中川輝光の眼

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寺山修司著『死者の書』の紹介

2010-01-22 | 本の紹介

寺山修司著『死者の書』の紹介

 『天井桟敷』の寺山修司が書いた『死者の書』、チベット仏教や古代エジプトの『死者の書』とは全く異質のエッセイやインタビューをまとめたものと思っていい。この中に、『月光仮面』という表題の一文がある。「正義の味方になるために何故、仮面をつけたり、変装したりしなければならないのだろうか。」「わたしの少年時代には、正義の味方は素顔のままであった。」「明智小五郎も、少年探偵団の小林君も、仮面をつけたり、変装することはない。」「どこの誰だか知られず、疾風のようにあらわれ、疾風のように去っていくのは怪人二十面相のほうである。」「疾風のようにあらわれ、疾風のように去っていく『月光仮面』に、わたしたちは次第に疑念を抱きはじめる。」、正体がはっきりしないからだ。寺山は草野球を例に、さらに書く、正義の味方であるはずの審判に次第に疑念の目を向けていく子どもたち。子どもたちが気づくのある、「相手チームを勝たせたい」と審判が願っていることを。寺山は「わたしたちは『正義』が政治用語であることを、多くの時間と多くの犠牲を払って知ることになる。」と、書いている。わたしたちもすでに気づき始めているのかもしれない、『正義』が見えてこないことを。

どこの誰だか知らないけれど 誰もがみんな知っている 月光仮面のおじさんは

           正義の味方だ 良い人だ 月光仮面は誰でしょう

わたしたちはもう少し『目を凝らして』見つめていく必要がある、ようです。

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