南英世の 「くろねこ日記」

「60年償還ルール」と合理的期待仮説

日本の財政赤字が止まらない。累積債務残高は文句なしの世界一?である。本来ならば財政再建に向けて必死の努力をしなければならないのに、どの政党も増税とは絶対に言わない。それどころかお金のバラマキで国民の歓心を買おうと必死である。

財源は?

もちろん借金である。

その借金はいつ返すのか?

日本独特の返済ルールに「60年償還ルール」というのがある。国債の償還年限(満期)には5年、10年などさまざまな種類があるが、基本的には60年で償還することになっている。これは建設国債による建築物の耐用年数がおよそ60年であることに由来する。たとえば10年満期の国債の満期が来たら、とりあえず60分の10だけ償還し、残りは借換債を発行して返すということを6回繰り返すのだ。

この「60年償還ルール」は1985年度からは赤字国債にも適用されるようになった。これまでの新規国債発行額および借換債の発行額をグラフ化すると次のようになる。圧倒的に借換債が大きい。ちなみに、借換債の収入は国債整理基金特別会計に繰り入れられ、新規発行の国債と異なり、債務残高の増加をもたらさない。

 

借金は60年かけて返すという日本独自のルール。これはいったい何を意味するのか。60年後の自分の姿を考えればすぐわかる。そう、現在有権者である人の大半はもうこの世にはいない。つまり、返すのは自分ではない。後は野となれ山となれ。そんな無責任さが借金の山を築いた。

これは地球温暖化問題と似ている。50年後100年後、地球の温度が2度や3度上がったってそれがどうした。そのころには自分は死んでしまってもういない。こちとら、今日明日の生活で精いっぱいなのだ・・・・。後は野となれ山となれ。

かつてルーカスは「合理的期待仮説」を説いて、ケインズ政策は有効ではないと主張した。その理由は、「仮に政府が支出を増やして景気刺激を図っても,人々は財政赤字の増大が将来の増税をもたらすと予想し、現在の支出を切りつめる。このため,個人消費が減少し,公共支出増加の効果を相殺してしまうから」である。

現在の日本の状況は、「政府が支出を増やして景気刺激を図っても、自分たちはそのツケを払う必要がない」というものである。その結果、借金のヤマができた。まさしく別の意味での「合理的期待仮説」そのものなのである。

借金をして償還期限が来たら即全額返済する。例えば、10年満期の国債を発行したら10年後に全額返済する。そういう財政規律をきちんと守るようにすればどうなるか。国民は果たして借金を望むであろうか? 財政規律が緩む諸悪の根源は「60年償還ルール」にあるといってよい。


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