『あなた、その川を渡らないで』(英題:My Love, Don't Cross That River)
監督:チン・モヨン
ものすごく暑い日が続く先週今週。
こんな暑さのなか、梅田スカイビルまで歩くには気合いが必要。
なんとか自分に活を入れながら炎天下、シネ・リーブル梅田へ。
2本ハシゴのつもりで出かけ、本命は2本目。
その前に1本観るにはこれしか時間が合わなかったのでこれにしたのですが、
涙をこらえずにはいられない、心に染みわたる良作でした。
韓国の自然に囲まれた小さな村に暮らす老いた夫婦。
息子や娘6人はそれぞれ独り立ちし、ここで暮らしているのは老夫婦のみ。
あるテレビ番組でこの夫婦が紹介されているのを目にしたチン・モヨン監督が、
あまりにも凄い夫婦だと驚き、密着撮影を申し込みます。
15カ月間にわたって夫婦の様子を追いつづけたドキュメンタリーです。
夫は98歳、妻は89歳。寄り添って76年。
出会ったのは妻がまだ14歳のとき。
夫は妻を傷つけたくないからと、結婚後も手を出しません。
枕を並べて眠るとき、夫はずっと妻の頭や頬を優しく撫でるだけだったそうです。
「17歳になったとき、私のほうから抱きついた」と言う妻のなんと可愛らしいこと。
70年以上経っても、眠るときに妻の頬を撫でていなければ落ち着かない夫。
毎日きちんと民族衣装に身を包む。
夫はどれが夏服か冬服かもわからないから、妻まかせ。
用意された服をふたりで着て、髪の毛も整えます。
この年齢が信じられないほどふたりともしゃんとしていてお洒落。
揃いの民族衣装がまるでペアルックのよう。
表の掃除も雪かきもふたり一緒。
せっかく掃き集めた枯葉を夫は妻にふざけて投げつけます。
「なんてことするのよ」と言いながら笑って投げ返す妻。
雪かきのときにはもちろん雪合戦が始まります。お互いに似せた雪だるまをつくり。
妻が川に水仕事に出れば、またまた夫がじゃまをしにやってきて、今度は水の掛け合いっこ。
妻のつくる食事に夫は一度たりとも文句を言ったことがありません。
まずければ残すし、おいしければたいらげる。
でも、どちらのときも必ず、食べ終われば「ありがとう」と言い添えます。
12人の子どもを産んだけれど、病で半数が亡くなりました。
老いて死期も遠くないと悟っている夫婦は、
幼くして亡くなった子どもたちに会ったときに渡してやりたいと、
子ども用のパジャマを6着買います。
先に天国へ行ったほうが渡そうねと約束して。
自分たちの介護の話で子どもたちが言い争うのを聞いて胸を痛め、
目に涙をいっぱい溜める夫婦の表情が切ない。
巣立った子どもたちに夫婦は頼るつもりなく、
ただ夫婦で少しでも長く一緒にいられることだけを望んでいます。
大好きだった人を失うとき。
もう戻らない夫に別れを告げる妻の切々とした思い。
温かさと切なさに満ちみちた作品でした。
監督:チン・モヨン
ものすごく暑い日が続く先週今週。
こんな暑さのなか、梅田スカイビルまで歩くには気合いが必要。
なんとか自分に活を入れながら炎天下、シネ・リーブル梅田へ。
2本ハシゴのつもりで出かけ、本命は2本目。
その前に1本観るにはこれしか時間が合わなかったのでこれにしたのですが、
涙をこらえずにはいられない、心に染みわたる良作でした。
韓国の自然に囲まれた小さな村に暮らす老いた夫婦。
息子や娘6人はそれぞれ独り立ちし、ここで暮らしているのは老夫婦のみ。
あるテレビ番組でこの夫婦が紹介されているのを目にしたチン・モヨン監督が、
あまりにも凄い夫婦だと驚き、密着撮影を申し込みます。
15カ月間にわたって夫婦の様子を追いつづけたドキュメンタリーです。
夫は98歳、妻は89歳。寄り添って76年。
出会ったのは妻がまだ14歳のとき。
夫は妻を傷つけたくないからと、結婚後も手を出しません。
枕を並べて眠るとき、夫はずっと妻の頭や頬を優しく撫でるだけだったそうです。
「17歳になったとき、私のほうから抱きついた」と言う妻のなんと可愛らしいこと。
70年以上経っても、眠るときに妻の頬を撫でていなければ落ち着かない夫。
毎日きちんと民族衣装に身を包む。
夫はどれが夏服か冬服かもわからないから、妻まかせ。
用意された服をふたりで着て、髪の毛も整えます。
この年齢が信じられないほどふたりともしゃんとしていてお洒落。
揃いの民族衣装がまるでペアルックのよう。
表の掃除も雪かきもふたり一緒。
せっかく掃き集めた枯葉を夫は妻にふざけて投げつけます。
「なんてことするのよ」と言いながら笑って投げ返す妻。
雪かきのときにはもちろん雪合戦が始まります。お互いに似せた雪だるまをつくり。
妻が川に水仕事に出れば、またまた夫がじゃまをしにやってきて、今度は水の掛け合いっこ。
妻のつくる食事に夫は一度たりとも文句を言ったことがありません。
まずければ残すし、おいしければたいらげる。
でも、どちらのときも必ず、食べ終われば「ありがとう」と言い添えます。
12人の子どもを産んだけれど、病で半数が亡くなりました。
老いて死期も遠くないと悟っている夫婦は、
幼くして亡くなった子どもたちに会ったときに渡してやりたいと、
子ども用のパジャマを6着買います。
先に天国へ行ったほうが渡そうねと約束して。
自分たちの介護の話で子どもたちが言い争うのを聞いて胸を痛め、
目に涙をいっぱい溜める夫婦の表情が切ない。
巣立った子どもたちに夫婦は頼るつもりなく、
ただ夫婦で少しでも長く一緒にいられることだけを望んでいます。
大好きだった人を失うとき。
もう戻らない夫に別れを告げる妻の切々とした思い。
温かさと切なさに満ちみちた作品でした。