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南英世の 「くろねこ日記」

都構想とはいったい何ぞや?


いくら説明を聞いてもよくわからないのが都構想である。たぶん多くの大阪市民も同じ思いなのではないか。それでも、11月1日には大阪市を廃止して4つの特別区にするかどうかを判断しなければならない。ここで改めて、都構想とはいったい何かということを考えてみたい。

1.そもそも都構想は何のために主張され始めたのか?
 大阪市(人口270万人、一般会計予算1兆8千億円)は"経済的においしいところ"をもっていて、その権限と財力は非常に大きい。そのため大阪府は大阪市の意向を無視して事業計画を進めることができず、両者はしばしば意見が合わずに対立を繰り返してきた。そこで、提案されたのが大阪都構想である。
大阪市の持つ権限を府に移管すれば、大阪府と大阪市の利害が衝突することは解消される。これがいわゆる「二重行政」の解消である。

2.都構想への疑問
① 「二重行政」なるものが仮にあったとしても、それが果たして無駄と言えるのかどうか。もし二重行政が無駄だというならば、戦前のように地方自治を認めず、全国を中央政府の権力下に一元化すればよい。そうすれば沖縄の基地問題も一挙に解決される。
戦後の民主主義は「地方自治」を重視し、中央政府による一方的な全国支配を否定することから始まった。その意味では二重行政・三重行政は地方自治の証ともいえる。

② そもそも東京23区の特別区は、第2次世界大戦下に戦時体制強化のため、東京市民の自治権を奪うために生まれたものである。だから、法人住民税や固定資産税などの徴税権はすべて東京都にある。もし大阪市が廃止されれば、大阪市が失う財源は年間2000億円ともいわれ、これが大阪府の財源となる。そうなれば、現在大阪市が行なっている行政サービスは間違いなく低下する。

個人的ことを話せば、私は年間60万円以上の固定資産税と市民税を大阪市に払っている。これは本来、大阪市民のために使われるべき財源である。これがよその地域のために使われるということは地方自治を否定するものと言わざるを得ない。大阪市を廃止したほうがいいという人はよほど気前がいいのか。なぜ政令指定都市から区への「格下げ」をわざわざ望むのだろうか。

③ 賛成派の人が主張するように、大阪市を廃止することによって本当に大阪の経済成長が加速するのかも疑問である。大阪の人には東京に対するコンプレックスがある。だから、東京の真似をして大阪都にすれば、大阪も発展するのではないかという期待がある。しかし果たしてそうか? 大阪市を廃止しても「大阪都」にはならないし、かりに「大阪都」になったとしても二重行政を解消したくらいで大阪が発展するとも思えない。

大阪を発展させるためには、カジノを作るなどといった貧困な発想ではなく、大阪を日本のシリコンバレーにするとか、市大と府大をを単に合併させるのではなく、全授業を英語で行ない世界から研究者や留学生が集まる一大研究機関にするといった思い切った政策が必要ではないか。学生の半分くらいが留学生であってもいい。かつての大坂には「適塾」という日本最高の学問所があった(ここで塾頭を務めた福沢諭吉は「江戸へ行っても何も学ぶことがない」と言っている)。大阪にはそういう下地がある。

④ さらにいえば、二重行政であるのは大阪市だけではない。京都市も横浜市も名古屋市もみな二重行政である。しかし、大阪以外に二重行政を問題視しているところはない。なぜ大阪だけがこれを問題視するのか。

⑤ 大阪市を4つの区に分割した場合、行政コストはどうなるのか。今まで同居していた家族が分家するのだから、当然維持費は余計にかかるとしたものである。銀行が合併によって効率化を目指すのと正反対のことをするのだから、常識で考えてもこのことは容易に想像がつく。大阪市によれば年間218億円余計に経費が掛かるという。もっともこの数値は「天の声」によって否定させられたようだが、天の声がやっきになって否定すればするほど、やっぱり218億円は正しいのではないかと思えてしまう。


以上みてきたように疑問だらけである。
変革すればよくなるというのが「革新」の基本姿勢である。超保守政党の「維新の会」が革新を主張するのも面白いが、政治は” Change " と主張している時が一番票に結び付きやすく、” Change " の中身が分かったとたんに支持を失うというのはよくあることである。
11月1日、大阪市民はどのような判断をするのだろうか。
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