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エプソン、好業績を引っ張る意外なプリンタ

2014年08月10日 09時35分57秒 | 学習支援・研究
エプソン、好業績を引っ張る意外なプリンタ
競合が尻込みする市場で"うまみ"を独占

島 大輔 :東洋経済 編集局記者
2014年08月03日
(東洋経済オンライン)

写真:7月31日、決算発表会見に臨んだ濱典幸専務の表情は、終始にこやかだった。

それもそのはず。インクジェットプリンタ大手のセイコーエプソンが
同日に発表した2014年度第1四半期(4~6月期)決算は、
売上高が2,562億円(前年同期比10.9%増)、
営業利益が546億円(同7.4倍)という、
極めて好調なものだった。

この数字には裏がある。
同社は今年度からIFRS(国際会計基準)に移行した。
その関係で、第1四半期は年金制度の改定に伴う費用の減少額(約300億円)が
利益に上乗せされた
など、特殊要因の影響が大きかった。

それでも、売上高から原価や販売管理費を差し引いた事業利益(日本基準の営業利益に相当)は、
前年同期比43.1%増の235億円と大きな伸びを見せた。

それでは何が足元の好調を牽引しているのか。
その疑問について、濱専務はこう説明した。
「(インクジェットの)大容量インクタンクモデルなどの数量増が
増収につながっている」。

大容量タンク型が売れている理由
大容量タンクモデルは、交換式のインクカートリッジを使う
一般的なインクジェットプリンタとは異なり、
最初から大容量のインクタンクをプリンタ本体に備え付けたモデルだ。
この製品をセイコーエプソンは新興国を中心に展開している。

2012年10月にインドネシアで発売して以来、
売れ行きは右肩上がり。2013年度には、
セイコーエプソンのインクジェット全体の2割に当たる
販売台数270万台を記録した。現在では、
世界130カ国まで販売エリアが拡大。
2014年度は、販売台数をさらに6割増となる
430万台程度まで引き上げ、
全体に占める割合も3割まで高める計画だ。

貢献が大きいのは販売数量の面だけではない。
通常、インクジェットプリンタは本体価格をできる限り低く抑えることで
稼働台数を増やし、好採算の交換式インクカートリッジで儲ける
というビジネスモデルになっている。だが、新興国では、
非純正インクの使用比率が高く、利益源であるはずの
純正カートリッジが思うように売れない。
ところが、備え付けの大容量タンクでは純正品を使わざるを得ないため、
稼働台数に比例して、インクの売り上げも増えていく。


写真を拡大

純正品を使う必要があるため、
売り上げは稼働台数に比例して増えていく
なおかつ、セイコーエプソンにとって
大容量タンクモデルが“おいしい”のは、
米ヒューレット・パッカードやキヤノン、
ブラザー工業といったライバルが展開しておらず、
大容量タンク市場をほぼ独占できている点だ。

新興国において、競合他社は大きな需要が見込める低価格のレーザープリンタを中心に
事業展開している。ここに大容量タンクモデルを投入すれば、
主力品である低価格レーザーと食い合いになってしまう。
新興国における大容量タンクモデルの積極的な展開は、
インクジェットに特化しているセイコーエプソンだからこそできた戦略なのだ。

わが世の春はいつまで続く?
大容量タンクモデルが牽引した好業績を受けて、
セイコーエプソンは2014年度の通期予想を上方修正。
売上高は従来予想比300億円(3.0%)増の1兆400億円、
営業利益は同160億円(15.4%)増の1,200億円へと、
それぞれ引き上げた。

利益の伸び率が第1四半期よりも鈍化しているのは、
下半期に販促関連の費用を当初計画から積み増すため。
インクジェットを中心とした情報関連機器は、
この先も当面、好調が続くという想定だ。

ただし、かつての先進国がそうであったように、
新興国でも経済が発展するにつれ、
インクジェットからレーザーへと早晩、
ユーザーの志向が移っていく可能性もある。
現状に甘んじているだけでは、
セイコーエプソンの“わが世の春”も
短いもので終わってしまいかねない。

http://toyokeizai.net/category/senryaku

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