中川輝光の眼

アトリエから見えてくる情景
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アーサー・ラッカム(Arthur Rackham)の挿絵から

2010-01-01 | 本の紹介

アーサー・ラッカム(Arthur Rackham)の挿絵から

これは「マザー・グース」の挿絵ですが、子供向けの本(童話)にしては少々暗い雰囲気が漂っています。アーサー・ラッカムの挿絵には、どこか物語の奥深くに入り込んでしまうような「仕掛け」がこらしてある(物語の森を彷徨う)ように思えます。画面を横切る老木の陰影が細部に至るまで描かれている、老婆の囁きを遮るかのように・・・。ヨーロッパの昔語りには、教養的要素がそれとなく加えられていますが、もともと「怖ろしい謎」を含んだものも多いのです。童話や絵本に、そういった「謎めいたもの」が残ったとしても不思議はないのです。とりわけアーサー・ラッカムの挿絵にはそれが色濃く残っているのかもしれません。わたしは、それを「セピア色の恐怖」と名づけています。おそらく、アーサー・ラッカムの生い立ちとそれは無関係ではありません。アーサー・ラッカムは虚弱な体質で、幾度となく病気・手術を経験していますし、その都度、死ぬことへの恐怖を味わっています。兄弟5人が幼くして亡くなったことも遠因だったと思いますが、生涯「死の影」につきまとわれていたと想われます。いずれにしても、この挿絵の魅力は、そういった画家の不安が物語の奥深くに「謎めいたもの」を忍び込ませた(増幅させた)ことにあるのかもしれません。

     あけましておめでとうございます。

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