中川輝光の眼

アトリエから見えてくる情景
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靉光の代表作『目のある風景』

2010-01-28 | 美術を考える

靉光の代表作『目のある風景』

ついでにというわけではないが、靉光の代表作『目のある風景』も紹介しておきましょう。『馬』も『目のある風景』も、描かれたものは靉光の分身だと、わたしは思っています。やせ細った「彷徨う馬」も、気味悪く「冷徹な眼」も、靉光その人に違いないのです。「靉光」、画名「靉川光郎」、本名・石村日郎の苦悩は時代の苦悩でもあり、「孤独な画家そのものの姿」と言わなければならない。戦時下特有の陰鬱な風の中で、佇む靉光の「純真さ」がこの作品に見て取れます。ともすると、その精神が引き裂かれかねない時代状況にあって、これほどまでに明確な『意志』を描いた絵は見たことがない。戦時下の画家にとって「抽象表現」は逃避に見られかねないが、この『冷徹な眼』は時代を明確に射抜いています、リアルそのものと言っていいのかもしれません。

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靉光の油絵『馬』に潜む陰影

2010-01-28 | 美術を考える

靉光の油絵『馬』に潜む陰影

画学生(70年安保)の頃、わたしは『萩原朔太郎』の詩から得た印象(イメージ)を絵にしていました。同じ頃に靉光の絵を見ていたこともあり、この二人を重ねて(ダブルイメージで)記憶しています。靉光は広島の画家ですが、上海の病院で戦病死(享年40歳)しています。実家に置かれた作品も、被爆で大半焼失しています。ですから、この『馬』は数少ない遺作の1枚になります。この『馬』に潜む陰影は、朔太郎の言葉以上に語りかけてくるものがあります。当時は眠れない日々も多く、よく「夢にまで表れた絵」でもあるわけで、わたしには必ずしも「好きな絵」ではありません。昨晩、何故か「この絵の夢」を見たわけです。若き頃に受けた影響は、計り知れないものがあります。

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