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南英世の 「くろねこ日記」

恩赦を考える

前々から気になっていたことがある。恩赦の件だ。憲法第73条第7号には【内閣の職務】として
「大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること』
とある。

恩赦は全部で5種類ある。大別すると、政令で一律に行われる政令恩赦(大赦,減刑及び復権)と,特定の者に対して個別的に審査した上で行われる個別恩赦(特赦,減刑,刑の執行の免除及び復権)とに区別される。
さらに,個別恩赦には,常時行われる常時恩赦と,内閣の定める基準により一定の期間を限って行われる特別基準恩赦とがある。

個々の違いはここでは置いておくが、要するに恩赦とは裁判所が確定させた判決を行政が介入する行為のことといってよい。これまでに実施された政令恩赦・特別基準恩赦には次のような例がある。


恩赦制度そのものに反対するつもりはない。しかし、政令恩赦については三つ問題がある。

第一に、恩赦の政治利用である。「恩赦は選挙違反で有罪が確定した人を救済するためにある」と主張する人もいる。実際、平成への代替わりには大量の公職選挙法違反者が救済された。「選挙違反しても、新天皇即位で救済されるから安心してつかまってこい」などと不埒なことを言っているかどうかは知らないが、7月には参議院選挙がある。政治家が支持者の「復権」を果たすために恩赦を利用するというのは筋違いというものだ。

第二に、天皇の即位を機に恩赦を実施することは、かつて支配者たる天皇が臣民に慈悲と寛大さを示す行為として恩赦を行なったことと重なる。皇室がらみで恩赦を行なうことは、象徴天皇制の時代にそぐわない。

第三に、公平性の問題がある。偶然、恩赦の時期にあたった人はラッキーだが、そうでない人との不公平感はぬぐえない。司法が下した判決が、恩赦に巡りあえるかどうかでその効力に違いが出るということは好ましいことではない。

「私は立法府の長でもあります」などとのたまった総理大臣である。恩赦という権力分立を犯す行為については慎重であってほしい。
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