読みたくない方は
ご注意くださいー。

 で、感想ですが。
 いろいろな意味で、心に染み入る映画だったと感じました。
 単純な映画批評という意味では、そこまで面白くない。収監後、家族が面会に来
たところまでが山場だったと思います。それ以降は淡々と話が進み、結局は救われ
ないエンディング。視聴者に何を伝えたかいのかが不明瞭なせいも相まって、「感
動して泣ける」という感じにならなかったのが残念でした。
 しかし、物語の展開とは別に、無視できない部分はなかなかに多いです。
 ひとつは、GHQの理不尽な戦犯裁判。実際の裁判があのような雰囲気で行われた
のかは判りませんが「上官の命令には逆らえない」という清水の言葉を一笑する場
面は、やりようのない憤りを感じました。
 アメリカの軍隊だって似たようなものだろうに。あんな不自然な裁判で戦犯を裁
いていたとしたら、靖国神社は一体なんだったのか、と思わずにはいられません。
 そして、主人公・清水豊松を演じる中居正広の演技。
 人間味溢れる小市民として描かれながら、最後の絞首刑が決まった夜の、手記を
取るシーンはぞくりとさせられました。全てに絶望して「貝になりたい」と嘆く人
間の目ではなかったとは思いましたが、異常な心理を何よりも語っていたのは事実
でした。

 今作のテーマは、おそらく「絶望」。結局は誰も救われない。運命には逆らえな
い。個の意思に意味はなく、訴えても聴く耳は持たず、ただ首を括るのみ。
 ……「戦争は悲劇しか生まない」ということを訴えたいのかもしれませんが、し
かし、これは「戦争による悲劇」というよりは「理解されない悲劇」「希望を寄せ
付けない絶望」ではないかと感じます。
 正直に言うと、この映画を観ても、何も得られない。
 しかし、確実に心に響いてくる映画だったと、個人的には感じました。

最新の画像もっと見る