『東京オリンピック2017 都営霞ヶ丘アパート』
監督:青山真也
平日に休みを取り、京都でランチの前にアップリンク京都にて1本。
音楽を担当しているのは大友良英。
映画なら、古くは相米慎二監督の作品、最近では『花束みたいな恋をした』(2017)、
テレビドラマならNHKの朝の連ドラ『あまちゃん』もこの人が音楽を担当。
甘い恋愛ものからこんなドキュメンタリーまで、
どんな音楽でもピッタリに作り上げちゃう人ですよね。
という音楽の話はさておき。
東京都新宿区霞ヶ丘町にあった都営霞ヶ丘団地。
1946年に長屋形式で建てられたこの団地は、1960年代に入り、
1964年の東京オリンピック開催に伴う開発の一環として、
10棟300戸の都営霞ヶ丘アパートとして建て替えられました。
古いアパートは見た目がよろしくない。そういうことです。
そして半世紀以上が経過し、2020年の東京オリンピックの開催が決定。
国立競技場の建て替えのため、都営霞ヶ丘アパートを取り壊すことに。
またしても出て行くことを余儀なくされた住人たち。
一度きりの人生で、オリンピックのために二度も家がなくなる。
こんな憂き目に遭った人たちがいたと知って驚きました。
撮影に応じた住人のほとんどが独居。
なかには片腕を失った身体障害者の老人もいます。
移転に賛成かどうかのアンケートも配られたそうですが、
内容を聞いて目が点になりました。
「移転に反対」という選択肢は存在しない。
移転先としていくつか挙げられていてそれを選ぶのみ。
住人のほとんどがもう移転などしたくないと思っているというのに、
政府の発表では「住人は移転に賛成」になる。はぁ?
私が勝手に持っている「立ち退き」のイメージは、
まぁまぁ高額といえるお金を積まれて、「出て行ってくださいね」。
だけどここの住人たちは違う。
身体に障害を持つ人を福祉課が訪ねることもない。
自分で荷物を引きずって階段を降り、リヤカーに積み込んでトボトボと。
「上が悪いんだよ。下は言うこと聞くしかないんだから」と、
職員たちに同情的な住人もいますが、言ってから好意的解釈かなと苦笑い。
『東京クルド』に出てきた入国管理局の職員とまったく同じ印象を持ちます。
移転先がなくたって知らないよ、そんなの自分で考えろよって。
オリンピックのために立ち退かされて、
そのオリンピックは無観客でおこなわれ、依然コロナ禍にある。
元住人たちはどんな思いで見ているのでしょうか。