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南英世の 「くろねこ日記」

年金の運用

 厚生年金や国民年金などの公的年金の運用を任されているのがGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人 2008年設立)である。2018年度の総資産は約165兆円

GPIFはかつては資産の7割近くを安定的とされる国内債券で運用してきた。しかし、安倍政権は、2014年度に国内外の株式の運用比率を24%から50%に引き上げた。この結果、現在のポートフォリオは上図のとおりである(GPIF資料)。そして、最近の運用実績は次のようになっている(GPIF資料より作成 グラフの単位は億円)。



安倍政権が誕生した2012年末から運用実績は大幅に改善し始めた。日本株を購入している半分以上は海外の投資家だといわれる。2014年には、アベノミクスに期待した海外投資家が約15兆円を買い越した。安倍首相は2014年10月30日の予算委員会で、安倍政権ができてから約1年9か月の運用収益が約プラス25.2兆円になったと大いに自慢したものである。

2015年度は中国株の暴落により約5兆円の赤字になったものの、2016年度には約8兆円の黒字になった。また、このグラフには示されていないが、2017年度の運用実績は約10兆円の黒字であった。

しかし、2018年になって海外投資家はほぼ一貫して売り越しに転じた。アベノミクスを見限ったからである。日本の株価は低迷した。売り越し金額は2018年度だけで5兆7千億円。

海外勢の売り越しに対しその穴埋めとして買い支えたのが、GPIF、企業の自社株買い、日銀などである。しかし、2018年度第3四半期(10月~12月)の運用実績は14兆8000億円の赤字(収益率マイナス9パーセント)という発表が先日あった。年金資産も約150兆円に減ってしまった。

株式は債券と違って価格変動が激しい。だから、株式の構成比を高めればそれだけ年金の変動リスクも高まる。しかし、以前のように株式の構成比率を減らすことはもはやできない。GPIFはプレーヤーとしては金額が大きすぎて「池の中のクジラ」になっているからだ。もし、GPIFが株式を売却して債券比率を高めようとすれば、それこそ株式市場は大暴落する。

株式市場を人為的に吊り上げ、アベノミクスを成功したように見せかけた経済政策は、やがて我々の年金の減額という形で跳ね返ってくるのかもしれない。これも国民が選択した民主主義とあきらめるしかない。
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