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『人生フルーツ』

2017年03月22日 | 映画(さ行)
『人生フルーツ』
監督:伏原健之
ナレーション:樹木希林

三連休のまんなかだった日曜日、なかなかハードなハシゴを敢行。
まずはちょっとごぶさたしていた十三・第七藝術劇場へ。
この映画館はやっぱり好きです。まわりの環境も含めて(笑)、心が躍る。

東海テレビ製作ドキュメンタリーの劇場版第10弾となる本作。
これまでに『死刑弁護人』(2012)、『ヤクザと憲法』(2015)など、
話題性の高い作品を手がけています。
今回はそれらと比べるとおとなしめ。だけど穏やかで心洗われます。

愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウンの一角に暮らす、
90歳の建築家・津端修一さんと87歳の妻・英子さんの老後をカメラに収めた作品。

修一さんは東京大学の建築学科を卒業。
日本でも数々の建築物を手がけるアントニン・レーモンドの事務所に所属し、
1955(昭和30)年の日本住宅公団発足と同時に入社。都市計画にたずさわります。
高蔵寺ニュータウンも修一さんがかかわった計画のひとつ。

しかし、完成したニュータウンは、修一さんの思い描いていたものどおりとは言えませんでした。
木々は伐採され、水辺は埋め立てられ、風の通り道はどこへやら。
経済が優先された結果、無機質な大規模団地となってしまったのです。

そんなニュータウン内の土地を300坪、修一さんと英子さんは購入。
恩師レーモンドの邸宅を再現した平屋を建てると、
そのまわりに雑木林をつくり、70種類の野菜と50種類の果実を栽培。
少しずつ少しずつ、こつこつと育てつづけて50年。
雑木林はみごとに里山の風景をよみがえらせました。

このご夫婦が本当に素敵です。
『あなた、その川を渡らないで』(2014)を観たときもそう思いましたが、
同じ日本人の話だから、本作のほうがよりいっそう。
お互いを尊重して思いやる。ひたすらいいところを見る。
修一さんが英子さんのことを「僕の最高のガールフレンドです」と紹介するときの、
英子さんのはにかんだような笑顔。
90歳になってもこんなふうに少年と少女でいられるのですね。

人への感謝の気持ちを忘れない。それをきちっと綴る。
できることからこつこつと。そうすれば見えてくるものがある。
毎日の暮らしを考えさせられるドキュメンタリーです。

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