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南英世の 「くろねこ日記」

手術



10年ほど前から不整脈が出ていた。薬を処方してもらっていたが、それでも3カ月に2度ほどは出る。1回出ると数時間は続き、身体全体がしんどい。しんどいのはまだ我慢できるが、問題は血栓ができてそれが脳に飛び脳梗塞になることだ。そのリスクを避けるために、今回カテーテル手術を受けることにした。

8月1日、かかりつけの関西電力病院に入院する。初日は採血、心電図、レントゲンの検査、および主治医から手術に関する詳細な説明を受ける。手術は鼠径部の静脈からカテーテルを心臓に差し込み、不整脈の原因となっている電流を発する周辺を温度50~60度で焼いて(アブレーション=焼灼)、周りから「絶縁」するのだという。入院期間は5日間。入院中退屈しないように、ノートパソコン、定期考査の問題作り資料、囲碁ソフト(Zen)、小説などを持ち込んだ。


入院にあたって心配なことが二つあった。一つは剃毛である。これまで全く経験がなく、週刊誌などで面白おかしく書いてある記事程度の知識しかない私にとって、剃毛はやっぱり嫌だった。ところが、そこはうまくしたもので、初日に看護師さんにシャワーを浴びるように言われ、その際、電動バリカンを渡されて「ご自分で除毛してください」とのことである。もちろんカミソリで剃られることもない。うれしかった。

もうひとつの心配は、2日目に尿道にカテーテルを挿入されることである。手術中、オシッコに行けないからカテーテルの挿入は仕方がない。しかし、看護師さんから麻酔もなしに挿入されるのである。この年になって股間の「暴れ馬」が暴れることはないだろうが、やっぱり恥ずかしい。「ピリッ」と痛みが走る。しかし、何回やってもうまく入らない。結局、主治医のH先生が呼ばれ、グリセリンを使ってなんとか無事に挿入完了。入ってしまえば痛みはない。違和感もそんなには感じない。しかし、いくつになっても性にまつわることは恥ずかしいものだ。

手術は入院2日目の午後1時から行なわれた。手術室に行くと、10人以上のスタッフが待機していた。私ひとりの手術のためにこんなにたくさんの人がかかわってくれることに少し感動。手術台に仰向けになり、麻酔をかけられ、あっという間に深い眠りにつく。

途中、麻酔が切れかけ「やばい」と思った瞬間、「南さん、大丈夫ですか。もう終わりましたよ」の声。手術は4時間ほどかかったはずなのに、手術中は全く記憶がない。意識としては10分くらいで終わった感じである。痛みは全くなかった。カテーテルを挿入した右足付け根の痛みもまったくなかった。医学のすごさを感じた。手術室から部屋に運ばれた後、主治医から手術が成功したことを告げられた。



その晩は心電図モニターを付けられ、尿道にカテーテルが入ったまま、横向きにもなれない状態で一晩を過ごした。夕食は妻が口まで運んでくれた。うれしかった。寝返りが打てないので、ものすごく腰が痛かった。自分で寝返りをしてはいけないというのがこんなにつらいことだとは知らなかった。ほとんど眠ることはできなかった。長い夜だった。以前、股関節の手術をし、長期間の入院をしていた長女の気持ちが少しだけ分かった気がした。




3日目の朝、尿道カテーテルが外され、自由に歩き回ることが許された。食事も水も、座って飲めるようになった。たった1日だけの辛抱だったが、「普通」に暮らせるということがこんなにもありがたいことかと心の底から思った。コーヒーも、「手術が終わったからもう飲んでいい」といわれ、さっそく病院内のレストラン行った。美味かった。そのあとトイレに行って小用を足そうとしたら、ものすごく痛かった。そのことを除けば、いたって快適な病院生活に戻った。

病院の前には堂島川が流れている。川を挟んでリーガロイヤル・ホテルが見える。入院していると、まるでリーガロイヤルの別館にいるような気分になる。スタッフは親切で優秀だし、食事もおいしい。リーガロイヤルのバイキング料理と関電病院のカロリー計算しつくされた料理のどちらをとるかと言われたら、ちょっと迷うかも(笑)。
元気になったので、さっそく仕事に復帰。4日目も快適な環境の下で定期考査問題作りを続行する。まるでホテルでの勉強合宿みたいだ(笑)。





今回の手術でかかった費用は約195万円。そのうち私が支払ったのは約10万円である。残りは「国民健康保険限度額適用認定」制度が適用され、医療保険から支払われる。日ごろ、国民健康保険料として毎月8万円(年間約80万円)を支払っているので、「国民健康保険はなんでこんなに高いのだろう」とぼやいていた私だが、今回は保険制度のありがたさを実感した。

今回の手術で根治する確率は70~80パーセント。もし、まだ不整脈が出るようだったらもう1回手術する必要があるという。それでも根治する確率は90~95パーセントだという。できれば今回で終わりになってほしい。
予定通り5日目の午前中に無事退院した。関西電力病院の皆様にあらためて感謝したい。
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