375's MUSIC BOX/魅惑のひとときを求めて

想い出の歌謡曲と国内・海外のPOPS、そしてJAZZ・クラシックに至るまで、未来へ伝えたい名盤を紹介していきます。

本田美奈子BOX(DISC 3) 「止まらないRAILWAY」他

2006年12月10日 | 本田美奈子


本田美奈子BOX - disc3

収録曲 1.キャンセル 2.止まらないRAILWAY 3.Lovesong for somebody 4.SHIKASHI 5.Bond street 6.24時間の反抗 7.ルーレット 8.Feel like I'm running 9.NO PROBLEM 10.涙をF.O.(フェードアウト)して 11.the
Cross -愛の十字架- 12.HEARTBEAT AWAY 13.Oneway Generation 14.心のアラーム響かせて 15.CRAZY NIGHTS 16.GOLDEN DAYS
 
(17~18.「the Cross -愛の十字架-」「Oneway Generation」オリジナル・カラオケ)
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1986年のマリリン」の大ヒットによって、一躍メジャーな存在となった本田美奈子であるが、この時すでに、ある宿命的な闘いが始まろうとしていた。それは、「アイドルと呼ばれることへの闘い」。当時主流の、フリフリの可愛らしさを売り物にしたアイドル像に反発して、「自分はアイドルではなく、アーティスト」という主張を始めたのである。デビュー当初から、「歌で身を立てたい」という志の強かった彼女にしてみれば、当然の主張だった。

現在ならば、わざわざそう主張するまでもなく、デビューしたばかりの段階で、すでに「新人アーティスト」と呼ばれる。しかし、当時は、そうではなかった。若くて可愛い新人歌手がデビューすれば、まずアイドルとして見られてしまう。「アーティスト」という言葉は、日本の芸能界においては、ほとんど使われていなかったのである。

彼女が「アーティスト」という言葉で表わそうとしたもの、それは自分が思うに、日本ではなく、「海外のアーティスト」のイメージではなかっただろうか。

彼女自身が言っている。「その頃、社長さんに毎日毎日、海外のアーティストのビデオを見せてもらってました。日本ではルンルンの人がウケるけど、海外の人に共通する点は、やっぱし歌唱力と大人の歌い方です。反対に考えると海外のアーティストみたいな人は日本にいないわけで、私はこの路線で行くしかないと思った。」(「天国からのアンコール 1986年のマリリン」より)

その言葉を実践するかのように、1986年9月に発売された3rdアルバム「キャンセル」は、前2作と比べて、ガラリと内容が変わるものとなった。収録された10曲のうち、なんと6曲が外国人による作曲である。作詞はすべて秋元康が担当しているものの、全体として見ると、きわめて洋楽色の強い、統一コンセプトに貫かれたアルバムとなった。一言で表現すれば、日本語で歌うブリティッシュ・ロックである。このアルバムで、彼女は本格派アーティストの道へ、大きな一歩を踏み出したと言えるだろう。

本田美奈子BOXのdisc3には、その3rdアルバム「キャンセル」全曲(収録曲の1~10)と、1986年9月から1987年4月にかけて発売された3枚のシングルAB面全曲(収録曲の11~16)が収録されている。例によって、このdiscでのマイ・ベストの5曲を選んでみようと思うが、傑作の並ぶ激戦区なので、今後、他の曲と入れ替わる可能性は十分にある。

まずは、アルバム「キャンセル」の収録曲から、②「止まらないRAILWAY」。強靭なリズムと意志力で、過去を振り切り、未来の夢に向かって驀進する特急列車。まさに、重量級の傑作である。汽笛を模写する中間部の間奏が、後ろ髪を引かれるような哀愁を醸し出す。まるで、彼女自身の心を映す鏡のように。

同じく、アルバム「キャンセル」の中の一曲、⑧「Feel like I'm running」。現状を振り切り、真実の愛を求めて走り続ける、快速ランナー・美奈子。ゴールにたどり着くのは、いつだろうか。自分には、天使になった今も、まだ走り続けているように思えてならない。

「キャンセル」に先立って発売されたシングル、⑪「the Cross -愛の十字架-」。こちらは、ゲイリー・ムーアの作詞・作曲(秋元康の訳詞)による、ロック・バラードの名作。「十字架」のモチーフが暗示するのは、運命的な恋の行方だろうか。謎めいたドラマを包み込む、深みのあるヴォーカル。「マリアになれない」と哀しむ歌詞とは裏腹に、後年の本田美奈子は、立派に「聖母マリア」になり得たと思う。

1987年の大ヒットシングル、⑬「Oneway Gerenation」。作詞を手がけた秋元康は、迷いながらも一途な生き方をする本田美奈子を見て、「若さというのは“one way”だなあ」と思ったという。これがきっかけとなって、「Oneway Gerenation」が生まれた。いわば、彼女自身が作詞家を通して書かせたメッセージソングである。

数年後、本田美奈子主演のミュージカル「ミス・サイゴン」を観劇された皇太子様が、終演後に楽屋を訪れ、「Oneway Generationをよく聴いていました」とお話されたとのこと。皇室という伝統の中にあって、皇太子様自身も、自分なりの“one way”を模索されていた時期があったのだろうか。

マイ・ベスト5最後の一曲は、⑭「CRAZY NIGHTS」。クイーンのブライアン・メイ作詞・作曲による、ノリノリの傑作。秋元康はあくまで「訳詞」なので、英語のほうがオリジナルということだろうか。次のdisc4には、英語版が収録されているが、最後のほうは日本語のフレーズになり、「カッ飛んでいこうぜーっ」という掛け声も同じように入る。

大物海外アーティストとの交流によって、独自の歌世界を広げていく、新時代の旗手・本田美奈子。彼女は、この時すでに、他に並ぶ者のない「ワン・アンド・オンリー」の存在だったのである。



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