『少年と自転車』(原題:Le Gamin au Vélo)
監督:ジャン=ピエール,リュック・ダルデンヌ
出演:セシル・ドゥ・フランス,トマス・ドレ,ジェレミー・レニエ,
ファブリツィオ・ロンジョーネ,エゴン・ディ・マテオ,オリヴィエ・グルメ他
これも封切り日にほぼ満席の梅田ガーデンシネマにて。
カンヌ国際映画祭の常連、ベルギー出身のダルデンヌ兄弟による、
ベルギー/フランス/イタリア作品です。
同監督の作品はそれほど多くなく、
『息子のまなざし』(2002)など公開されたものはすべて観ていますが、
劇場で観るのはこれがはじめて。
もうじき12歳の少年シリルは、児童養護施設に預けられる。
すぐに引き取りに来てくれるはずの父親は行方知れず。
自分が捨てられたとは到底信じられず、
以前暮らしていたアパートへと電話をかけるが誰も出ない。
暴れるシリルに職員たちもほとほと手を焼いている。
シリルは施設を飛び出すと、アパートへ向かう。
父親は引っ越したと管理人や隣人から聞いてもまだ信じられない。
空っぽの部屋を見せられて、ようやく納得したものの、
大事な自転車までもがなくなってしまったことを認めたくない。
職員たちが駆けつけるもシリルに帰る気はなく、また一暴れ。
シリルはそのときたまたま居合わせた美容師のサマンサにすがりつく。
後日、サマンサが施設を訪れる。
父親が売り払ったらしいシリルの自転車を見つけて買い戻したとのこと。
シリルはサマンサに週末だけ里親になってほしいと頼み、
サマンサもなんとなくその申し出を受け入れて……。
父親に置き去りにされたことを受け入れられず、
周囲の人びとに悪態をつく姿は『冬の小鳥』(2009)を思い出させます。
けれども『冬の小鳥』の少女のほうがずっと幼く、
途中からは痛いほどけなげだった様子を考えると、
サマンサの厚意を踏みにじるシリルの行動にはむかつきすら覚えます。
近所の不良に声をかけられれば、強盗の片棒を担ぐどころか、
実行犯となることも厭わない。
そもそも罪の意識がないものだから、被害者への謝罪の言葉は薄べったい。
こういうことなのかなぁ、少年犯罪と向き合うって。
しかし、シリルが天罰を受けるかのようなシーン。
そうして、そんなシーンに出くわせば、
善良と思えた被害者親子もこんなことを言い出すのかと、釈然としない気持ち。
それでも後味は悪くありません。
『ロシアン・ドールズ』(2005)や『ヒアアフター』(2010)のセシル・ドゥ・フランスは、
これまでになかった母性を見せてくれます。
すっくと立ち上がって、変わらず自転車を漕ぎ出すシリルの後ろ姿に、
声をかけたくなりました。少年よ、まっすぐ生きろ。