夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

イランでヘヴィメタ。

2009年01月19日 | 映画(番外編:映画と音楽)
フランスのアニメ『ペルセポリス』(2007)を観ました。
原作はイラン出身の漫画家の同名作品で、
彼女の半生を綴った自叙伝。
タイトルは紀元前のペルシア帝国の都市の名前です。

マルジャン・サトラピ、愛称マルジ。
1969年にテヘランの上流階級の家庭に生まれた彼女は、
幼少期をイランで何不自由なく過ごします。

しかし、イラン革命を境にさまざまな変化が。
イラン・イラク戦争が勃発して、
政治犯とみなされれば、直ちにしょっぴかれて処刑される時代だというのに、
恐れを知らないマルジは、綺麗事ばかり言う先生を論破してしまいます。
リベラルな両親はそんなマルジを誇りに思いつつ心配し、
ウィーンのフランス語学校へ留学させることに。
ヨーロッパで送る学生生活は次第に自堕落に。

30カ国以上で出版されたベストセラーというだけあり、
とぼけた風味の絵と話にズルリと引き込まれます。

イスラム教の国ならではの慣わしには、唖然とする話も登場します。
女性を逮捕した場合、処女を殺すことはタブーとされているので、
一度結婚させてから死刑に処するとか。
けれど、これが周知されている国では、『ゴジラ』を観て呆然。
「まったく日本人ときたら、切腹するか怪獣を作ってばかり」とぼやきます。

上流階級ゆえの会話なのか、
豆のパイやクロワッサンが出てきたり、
「ウィーンに行ったらザッハトルテを食べなさい。
最高のチョコレートケーキだから」なんて
両親がアドバイスしたりするのは楽しいです。

陰鬱な話も鮮やかに吹き飛ばして豪快。
予想をはるかに超える器の大きさと明るさでもって魅せてくれます。

本筋とは別に、私が笑ったのが表題のこと。
路地で闇商品を売る怪しげな男たち。
その路地を訪れたマルジに次々と声がかかります。
「エスティーヴィー・ワンダー」、「ジャイケル・マクソン」、
「フリオ・イグレシアス」、「ピンク・フロイド」(この2つはなぜかまともに発音)、
「口紅、マニキュア、トランプ」など、
すべて無視して歩いていたマルジがハタと立ち止まったのは
「アイアン・メイデン」の声がかかったときでした。
きっちり値切ってカセットテープを入手したマルジは、
帰宅すると、テニスのラケットをギターに見立ててヘッドバンギング。

ハリウッド映画ではダサイものの代名詞であるABBA(アバ)。
本作でもダサイと罵られていました。
そんなABBAの曲満載の『マンマ・ミーア!』は今月末公開です。

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