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南英世の 「くろねこ日記」

円はなぜ安全資産とされるのか?

(東洋経済オンライン https://toyokeizai.net/articles/-/223198?page=3


前々から不思議に思っていたことがある。世界経済が混乱すると必ず「相対的に安全資産とされる円」が買われ、円高になるという現象である。その根拠となるのは、日本は世界最大の対外純資産保有国であり、いざとなればその膨大な海外資産が日本に回帰し円が買われるという筋書きである。

確かにデーターで見る限り、日本の海外純資産残高は328兆円(財務省発表 2017年末)と世界最大の債権国である。2位のドイツが急速に拡大させているが、ドイツはユーロを使用しておりリスクヘッジの対象とはなりにくい。また、中国の元も政治的な理由からリスクヘッジの対象には向いていない。結局、結局27年間世界一の債権大国を維持してきた円が「安全資産」として買われることになるのだという。

しかし、世界経済がリスクにさらされたとき、本当に日本の海外純資産が日本に回帰するのだろうか? 日本の保有する海外純資産とは、具体的には「証券投資」と「直接投資」である。証券投資はすぐに売却して日本に回帰する可能性はある。しかし、いまや海外純資産の半分以上は工場建設などの直接投資であり、簡単に売却して日本に回帰するとは考えにくい。ましてや、1000兆円以上の国債残高を抱えている国の通貨が、本当に「安全な資産」なのか、やはり疑問は尽きない。

まあ、「安全資産としての円買い」というシナリオが広まり、世界中のみんながそうした行動をとれば、たとえそれが真実ではなくとも円高は起きる。いま起きている現象はそうしたフィクションをみんなが信じているだけではないかという気がする。
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