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南英世の 「くろねこ日記」

ネーミングの妙

政府が法律を作り社会を変えようとするとき、国民に分かりやすく説明するためにさまざまなネーミングを工夫する。しかし、そのネーミングは本当に政策本来の意図を表しているのか。名前とは裏腹の意図が隠されているのではないか。主権者である国民は、常にそうした疑う気持ちを持っていないと、いつの間にか政府に「ごまかされる」ことになりかねない。

思いやり予算
在日米軍基地内の日本人従業員の給与・光熱費・水道代、施設建設費などを「思いやり予算」と呼ぶ。現在その金額は年間約2000億円。安全保障との引き換えの「思いやり」だというネーミングの妙で国民を納得させてしまったのだから言葉の力はすごい。

一家団らん法案
ホワイトカラーエグゼンプション(高度プロフェッショナル制度)は、労働時間に関係なく「仕事の成果」で賃金を評価する制度である。だから、仕事が終わればさっさと帰宅してもよいとされる。
かつてこの法案は「一家団らん法案」と名付けられたこともある。冗談ではない。残業しても残業代が出ないのだから、「残業代ゼロ法案」または「定額働かせ放題法案」と呼ぶほうが正しい。



まちづくり3法
2000年に大規模小売店舗法(大店法)が廃止され、大規模小売店舗立地法など「まちづくり3法」が成立した。その結果、イオンなどの大型店が郊外に相次いで出店し、駅前の商店街はシャッター通りと化してしまった。シャッター通りを増やす政策が「まちづくり」だというのだから何をか言わんや。

直間比率の是正
戦後、日本は直接税中心主義でやってきた。しかし、所得税や法人税は景気変動の波がある。だから安定的な税収を得るためには消費税を導入し、直間比率を是正することが必要だとされた。しかし、その後の実態を見ると、消費税引き上げと並行して法人税が引き下げられてきた。何のことはない。消費税引き上げは法人税を引き下げるための手段だったのだ。財界が消費税引き上げを一番強く主張していることがそのことを証明している。

一億総活躍社会
今、働く人の4割は非正規雇用である。非正規の人は給料が安い。給料が安くなって喜ぶのは雇う側である。当初は「主たる家計の担い手ではない」女性職種が非正規にされた。そのうち、男性の職種にも非正規が導入され、非正規の人数がどんどん増加した。男性だけでは食っていけない。女性も働かないと食っていけない。それを「一億総活躍社会」と呼ぶのだろうか。

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多くの人は毎日の生活に追われ、ゆっくり政治のことを考える暇もない。また、職場で政治の話をすることはタブーだという雰囲気もある。1年や2年単位では社会の動きはつかみきれない。10年20年単位で振り返ると、政治の大きな流れが見えてくる。

1980年代にアメリカで始まった「新自由主義」という怪獣が、いま日本で暴れ回っている。競争、競争、競争・・・。負ければ「自己責任」。競争によって生産効率を最大限に高め、生じる格差(分配問題)は政治で解決すればよいと経済学者は言う。しかし、政治に分配問題を解決する力は、いまのところない。それどころか政治家は貧富の差をさらに拡大させることに心を砕いているようにすら見える。
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